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2023.04.06
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驭鲛记之与君初相识 The Blue Whisper
第12話

林昊青(リンコウセイ)が内殿に引きこもり数日、経った。
万花谷(バンカコク)には不穏な噂が流れ始め、心配した瞿暁星(クギョウセイ)は紀雲禾(ジーユンファ)に助けを求める。
しかし雲禾が声をかけても昊青から何の返答もなかった。
「兄長…いるんでしょう?
 そう言えばお母様が亡くなった時も引きこもっていたわね?
 外で待つわ、あの時と同じように…悲しみが癒えるまで寄り添う」
やがて憔悴しきった昊青が出て来た。
「ありがとう、雲禾…聞きたいことがある、愛する人を守るためにどれだけ代償を払える?」
「何でも払うわ」
「そのせいで信用を失い、憎まれたとしても?」
「その人を守れるなら構わない」
昊青は何やら納得すると、明日の継承の儀には参加して欲しいと頼んだ。

洛錦桑(ルオジンサン)はやっと万花谷を離れられると喜んだ。
しかし雲禾は何もかも順調過ぎてかえって不安だという。
「林昊青の目つきが変わっていたわ…何か隠しているみたい」
長意(チャンイー)は心配なら今すぐ発とうと提案したが、雲禾はせめてもの恩返しに明日の儀式に参列したいと言った。
林滄瀾(リンソウラン)の死に疑問を持つ長老も多く、自分を支持する長老たちをなだめるためにも林昊青の谷主就任を祝福したいという。
「これで数百年も続いた争いに終止符を打てるわ」
実は解毒薬は儀式のあとにもらう約束になっていた。

林昊青は雲禾の後押しもあり無事に万花谷の谷主の座についた。
儀式は滞りなく終了し散会、雲禾はそのまま残って昊青から解毒薬をもらえるのを待つ。
しかし昊青は約束を反故にし、引き続き護法として万花谷に留まってもらうと言い放った。
その時、戦部が現れ、雲禾は拘束されてしまう。
一方、洛洛と長意は荷物をまとめて今か今かと雲禾の帰りを待っていた。
するとなぜか瞿暁星たちがやって来る。
「悪いが出発は取りやめだ」
雲禾の身に何か起こったと気づいた長意は激怒、氷鋲を招喚した。
「雲禾はどこだ?!」
「長意、雲禾のためにも軽率に動くな」

長意は雲禾の安全のため、おとなしく収監された。
雲禾と洛洛は居所に拘禁されたが、思いがけず雲禾が林昊青の結界を破ることに成功する。
「すごいわ雲禾!隠れて修行していたの?」
「長意の尾が断たれてから霊力がたまに暴走するようになったの…」

雲禾は思過窟に駆けつけたが、長意の姿はなかった。
激情に駆られた雲禾は急に暴走する霊力に困惑したが、そこへ瞿暁星が現れる。
「戦部統領の座が欲しくて裏切ったわね?言いなさい!長意はどこ?!」
瞿暁星は谷主が長意を隠したのは雲禾に愚かな真似をさせないためだと訴えたが、雲禾はもはや林昊青は敵だと言い放った。
「あなたは?私を助ける?敵になる?」

雲禾が内殿に現れた。
「誰がお前を逃した?」
「私を阻める者などいない、長意はどこなの?」
林昊青は雲禾の様子がおかしいと気づき、ついに秘密を明かすことにした。

内殿の壁の奥には密室があった。
実は林滄瀾も自分たちと同じように寒霜(カンソウ)に苦しめられていたという。
「ここで見つけた父が遺した文と箱だ…」
林昊青は父がなぜ張(チョウ)仙使を丁重に迎えるのか不思議だったが、それもそのはず、張仙使は定期的に父に解毒薬が入った箱を届けていた。

仙師が万花谷で修行し出世した一方、林氏一族は後継ぎが何人も死んでいた。
林滄瀾は仙師が万花谷を恨んでいると考え帰順したが、その際、仙師が寒霜で万花谷を支配したのが始まりだという。
「でも私の発作は使者が来る回数より頻繁だったわ」
「お前は別格だ」
実は林滄瀾は寒霜を抑える方法を探っていた。
やがて天仙と地仙の霊力の融合が有効だと突き止め、自分と卿舒(ケイショ)の力で御霊師を鍛え始めたという。
しかし異なる霊力を制御できなければ激烈な寒霜が誘発された。
多くの御霊師が耐えられず岩山に葬られたが、唯一、耐え抜いたのが雲禾だったという。

林昊青はこのまま父の遺志を継いで実験を続け、仙師を倒して林氏を再起させると話した。
しかし急に雲禾が暴走する霊力を抑えきれず、苦しみ始める。
昊青は急いで霊力の衝突を中和させる薬を飲ませ、このまま寒霜を一気に突破できなければ、経脈を損ねて死ぬと教えた。
「残された時間は1ヶ月もない、鮫人のことは忘れろ、命の方が大事だ」
昊青は必ず雲禾を救うと約束したが、その時、外から瞿暁星の声が聞こえた。
「谷主!仙姫が来ました!」

順徳仙姫(ジュントクセンキ)・汝菱(ジョリョウ)が仙師府の弟子たちと一緒に万花谷にやって来た。
ちょうど近くまで来たついでに鮫人の様子が見たいという。 
昊青は仕方なく仙姫に鮫人を会わせることにしたが、雲禾にはくれぐれも冷静に対応するよう釘を刺した。

汝菱は林滄瀾が死んだと聞いても興味がなさそうだった。
すると歴風堂に捕縛された長意が連行されてくる。
汝菱は美しい鮫人のもとへ自ら歩み寄り、近くに滞在する数日は自分に仕えるよう命じた。
しかし雲禾は尾を切られたばかりで鮫人は歩き回れないと口を挟んでしまう。
「鮫人は私の機嫌を取らねばならないの、承服させてちょうだい」
「…強要はできません」
林昊青は焦ってすぐ謝罪するよう命じたが雲禾が拒否、仙姫の怒りを買った。

汝菱は雲禾を鞭で打った。
雲禾は血を吐いても強要できないと拒んだが、驚いた長意が急に口をひらく。
「やめろ!…何でも従うから雲禾を見逃してくれ!」
「仙姫の私が望めば何だって手に入る、従うのは当然、取り引きはしないわ」
林昊青は仙姫の怒りを鎮めようとひざまずき謝罪、長意も不本意ながら過ちを認めた。
すると見かねた上仙の姫成羽(キセイウ)が現れ、横暴な仙姫を諌めてくれる。
「鮫人を御しがたいのは事実であろう、ここは大目に見て時間を与えてはどうだ?」
汝菱は師匠の愛弟子である師兄を無下にできず、おとなしく言う通りにした。



汝菱は鮫人の縄を解いた。
どちらにしても禁錮符があれば逃げられない。
「今回は軽い処分で済ませるけれど、もし鮫人が逃げたりしたら御霊師の過失とし連座させる
 紀護法はしっかり監視してね」
すると汝菱はすっかり興を削がれたと言い捨て、10日ほど猶予を与えて帰って行った。

雲禾は呆然としたまま歴風堂に残っていた。
すると仙師府の弟子が戻って来る。
「姫成羽と申す、先ほどの仙姫は目に余る、私が代わりに謝罪しよう」
姫成羽は自分にも仙侍がいたことがあったと話した。
山の中で助けたのが縁で、共に旅をしながら成長し、主従関係というより兄弟のようだったという。
「鮫人をかばう紀護法が昔の私と重なった」
「その仙侍は今も?」
「…仙姫に気に入られ連れ去られて以降、音信が途絶えた」
姫成羽は雲禾に同情的だったが、任務である以上、教化を果たすべきだと助言した。

雲禾が重い身体を引きずりながら思過窟に現れた。
長意は雲禾を心配したが、雲禾は罰なら慣れっこだと強がる。
「長意、出発は10日後よ、それまでに禁錮符を外す方法を考えるわ
 守衛を引き離すから先に逃げて、私は後から逃げられるから…」
雲禾は長意が仙姫から逃れるためには鮫珠が必要だと気づき、ひとまず長意に返すことにした。
しかし身体から取り出そうとしても出すことができない。
「雲禾、演技が下手になった…鮫珠は約束の証し、約束が変わらぬ限り取り出せない」
長意は雲禾が自分を逃すため犠牲になるつもりだと分かった。
自分が逃げれば雲禾に矛先が向かい天雷の罰を受けるのだろう。
「雲禾、君を置いてはいけない」
「…相談の余地はない、必ず逃げて」
すると雲禾は怒って帰ってしまう。

雲禾は花海でひとり涙に暮れた。
師兄の話ではこの身体は強い霊力に耐えられず、恐らく死ぬことになる。
…私のために全てを捨てさせるなんてできない…
雲禾は必ず長意を逃がし、自由にしなくてはならないと心に決めた。

雲禾が居所に戻ると洛洛と瞿暁星が待っていた。
実は2人は谷主から雲禾の状態を全て聞いたという。
雲禾は自分を憐れむなら長意だけでも逃す方法を考えて欲しいと頼んだ。
「洛洛、暁星、2人と出会えて幸せだったわ、最後の頼みを聞いて」
「嫌よ!」
洛洛は思わず背を向けて泣いてしまう。
その様子を林昊青が見ていた。
…紀雲禾、お前をそう簡単に死なせてなるものか…

長意は洛洛が届ける食事に手をつけなかった。
心配した洛洛は雲禾に報告したが、雲禾も決して長意には会わないと譲らない。
こうして2人が意地を張って8日目、長意は仕方なく姫成羽を呼んだ。
「私に何か用か?…あさって出発だ、やり残したことがあるなら手を貸そう」
「仙姫に会いたい」
一方、雲禾はどうしたら鮫珠を返せるのか悩んでいた。
長意が鮫珠を持っていないと分かれば仙姫にいたぶられてしまう。
すると瞿暁星が駆けつけた。
「雲禾!長意が仙姫に会いに行った!」

つづく





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最終更新日  2023.04.08 22:20:28
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