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2023.04.07

苍兰诀　Love Between Fairy and Devil
第１話

…はるか昔、月(ｹﾞﾂ)族の東方青蒼(ﾄﾞﾝﾌｧﾝﾁﾝﾂｧﾝ)は上古の秘術を修習し、あらゆる感情を失った怪物となった
彼は自らの手で父親を殺害、月尊(ｹﾞｯｿﾝ)の宝座を奪って十万の月族兵士を掌握すると、殺戮と略奪の限りを尽くしたという
こうして仙界の水雲天(ｽｲｳﾝﾃﾝ)、月族の蒼鹽海(ｿｳｴﾝｶｲ)、人間の雲夢澤(ｳﾝﾑﾀｸ)の三界は危機に瀕した
すると衆生を救うため戦神・赤地女子(ｾｷﾁｼﾞｮｼ)が自らの元神を犠牲にし、東方青蒼を道連れにして十万の月族兵士を封印する
しかし東方青蒼の元神は本来、不死不滅、ひとたび甦れば地獄の業火が三界を席巻することになるだろう
伝説によればこれを止められる力を持つのは息山神女(ｿｸｻﾝｼﾝﾆｮ)だけだった
だが彼女の行方を知るものはどこにもいない…

ここは神仙たちの世界・水雲天、今朝も司命(ｼﾒｲ)殿でひとりの仙女が目を覚ました。
…私は小蘭花(ｼｬｵﾗﾝﾌｧ)
…ここの木の葉は運命簿で、衆生の運命が書かれているの
…私の務めは運命簿を整理して守ること、でも安心して、私に運命は変えられないから
…師父の司命仙君は運命を司る神仙よ、でも師匠というよりはまるで老板ね
思えば酔った師匠がうっかり蘭の鉢植えに酒をこぼしたせいで根が傷み、小蘭花は誰よりも霊力が劣っていた。
そんな司命は小蘭花に仕事を仕込むと、人間界へ遊歴に出かけたきり500年も音沙汰がない。
しかし小蘭花は独りでもそれなりに楽しく過ごしていた。
今や運命簿の修繕もお手の物、掃除も手際よくこなし、寂しい時は植物の精霊たちが話し相手になってくれる。

↓司命殿、大木の葉が運命簿

小蘭花の目下の目標は涌泉(ﾕｳｾﾝ)宮の仙女になり、恩人である戦神・長珩(ﾁｬﾝﾊﾝ)仙君に仕えることだった。
運命簿の修繕はとても気を使う。
人の運命は些細なことで大きく変わってしまうからだ。
師匠いわく命数は天が決め、万物の因果は巡り、天の因果は決して尽きることなく…とか何とか。
ともかく小蘭花は毎日50枚ほど修繕し、５万枚を修復し終えたら師匠に暇を乞うと決めていた。
「その頃には長珩仙君が戻ってくるはずよ」
しかし長珩はいつの間にか凱旋していた。

長珩は北溟(ﾎｸﾒｲ)の地を取り返し、月族首領・巽風(ｿﾝﾎｳ)を退け、乱を平定した。
しかしまだなすべき事が残っているにも関わらず、兄の帝君・雲中君(ｳﾝﾁｭｳｸﾝ)に呼び戻されてしまう。
聞けば３万年前に殺されたと思っていた東方青蒼の元神は滅んでおらず、実は昊天(ｺｳﾃﾝ)塔に封印されていた。
兄の話では水雲天が混乱に陥らないよう父が一部の者以外に秘密にしたという。
当時、東方青蒼の元神を封じるため東君(ﾄｳｸﾝ)が神剣を使って塔の中に昊天陣を張り巡らせた。
これは三界に破れる者がいないという堅牢な陣だったが、東方青蒼の元神に残る力が日々荒れ狂った結果、封印が緩んでしまったという。
父が修行中でこもっているため、帝君は封印を補強するために長珩の力がどうしても必要だった。

小蘭花は運命簿を借りに来た仙女たちの話から長珩が凱旋したことを知った。
喜んだ小蘭花は涌泉宮に美しい花を差し入れることにしたが、漱玉林(ｿｳｷﾞｮｸﾘﾝ)で偶然にも独りでいる長珩を見つける。
そこで華麗に登場しようと飛び上がったものの、小蘭花はうっかり首が蔦に絡まり落下した。
すると長珩は小蘭花に手を差し伸べ、助けてくれる。
「あ、この花をあなたに…」
実は1500年前、小蘭花はまだ司命殿で咲く小さな蘭だった。
司命は酒をこぼして仙根が傷ついた蘭を捨てることにしたが、ちょうど司命殿を訪ねた長珩が止めてくれたという。
「それで私は修練を積み、人像を手に入れました」
しかし長珩は何も覚えていなかった。
落胆した小蘭花は帰ることにしたが、長珩がせっかくなので蘭を１本だけもらってくれる。
その時、長珩が霊玉を落とした。
小蘭花は急いで拾って返そうとしたが、長珩は蛍虫が抜けた霊玉など役に立たないので処分していいという。

長珩がくれた霊玉は″奇幻流蛍石(ｷｶﾝﾘｭｳｹｲｾｷ)″という珍しい石だった。
小蘭花は長珩との縁を感じ、俄然やる気が出て仙女の試験に参加すると決める。
しかし他の仙女たちの目当ても長珩仙君、霊力が劣る小蘭花は皆の嘲笑を買うことになった。
それでもめげず、試験に向けて精霊たちのへそくりを借りて薬を買うことにした小蘭花。
すると長珩仙君の運命簿の葉に異常が現れた。
驚いた小蘭花が運命簿を調べてみると、長珩仙君の命に危険が迫っていると分かる。
その時、長珩はちょうど神仙たちと昊天塔の封印を補強していた。

小蘭花は長珩仙君が心配で罪人を投獄する昊天塔へ駆けつけた。
しかし命運簿の主命線は切れたまま、確かに神仙たちは封印に手間取っている。
「運命簿で見た光景と同じだわ…どうしよう、何とかしないと」
その時、師匠の言葉が頭をよぎった。
…運命簿の内容を本人に漏らしてはならず、書き換えてもいけない
…守らないと天罰が下り、お前は消し去られる
そこで小蘭花は仮面で顔を隠し、長珩の前に立ちはだかって守ろうとした。
すると昊天塔から飛び出した鬼火につかまり、小蘭花はそのまま塔の中へ引きずり込まれてしまう。
その機を利用し帝君は昊天塔を封印することに成功したが、長珩は仙女を見捨てた兄に困惑した。

小蘭花は塔の中へ落下、鬼火に導かれながらある男と正面衝突した。
思いがけず男と口づけを交わしてしまう小蘭花。
すると２人の元神が融合し、小蘭花は意識を失ってしまう。

…小蘭花は遠のく意識の中で氷に閉ざされた枯れ木を見つけた
思わず指で木に触れてみる小蘭花、その時、ふいに意識が戻る…
すると目の前に自分がいた。

…あれは誰？なぜ私の衣を着ているのかしら？…

小蘭花はいつの間にか罪囚と身体が入れ替わっていた。
自分の身体に入った男は早く昊天陣を破壊するよう迫ったが、小蘭花は罪囚が自分を利用して脱走するつもりだと怪しむ。
まさかこの男が３万年前に三界を揺るがした東方青蒼だとは知らずに…。