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2007.03.13
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カテゴリ: フランス映画
TYKHO MOON
Enki Biral
(107min)

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寸評:ジュリー・デルピーが魅力的。他の俳優も豪華。SFマンガの世界で筋はどうということはないが、ジュリー・デルピーを魅力的に描くための背景としては物語も十分だし、人工的パリのモニュマンのセットや宇宙船の窓から見る地球の映像も魅力的だし、ブルー調のコダックフィルムの色彩も美しい。

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この映画はジュリー・デルピーがとにかくいいですね。小悪魔的って言うとちょっと安易ですが一種独特の魅力があります。冷酷なようで強い情熱を秘めたと言うか。妖婦でもあり純情でもあるような。と言っても他にはキェシロフスキの『トリコロール/白の愛』くらいでしか見たことはありませんが。この女優さん、実物の人間がどういう人かは知りませんが、実際に出会ったらちょっとビビってしまいそう。でもこんな女性に惚れられたらいいですね。そんなデルピーが主人公の男性に惚れちゃう物語ですから、それだけで良い映画です。

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つい最近他の映画に関して書いたばかりですが、芝居は目の前の舞台の上に生身の役者さんがいて、それを物語として享受するわけですから、一種の抽象性があるのに対して、映画って言うのは、フィクションだと解っていても、映像を通じて直接その世界に入れるのがいい。だからボクはどちらかと言うとSFとか歴史ものは苦手です。あまりに世界が自分の現代の世界と異質で、なかなか入りにくいからです。その点この『ティコ・ムーン』は月面上の話で、人工重力とか人工大気とかの世界が舞台ではあっても、そこに登場する人物や物は我々の世界とそう変わらない。街並にしても現代の地球上の街並を再現したようなもの。車は旧式のベンツがそのままガソリンで走っているし、音楽はカセットテープだし、光線銃とかではなくって現代の拳銃が使われ、撃たれれば普通に血を流してケガしたり死んだりする。セックスだって普通に裸で抱き合うわけで、決してカプセル飲んで手のひらを合わせるだけではない。つまり基本的なアクション自体も、人間の心理なども、現代ものと変わりがない。そこがいいところです。

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そんなわけで月面上に作られた人々が暮らす世界なんですが、そこを支配するのは独裁的支配者マクビー(ミッシェル・ピコリ)。でもマクビー一族には遺伝的な欠陥があって、病気が進行すると身体に青いアザができ、血液も青くなって、そのままでは死んでしまう。豚の臓器を移植するか何かでなんとか病気の進行を食い止めている状態。

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ティコ・ムーンという名の人物がかつていて、各種の検査の結果彼の脳や臓器を使えばマクビー一族の遺伝病を食い止めることが出来るらしいことが解ったのだけれど、20年前手術の前日に火事で焼け死んでしまった。ところがそのティコ・ムーンのその後という本が出回り始める。マクビーとしては彼が生きているなら探しださなければならない。何者かに暗殺されたマクビーの双児の弟とマクビーの双児の息子エドワードとアルヴィンは秘密警察を組織していたが、もちろんティコ・ムーンの捜索を始める。ティコ・ムーンを特定するために国民男子全員の採血等を行う。

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(以下ネタバレ)
自宅で彫刻をするアニクスト(ヨハン・レイセン)。彼は20年前に記憶喪失になって、それ以前の記憶がない。(地球の)米国のジャーナリストと名乗るグレンバー(リシャール・ボーランジェ)と、女殺し屋レナ(ジュリー・デルピー)が彼に近付く。彼には秘密警察の手が迫るが、危ない場面でもこの2人がいて救われる。グレンバーは彼に何日後かに出発する地球行きのチャーターロケットのチケットを渡す。やがてアニクストとレナは恋に落ち、レストランで食事を共にし、専用キャビンでダンスをしているが、秘密警察がやってきて捉えられてしまう。頭部にあるかつての検査の跡が確認され、彼こそティコ・ムーンであることがわかる。アニクストとレナは逃げ、ロケット出発場所へ向けて逃げるが、町を出た郊外は月面の荒涼とした岩砂漠地帯で、貧民や少数民族がテントなどを張って生活している。そこでテントの一室を狩り、2人は結ばれる。

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そこに母エヴァがやってくる。アニクストはかつての愛人エヴァの記憶を取り戻す。エヴァは20年前、手術をされる寸前だったアニクストを逃がし、火を放って焼死に見せかけたのだった。そこにレナがやってきて撃たれをうになったのでアルヴィンを撃ち殺す。死んだ息子に寄り添うエヴァを残してレナとアニクストはロケット発射場所へ向かう。グレンバーもマクビーを射殺し、バイクでやってくるが、途中で待ち構えていたコンスタンティンと相撃ちになって2人は死ぬ。コンスタンティンの身体には青いアザが現れ、やはりかれもマクビーの子供だったのだ。これでマクビー一族の血はすべて絶たれた。宇宙船の窓から月面と遥かかなたの青い地球を眺めるレナとアニクストだった。

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ストーリーのキーポイントはレナとティコ・ムーンの愛と、あまり深くは描かれないのですがエヴァとコンスタンティンの心理でしょう。レナがティコ・ムーンに恋することになっていなければ、任務だけではあれほどまでに彼を守れなかっただろうし、エヴァが麻薬中毒になっているのはティコ・ムーンが忘れられないからで、20年前に彼を救ったのも彼女の愛。コンスタンティンはたまたま発病が表面に出なかったためにティコ・ムーンを父と思い彼を守った。一方では独裁者マクビーの、子供の病気回復よりも自分のそれを優先し、冷凍貯蔵で息子の死後に再び権力を持とうとした、愛のない権力欲が描かれ、その対決は愛の勝利に終わるわけです。地球に向かう宇宙船の窓から地球を眺めながらレナがティコ・ムーンに言う映画最後のセリフは、この2時間弱の映画の中でもっとも好きなセリフです。「Je n'ai encore jamais quitte la lune.」(まだ一度も月を離れたことはなにの)というだけのセリフですが、なぜかとってもエロティックに響きます。

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Last updated  2007.03.20 04:56:33
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