サウジが不安だな.......
day by day
今終わったニューヨークなど海外のマーケットを見ると、3代表株価銘柄が反落したのと同じように、週明けでバレル64ドルを超えたブレント価格を初めとする原油相場は反落したようだ。
CNBCによると、WTIの引けは57.20ドルと前日引値より15セント反落した。前日のWTI引値は2015年6月以来の高値だったから、それよりは少し下げたが、高い水準は維持したという形。
また欧州のマーケットではブレント相場は引けが63.70ドルで、これは前日引けよりも57セント安。ブレントは週明けでは先週末比で3.5%も上がっていた。このパーセンテージで見た上げ幅は過去6週間ぶり。
原油相場の高水準維持の背景は、サウジで進む国内政変とそれに関連したイランとの関係悪化。サウジの国内政変は、「汚職対策と銘打った権力闘争」だ。 4 日から同国で始まったもので、同国当局は新たに設置された反汚職委員会の 下で、王子11人を拘束したと発表した。
その時にサウジ系の衛星テレビ局「アルアラビーヤ」が伝えたところによると、これに関連して閣僚ら3人も解任された。同国の反汚職委員会は、「サウジの発展を妨げる問題への積極的対策」の一環としてサルマン国王が設置を命じ、ムハンマド皇太子がトップの座に就いたという。
同委員会には汚職に関与したとされる人物の捜査や拘束に加え、海外渡航を禁止したり、資産 を凍結したりする権限がある。筆者がこの報道を見て直ぐに思ったのは、「自分の息子であるムハンマド皇太子への権力委譲を狙う国王が、"汚職撲滅"の旗を借りて王族の中での権力闘争を開始したのではないか」というもの。
問題は「それによって、世界にばらまかれているサウジのお金の流れが、今後どうなるのか」という点だ。まだサウジの汚職撲滅の動きは初期の段階だが、手法は習近平が中国で取った方法と似ている。
ロイターはサウジの高官筋の話として拘束された具体的人物名を報じている。投資会社キング ダム・ホールディング・カンパニーを率いるアルワリード・ビン・タラール王子や、サウ ジアラビア国家警備隊大臣のムトイブ・ビン・アブドゥッラー王子、リヤド州元知事のト ゥルキー・ビン・アブドゥッラー王子そして王室裁判所の元長官のハリド・アル・トゥヴ ァイリー氏、アーデル・ファキーフ経済企画相、アッサーフ元財務相、海軍司令官である アブドゥッラー・ビン・スルタン・アル・スルタン海軍中将など。
今朝のウォール・ストリート・ジャーナルのネット上の最初のニュースはこの問題で、「委員会がらみの逮捕・拘留は拡大へ」がタイトルだ。つまり4日からの一連の動きはフェーズ1に過ぎなく、第 2 幕、 第 3 幕があるとも想像される。
それとの関連で興味深いのは、サウジの外相が対イランで非難を激化させていること。イエメンのシーア派勢力がサウジの首都めがけてミサイルを発射、サウジがそれは撃ち落としたことは報道されているが、それに関連して同外相は「イランによる直接的な侵略行為だ」と非難した。ミサイルを供給したのがイランだと見られるからだ。
その真偽を筆者は知らないが、一連の流れの中では「外交では良くある他国批判パターン」を読み取ることが出来る。つまり国内がガタガタしているが故に、国民を団結させる意味からも関心を「外に向ける」ための行動だ。この場合はサウジはイランに批判・非難を向けて、国民の関心外しを狙っているとも思える。
サウジの王族の範囲は広い。王族の数が半端ないのだ。サウジアラビアの語源となっている「サウド家」の流れを組む王族達。
その中でサルマン国王は第7代サウジアラビア国王に2015年1月23日に就任。彼は初代サウジアラビア国王イブン・サウードの25番目の男子。第6代国王アブドゥッラーの異母弟。つまり複雑なのだ。
その国王が先に、当時王位継承順位が1位のムハンマド・ビン・ナエフ皇太子(57)を解任し、自身の子である継承順位2位のムハンマド・ビン・サルマン国防相兼副皇太子(31)を"皇太子"に昇格させる異例の人事勅令を出していた。
同皇太子は内外の政策全般を事実上取り仕切っていた。この新皇太子への権力集中を一段と進める狙いが同委員会にはあるとされる。当時から「新皇太子のもとでサウジは国内改革を加速する一方、対立するイランに一段と強硬に出る可能性がある」(日経)が報じられていたが、実際にそういう展開だ。
サルマン国(81)からムハンマド皇太子(31)への権力委譲がどの程度スムーズにいくのか。行かないから今回の「国内での汚職撲滅運動に名前を借りた権力闘争」が始まったし、対イランでの強硬姿勢誇示とも読める。
サウジ政府は公式には逮捕者、拘留者の氏名を公表していない。しかし報道の通りのメンバーだとすると、その中で一番の注目はタラール王子だ。同氏は世界屈指の富豪として知られ、ニューヨー ク・タイムズによると、ツイッターやシティグループ、21 世紀フォックスなどの株主だ。
さらに、ビル・ゲイツ氏やルパート・マードック氏、マイケル・ブルームバーグ氏といっ た「ビジネス界の巨人」との取引関係でも知られる。彼が取り仕切っているようなサウジ系の投資が、今後この汚職撲滅運動でどうなるのかが問題だし、原油相場はそもそも「供給不安」(サウジ国内でも)を考えた。それ故の週明け6日の相場高騰。
7日の小反落は「撲滅運動は目立った反対もなくスムーズ」という判断だろう。しかしそのままの展開で行くのか ? 株式市場など金融マーケットに対する影響も当然出てくるだろう。
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