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コロンビア戦勝利にも浮かれない 長谷部主将があげた「いくつかの課題」
佐藤 俊
2018/06/20 20:00
まったく浮かれた様子はなかった。ロシアW杯初戦コロンビアに2-1で勝ち、W杯で8年ぶりの勝利を挙げた日本だが、ミックスゾーンで長谷部誠は終始厳しい表情だった。
勝負は細部に宿る――。長谷部は、大会前からずっとこのことを突き詰めてきたからだ。
今年34歳、3回目のW杯出場となる ©JMPA© 文春オンライン 今年34歳、3回目のW杯出場となる ©JMPA
「早い時間で相手が退場するというのは、前回ブラジル大会のギリシャ戦もそうだったんですけどすごく難しい。そういう中、しっかりと結果を出せたのは大きな前進だと思います。でも……この勝利は詰めないといけない部分がたくさんある」
勝ったのに、渋い表情がつづく。
「前半、早い時間でひとり退場になって先制できたところまではよかった。でも、そこからなかなかいい攻撃ができなかった」
ハーフタイムにみんなで話した修正点
数的優位は、実は怖い時間でもある。なかなか2点目を奪えず、逆にFKから同点に追いつかれた。展開的には非常にいやな流れだった。だが、ハーフタイム、長谷部が中心となって戦い方を修正した。それが功を奏して、後半はコロンビアを押し込み、後半28分、カザンのキャンプ地で再三練習をしてきたセットプレーから大迫勇也が頭で決勝ゴールを奪った。
「ハーフタイムに、ボランチが1つ前のラインに出て、サイドバックも高い位置をとって、どこで攻撃のスイッチを入れるか、スピードの変化をつけるかというのをみんなで考えてやっていこうという話をした。
まぁ最悪、1-1でもいいという割り切りをしていたし、そういう中でリスクを負っていく場面とバランスを取るというのは出来ていたし、決定的チャンスも作れた。
真司(香川)やサコ(大迫)はセンターバックを引っ張って深みを作る意識でプレーしてくれた。
コミュニケーションという部分では実った試合かなと思いますし、セットプレーでゴールを奪えたのはポジティブな結果だと思います」
選手間でコミュニケーションを取り、攻撃の型やリズムの変化をつけることはできた。ただ、それは相手が1人少ないことを考慮しないといけない。
11対11での戦いになっていれば、長谷部と柴崎岳のダブルボランチ、そしてセンターバックの吉田麻也、昌子源もあそこまでフリーでボールを持てることはなかった。むしろ逆に相手に詰められてどう打開すべきか、苦慮していただろう。
それだけに、前半の試合運びや戦い方を振り返ると長谷部は、不満気な表情を見せた。
FKで壁の下を抜いてくることは分かっていた
たとえば、前半39分のコロンビアのFKのシーンだ。
長友佑都がクリアし損なったボールをファルカオと長谷部が競った末にゴール前でFKを取られた。相手のファールにもみえたが、判定は覆らない。長谷部が悔やんだのは、このFKへの対応だった。
「FKは、スカウティングでコロンビアが壁の下を抜いてくるのをかなりやっていたんで分かっていたんです。だから、壁はジャンプをし過ぎず、ボールが通らないぐらいのジャンプをしようという話をしていたし、実際に壁を作っている時も『ジャンプし過ぎるな』という話をしていたんです。でも、そういう中でやられてしまった。これで引き分けになっていたらもったいないことになっていました。そういう小さなところからしっかりと詰めていかないといけない」
また、攻撃についても長谷部は表情をしかめた。前半3分にMFのカルロス・サンチェスが退場になってから、日本は期せずしてボールを持てる展開になった。
しかし、ハリルホジッチ前監督時代は縦への速いカウンター攻撃主体で、西野監督が引き継いだ後も選手間の連携の精度を高める練習を十分にできていなかった。そのツケが出たように遅攻がなかなか機能しなかった。
「前半に関していうと、僕ら中盤のボランチが下がり過ぎた感じがあったし、真司もサコも引いてくるという形になったんで、相手にとっては全然怖くなかったと思う。
遅攻の部分の精度については、もっと高めていかないといけないと思っていますし、それが次への課題だと思います」
W杯で勝つことがいかに大変なことか
キャプテンらしく、勝っても浮かれることなく課題を口にする。ただ勝てばいいのではないのだ。W杯で勝つことがいかに大変なことか。前回のブラジルW杯で1勝もできない苦い経験をしてきただけに、細部にこだわる。それが次の試合に生きるからだ。
「セネガル戦まで4日あるんで、しっかり休んで、また明日から。自分たちは相手を研究して、自分たちのやり方を決めるサッカーをしているので研究をしっかりしないといけない。もちろん今回の課題も修正していく」
表情は淡々としているが、この勝利がいかに大きなものか、W杯の1勝の重みを長谷部は理解している。なんとなくふんわりしていたチームがひとつ勝つことで加速をつけてまとまっていく。2010年の南アフリカW杯がまさにそうだった。そこではベテランが果たす役割が大きい。今回は本田圭佑がベンチにいながら一番声を出して応援したり、吉田麻也がロッカーの洗濯物を片付けたり、ベテラン勢の献身がチームに一体感を生み出している。
「それが自分たちの強みでもあるんで」
キャプテンは、そう言うと少し表情を崩した。長谷部の妥協なき勝利への厳しさもまたチームの“強み”である。強みを増した日本の快進撃が始まろうとしている。
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