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2022.01.02

向田邦子　今夜知ったその驚異の天才

(13)

カテゴリ： 🔴 Ｂ【本・読書・文学】【朗読】

 向田邦子　今夜知ったその驚異の天才 

なにげなく

いつもの通り

ラジオを聞いていた

NHK第二放送だった

朗読の時間

向田邦子の代表作短編集「想い出トランプ」

これを大晦日から連続して、毎夜、朗読している

今日は正月二日、つまり、三夜目である
明晩が最終日

「男眉」「マンハッタン」
この短編、二編を聞いた

名作の朗読は私の大好物ではあるのだが

それでも、この日は何気なく聞き始めたのだが

私は向田邦子の短編を、それなりに、読んだつもりだった

「父の遺言」などだったろうか
この作品は テレビでも、二・三回？ドラマとして見た

だから「ああ、向田邦子か」という気持ちだった

父が向田邦子さんのファンだったがおそらく彼女の文才に惚れたのだろう

父も加賀藩の祐筆の末裔だから 文学の才はある

何しろ若い頃に、勤務先の社長の（ 参議院議員でもあった社長だが）

その人の議員演説・スピーチは、皆、父がゴーストライターとして書いていた

そういう人間なのだったから

ただそれもあるが、父が向田邦子さんが好きだったのは、それだけの理由では無い
それは向田邦子が美人であったという点である
今に続く向田邦子ブームの一因
それには、彼女が美人ゆえ、というところが確かにある

父は、無類の美人好きで(笑) 作家であれ、女優であれ、歌手であれ

自分好みの美女でありさえすれば無条件でファンになる

そういう節操というものが無い男であった

私も少し、その血を引いてはいるが 未だ、それほどひどくは無い

そのつもりだ(笑)

ま、とにかく、父が向田邦子さんの大ファンだった

という事で朗読を聞いていたのだが

驚いた！

なんだ、この人は？？？

私もいろんな日本の作家のエッセイ・小説を読んでは来たが

この人は・・・

恐ろしい！

一個人の実体験など

向田邦子さんもそうだろうが

無限大の体験、そしてそれを記憶している
そういう事などありえない

それなのに、向田さんのこの短編の、 すべてに対する描写・人間心理の観察

この観察レベルが、神のレベルなのだ

今まで、どんな文学者のそれとも異次元な

自分の有限の、限られた実体験をもとに

これだけ「神の視点」と言えるほど

恐ろしく深遠な

恐ろしく多次元な

恐ろしく鋭い
そういう視点

とにかく一個人の観察としてはあり得ない次元のものだとまで思った

例えば、独身だった向田邦子さんが知りえなかっただろう

・　夫婦間の機微

・　男独特の心理

・　美人だった向田邦子さんが知りえなかった「はず」の(笑) 不美人女性の心理(笑)

・　縁もゆかりもなかったはずの、いやしいとさえいえる 庶民の言動や心理
等々

そういう神の視点で見た森羅万象を、 濃縮した短編に詰め込んでいるのだ

こんなに衝撃を受けた短編小説は無い

例えばトルストイとかドフトエフスキーの超朝鮮小説などは、 言語の違いもあり、別物だ

日本の短編小説で

これほど深遠で鋭い 短編小説作家に出会うとは思わなかった

もちろん日本文学には、短編小説・エッセイの達人と言われる人たちが多くいる
彼らを向田邦子と比較して、劣位に置くわけでは決してない
彼らの深い文学性も理解しているつもりだ
事実、読んで感銘した作品も多い
ただ、向田邦子の「神の視点の観察力」
これには、ひょっとして、彼女の「秘めた人生経験」
そういうものが存在していて、それが寄与しているのかもしれない
彼女のロマンスという話も、少し側聞している
いずれにしても、彼女の短編小説は、余人をもって代えがたいもの
私は今夜、そう感じたのだが