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上巻の方は、読み進めるのにかなり時間を要したが、 この下巻については、一気に読み切ってしまった。 特に、各シーンの起こった時刻が明記され始める第九章以降は、 もう、読書を中断して他のことをする気に全くなれなかった。 高校を舞台とした、想像を絶する大量殺戮事件は第十一章で終結。 そして、その一ヶ月後を描いた、エピローグとなる第十二章は、 『黒い家』と同様、恐怖感を残存させるシーンとなっており、 こういったホラー作品における、スタンダードなパターンを踏んでいる。ただ私としては、第十一章は、もう少し粘って書き込んで欲しかった。決定的証拠品が、あまりにもあっさりと発見され、些か拍子抜け。「こんな状況になってさえ、まだこの男は危機を脱してしまうのか……」いう、何とも言えぬ無力感、諦念の気分を、もう少し味わいたかった。第十二章は、これで必要十分、Great!その後の「秘密」と「アクノキョウテン」は、蛇足気味。そして「蓮実聖司を愛する者として」は、もうすぐBee TVや映画で放映される作品において、監督を務める三池さんが書いた一文であり、彼の人となりを知ることが出来る。ところで、本著の特設サイトは、なかなか充実した内容となっており、本著を読んだ人は、一見の価値有りです。
2012.09.30
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冒頭の夢のシーンが暗示するもの、 それは、周囲から高評価を得ている高校英語教師・蓮実聖司の真の姿。 普段、生徒や教師たちに見せているのは、彼自身が創作した虚飾の人格。 その内面に潜んでいるのは、身の毛も弥立つサイコパス。 そして、そんな彼のテーマ曲とでも言えるのが、 『三文オペラ』の『殺人物語大道歌(モリタート)』。 第一章のカラス殺しから始まって、第三章では五月蠅い保護者を始末し、 第四章で同僚教師達を情け容赦なく壊すと、第六章で要注意印の教師を抹殺。しかし、その合間に挟み込まれる過去の殺人の記憶は、より衝撃的。まさに、サイコパスとしか言いようのない、残虐性に満ち溢れた行為の連続。蓮実の前任校で起こった、連続自殺事件の全容はまだ明らかでないが、その事実に近づこうとする者に対し、彼が牙をむくのは間違いないところ。蓮実に潜むものに気付き始めた生徒たちにも、危機が迫る。この続きは、下巻にて。
2012.09.29
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相原友典は、麗人サークルで遂に和田真希と出会うが、残念な結果に。 そして、次の相手からは写真を見て拒否されるが、その相手は別れた妻だった。 久保史恵は、叔父の就職圧力で家を出ることにしたノブヒコに連れられ戸外へ。 そして、中学校に夜間侵入した際、初の脱出を試みるが、あえなく失敗。 加藤裕也は、後輩の懇願で、地元暴走族とブラジル人との抗争に巻き込まれ、 さらに、亀山社長を殺害してしまった先輩の柴田を、自宅で匿うハメに。 堀部妙子は、母親を自宅に引き取り、万心教信者が働く弁当工場就職を決意。 そして、裕也の父親と関係を持ったり、折りたたみ式車椅子を万引きしたり……山本順一は、藤原がこの世を去る瞬間を、唯一人、間近で見ることになる。さらに、藪田幸次が坂上郁子を殺す瞬間まで、目撃する状況に。そして最後は、西田のダンプが友典の車に衝突したことで、大きな玉突き事故が発生。これまで、関係のなかった5人が、一つの場で繋がったのだった。本当に、誰も彼も救いようのない状況に追い込まれてしまったところで、このお話しは幕を閉じるのである。今後、ちょっとだけマシな方向に事態が展開しそうなのは、史恵くらいか。その史恵にしたって、彼女自身が心配しているようなことが、次々に起こるのだろう。スッキリ爽やかな気分とは、真逆な読後感。私は、奥田さんの作品では、やっぱり「伊良部シリーズ」が好きだなぁ。
2012.09.17
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相原友典、ゆめの市の社会福祉事務所勤務。 ケースワーカーとして、生活保護家庭に対応する日々を過ごす。 久保史恵、県立向田高校の二年生。 友人の和美と共に東京の大学に進学することを夢見て、予備校にも通う。 加藤裕也、向田電気保安センター勤務。 配電盤の保守点検と偽って、漏電遮断器と称するものを売りつけて回る。 堀部妙子、地元の警備保安会社に私服保安員として1年前に雇われ、 複合商業施設・ドリタンで、万引き犯を捕捉している。山本順一、父の地盤を引き継いで市会議員となり、二期目を迎えている。来春の選挙に向けての懸案は、産廃処理施設建設とその反対運動への対応。この5人が、このお話のメインとなる面々で、ほぼ同等に扱われている。それ故、一人一人の現況を一通り描写するだけで、既に80ページに突入していた。そして、友典は援助交際に首を突っ込んだと思ったら、ダンプに命を狙われる身となり、史恵は、予備校からの帰宅途中、ゲームの世界に生きているノブヒコに誘拐・監禁され、裕也は、生活保護を解除されそうになった元妻から、息子を引き取らされるはめになり、妙子は、自身が信仰する沙修会と対立する万心教の策略にはまって職場をクビになり、順一は、元町会議員・藤原による様々な揺さぶりに翻弄され続ける。5人が5人とも、どうも思い通りに上手く行かない日々。何をやっても、悪い方へ悪い方へと展開していってしまう。この5人に、果たして明るい明日、そして未来は訪れるのか?お話しは、下巻へと続く。
2012.09.15
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本著のタイトルの「ハルキ」とは、村上春樹さん。 決して、角川書店創業者の息子、角川春樹さんのことではない。 そして、本著のタイトルの「ハルヒ」とは、涼宮ハルヒ。 決して、シンガー・ソングライター、相曽晴日さんのことではない。 本著は、村上春樹さんと涼宮ハルヒという、 一見、何の関係もなさそうに思える二人について述べたもの。 そして本著は、大学院・大学や専門学校向けの教科書出版・販売を行っている 大学教育出版のASシリーズ第5巻として刊行されたものでもある。それ故、村上作品とハルヒ・シリーズについて、様々な視点からしっかりと論じられている。(ただ、同じことを、手を変え品を変え、何度も繰り返して述べ過ぎの感はあるが……)そして、そんな書籍であるが故、村上さんの作品を読んだことがない人や、涼宮ハルヒについて全く知らない人には、その内容を理解することはとても難しい。そして、私はと言えば、『1Q84』はもちろん、村上さんの既刊長編作品は全て読んでいるハルキ・ファン。そんな私の目にとまったのが本著であり、本著を読むために、『涼宮ハルヒの憂鬱』から『涼宮ハルヒの驚愕』までの作品と、『驚愕』の初回限定版付録特製小冊子『涼宮ハルヒの秘話 』を読んだのだった。本著は、堅そうな出版社から刊行された書物にしては、スイスイ読み進めることが出来る。それは、本著が基本的に「涼宮ハルヒ」のファンブックだからである。そう、あくまでもメインはハルヒであり、ハルキはそれに花を添える存在に過ぎない。ハルキのことを論じている部分も、実はハルヒを論じるための伏線に過ぎないのだ。
2012.09.10
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この作品に登場する主要人物の一人、佐山首相は、 決して、多くの人から好感を持たれるようなキャラクターではない。 しかし、その職務・職責が、どれ程重大なのものかは、十分に伝えてくれている。 公人としてではなく、一私人として見れば、本当に気の毒という部分が多々ある。 現実の首相も、このような状況に追い込まれたならば、 間違いなく公務最優先で、私的事情については、ほとんど考慮されないだろう。 もちろん、これは首相に限ったことではなく、 社会人として、ある程度のポジションに立つ者ならば、全てそうなるに違いない。「働く」とは、どういうことか、「人の上に立つ」とは、どういうことか。そんなことを、改めて考えさせられる作品に、本作はなってしまった。こんな読み方をしてしまう人は、そんなにはいないのかも知れないが……。さて、お話しそのものは、サクサク読めて、とても面白かった。さすが五十嵐さんと言ったところである。ただ、この作品に限っては、私自身は事の顛末をかなり早い段階からほぼ予想出来た。ちょっと前に、TVで『浪花少年探偵団』第8話を見ていたからだろう。
2012.09.01
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