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chiko619 @ Re:新参者(09/22) 「新参者」読みました。 東野圭吾さんは、…
kimiki0593 @ 相互リンク 初めまして、人気サイトランキングです。 …
Twist @ こんにちは! 遅ればせながらあけましておめでとうござ…
Twist @ こんにちは! 遅ればせながらあけましておめでとうござ…
Twist @ はじめまして^^ 先ほどこのロングインタビューを読み終え…
2007.03.18
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 そして、少年が小学5年生になった時、
 父は、母の形見である闘病日記を少年に手渡した。
 母の日記は、途中から、
 一人息子である少年に直接語りかける形で書かれており、
 病状が重たくなって、最後の時を迎えようとする頃のページには、
   <けいちゃん、お母さんは天国に行ってからも、
    ずっとけいちゃんのお母さんです>
   <けいちゃん、おかあさんのことをわすれないでください>とあった。


父は少年の手から手紙を取り上げた。
そして、さらにその翌日、
父は、新しい二人目の妻を家に連れてきた。
ハルさんという、太って目の細い30歳前の女性だった。

少年とハルさんの関係は、全く前進しなかった。
そして、ハルさんが来て、ちょうど一年が経った頃、
ハルさんは、少年を呼んで、母の日記の話をし始めた。
その時、ハルさんは言った
  「敬一くん、いまのあんたのお母さんて、誰なん?うちやろ?
   あんた、いつになったら、うちのこと『お母ちゃん』って呼ぶんね?」
  「うちのこと今度から『お母ちゃん』いうて呼んでもらわんと、

  「日記、読みたいんやろ?返してあげるけん、あんたの宝物にしときんさい。
   その代わり、言うてごらん、
   ほら『お母ちゃん』なんよ、うちが、あんたの」

その後も、少年がハルさんのことを「お母ちゃん」と呼ぶことはなかった。

高校を卒業し、大学生として上京する際、

ところが、何も書かれていなかったはずの
残り三分の一ほどのページをめくっていくと、そこには、
  <敬一くん 東京に行ってからも元気でがんばってください。
   困ったことがあったら、いつでも相談してください。
   たまには手紙や電話をください。母>

これに激高した少年。
そして、その激しいやりとりの中、
ハルさんは、日記をビリビリに引き裂いてしまう。

そして、少年は大人になって結婚し、今では二人の小学生の息子がいる。
半年前、文学賞を受賞して、今が「旬」の作家になった。
そして、『我が母を語る』というエッセイを書いた。
その母は、もちろんハルさんではない。
亡くなった母に向けて、今でも生き続けているように書いた。
次の『母親』がキーワードの企画でも、
同じように、ハルさんの存在を無視し続けた。  

「母からの手紙」が虚偽であることを読者に見破られ、
久しぶりに家族と共に帰省した大晦日の夜、
ハルさんと二人きりになった。
その時、ハルさんは、あの日記を手渡す。
ビリビリに引き裂かれたはずの日記。
ハルさんは、それをなんとか修復しようと試みたが、うまくいかず、
結局、一文字ずつ、母の字をまねて書き写したのだった。

残り三分の一程の、何も書いてないはずページをめくっていくと、
最後のページに、こう書いてあった
  <追伸 敬一くん わたしも天国に行ってからも ずっと敬一くんの母親です>

  「風邪ひくよ、お母ちゃん」
  「お母ちゃん、あけましておめでとう」

コタツにもぐり込んだまま横になっているハルさん。
ハルさんに掛けた布団が、小刻みに震えた。

意地を張り合った、似たもの同士(?)の母と子。
でも、このお話の真の立役者は、
何と言っても、主人公の妻・和美だと、私は思います。
本当にベスト・パートナーとして、大活躍でした。ご立派!!





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Last updated  2007.03.18 13:36:25 コメントを書く


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