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Twist @ はじめまして^^ 先ほどこのロングインタビューを読み終え…
2014.10.28
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カテゴリ: 文芸

 筑地神経科クリニック理事長・平井達夫先生との対談、
関川夏央 さんの『「旅先」の人-佐野洋子との思い出』から成る一冊。
 佐野さんが亡くなって半年余で出版されたもの。

 平井先生は、佐野のさん脳に転移したガンを、ガンマナイフで取り除いた主治医。
 対談からは、佐野さんの病状がよく分かる。
 関川さんは、佐野さんと親交のあった小説家・ノンフィクション作家。
 掲載文からは、これまで知らなかった佐野さんの一面が垣間見られる。


他の作品同様、平常心で読み進めることが出来た。
それに対し、「知らなかった」は、かなり衝撃的で異質。
この時期の佐野さんの状態が、如何ほどのものであったかがよく分かる。

『役にたたない日々』 の中で、
「私はガンより神経症の方が何万倍もつらかった」とか、
「私は自律神経失調症とウツ病で、家でウンコ色の芋虫の様にころがっていた」
と書き記されていた佐野さんの実感が、ストレートに伝わってくる。

私にとっては 『シズコさん』 以上にインパクトのある作品だった。

   ***

  あれから、私はいかなる思想も信じないことにした。

  テレビのニュースも用心している。
  報道というものは、何によらず用心している。
  それは私が自分で決めたことかどうか、わからない。
  ファザコンの私は、
  父が「活字は信じるな、人間は活字になると人の話より信用するからだ」と


これは、小田実が西ベルリンのブランデンブルグ門の前に立ち、
その様子をルポしている映像を見て、
佐野さんが、自らの体験を元に「それは嘘です」と記した後、書かれたもの。
そういうものだと思って、報道は見る必要があると思う。

  その前に、自身の大脳に蓄えられた知識を言葉や文字で子孫に伝える努力が必要です。
  また、ちゃんと子どもを残して、ご先祖様から受け継いだDNAを
  松明のように受け継がせておかないとダメだと言うことです。
  このように考えると、自分が死んでもDNAはすでに子孫に受け継がれ、
  自分の大脳に蓄えられたものも子孫に受け継がれており、
  自分が消滅してしまうわけではなく、
  死ですべてが無になるわけではないのです。(p.128)

これは、平井先生との対談で、佐野さんが述べた言葉。
先ほどの「報道」に対する姿勢同様、この点についても私は佐野さんと同意見。
この世に生を受けたからには、「ご先祖様から受け継いだDNAを、
松明のように受け継がせ」ることは、人にとって、最も重要な役割の一つだと思う。

  最近はふたりだけの結婚式もありますが、後が大変だと思います。
  同僚や先輩のところや、親戚に挨拶回りが大変でしょう。
  結婚式もやっぱり昔の人の知恵だなと思います。
  結婚式をやれば、一遍で住むんですよ。
  みんな気が済むんだから、やればいいんです。
  だから、葬式もそれと同じで、ちゃんとやらなきゃだめですよ。
  それ一回で済むんです。(p.138)

これは、対談のなかで、平井先生が述べた言葉。
なるほどなと、考えさせられた。
結婚式もだが、それ以上に葬式について。
やっぱり、ちゃんとやった方がイイのかなと。

  私は奥さんの、主人は止めてほしかったのだと思います、
  という言葉が頭から離れなかった。
  どんなに冷静沈着な人も、頭で考えることと気持の底の底は自分でもわからないのだ。
  その時にならないとわからないのだ。
  奥さんも医者もわからなかったのだ。
  患者の言葉の向こう側の言葉ではないものは、その時が来ないとわからない。
  理性や言葉は圧倒的な現実の前に、そんなに強くないのだ。(p.183)

大きな航空会社のパイロットらしい男は、
初めから告知を希望し、自分の症状を正確に把握していた。
主治医から余命二ヶ月と告げられ、自分でホスピスの資料を集め、そこに決めた。
「最後は家族だけで静かに」と以前から言っていた。

ところが、前の病院では、ちゃんと取っていた食事を、
ホスピスに入った日から、全く取らなくなり、話もしなくなった。
そして、奥さんは佐野さんに言ったのだった。
「主人はお医者さんに止めてほしかったのだと思います。まだそんな必要がないって。」

エッセイ「知らなかった」のなかでも、最も衝撃的な部分の一つ。





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Last updated  2014.10.28 10:55:11 コメントを書く


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