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chiko619 @ Re:新参者(09/22) 「新参者」読みました。 東野圭吾さんは、…
kimiki0593 @ 相互リンク 初めまして、人気サイトランキングです。 …
Twist @ こんにちは! 遅ればせながらあけましておめでとうござ…
Twist @ こんにちは! 遅ればせながらあけましておめでとうござ…
Twist @ はじめまして^^ 先ほどこのロングインタビューを読み終え…
2014.11.26
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カテゴリ: 社会・政治・時事
上巻 の最初の記事は、月刊PLAYBOYの2005年2月号掲載のもの、
 そして、今巻の最後の記事は、2007年10月号掲載分。
 さらに単行本化した際、2010年時点の視点や情報が盛り込まれ、
 最後の「文庫版のための新章」が記されたのが、2012年のこと。

 これは、随分長い時間をかけて完成した作品であり、
 その間に、焦点となっている事件についても、色々な変化が起こった。
 ホリエモンが、その著書 『ネットが……』 で書いていたように、


   ***

  だから、知ちゃんのことを思うとね、
  本当にかわいそうで、すごくいい子だったんです。
  本当に可愛かった。
  あどけないというか、
  彼女と子どもたちも被害者ですよね(p.20)

これは、麻原が足繁く通っていた寿司屋の店主が、著者のインタビューの最後にもらした言葉。
「知ちゃん」とは、麻原の妻・知子のこと。

  麻原彰晃を別な視点から見る。
  それはこの連載の狙いであり、テーマでもある。
  でも作業はなかなかはかどらない。(p.28)


しかし、その人たちが、そう易々と麻原について語ることはない。
一言をもらうために重ねた努力は、並大抵ではない。
そして、何より問題なのは、麻原自身の言葉を聞くことが出来ないということ。

  過剰なセキュリティと治安への幻想を抱きながら、
  アメリカは憎悪と報復を世界中に撒き散らした。

  なぜならいったん発動した危機管理意識は、力で仮想敵を捻じ伏せても決して鎮静はしない。
  敵がいない状態が怖くなるからだ。
  こうして安心を得たいがために新たな仮想敵を作り続けるというとても倒錯した構造に、
  アメリカは嵌ってしまった。
  米国務省の年次報告によれば、9・11から2年後の2003年には
  208件しか起きていなかった世界のテロは、2005年には1万1111件に急増した。
  もちろん、テロの定義が変わったことで件数が増えた可能性はある。
  でもそれを差し引いても、明らかにテロは増えている。
  アメリカが支持するイスラエルという国家の歴史と現状が示すように、
  強い被害者意識は過剰な自衛意識を整合化し、
  容易に他者への加害へと連鎖する。(p.72)

これは、本著の中でも最も重要な意味を持つ記述だと思う。
特に、最後の2行については、よくよく意識しておく必要がある。

  確かに何年か前までは、麻原ぶっ殺してやるって、頭の中はそればっかりでした。
  でも最近は、麻原さんだけを悪い奴にしてそれでよいのだろうかと思うようになってきて。
  例えば事件前の警察の動き、行政の対応、メディアの報道、これら全部ね、
  今は知らない顔をしているけれど、むしろそちらのほうに腹立たしさを感じるんです。
  私はもう今の段階では、麻原さんよりもっと罪深いのは行政だという思いがありますよ
  (p.119)

これは、「オウム真理教被害者の会」代表の永岡弘行氏の言葉。
永岡氏は、息子がオウムに入信したことを知ってから、
同じように子供が入信した家族たちと連絡を取り、この会を結成。
息子が脱会した後も、オウムへの関わりを継続してきた人物。

  実現不可能な世迷いごとに思えても、あるいは現世の法を犯す指示ではあっても、
  これはマハームドラーなのだと整合化してしまう弟子たちの心理メカニズム
  (これは洗脳とは違う)。
  そして最終解脱者であると宣言したがゆえに、
  弟子たちから報告された情報の判断や確認ができなくなるという自己呪縛。
  錯綜するこれらの要求を背景にしながら、
  麻原の内面を慮る側近たちの「過剰な忖度」が発動する。
  こうして麻原が喜びそうな報告を無自覚に捏造してしまうという意識状態に、
  多くの側近たちがいつのまにか嵌っていった。(p.228)

これは全ての組織が持ちうる一面として、非常に興味深いもの。
「最終解脱者」の部分は、様々な呼称に変換可能なものだと思う。

  もちろんこの仮説が正しいとしても、これは明らかな結果論だ。
  しかし2010年2月22日に國松孝次元警視庁長官が口走った
  「(警察当局には)強制捜査が入ることを予測したオウム真理教側が、
  何らかの捜査攪乱作戦に出るのではないかという情報があった」ことが事実なら
  (おそらく事実なのだろう)警察は地下鉄サリン事件の発生を見過ごしただけではなく、
  結果としては、地下鉄サリン事件を誘発したことになる。
  やはりこれはまずい。
  できることならこの経緯については内密にしておきたい。
  國松元長官も含めて警察首脳部がそう考えたとしても、
  組織防衛としては当然だとの見方もできる。
  坂本弁護士一家殺害事件の原因を結果的には作ったTBSや、
  捜査を本気でやらなかったために解明を(やはり結果的に)遅らせた神奈川県警が
  激しく批判された状況も、彼らの教訓になったのかもしれない。
  オウム憎しの世相に萎縮した警察の危機意識を、
  同じ国家機関で人事交流もある検察庁や裁判所は共有する。
  多くの人が注目する麻原法廷でこの事実関係が明るみに出ることだけは、
  絶対に避けねばならない。
  もし裁判を打ち切ることができるなら、こんなに都合のよいことはない。(p.281)

こういうことも考えられるということだが、
裁判の進行や麻原の状態から、その可能性をどの程度のものとしてとらえるべきか?
組織や国家の持ち合わせる危うさと、それを取り囲む社会の共鳴。
これは、この事件だけに限ったことでは、決してない。





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Last updated  2014.11.26 10:57:50 コメントを書く
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