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2005年11月04日

「夏の庭」湯本香樹実（新潮文庫）

(8)

テーマ：最近、読んだ本を教えて！(24154)

カテゴリ：読書感想

6年生（12歳）ころ、自分はもう大人だと思っていた。

大人たちがこそこそ陰で話しているようなことどもも知っていたのは確かだ。しかし、大人になった目から見ればほんの子供に過ぎない。

大人の感性を持っていると思っているから、
出来事は忘れない。
話してくれたことも忘れない。
出会った人も忘れられない。

すべて鮮明に記憶に残る。特技と言っていい若さだ。

「夏の庭」はそんな記憶と成長の「こころの庭」である。

そして3人のおばあさんが登場するが、それぞれの個性が印象的である。
特にもう店じまいする種の専門店のおばあさんが好きだ。

おじいさんと仲良くなる3人の男の子たちという牧歌的な情景ではない。
もうじき死ぬかもしれない老人を観察しようとするのだから、
こわいものみたさ。

でも男の子たちは忘れられぬ夏を過ごす。
『喪われ逝くものと、決して失われぬものとに触れた少年たち』（カバー）
になっていくのである。