やっぱり読書  おいのこぶみ

やっぱり読書 おいのこぶみ

2024年06月23日
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カテゴリ: 読書メモ
​​ ​​ ​​ 辻邦生作品 全六巻――3』 ​​​
昨年から読み継いで、やっと読了した。

この巻は、中編 ​​『 北の岬』 ​​ がメインで、初期の短編8作
「空の王座」「献身」「洪水の終わり」「見知らぬ町にて」
「叢林の果て」「夜」「ある告別」「風塵」


短編それぞれ硬質で端正なのだが、そのなかの1篇「ある告別」が印象的だった。
辻邦生の「時の魔法」ワールドの真髄かなと思う。あるいは始まり?

*****

中年の書き手がギリシャの旅をしている。

旅の始め、ギリシャ行きの船がでるイタリアのブリンディジ港で出会った頑固な老エジプト人。
これから古代ギリシャの跡を見ようとする書き手に

書き手は打ちのめされ、旅の疲れもあり、倒れそうになる。

そして
ギリシャへの船上で元気な若者たち。アテネのパルテノンで、デルフォイのアクロポリスの神殿跡で、
文明の墓碑銘の悲しみをたどっているときに、出会う若者たちの華やぎのすがたが輝くように眩しい。

ひとことふたこと楽しい会話を交わしただけの人々。
若者たちにも老エジプト人にも二度と会えないだろう...。

*****

「旅愁ですか?」って言ってしまえば「なあんだ」ですが、さすがは辻邦夫たるゆえん、しっかりと答えが...。

おそらく大切なことは、最も見事な充実をもって、その《時》を通り過ぎることだ。若さから決定的に、しかも決意をもって、離れることだ。熟した果実がそうであるように、新しいときにみたされるために、若さからきっぱりと遠ざかることだ。ただこのように若さをみたし若さから決定的にはなれることができた人だけが、はじめて若さを永遠の形象としてーーすべての人がそこに来たり、そこをすぎてゆく若さのイデアとしてーー造形することができるにちがいない。

まあ、ちょっとわかりにくいですが、時を大切に味わいましょうということで。

で、このブログのタイトルがなんで 『時の扉』
むかしむかし頃知人に「今、女子大生に人気の作家の」といって貸してくれた
『時の扉』
当時、読んでもさっぱりわからなかったのでありました本の題名です。

ギリシャ 名所 に対する画像結果

ギリシャ 画像 に対する画像結果

画像はネットで、短編「ある告別」の雰囲気があるようで





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最終更新日  2024年06月26日 07時46分10秒
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Re:『時の扉』(06/23)  
todo23 さん
懐かしい名前を見かけ、私も久しぶりに読んでみようかと、我が家の書庫に行って見たら、小口が見事に茶色になった『安土往還記』などありました。奥付を見たら昭和47年です。あの頃の文庫本は文字は小さく余白は狭く、さほど強い老眼では無いものの流石に厳しいかな。
まあ、一度トライしてみましょう。
ちなみに「夫」ではなく「生」ですよね。 (2024年06月24日 17時12分46秒)

Re[1]:『時の扉』(06/23)  
todo23さんへ

邦生→邦生
ありがとうございました。

そう、昭和の本はどうして印刷が薄いのでしょうね。
文字の小さいのも。この本も苦労して読みました。

それを苦労せずに読めた時代には、このように消化できなかったということです。

嫌いなんだけど、そろそろデジタル本かな、なんてよぎりました。
(2024年06月26日 07時58分18秒)

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