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木曜日(15日)に、寒川神社に「第55回相模薪能」を観に参りました。「相模薪能」は、護国の英霊への慰霊と世界の恒久平和を祈念することを目的として、毎年、「終戦記念日」の8月15日に開催されます。昨年は、天候不良で開催されなかったので、今回は2年ぶりの開催となりました。例年通り、厳かな奉告祭、火入れ式、僉議(せんぎ・開催宣言)と儀式が進み、薪能が始まりました。半能「春日龍神 龍女之舞」。京都の栂尾(とがのお)の僧・明惠上人(ワキ・殿田謙吉)は、仏法を極めようと唐に渡り、そこから天竺に向かうこと志し、暇乞いに春日大社に参詣します。そこで出会った神官に、「危険を冒して渡天(中国から天竺に向かうこと)する必要はない。ここで、天竺五台山を拝ませます」と言われます。(ここまでは前半なので、半能の今回は上演なしです。)その夜、上人が経を読み待っていると、猿沢の池より龍女(シテツレ・中森健之介)が現れ、舞いを待っていると、池が波立ち、春日の野山は金色の世界となり、大龍神(シテ・観世喜正)が現れます。天竺五台山の様子を上人に見せ、渡天の必要がないこと促し、再び池に消えてゆきます。数年前に、久しぶりにワキの殿田謙吉さんを拝見したときに、痩せられて御病気をしたのかなと驚いたことがありましたが、相変わらず、重厚な演技で、勤められました。従僧のワキツレの渡部葵さん。若くてイケメン。国立能楽堂能楽研修生の第11期生だそうです。楽しみ!龍女を演じられた中森健之介さんは、中森貫太さんの息子さんですね。どうみても、女性にしか見えないたおやかな龍女でした。観世喜正さんの龍神は、黄金色の装束で、それが、夕日と薪のかがり火に照らされ、金色に輝き、本当に美しい舞いでした。狂言「張蛸(はりだこ)」。主人(野村萬斎)が来客に張蛸を振舞いたいと太郎冠者(中村修一)に命じて都に買いに行かせるのですが、当の太郎冠者は張蛸が何のなのか知らないのです。都に着き、声を掛けてきた男(すっぱ・深田博治)の巧みな言葉に騙され、「張り太鼓」が張蛸だと思わされ、太鼓を買わされてしまいます。喜びいさんで帰り、早速主人に太鼓を見せるのですが、当然のごとく、不要な太鼓を買ってきたことで、主人は怒り太郎冠者を追い出してしまいます。「蛸ならタコと最初から言ってくれればいいのに…」と思う太郎冠者ですが…。しかし、太鼓を売った男が、主人というものは気まぐれだから、機嫌の悪い時にはこれを謡いなさいと教えてくれた囃子を謡ってみると、それを聴いた主人は機嫌を直してくれます。張蛸とは、竹ひごで張り広げて乾燥させた蛸の干し物で縁起の良い食材だそうです。「引っ張りだこ」の語源ともなっているものだそうです。この狂言は、珍しい狂言で、今回この「相模薪能」が、55周年の節目の年であることから、萬斎さんが選曲されたそうです。私も、初見の狂言でした。能「葵上」。光源氏の妻の左大臣の娘・葵上(病床の葵上は、舞台上に1枚の装束としておかれ、登場しません)は、物の怪に悩まされていました。物の怪の正体を知るため、巫女(ワキツレ・石井寛人)が口寄せ(霊を呼ぶ術)を行います。すると、高貴な女性の姿が現れて、葵上に辱めを受けた(賀茂祭での車争い事件)六条御息所の怨霊(シテ・中森貫太)と名乗り、自らの抱える辛い思いを吐露し始めます。怨霊は、葵上の病床に迫って責めこみ、魂を抜きとるべく、呪いの言葉を吐き捨てて姿を消します。臣下(ワキツレ・則久英志)は霊退治のため、比叡山より修験道・横川聖(ワキ・殿田謙吉)を呼び出します。横川聖が祈祷を行うと鬼女の姿となった御息所の怨霊が現れて葵上を害しようとしますが、法力の前に力尽き、消え失せます。今年のNHK大河「光る君へ」に合わせたタイムリーな演目でした。上演頻度が高い曲なので、何度か観ていますが、久しぶりに拝見いたしました。迫力があって、面白かった~です。今年は、天気にも恵まれ、良い会でした。
2024年08月17日
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AM9:33出発です。横浜 AM10:35 東海道線に乗り換えです。AM11:09 茅ヶ崎 相模線に乗ります。AM11:25 寒川神社に着きました。立派な鳥居です。寒川神社は、第21代天皇の雄略天皇の御代(457~479年)に創建されたといわれる神社で、1600年もの歴史があるそうです。PM1:00 木陰で涼みながら、開演時間を待ちます。PM5:30 薪能の開演です。PM8:10 帰りの参道です。PM8:39 茅ヶ崎 湘南新宿ライン快速で帰ります。PM9:20 武蔵小杉PM10:00 無事に帰宅。好天に恵れた心地よい夏の薪能の一日でした。
2024年08月16日
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日曜日に、大田区民プラザに、「万作・萬斎 狂言の会」を観に参りました。まずは、高野和憲さんの解説から。今日の番組をわかりやすく、面白く解説してくださいました。深田博治さんの一般参加者をいれてのワークショップ。名乗り、すり足、そして生垣をのこぎりで切る所作などをお稽古しました。小舞「貝づくし」。飯田豪飯田豪さんって、こんなに舞いがお上手でしたっけ?先日も拝見したはずなんですが…。からだの中心線がすっきりして、どんな所作も滑らかで、体のながれがとぎれない~。これから、楽しみに拝見します。狂言「鐘の音」。主人(福田成生)は、息子の元服に、黄金作りの太刀を作ってやろうと考え、金の値段を調べさせるために太郎冠者を刀剣屋が多い鎌倉に遣わすことにします。ところが主人は、「金(かね)の値(ね)を聞いてこい」としか言わなかったので、太郎冠者は「鐘の音」を聴いてくると思いこんで鎌倉に向かいます。そして鎌倉の寺々を回って鐘の音を聴き、それを主人に報告します。当然、主人には叱られて…。この曲は、太郎冠者の一人芝居。4つの寺を巡り聴く鐘の音~全部、声で表現します。万作さんの「鐘の音」、久しぶりに拝見いたしました。90歳をこえられても、まだまだ。さすがの太郎冠者でした。狂言「小傘(こがらかさ)」。田舎者(石田幸雄)が村に草堂をを建立したのですが、堂守がいないので街道に出て探していると、僧(野村萬斎)と新発意(出家してまもない修行中の僧・野村裕基)がやってきます。すぐにスカウトして連れて帰ります。しかしこの二人、実は食い詰めた博徒でした。僧形をしていれば、なんとか食いつなげるのでは~と思って僧になったのでした。法事が始まると、僧は賭場で聞きおぼえた傘の小歌をお経のように唱えて、参詣人(高野和憲、深田博治、飯田豪、月崎治夫)をごまかし、皆が法悦に浸っていつうちに、新発意に施物を盗ませます。今回も、傘の小歌をお経のように唱えるのは、お見事。やはり、萬斎さんの狂言はいいいいなあ~と思わせていただいたひとときでした。
2024年07月08日
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土曜日に、宝生能楽堂に「野村万作師 文化勲章受章記念狂言会~狂言、舞歌と講演~」を観に参りました。野村万作さんは、長く狂言の芸術性と魅力を国内外に発信し、発展と振興に尽力してきたことが評価され、昨年秋、文化勲章を受賞されました。そのお祝いの会が、万作さんが満93歳を迎えられた昨日、一門の狂言師により開催されました。狂言「しびり」。和泉(現在の大阪府)の堺へ酒の肴を買いに行くよう主人(野村萬斎)から言いつけられた太郎冠者(三藤なつ葉)は、足が痺れていけないと嘘をつきます。太郎冠者の嘘を見抜いた主人は、それならば、叔父からの御馳走の招待には連れて行けないと言い出します。御馳走にはついていきたい太郎冠者は、親譲りの痺れなので、言い聞かせれば治すことができると言います。太郎冠者を演じた万作さんのお孫さんの三藤なつ葉さん、大きくなりましたね。台詞回しもしっかりしてますね。連吟「鳴子」。中村修一、内藤連小舞「菊の舞」 福田成生 「蝉」 飯田豪 「貝尽し」 岡聡史照 「海老救川」月崎晴夫語「元日之語」 破石澄元 「二千石」 破石普照 小舞「番匠屋」 竹山悠樹 「名取川」 高野和憲 「田植」 深田博治 「八島 後」野村遼太 「景清 前」石田幸雄 「道明寺」 野村太一郎語「奈須輿市語」 野村裕基大曲です。裕基君、サスガです。お声が萬斎さんに似ていますね。 狂言「川上」。吉野の里に住む盲目の夫(野村万作)が、霊験あらたかという川上の地蔵に参詣します。参籠の甲斐があって、早速目が開くのですが、地蔵のお告げによると「連れ添う妻が悪縁なので離別せよ」と。それを聞いた妻(野村萬斎)は腹を立て、地蔵をののしり、絶対に別れないと言い張ります。 やはり、お二人で演じる「川上」はいいですね。最後に、夫は、妻との生活を受け入れたことで、再び目が見えなくなり、そんな夫の手を取り、2人は歩み去ってゆきます。そのお二人の後ろ姿が、余韻を残して、何度見ても感動します。講演「来し方を語る」 野村万作最後は、万作さんの90年に及ぶ芸の道程を語られました。万作さんは、歌舞伎をはじめとして、演劇にお詳しく、本当にいろいろな名優の方たちの舞台を観てらして、そこで受けられた感銘や感動が、万作さんのなかに息づいていられるのだと思いました。万作さんが語られていましたが、万作さんのおじいさまやお父様の時代にはこんな会は開けなかったと。万作さんの年代の狂言師の方たちの努力で、狂言への関心も高まり、これだけの人数をそろえた一門ができ、開催できた会だと思います。このような会は、なかなか観られないと思いますので、今回、観劇できて本当によかったと思います。
2024年06月23日
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野村萬斎さんが、「第20回 坪内逍遥大賞」を受賞なさるそうです。「坪内逍遥大賞」は、日本近代文学の先駆者としてしられる坪内逍遥の出身地・岐阜県美濃加茂市が優れた演劇人を表彰するものだそうです。 おめでとうございます!
2024年05月22日
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昨日、国立能楽堂に「狂言ござる乃座 69th」を観に参りました。曲は、狂言「八幡前」・「呂蓮」・「三人片輪」。狂言「八幡前」。石清水八幡宮の下に住む長者(石田幸雄)が、一芸に秀でた者を娘の聟にしたいと高札を立てます。それを見た若者(野村太一郎)は、我こそはと思い立つのですが、肝心の芸が何もないんです。付け焼刃でもなんとかしようと、知り合い(内藤連)のところに相談に行くのですが、若者は、本当に何もできない。とりあえず、弓の名人という触れ込みで、長者の家に乗り込み、わざと弓を射損じ、そこで歌を詠み、さらに歌の達人にしようということにするのですが…、困ったことに、若者は和歌を覚えられないのです。それで、知り合いがカンニングできるようにと、ついて行くことにしたのですが…。狂言「呂蓮」。旅の僧(野村萬斎)がある家に一夜の宿を求めます。宋が後生(死後の世界の安楽)を説くうちに、宿の主人(高野和憲)は、自分も出家したいと言い出すのです。僧は、考え直すようにというのですが、主人は妻や親類にも了承を得ているというので、希望を叶えてやることにします。僧が主人の髪を剃り僧形に整えると、次には法名を付けて欲しいと頼まれ、なんとかつけるのですが…。が、そこにやってきた妻は、勝手に僧形になった夫を見て、かんかんに。夫は、僧に言われて仕方なく出家したと言い訳するのです。 久しぶりの生萬斎さん!!狂言「三人片輪」。体の不自由な人を召し抱えようとする有徳人(深田博治)の元へ、三人の博打打(野村万作、野村萬斎、野村裕基)がやってきます。無一文の三人は、それぞれ、座頭、いざり、唖と巧みに装い、雇われることになります。有徳人がそれぞれの蔵の番を言いつけて外出すると、三人は互いに正体を現し、なんと酒盛りを始めてしまうのです。三人が謡えや舞えやと騒いでいるところに、有徳人が戻ってくるですが。 三人片輪を演じたのは、親子三代、万作さん、萬斎さん、裕基君。 ここ何年かは、親子三代でいろいろと演じることが多いですが、万作さんは、すでに齢90歳を超えていらっしゃいます。 それにしては、見事な舞いでしたが。 それと思うと、この曲をこういう形で演じるのは、とても貴重だったかも。 今まで見た中でも、一番面白い「三人片輪」でした。
2024年03月30日
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日曜日に、国立能楽堂に「狂言ござる乃座 68th」を観に参りました。この日の番組は、小舞「花の袖」・「海道下り」狂言「蟹山伏」・「武悪」舞囃子「槃渉楽」狂言「財宝」小舞「花の袖」 三藤なつ葉能「泰山府君」の一節で、天女が花の一枝を折り取って天上へ去る下りを表現した小舞。万作さんのお孫さんのなつ葉ちゃんが舞いました。小舞「海道下り」 金沢桂舟京都から不破の関まで東海道を下る道行を、写実な所作で表現する小舞。狂言「蟹山伏」。帰国途中の山伏(石田幸雄)と強力(深田博治)の前に、突然恐ろしげなもの(高野和憲)が現れます。ある物の精だというのですが、金剛杖で打ちかかった強力は、逆にはさみで耳を噛まれてしまいます。強力を助けようと、山伏は祈祷を始めるのですが…。だいたい、狂言に出てくる山伏さんは、あんまり念力能力とかないんですよね。狂言「武悪」家来である武悪(野村萬斎)の不奉公に怒った主人(野村万作)は、武悪を打ち取るように太郎冠者(野村裕基)に命じます。~狂言では珍しく緊迫した雰囲気で始まります~武悪を追い詰める太郎冠者ですが、武悪を討つことができず、武悪を逃がし、主人には討ったと嘘の報告をします。主人は、せめて武悪を弔おうと東山に向かうのですが、そこで命が助かったお礼参りに来た武悪と鉢合わせしてしまいます。万作さん、萬斎さん、裕基君の三世代での共演は、初めて拝見いたしました。素囃子「盤渉楽(ばんしきがく)」能「邯鄲」や「天鼓」などの唐人や仙人が舞う場面で奏される、舞楽を模したとされる華やかな演奏の曲。狂言「財宝」元服する三人の孫(野村太一郎、内藤連、中村修一)が、財宝という名の祖父(野村萬斎)に烏帽子親として名を付けるように頼みにきます。祖父は、孫たちに目出度い名をつけます。以前、万作さんの祖父役で拝見したと思いますが、萬斎さんのシテでは、初めて拝見いたしました。萬斎さんもこんな役をおやりになる歳になられたのですね。
2023年10月11日
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本日、寒川神社で開催予定だった「戦没者慰霊第54回相模薪能」は、中止になりました。台風の影響が心配されるため、一昨日、中止が発表されました。3ヶ月ぶりの生萬斎さんだったのに…残念です。
2023年08月15日
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「米国アカデミー賞公認・国際映画短編祭ショートショートフィルムフェスティバル&アジア2023」で、野村萬斎さんの初監督作品「虎の洞窟」(窪田正孝主演)が、観客が最も支持した作品に与えられるオーディエンスアワードを受賞しました。おめでとうございます。
2023年07月16日
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面をつけることは、視野のうちから自分自身の姿を消すことである。ー土屋恵一郎ー能の演者は、大地に確(しか)と立つ自らの身体を失って、観客の視覚にさらされ、その中を心もとなく漂うばかりになる。こうして、受動的で不安定な状態に置かれた演者は、、「身体感覚の浮遊をしっかり支える」べく、腰を入れ、身を前に傾ける。生とは受難の連続。それを「押し返していく」レッスンとしての舞いー朝日新聞「折々のことば」よりー
2023年06月25日
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土曜日に、小雨降る中、横浜能楽堂に、『第23回 よこはま「万作・萬斎の会」』を観に参りました。石田幸雄さんの丁寧な番組解説から始まりました。この日の番組は、狂言「子盗人」、「孫聟」。狂言「子盗人(こぬすびと)」。宇徳人(資産家、野村太一郎)の家。乳母(飯田豪)が自分の用事を片付けるために、赤子(お人形です!)を奥座敷に置きにきました。~直接床に寝かせちゃうの? 小袖はかけてあげたけど。すると、そこへなぜか博奕打ちが登場。負けが込んで家財一切を失ってしまったので、何か金目の物を盗みにきたのですね。屋敷の裏手から忍び込んで座敷に上がると赤子が寝ています。あまりの可愛らしさに抱き上げてあやすうちに夢中になり、思わず物音を立ててしまい、乳母が気付かれしまい、宇徳人にも知られてしまいます。萬斎さんの赤ちゃんのあやし方がかわいい~。初見の狂言でした。ほとんど、博奕打ちの一人芝居なんですね。ほのぼの感のある狂言でした。そして、よこはまの会は、毎回楽しみにしている野村万作さんの「狂言芸話」があります。今回は、万作さんのお父さまの、人間国宝・六世野村万蔵さんの能面打ちのお話でした。廃藩置県になって大名のお抱えだった能楽師の方たちが苦労する中、野村万蔵さんのお父様の初世野村萬斎さんも、金沢から東京に出てこられ、いろいろな職業に就きながら苦労なさったようで、そのこともあり、万蔵さんには、家計を助けるため能面打ちの技術を身につけるように~ということだったそうです。万蔵さんが打たれた能面をお持ちになり見せてくださいました。美しい面でした。そして、とんでもない秘話を。万蔵さんが名曲「花子」を演じられた時に、万作さんは後見だったそうですが、ナント、その公演で、万蔵さんは、熱演のあまり、入れ歯が外れて舞台に落としてしまったそうで…。さらに、退場する時に、その入れ歯を蹴飛ばした~。「花子」って、結構、色っぽい曲ですよねえ。萬斎さんの「花子」です。能面の繋がりでアメリカの船上でショーダンスを踊るダンサーと知り合い、その方がご自宅に来たときに、そのダンサーに、ナント、万作さんがチャチャチャを習われたそうです。万作さんがチャチャチャを踊るところ、拝見したかったなあ。また、来年、万作さんは、「三番叟」を舞われるそうで~92歳ですよすごい~、そのために新しい黒式尉(こくしきじょう)の面を注文しているそうです。楽しみ狂言「孫聟(まごむこ)」。最上吉日の今日、舅(石田幸雄)宅では、聟(野村裕基)入りが予定されています。~聟入りとは、結婚後に聟(娘の夫)が、初めて舅宅を訪れ、親子の契りを交わす儀式だそうです。舅は、太郎冠者(深田博治)に準備の様子を確かめ、さらに、何かつけて出しゃばる祖父(舅の父、野村万作)を聟入りに参加させない方法について相談します。それを聞きつけた祖父が現れます。舅はなんとか祖父をなだめすかして、隠居家で待っているようにと祖父を戻します。やがて聟が到着し、舅を挨拶を交わしていると、再び祖父が現れ、仕切りだします。仕切りたがり、話がくどい…一般的なおじいちゃんですね。横浜能楽堂は、明治時代に根岸の前田斉泰邸に建てられ、その後、染井の松平頼寿邸に移築されたものを、1996年に、さらに横浜に移築したもので、関東では最古の能舞台。来年、改修工事をするそうで、「第24回よこはま万作・萬斎の会」(R6.4/29)は、「横浜にぎわい座」というところで開催するそうです。
2023年05月15日
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月曜日に、世田谷パブリックシアターに、「ハムレット」を観に参りました。「ハムレット」。作・シェイクスピア、翻訳・河井祥一郎、構成演出・野村萬斎。20年前に、世田谷パブリックシアターで、河井祥一郎さんの翻訳、ジョナサン・ケント演出で、野村萬斎さんが主役のハムレットを演じられました。あの時は、「男優だけで演じるハムレット」ということで、王妃・ガートルートと、オフィーリアも男性が演じました。今回は、萬斎さんは、劇中にも出られてはいますが、演出を手掛け、主役のハムレットは息子の野村裕基さんが演じられました。デンマーク王が急死しました。王の弟クローディアス(野村萬斎)は、前王の王妃・ガートルート(若村麻由美)と結婚し、後継者としてデンマークの王位に就きました。父の死と母親の早すぎる再婚とで憂いに悩むハムレット(野村裕基)は、従臣から亡き王の亡霊(野村萬斎)が夜な夜な城壁に現れることを聞き出します。父の亡霊に逢ったハムレットは、父の死が、弟クローディアスの毒殺によるものだったことを知らされます。復讐を誓ったハムレットは、狂気を装うのですが、宰相ポローニアス(村田雄浩)は、その原因を娘オフィーリア(藤間爽子)への恋だと察し、オフィーリアにハムレットの様子を探らせるのですが、ハムレットは、オフィーリアを無下に扱います。ここが有名な~尼寺に行け~のシーンですね。そして、悲劇は悲劇を生み、悲しい結末へ。オフィーリアは溺死してしまう。衣装は、かなりの和テイストが取り入れられ、演出の中には、歌舞伎や文楽も取りいれられました。文楽テイストで、前王が殺され、前王の弟と前王の王妃が王位に就く様子が演じられるのですが、これがかなりエロい。当然、萬斎さんと若村麻由美さんのラブシーンぽい?演出もありました。~これは、あんまり気に入らなかったですが…。さすが、萬斎さんの演出~、正直、萬斎さんがハムレット演じられた作品より面白かったと思います。弟王の萬斎さんも、前王の幽霊~能の中の亡霊のような雰囲気~の萬斎さんもよかったですし、そして、なによりも、ハムレット役の裕基君の演技が素晴らしかったです。ここまで演じるとは思わなかった~なあ…です。20年前の萬斎さんが出演されたNHKのドキュメントで、ハムレットの扮装で血のりをつけた萬斎さんを見て、「パパが死んじゃうのいやだ~」と泣いていた裕基君を思い出してしまい…私は、ばあちゃんか…感無量でした。
2023年03月08日
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昨日は、宝生能楽堂に「第101回 野村狂言座」を観に参りました。昨日の番組は、「三番叟」、狂言「富士松」・「不腹立」・「三人片輪」。「三番叟 田歌節」。三番叟・野村萬斎、千歳・野村裕基、笛・竹市学、大鼓・亀井広忠、小鼓頭取・鵜澤洋太郎、脇鼓・清水和音、飯富孔明江戸時代には、4日間の勧進能ということで、各日ごとに「翁」の演じ方を変えていたそうです。それで、今回は、木曜日は「三上山」、金曜日は「田歌節」と小書を変えて演じられました。昨日の「田歌節」は、三番叟が拍子にかかって何度も千歳に呼びかけ、千歳も何度もそれに応えるとい趣向でした。萬斎さんの「三番叟」、久しぶり~2,3年観ていなかった~に拝見いたしました。相変わらずのキレ~!!でした。そして、今回は、ナント、烏飛びが5回という趣向でした。今回は、萬斎さんが解説をなさいました。萬斎さんの解説を聞くのも久しぶり~でした。狂言「富士松」。内緒で旅に出かけた太郎冠者(野村万作)を叱ろうと、主人(野村太一郎)は、太郎冠者の家を訪れます。厳しく詰め寄る主人でしたが、富士詣に行ったと聞き、許すことにします。主人は、太郎冠者が持ち帰った富士松を欲しがるのですが、預かり物だからダメだと断られます。あきらめて帰ろうとする主人を太郎冠者は引き留め、富士の神酒だと言って酒を振る舞います。主人は、連歌の付けあいをして、うまく付けられなかったら松をもらうと勝手に決めつけ、二人は付けあいを始めます。狂言「不腹立」。在所にお堂を建てた施主たち(内藤連、中村修一)が、堂守になってくれる僧を探しに街道へとやってきます。そこへ、最近出家したばかりでろくに経も読めない俄坊主(石田幸雄)が通りかかり、2人は僧に声を掛けます。俄坊主は、あらゆる経が読めると豪語するのですが、名を尋ねられて「不立腹の正直坊」と答え、2人に怪しまれます。「不腹立」は、解説で萬斎さんが漢文読みで、「はらたてず」と読むとおっしゃってました。私には、初見の狂言でした。もう、20年も狂言を見てきたのですが、まだまだ初見のものもあるのですねえ。上演頻度が少ないと、萬斎さんもおっしゃっていましたが。狂言「三人片輪」。宇徳人(お金持ち・飯田豪)が、身体の不自由な人を雇おうと高札(人材募集告知板ですかねえ)を立てます。それを見てやってきた、博奕で負けて生活が立ち行かなくなった男(高野和憲)は、座頭のふりをします。次にやってきた博奕打(竹山悠樹)は躄(いざり、膝や尻を地につけたままで進む足の悪い人)のふり、そして、次の博奕打(深田博治)は、唖(おし)のふりをしてやとってもらいます。宇徳人は、三人にそれぞれ絹布を納めた軽物蔵、酒蔵、銭蔵を預けて外出します。顔を合わせた博奕打三人は、お互い知り合いだとわかり、大喜び。早速、酒蔵を開けて、ふりをするのを忘れて、にぎやかに酒盛りを始めます。帰ってきた主人に見つけられた三人はふりを始めるのですが、慌てていたので、ふりを取り違えてしまいます。この狂言は、現在では不適切とされる語句が出てきたりしているので、やはり、上演頻度が少ないそうです。私も、2回くらいしか見たことがないです。最後に、3人があっけらかんとして「ご許されませ」と言って逃げてゆきます。これは、狂言の定番の終わり方の一つではありますが、この「なんちゃって~」という終わり方はいいよなと、いつも思います。コロナもウクライナ戦争もなんちゃって~って、早く終われるといいなと思いますが。
2023年01月14日
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昨日は、国立能楽堂に、「万作を観る会 野村万之介十三回忌追善」を観に参りました。今回の会は、2010年に亡くなられた野村万作さんの弟の野村万之介さんの十三回忌追善の会ということでした。十三回忌…もうそんなになるのですねえ。万之介さんは、型にとらわれない、鷹揚で自由奔放な芸風と言われていましたが、あのとぼけたような飄々とした雰囲気~好きだったなあ。昨日の番組は、小舞「祐善」・「蝉」、狂言「木六駄」・「彦市ばなし」。小舞「祐善」野村太一郎。狂言「祐善」の中に出てくる舞いで、旅の僧の前に傘張りの祐善の幽霊が現れて生前のありさまを語って供養を頼むというもので、謡いも傘尽くしで、傘を持って舞われました。 太一郎さんの舞いは、力強いですね。 小舞「蝉」野村裕基。狂言「蝉」の中の舞いで、旅の僧の前に蝉に幽霊が現れて、生前烏に食い殺され、今は地獄で山蜘蛛や梟の餌食となって苦しんでいましたが、僧によって成仏でき、つくづく法師になれたと喜びます。裕基さんは、大曲「釣狐」の披露を終えられたせいか、一段と謡いのお声も美しく、舞いもきれが増したような気がいたしました。狂言「木六駄」。奥丹波の富裕な主人(野村遼太)が、京都の伯父(石田幸雄)の歳暮の薪と炭を届けようと、太郎冠者(飲む万作)に、十二匹の牛に荷を担わせての運搬を命じます。太郎冠者は、一人で十二匹の牛を引き、さらに伯父に渡す酒まで持たされます。雪深い山の中を、牛追い声をかけながら進みます。牛の荷に積もった雪を払ってやったり、崖から落ちそうな牛を引き戻してやったり。~能楽堂の舞台なので、もちろん牛などいなくて、鞭1本で、十二匹もの牛を追っていくという演技を見せるのが見せどころ、さすがに万作さんです。峠の茶屋に着いたところで一休み。ですが、峠の茶屋ではあいにく酒を切らしていて…しかたなく?太郎冠者は、主人から伯父への歳暮にと預けられた樽酒を開けてしまい、茶屋の主人(中村修一)とともに酒宴に。ほぼほぼ飲んでしまった樽酒には水を詰めて、めんどくさくなって、薪を積んだ牛6匹を茶屋に置いて。京都の伯父の前での太郎冠者の言い訳~これがこの狂言の題名の由来。万作さんの「木六駄」は、何回も拝見しましたが、やはりすごいな。もう91歳になられたのですね。狂言「彦市ばなし」。劇作家の木下順二さんが熊本弁で書いた民話劇を狂言にした昭和の新作。嘘つきの名人の彦市(深田博治)が、川に釣りに来て、釣り竿を遠眼鏡だと嘘をついて天狗の子(高野和憲)から、隠れ蓑を騙し取ります。そこへ、民情視察に来た殿様(野村萬斎)に何をしているかと尋ねられ、河童を釣っているといい、殿様は、是非見物したいというのですが、えさにする鯨の肉がないので、欲しいと言い出します。そして、殿様は鯨を運んできます。この運ばれてくる鯨、いつも思うんですが、可愛いですよね。切り身にもなるすぐれものです。彦市は、大量の鯨肉を、殿様からだまし取ったのですが、陰で見ていた天狗の子に全部取られてしまいます。さらに、せっかく手に入れた隠れ蓑は、古くてぼろかったのか奥さんに間違って燃やされてしまい、しかたなく、その灰を体に塗って酒を盗み飲み、川岸で寝ていた彦市を天狗の子が見つけ、川に放り込んで。そして、天狗の子も川に落ちて、川の中でも格闘に…そこへ殿様もやってきて…。最後は本当に面白い場面です。能楽堂でも泳げるんだな~(笑)と思います。萬斎さんの熊本弁のお殿様のキャラも可愛いです。良い会でした。
2022年11月28日
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日曜日に、国立能楽堂に「狂言ござる乃座 66th」を観にまいりました。昨日の番組は、狂言「重喜」、「空腕」、「仁王」。狂言「重喜」。住持(野村萬斎)が弟子の若い僧の重喜(三藤なつ葉)に法要に出かける準備を命じます。そして住持は、重喜に頭を剃らせることにするのですが、剃刀の切れ味を試しているときに、住持にぶつかって、「弟子七尺去って師の影を踏まず」と戒められます。それで、長刀を使って剃ろうとするのですが、剃刀を住持の眼前に振り下ろして、鼻の先をそいでしまいます。重喜の役は、子方が務めます。三藤なつ葉ちゃんは、萬斎さんの姪ですね。しっかりと役作りをしていましたね、さすがです。狂言「空腕」。ある夕方、主人(野村万作)の命で使いに出かけた太郎冠者(野村萬斎)。実は太郎冠者は、とても臆病者で、物陰を追剥と思い込み、怯えて主人から借りた太刀を差し出し命乞いをしたりします。その様子を見ていた主人は腹を立て、他党冠者から太刀を取り上げて先に屋敷に戻ります。恐くて気絶していた太郎冠者は、目を覚まして帰宅しますが、太刀を亡くした顛末を武勇談のようにして語るのです。「空腕」は、「空威張り」や「空自慢」などと同じ使い方で「空・腕自慢」という意味だそうです。暗い夜道を一人で使いに出かけ、真っ暗な道への恐怖、自分が切られたと思い冥途へ無事に行けるように見極めるところ、死んでいないとわかってからの開き直り、主人へ武勇談のような言い訳~。殆ど萬斎さんの一人芝居。今回は、2曲続けてのご出演、お疲れ様でした。狂言「仁王」。負け続け、財産も失くした博打打(野村裕基)。知人(石田幸雄)から、仁王の扮装をして信心深い人々に仁王が天下ったと触れ回り、供え物を騙し取ることを提案されます。博打打は早速仁王に化けて待っていると、次から次に参詣人がやってきて、願をかけては供え物を置いてゆきます。次第に博打打は味をしめるのですが…。萬斎さんが博奕打ちを演じられていましたが、裕基君が演じるようになったのですねえ。
2022年11月02日
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今日は、千駄ヶ谷に行ってきました。美しい銀杏並木の通りですが、残念ながら、色づくのはまだ先のようです。
2022年10月30日
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月曜日(8月15日)に、寒川神社に「第53回 相模薪能」を観に参りました。コロナ禍で2020年は開催中止、昨年は台風の影響で当日中止になりましたので、今年は、3年ぶりの開催です。今年は天候にも恵まれ、よい薪能になりました。今年の番組は、能「箙」、狂言「墨塗」、能「巻絹」。能「箙」。旅の僧(ワキ-則久英志)は、摂津の国の生田川で梅を眺める男(シテ・観世喜正)と出会い、源平の合戦の折、梶原景季(シテ・観世喜正)が、この梅を箙に差して戦った話を聞きます。男は、合戦の様を語る内に、景季の幽霊であると明かします。一ノ谷合戦での雄姿を見せ、僧に自分の供養を頼むと姿を消します。「箙」の主人公の梶原景季は、現在NHKの大河ドラマ「鎌倉殿13人」で中村獅童さんが演じた梶原景時の嫡子。父の梶原景時とともに、一ノ谷の合戦では、勇猛に戦いました。梶原景時は、石橋山の合戦で、大敗して敗走して洞窟の中に隠れ潜んでいた源頼朝を見逃して命を救い、後に家臣となって頼朝から厚い信頼を得た武士。この寒川神社のある寒川町には、梶原氏の館址、そして「箙の梅」があるそうです。館の広さは、南北に500m、東西に300m、まさに東京ドーム約2個分に相当する広大なものだったそうです。観世喜正さんが舞った合戦の舞いは、勇猛ですてきでした。狂言「墨塗」。訴訟のため、永らく都に滞在していた田舎大名(野村萬斎)は、訴訟も無事に済み、近々帰郷することになりました。そこで、在京中に親しくなった女(中村修一)のもとへ、太郎冠者(内藤連)を伴って、別れの挨拶に立ち寄ることに。暇乞いの事実を知らされた女は、別れを惜しんで泣き始めます。大げさに泣き始める女ですが、実は、茶碗の水を目につけて、涙を流すふりをしていたのでした。それに気づいた太郎冠者は、こっそり、茶碗の水を墨の入った水に取り替えてしまいます。墨を塗つた女の顔は、真っ黒に…。久しぶりに観た「墨塗」でした。面白かったですが…。この狂言、最後は、大名も墨を塗られてしまうんですね。萬斎さんお顔も墨に…。能「巻絹」。勅命によって熊野本宮へ絹を運んでいた都の男(シテツレ・中森健之介)、本宮に到着後、境内に祀られていた音無天神へ参詣し、和歌を神に捧げます。その後、彼は絹を届けに向かうのですが、納める期日はとうに過ぎていました。勅使(ワキ・殿田謙吉)が懲罰として男を縛り上げると、巫女(シテ・中森貫太)が現れ、神が男の歌を受納したのだからと、その男を放すように言います。神託を疑う勅使に対して、巫女は男に歌の上の句を詠ませた上で、自らその下の句を言い当て、神託の正しさを証明して男を釈放します。巫女は、口に出さずとも心に念じれば、神はそれを受納すると述べると、神仏の道を体現する和歌の徳を讃えて舞います。やがて巫女は神の帰還を願うべく神楽を奉納しますが、熊野の神々が次々と巫女に憑依し、再び神懸かりとなって激しく舞います。面をつけて舞う姿は、本当に女性の巫女に見えてしまうのがすごいなあと、いつも思います。
2022年08月17日
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昨日、銀座の観世能楽堂に「鬼滅の刃」を観に参りました。観世能楽堂は、以前は、渋谷の松濤にありましたが、建物の老朽化に伴い、2017年に銀座6丁目のGINZA SIXの地下3階に移転。私は、銀座に移ってから初めて訪れました。「鬼滅の刃」は、「週刊少年ジャンプ」で連載された吾峠呼世晴さんの少年漫画。漫画でヒットした作品を、観世流能楽シテ方の大槻文藏さん監修、和泉流狂言方の野村萬斎さん演出で、能楽で舞台化されました。パンフレットの侍烏帽子姿の竃門炭治郎は、作者の吾峠呼世晴さんの作品に合わせて、今回主役を務める観世流シテ方の大槻裕一さんが「三番叟」の千歳を務めた時の姿を基にした描きおろしだそうです。大槻裕一さんは、スーパー子方として活躍し、その後、大槻文藏さんの芸養子になられたのですね。私も、裕一さんが、小学生の頃だったと思いますが、大阪の能楽堂で、拝見したことがあります。すごい子方だ~と思いましたが、かっこいいシテ方になりましたね。能の伝統的な上演形式は「五番立」。神々が登場する「脇能」、主に男性の戦いを描いた「修羅能」、女性が主人公の「葛能」、バラエティーに富んだ「雑能」、鬼や天狗が活躍する「切能」。この5つの種類の能が上演され、その間に狂言がそれぞれ入るという形式で、1日がかりで演じられていました。私も、1度だけ五番立を観たことがありますが、朝から夕方まで~で結構見るのも体力がいりました。今回は、この五番立をコンパクトに圧縮して、能五番と狂言二番という形式で上演されました。この形をとったことで、約2時間という枠のなかで、それぞれのエピソードがわかりやすく、面白くなったかなと思いました。時は、大正時代。炭売りで生計を立てながら、家族と仲睦まじく暮らしていた心優しき少年・竈門炭治郎は、とある雪の日に家族を鬼に殺されてしまいます。唯一生き残った妹の竈門禰󠄀豆子も、鬼の血を浴びたことで鬼に変貌してしまいます。炭治郎は、家族の仇を討つため、妹を人間に戻す方法を探るために、諸悪の根源である鬼の始祖・鬼舞辻無惨を倒すべく鬼殺隊に入隊し、良き仲間と出会いながら、「悪鬼滅殺」を掲げ、日夜鬼を狩ってゆきます。プロローグ客席後方から、鬼舞辻無惨(野村萬斎)が、今宵の物語を語りながら登場。萬斎さんのいで立ちは、まさに、鬼舞辻無惨のお姿でした。能楽堂の舞台で洋装で登場することも、客席を通って、本舞台へ向かうことなど、今までにない演出です。翁=新作儀礼「日の神」竈門炭十郎(野村萬斎)が、静かに登場、一礼して、舞い始める。途中から、竈門炭治郎(大槻裕一)登場。父と共に舞い始めます。「ヒノカミ神楽」の神楽の型が、父から息子へと伝承されてゆきます。能「翁」の雰囲気ですね。脇能=新作能「狭霧童子(さぎりどうじ)」狭霧山のエピソード(コミックス1巻第4~5話)。錆兎(野村裕基)と真菰(高野和憲)が登場し、鬼殺隊を讃える歌舞を舞い、炭治郎が、何度やってもなかなか割れなかった大岩が割れる様子を演じます。岩は、能の作り物で表現していました。 高野さんの真菰、可愛かったですね。修羅能=新作能「藤襲山(ふじかさねやま)」炭治郎の藤襲山での最終選別(コミックス1巻第6話~2巻第8話)。炭治郎が、その戦いぶりを鱗滝左近次(野村萬斎)に回想しながら報告します。 狂言=新作狂言「刀鍛冶」日輪刀を作る刀鍛冶の鋼鐡塚(野村太一郎)、もの作りに邁進する苦労と貴さがコミカルに描かれています。「一人狂言」の形式で、演じた太一郎さんの刀鍛冶は、とても面白いシーンでした。葛能=新作能「白雪」女性が主人公の葛能は、竈門禰󠄀豆子。竃門炭治郎役の大槻裕一さんの2役です。冨岡義勇(福王和幸)が登場。舞台には霧雲杉でできた箱(炭治郎の背負い箱)が置かれ、その中で禰󠄀豆子眠っています。その箱を訝しむ義勇。眠り続ける禰󠄀豆子が見た夢。在りし日の家族との平和な暮らしと、鬼に家族を殺され、自分が鬼になったこと。鱗滝左近次(野村萬斎)が、禰󠄀豆子たちの顛末を語ります。そして、禰󠄀豆子が、故郷を懐かしむように舞います。 冨岡義勇役の福王和幸さんは、すご~くイケメンのワキ方衣装も、漫画のままで、かっこよくて素敵でした。狂言=新作狂言「鎹鴉(かすがいからす)」天王寺松右衛門(野村萬斎)登場、名乗り、鎹鴉の説明をします。隊士への伝令役を務める鎹鴉たち~どんぐり丸(深田博治)、うこぎ(高野和憲)~が、束の間の休息時間に宴を催し、日頃の苦労をぼやいています。雑能=新作能「君がため」「伊之助御伽草子」の我妻善逸(野村裕基)と、嘴平伊之助(野村太一郎)のお話。 切能=新作能「累(るい)」那田蜘蛛山のエピソード。竈門炭治郎、善逸、伊之助が那田蜘蛛山に行くと、累(大槻文藏)、累の父(斎藤信輔)、累の母(赤松禎友)の姿が見える?鬼には鬼の家族、世界があります。「鬼狩り」は、鬼の一族にとっては、暮らしの平穏を脅かすもの。3人は、鬼に立ち向かうのですが、累の繰り出す糸に絡め取られてしまいます。糸を繰り出すシーンは、能の「土蜘蛛」ですね。しかし、赤い糸を繰り出すのは初めて見ました。炭治郎 人も鬼、鬼も人累 人の悲しさ、鬼の虚しさ東の空は明けるゆける。下弦の月は傾きて、鬼の身体は霜に溶け、幾星霜の月の影。幾星霜の月の影。ほのかになりて東雲の、鬼殺の勇士は声々に、吾も峠をうち越えて、呼世いの闇も晴れゆけば。かなしき匂いぞ残りける、かなしき匂いぞ残りける。この謡いで終わります。そして、最後にもう一度、鬼舞辻無惨が舞台に登場。最期の思いを語ります。私は、「鬼滅の刃」は読んでないんですが、とても面白く観ることができました。
2022年07月28日
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昨日、横浜能楽堂に「よこはま「万作・萬斎の会」」を観に参りました。久しぶりの横浜能楽堂。猛暑日の昨日、炎天下の紅葉坂を上るのは、しんどかったです。会場は、感染防止が徹底され、検温・消毒はもちろん、チケットのもぎりは自分で切り離し、プログラムも、それぞれがとりました。見所は、椅子の間隔は開けず、以前通りの座り方でした。昨日は、一番端ではありますが、最前列。昨日の番組は、「解説」、狂言「川上」、狂言芸話、素囃子「楽」、狂言「朝比奈」。今回の解説は高野和憲さんでした。高野さんはマスク着用のままでしたが、高野さんの解説を聞くのも久しぶり~。狂言「川上」。吉野の里に住む夫(野村万作)は眼病を患い、目が見えなくなって10年。霊験あらたかな川上の地蔵のことを知って、参詣をすることにし、杖を頼りに一人で出かけます。地蔵堂にこもり一晩過ごすと、霊夢を蒙り、目が見えるようになりました。夜が明けて迎えに来た妻(中村修一)とともに喜ぶのですが、実は、地蔵のお告げには目が見えるようになることには、条件がありました。それは、今の妻と別れること。長年連れ添った妻が承知するはずがありません。そして、夫は妻に逆らえず、2人はこのまま夫婦でいることに。…すると、夫の目は再び見えなくなりました。そんな夫を妻が支えて、2人は家に帰るのでした。万作さんが何度も演じられている名作狂言です。私も、何回見たかなあ。妻は、野村萬斎さんか、石田幸雄さんが演じられることが多くて、中村修一さんの妻は初めて拝見しました。夫の一人芝居でほとんどの描写が描かれてゆくこの狂言は、やはり万作さんでなくては~。「狂言芸話」野村万作。この「よこはま 万作・萬斎の会」で、毎回、野村万作さんによる「狂言芸話」が語られます。今回は、先ほど演じられた「川上」についての万作さんのこだわりが語られました。そして、今回は、和泉元秀さんのお名前が。和泉元秀さんは、万作さんの従兄弟で、和泉元彌さんのお父様ですね。元秀さんは、27年も前に57歳の若さで亡くなられたのですが、以前は、万作さんとよく舞台で共演されていたのですね。素囃子「楽」。太鼓・柿原孝則、大鼓・金春惣右衛門、小鼓・成田奏、笛・栗林祐輔。「楽」は、雅楽を能ふうにアレンジしたもので、異相の神や中国の仙人などが舞う時に使われるものでそうです。久しぶりに素囃子を拝見したら、かなり若手の方の演奏になってました。狂言「朝比奈」。仏教が発展して?極楽往生を遂げてしまう人間が増えて、地獄は大飢饉に陥っていました。そこで閻魔大王(野村裕基)みずから六道の辻(極楽や地獄などに赴く道の分かれ目)に行って罪人を待っていると、朝比奈(野村萬斎)が現れます。朝比奈は、鎌倉時代に実在した武士、朝比奈三郎義秀で、和田義盛の三男。 「鎌倉殿の13人」では、和田義盛を横田英司さんが演じられていて、今、木曽義仲の愛妾だった巴御前(秋元才加)と共に暮らしていますね。朝比奈は、その巴御前が生んだ子供?と言われているそうです。朝比奈は大力の持ち主で、閻魔大王は捻じ伏せられてしまいます。やがて朝比奈は、閻魔大王の求めに応じて、和田義盛が起こした合戦のことを語り始めます。和田義盛が鎌倉御所を攻め、朝比奈が大門を押し破り、敵方の兵100人を鮨のように押し潰し~実際でも朝比奈は最もめざましく戦ったそうです~。そして、挙句、閻魔大王は、朝比奈が極楽へ行く道案内をさせられてしまいます。野村萬斎さんは、主役の朝比奈…で、よかったです。 閻魔大王だと鬼の面を付けますから、お顔が見えない。 それに閻魔大王の役は、激しい動きがが多い。 もう若い裕基君がやる役ですね。 久しぶり、生萬斎~‘でした。
2022年06月26日
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お誕生日おめでとうございます!今日は、人間国宝で和泉流狂言師野村万作さんのお誕生日です。野村萬斎さんのお父様ですね。91歳になられたそうです。土曜日に久しぶりに万作さんの舞台を拝見できます。楽しみ~これからも、ますますお元気でご活躍ください。
2022年06月22日
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吾峠呼世晴さんの漫画「鬼滅の刃」が、来年、野村萬斎さんの演出・出演で、「能狂言『鬼滅の刃』」として上演されることになりました。能にも狂言にも、「鬼」は、よく出てきますね。能には、生成(なまなり)、中成(般若・ちゅうなり)、本成(ほんなり)などと、鬼としての進化過程がありますね。鬼を研究した芸能といえるかもしれませんね。どんな舞台ができあがるのか楽しみです。…と、その前に、私が「鬼滅の刃」を勉強しなければ。
2021年12月23日
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昨日、宝生能楽堂に「未来につながる伝統ー能公演ー」を観に参りました。能楽堂は、本当に久しぶりです。昨日の番組は、舞囃子「船弁慶」、狂言「鍋八撥」、能「安宅」。そして、今回は特別プログラムで、主催者である宝生流能楽師シテ方の佐野登さん、ダンサーのSAMさん、そして野村萬斎さんのスペシャルトークがありました。SAMさんは、佐野登さんのもとで、能のお稽古をなさっているそうです。ダンスと能の違い、共通点など、興味深いトークタイムでした。SAMさんは、来年、還暦だそうそして、佐野登さんと、京都芸術大学非常勤講師の小山龍介さんによる“能「安宅」の世界”の作品解説がありました。舞囃子「船弁慶」宝生和英。まだ、お若いですが、宝生流シテ方二十代宗家。滑らかな重心移動、肩から腕にかけての美しい所作、見惚れました。狂言「鍋八撥」。新しい市では一番最初の店を免税するという高札を見て~狂言には高札がよく出てきますね。昔はこういう掲示板が便利だったのでしょうね~、張り切って一番乗りした鞨鼓売り(中村修一)。夜明けまで間があるので一眠りして目覚めると、隣に浅鍋売り(野村万作)が寝ています。 あわてて揺り起こすと、浅鍋売りは自分こそ先に着いたと主張して決着がつきません。もめるところに目代(石田幸雄)が仲裁に現れて、話し合った結果、何か芸をして勝負をつけることに。~ここんところ、よくわかりませんが(笑)~。結局、鞨鼓を打ち鳴らし、鞨鼓のない浅鍋売りは、浅鍋を打ち鳴らし~と割れるので、撫でまわし~。そして、鞨鼓売りは、なぜか、得意の水車(側転)を披露。中村さんの水車は久しぶりに見ましたけれど、以前見た時にも清々しさを感じたのですが、さらに上手になられたのでは。真似をした浅鍋売りは、売り物の浅鍋を割ってしまいます。これは、割れないと話が終わらないのですが、割れなかった時には、最後の台詞が違うそうです。長い間何度も見ているけれど、割れなかったバージョンはあまり見たことがないのですが、今回は割れなかったんです。割れなかった鍋は、浅鍋売りは家宝として持ち帰ることにするんですね。能「安宅」。平家討伐に最も功のあった義経(子方・水上嘉)も今は頼朝から追われる身となり、弁慶(シテ・佐野登)をはじめ郎党と供に山伏に身をやつして都を出ます。奥州にいたる途中、加賀国安宅の関において富樫某(ワキ・福王和幸)に見咎められます。一行は、南都東大寺建立勧進のためと偽り、弁慶が白紙の勧進帳を読み上げ、通過を許されますが、義経の姿を見咎められ追及を受けます。しかし弁慶の機転で、強力に身をやつした義経を激しく打ち据え、難を逃れます。ワキの福王和幸さん、久しぶりに拝見しました。関西ご出身ですが、10年前から東京で活動していらっしゃるんですよね。鼻が美しくて…イケメンですよね。萬斎さんは、もちろん、アイの強力でのご出演でした。「安宅」のアイは出ずっぱりなので、好きです。お席も、アイの強力がよくいる位置に合わせて取ったので、萬斎さんの「お尻姿」がバッチリでした。今年は、春の「品川薪能」は」コロナで中止、夏の「相模薪能」は悪天候で中止となってしまったので、野村萬斎さんの舞台を観るのは、約2年ぶり。久しぶりの生ハッチでした。
2021年12月20日
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野村萬斎さんが、観世寿夫記念能楽賞を受賞なさいました。観世寿男記念能楽賞は、世阿弥の花の思想を体現し、常に“能とは何か”を問い続け、1978年12月7日に、53歳の若さで急逝した観世流能楽師、観世寿夫氏の能界劇界における功績を記念して、設定されたものだそうです。顕著な業績や、舞台成果を示した研究者・評論家・能役者、能楽の普及に貢献した個人・団体に贈られ、毎年、命日の清雪忌に発表されるそうです。本当に、野村萬斎さんにふさわしい賞だと思います。おめでとうございます。さて、明日は、いよいよ「ドクターX」の最終回です。野村萬斎さん演じるハッチこと蜂須賀隆太郎は、どうなるんでしょうねえ。癌は患ってるし、新型ウイルスにも感染しているみたいだし、大門未知子のこと好きみたいだし()…。明日が楽しみです。
2021年12月15日
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昨日、寒川神社に行ってきました。寒川神社は、神奈川県高座郡寒川町にある神社です。この神社の創建は、雄略天皇の御代。1,500年もの歴史を持つ神社です。古来から、八方除けの守護神として、地相・家相・方位・日柄・厄年などに由来するすべて禍事災難を取り除き、福徳開運ももたらしてくださるそうです。また、「寒」を温める「火」、「川」から海に流れる「水」、この火と水の聖地がこの寒川なのだそうです。この神社で、毎年8月15日に、戦没者慰霊奉納薪能が開催されます。昭和45年から開催され、今年で52回。私は、2002年から、ほぼ毎年、もう20年近く観に行っています。昨年は、コロナのため開催中止でしたが、今年は、人数を限定して開催されることになりました。お席は、自由席なので、午前中から神社に行って並びます。今年も、11時過ぎに神社に到着。例年どおり、並んで待つためのテントが設営されていました。いつもは、数人並んでいるのに、今年は誰もいなくて、私が1番でした。テントは雨の中設営したためか、地面が濡れていたので、シートを敷かずに、折り畳みイスだけおいて、そこに座って待つ事に。雨は、時折、強く降ってきて、なかなか止みそうにないなあ~。こんな雨の中ですが、会場は、準備されています。いつのまにか、3,4人の方たちがいらしてテントの中に並んでいます。待つ事2時間。午後1時過ぎ、私たちの待つテントに実行委員会の方がみえ、「天気の回復が見込まれないので、中止を決定いたしました。」とのこと。以前、雨が降った時、体育館で開催したこともありましたが、今年は、コロナのため密や換気面を考えて、体育館はやめたのでしょうね。残念~。萬斎さんにお会いするのも久しぶりだったのになあ~。また、今回のお能の番組の「箙」は、来年の大河ドラマ「鎌倉殿の13人」に登場する梶原景時の嫡男梶原源太景季の物語なのだそうで、楽しみにしていたんですが…。来年を楽しみに~
2021年08月16日
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「力を蓄える」。 その最たるものは、実は「お能」です。 お能は、徹底的に動作を省略し抑えます。 すべてを抑えて振舞うので、力が役者の体の内へ内へと入り込みます。 お能の美しさは、この抑制にあります。 確かに、お幕から出てきた途端に、はっとするほど美しい立ち姿の役者さんに見惚れてしまうことがよくあります。 動作を抑制して力を蓄える...。 ダンスにも生かせる部分があるのではないかと思います。明日は、久しぶりに薪能を観に行きます。「第52回相模薪能」 令和3年8月15日(日) 午後5時30分開演 寒川神社境内 特設能舞台今日も、明日も雨のようですが、小雨では決行とのことで、いまのところ、寒川神社のサイトを確認したところでは、開催予定とのこと。楽しみです。
2021年08月14日
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品川文化振興事業団から、メールが届きました。第七回 品川能楽鑑賞会「品川薪能」 日時 2021年5月28日(金) 18:30開演 会場 文庫の森 特設舞台今回の、新型コロナウイルスの感染拡大防止のための緊急事態宣言の延長の為、開催中止だそうです。…残念。久しぶりに、萬斎さんの舞台が観られるかと楽しみにしていたのですが。最前列、とったのに…。。まあ、仕方がないですね。
2021年05月15日
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ゆっくりと閑かな舞いは、息のつめ、つまり呼吸の強さがもっとも必要である。それには、自分の内的な力が非常に強くなければならない。逆にテンポの早いものを舞うときは、気を楽に持ってのびのびと舞わなければ、慌てているように見えるばかりで大きさというものがなくなってしまう。また、強く見せようとむやみに力むと、それでは舞台でかえって小さくなってしまうから、力をゆったりと大きく伸ばすように演じるのがよい。 -「心より心に伝ふる花」(観世寿夫)よりー
2021年01月13日
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先週の木曜日に、寒川神社に、「第50回相模薪能」を観に参りました。毎年の終戦記念日に、太平洋戦争の戦没者慰霊のために開催されるこの相模薪能、 昭和45年から開催されているそうで、今年で50回という節目の会になりました。 西日本を大型台風が通過中ということで、朝から雨が降ったり、やんだり。 以前、開催が中止になったり、また寒川総合体育館での開催になったりしたことがありましたが、 今回は、予定どおり、寒川神社境内の特設舞台にて、開催されました。が時折、強い雨が降ったりするので、一昨年と同様に、レインコートを着用しての観劇になりました。 式次第も、いつもどおり行われましたが、 今回は、50回目の記念式典ということで、この相模薪能に貢献してきた出演の能楽師、運営に携わった方の表彰がありました。そして、 寒川神社宮司の利根康教さん、観世流能楽師シテ方の中森寛太さん、和泉流狂言師の野村萬斎さんの記念対談がありました。 中森寛太さんは、第1回公演から子方として出演していらっしゃったそうです。 薪の火入れは、薪の場所を舞台近くの屋根のある場所に移動して、いつもどおり行われました。が、本舞台は水浸しなので、 上演は、本殿前の回廊で行われました。こども奉納連吟、「四海波」・「猩々」。 寒川神社で地元の子供たちのために行っている「小年館」の子供たちによる連吟。 20名の小学生が、全員裃に身を包み、とても凛々しかったです。 能「國栖(くず)」。 宮中での争いで、大友皇子から逃れ、都を出た天武天皇(子方・観世和歌)は、 臣下(ワキ・殿田謙吉)に守られ、吉野の山中・國栖まで逃げてこられました。 漁師の老夫婦(前シテ・観世喜正、シテツレ・小島英明)は、 舟で帰る途中、我が家の上に星が輝き、紫雲がたなびいているのを見て、高貴なお方がいることを知り、 ~貴い人の上には、「紫雲」がたなびくそうです。~ 慌てて庵に戻ると、そこに帝がいらっしゃいました。 臣下は、老夫婦に帝であることを明かし、何か召し上がるものを用意するように言います。 老夫婦は、根芹のお浸しと、鮎の塩焼きを用意します。その残りを老人が賜り、半身の鮎を吉野川に放すと、なんと鮎は生き返って泳いでいきました。 吉兆と喜ぶ帝でしたが、そこに追手が迫ってきました。 老人は、帝を川舟の下に隠し、追手の追求から帝をお助けします。 夜が更けると、夫婦は帝をお慰めしますと言い、姿を消します。すると、天女(シテツレ・鈴木啓吾)が現れ、美しい舞いを舞います。 続いて、吉野の鎮守・蔵王権現(後シテ・観世喜正)が現れて、御代を寿ぎ天下泰平を祝います。 今回、天武天皇を務めた子方さんの佇まいが、可愛らしくきれいだなと思いましたが、シテの観世喜正さんの小学校4年生のお嬢様だったそうです。 狂言「二人袴」。 息子(野村裕基)の婿入りの挨拶についてきた父親(野村萬斎)は、 門の外で帰るつもりでしたので、普段着でした。ところが、先方の太郎冠者(高野和憲)に見つかり、 親子ともども家の中に招き入れられることになってしまいます。 正装の袴は、息子の分しか用意してなかったため、 一人ずつ袴を使い分けていたのですが、「お二人ご一緒で~」と舅(深田博治)に言われてしまい…。 裕基君が、初めて萬斎さんと親子共演でこの役をやった時は、まだ小さかったですよね。 立派な婿役になりましたね。 半能「石橋」。 仏跡を訪ねて入唐した寂照法師(ワキ・殿田謙吉)は、清涼山に至り、 有名な石橋を見ます。 谷の深さは数千丈(1万メートル以上?)、橋の長さは三丈(9メートル)にも及びますが、 幅は一尺(およそ30cm)足らず。 橋の向こうが文殊菩薩の浄土と聞いていた法師は、橋を拝んだ後、渡る覚悟をしますが、 少年が現れ、長年修行した高僧でも渡れない橋だと諭され、思いとどまります。すると、そこに、文殊菩薩の霊獣獅子(白獅子。中森寛太、赤獅子・中森健之介)が現れ、 華やかに舞い狂います。 「石橋」が上演される頃は、雨が上がり、この演目だけ、本舞台で上演されました。が、獅子の舞いは、一畳台を使った激しい舞いなので、 雨上がりの舞台で滑りやすいのではないかと心配しながら見ておりましたが、 見事に舞われました。
2019年08月20日
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木曜日に、世田谷パブリックシアターに、MANSAI●解体新書「5W1H」を観に参りました。「MANSAI●解体新書」は、野村萬斎さんが、 現代芸術の世界を構成しているさまざまな分野、要素をパーツ分けに解体しながら それぞれの成り立ちと根拠を改めて問い直すシリーズ。 毎回多方面からゲストを迎えてのトークタイム。 今回は、この公演が30回を迎えての特別企画ということで、 全8回の公演で行われました。 内容も、2部構成という形で上演されました。 第一部これまでの解体新書の“知の成果”をカタチにする新作パフォーマンス「5W1H」。 When=何時、Where=何処で、Who=何人が、What=何を、Why=何故、How=如何にして、の6項目を人間の“ある行動”を通して デジタル的世界観とアナログ的世界観を同時に捉えた様々なパフォーマンスで表現し、そこから“生きている人間”を実感していくという試み。 説明は、なんだか難しい~ですが、面白い時間でした。 大型スクリーンと、舞台上に自在に動き回る6枚のパネル、そこに映し出される様々な映像。 宇宙空間のようでもあり、細胞分裂のようでもあり、様々な線の集合体のようでもあり、めまぐるしく変化する、美しくもあり、激しくもあり、不思議な空間に誘われるようなダイナミックな映像でした。そこにアナログ?である役者さんが登場し、 「ややこしや~」を舞ったり、能のシテ方(大槻裕一)~「鉄輪」の鬼女風でしたが~が舞ったり、モーションキャプチャーで作ったであろう萬斎さんが舞ったり。そして今回は、多分初めてだと思いますが、萬斎さんの見事な宙づりまでありました。 面白かった~です。 第二部トークタイム。 今回のゲストは、大友良英さん。 音楽家、ギタリスト、ターンテーブル奏者であり、 映画やテレビの音楽も数多く手がけているそうです。 NHK「あまちゃん」の音楽でレコード大賞作曲賞を受賞し、 現在は「いだてん」の音楽を担当しているそうです。 変化してゆくリズム、それに反応してゆく人間、 人間と音との関わり~、そして、最後はなぜか盆踊りの話。 面白いお話をたくさん聞くことができました。
2019年07月16日
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「綾鷹」が、2020東京オリンピックの公式緑茶になったそうです。それを記念して「綾鷹 東京2020オリンピック記念デザインボトル」が、 6月17日(月)に発売されたそうです。このCMに、 東京2020大会開会式・閉会式チーフ・エグゼクティブ・クリエーィティブ・ディレクターの野村萬斎さんが出演。オンエアは、昨日6月18日(火)から。 私は、まだ拝見していないですが…。 今夏は、「綾鷹」を飲もう!!
2019年06月20日
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受験シーズンですね。生徒さんの中にも、受験生を抱えた方がいらっしゃいます。 大変な時期ですね。また、何年が後の受験に備えて、塾に通わせていらっしゃったり。やっててよかった公文式とか?で、2月から公文式の新しいコマーシャルです。以前から出演していた野村萬斎さんに、長男の裕基君に加えて、 今回は裕基君のお姉さんの野村彩也子さんが出演されています。 3歳の時の「靭猿」を拝見して以来なので、 成長されて、きれいなお嬢さんになったのでびっくり。 萬斎さんにも似てらっしゃるけれど、お母さまの雰囲気もお持ちですね。 彩也子さんは、「CanCan」の読者モデルでもあり、 2018年度の慶応のミスコンテストのグランプリなのだそうです。
2019年01月26日
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先週1月2日に、国際フォーラムに、「新春狂言」を観に参りました。東京国際フォーラムで初めて開催される狂言公演です。 この日の番組は、 連吟「雪山」、小舞「七つ子」・「暁」、狂言「棒縛」。 連吟「雪山」。 岡聡史、深田博治、野村萬斎、高野和憲、月崎晴夫。 雪は農作物にとって大切な恵みであり、降る雪を袖に集めて雪山を作るというとてもめでたい世阿弥作の謡いです。 狂言・演目の解説。野村萬斎。 萬斎さんによる、わかりやすい、とても丁寧な?解説がありました。 小舞「七つ子」、飯田豪。 小舞「暁」、石田淡郎。 石田淡郎さん、30歳を超えた年齢になられていたのですねえ。 初めて舞台を拝見したときは、まだ中学生でした。もう17年前のことですものね…。 狂言「棒縛」。 二人の家来が、留守番中に酒蔵の蔵を盗み飲んでいると知った主人(内藤連)は、 太郎冠者(野村太一郎)を棒に、次郎冠者(中村修一)を後ろ手に縛って出かけてしまいます。それでも酒が飲みたい二人は、知恵を絞り、縛られたまま酒を飲むことに成功します。 酔った二人が謡えや舞えやと大騒ぎしているところに、主人が帰ってきてしまいます。
2019年01月08日
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日曜日に、国立能楽堂に「第七回 佐久間二郎能の会」を観に参りました。この日の番組は、舞囃子「絵馬」、狂言「木六駄」、仕舞「老松」、能「鉢木」。 舞囃子「絵馬」。 大晦日の夜、帝の勅使が伊勢神宮に参拝すると、そこに手力雄命(タヂカラオノミコト・怜以野陽子)、天鈿女命(アメノウズメノミコト・河井美紀)、天照大神(アマテラスオオミカミ・鵜澤光)が現れ、 「天の岩戸隠れ」の様子を再現した後、国土の繁栄を寿ぎます。 3名の女性の能楽師が神々の役を演じました。 狂言「木六駄(きろくだ)」。 主人(野村裕基)が伯父(野村万作)のもとへ歳暮を届けるように太郎冠者(野村萬斎)に命じます。 太郎冠者は、牛に「木六駄」と、「炭六駄」をのせ、手には樽酒を持って、 丹波の山奥から都まで大雪の中を出かけます。 十二頭の牛を、大雪の中で苦労して追いながら、ようやく峠の茶屋にたどり着きます。 冷えきった身体を温めようと酒を所望するのですが、あいにく茶屋では酒を切らしていました。そこで、少しだけ~と贈り物として持ってきた樽酒に口をつけてしまいます。ですが、飲み始めると止まらくなって、ついに樽酒はからに…。 気持ちが大胆になった太郎冠者は、「木六駄」も主人に渡してしまい、 伯父には、「炭六駄」のみを届ける羽目に。このお忙しいであろう時期に、よく「木六駄」をやられるなと思いました。この狂言は、雪の中を牛を追ってゆく名場面があり、大変だろうなと思います。 何年前か最初にこの役を演じられた時には、なんとなく萬斎さんに、「気負い」のようなものがあったような気がします。ですが、今回は、とても自然体で、 前半の雪の中の場面も、後半の酒によっていい加減な太郎冠者もとてもよかったと思います。 見終わってから思ったのですが、 「気負い」を感じていたのは、萬斎さんではなく、私自身だったのかもしれません。あの当時は、「萬斎さんが大変な舞台を演じられる~。」と私のほうが緊張して観ていたのかも。 今回は、ゆったりとした気分で楽しく拝見できました。
2018年12月06日
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日曜日に、国立能楽堂に「万作を観る会」を観に参りました。この日の演目は、小舞「道明寺」、狂言「宗論」、新作狂言「法螺侍」。 小舞「道明寺」、野村遼太。 狂言「宗論」。 身延山帰りの法華層(内藤連)と、善行寺帰りの浄土僧(中村修一)。 道連れになった二人は、互いが犬猿の仲の宗派と知ると、 互いに宗旨替えを迫って争いはじめます。この狂言を見るたびに、それぞれの宗派の特徴をとらえてあって面白いなと思います。 今回は、若手演者の狂言でした。 新作狂言「法螺侍」。シェイクスピア作の喜劇「ウインザーの陽気な女房たち」をもとにした新作狂言。 10年ぶりの上演だそうです。 酒好き女好きで太鼓腹の武士・洞田助右衛門(ほらたすけえもん・野村万作)。 放蕩が過ぎて、主家を追放され、毎日飲み暮らしていたのですが、とうとう酒代も底をついてしまいます。そこで、町の商人の女房・お松(石田幸雄)とお竹(高野和憲)を別々にくどき、 二人の金を貢がせようと画策します。 助右衛門からそれぞれに文を届けるように命じられた太郎冠者(野村萬斎)と次郎冠者(深田博治)は、 普段から乱暴で身勝手な主人に愛想をつかしていたので、お松とお竹にすべて話してしまいます。あきれたお松とお竹は、太郎冠者・次郎冠者、そしてお松の夫・焼兵衛(月崎晴夫)とともに、助右衛門を凝らしめる計画を立てるのです。 久しぶりに拝見しましたが、とても、テンポのよい狂言で、 動くシーンも多いのすが、10年前と変わらない万作さんの動きはさすがでした。最後のダンシングシーン?が見られます。
2018年11月30日
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飛鳥山公園に「飛鳥山薪能」を観にまいりました。 例年のごとく、能舞台をイメージして作られた檜づくりの野外ステージの飛鳥舞台で開催されました。まずは、横浜能楽堂館長の中村雅之さんによる面白く丁寧な解説がありました。その後、王子神社宮司さんによる舞台のお祓い、そして、北区区長さんらによる火入れ式が厳かに行われました。狂言「二人大名」。ある大名(野村萬斎)が、もう一人の大名(高野和憲)を誘って外出することにしました。二人は供を連れてこなかったことを悔やみ、ちょうど通りかかった男(野村万作)を脅して供にしようとします。~いつもながら、狂言にでてくる大名は、江戸時代の参勤交代をするような大大名ではなく、ちょっとした土地をもっている地主くらいの感じですね~。男に無理やり太刀を持たせて歩いていると、頭にきて怒り出した男が、急に太刀を振り上げ、大名たちの小刀や衣服も取り上げてしまいます。立場が逆転した男は、大名たちにいろいろな要求犬のかみ合いや、ニワトリに鳴き声、そして起き上がり小法師やらの真似~をしていくのです。 中世の下克上を象徴しているといわれるこの作品、 大名の萬斎さんのいじられ役が楽しいですが、 起き上がる小法師などは、体力がいりそうなので、大変そうです。休憩のあと、また横浜能楽堂館長さんによる解説がありました。役づくりのこだわるシテの野村四郎さん(野村万作さんの弟さんです)が、今回は「面」をあまりこの能では使わないものに、したそうです。能「紅葉狩 鬼揃」 時は秋、場所は信濃の戸隠山。ある上臈(高級女官・前シテ野村四郎)が数人の侍女を連れて紅葉狩りにやってきます。木陰で幕を張り酒宴を始めます。楽しそうに謡い始めますが…。ここで、雨がポツポツと…。 しばし舞台は中断。今日は屋根のない野外舞台、能の装束や面は雨にはさらせないのです。観客は、予報で雨もありと聞いていたのでしょうか、レインコートや傘を取り出します。私も、この時期は常に持ち歩く晴雨兼用傘を差しました。10分ほど待ったでしょうか。雨は、止みそうにならず、結局、中止になりました。残念でした。
2018年09月19日
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Boss THE CANCOFFEE9月4日に、サントリーから新発売されたそうです。それにともない、CMも新しくなり、4日からオンエアされています。 「関ケ原」編。今回、宇宙人ジョーンズは、関ヶ原で戦う足軽になっています。豊臣軍を率いる石田三成を野村萬斎さん、そして徳川家康は、タモリさんが演じています。~サングラスをしたままで~。これ、ドラマにならないかなあ。
2018年09月13日
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終戦記念日の15日に、寒川神社に「第49回相模薪能」を観に参りました。今年の薪能は、天皇陛下御在位30周年にあたり、御祝いの番組をということで、祝言の曲を上演したそうです。能「逆矛」、狂言「樋の酒」、能「大瓶猩々」。能「逆矛(さかほこ)」。帝の臣下・朝臣(ワキ・森常好)が従者(ワキツレ・舘田善博、野口能弘)とともに龍田明神に参詣する途中、松明を持った老人(前シテ・観世喜正)に出会います。臣下は老人に道案内を請い、龍田明神に向かいます。道すがら、なぜ、この龍田明神のある龍田山を寶山(ほうざん)と呼ぶのか尋ねると、この神社には瀧祭明神が預かり納めた「矛(ほこ)」があるので、ここを寶山と言うのだと教え、自分こそが瀧祭明神だと名乗り消えてしまいます。そしてその夜、仮寝している臣下の前に天女(シテツレ・小島英明)が現れ舞いを舞い、その後瀧祭明神(後シテ・観世喜正)も現れて、矛の謂れを舞ってみせ御代を寿ぎます。このめでたい矛は、天沼矛(あめのぬぼこ)といい、天と地ができて後現れた伊弉諾(いざなぎ)と伊弉冉(いざなみ)の男女の神が矛で海をかき混ぜ日本列島を作られた時に使われたという矛なのだそうです。それを大和国(奈良県)の龍田明神に納めたという伝承に基づいて作られた曲なのだそうです。国土創成とは、確かにめでたい曲ですね。狂言「樋の酒(ひのさけ)」。主人(中村修一)は、留守中に太郎冠者(野村萬斎)が酒を盗み飲みするので、太郎冠者を米蔵、次郎冠者(深田博治)を酒蔵に閉じ込めて外出します。~主人は次郎冠者は酒を飲まないと思っているようです。実は次郎冠者もかなりの酒好きのよう。~2人は、やがて酒が飲みたくなって、酒蔵にいる次郎冠者は早速飲み始めます。しかし米蔵にいる太郎冠者は酒が飲めません。そこで、蔵の間に雨樋を通して、酒蔵から米蔵に酒を流し、それぞれの蔵で酒盛りを始めるのですが,結局は、太郎冠者が酒蔵へちゃっかり移動して、謡い、舞いの宴会を始めてしまいます。萬斎さん、なぜか前髪がとても長く、お鼻までかかっていました。また、なにかなさるのかな~?能「大瓶猩々(たいへいしょうじょう)」。唐土の揚子江近くにあるかね金山の麓に高風(ワキ・則久英志)という親孝行の男が住んでいました。「酒屋を開け」という夢のお告げを信じた高風は、酒屋で大成功を収め金持ちになりました。ここ最近は知らない男(前シテ・中森寛太)が客を大勢連れて来るのです。 怪しんだ高風が男に名を尋ねると、潯陽の江に住む猩々と名乗って水中に姿を消します。高風が潯陽の江を訪れると、大勢の猩々が現れて大瓶から酒を酌み交わし、酔って楽しく舞い遊んだ後、猩々たちはいくら飲んでも尽きることない酒壺を高風に与えて、水中に姿を消します。この後、仕入れいらずの酒屋となった高風の家は、末代まで繁盛したそうです。なんとめでたいことでしょう。が、この夜は前シテの童子が舞っているところで、小雨が…。幸い、本降りにならないうちに止みましたが、その後の演技は、能舞台から退き、本殿前の回廊で行われました。後半は猩々が5人の舞いでしたので、さぞや大変だったのではないかと思いました。ほんのわずかなにわか雨が降るには降りましたが、全体的には好天に恵まれ、今年もよい時間を過ごせました。
2018年08月19日
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日曜日に、世田谷パブリックシアターに「狂言劇場 特別版」を観に参りました。「狂言劇場 特別版」は、AプロブラムとBプログラムの構成でしたが、今回私は、Bプログラムのみの観劇になりました。この日のBプログラムは、舞囃子「三番叟」、能「鷹姫」。舞囃子「三番叟」。仕手・野村裕基、笛・竹市学、小鼓頭取・鵜沢洋太郎、脇鼓・古賀裕己、脇鼓・清水和音、大鼓・亀井広忠。野村裕基君の「三番叟の披き」は見られなかったので、今回は初めて三番叟の拝見になりました。鈴之段も直面(ひためん)で、衣装は、直垂ではなく紋付袴での舞いでしたので、袖さばきが見られなかったのが残念でしたが、さすがに萬斎DNAいっぱいの舞いでした。 能「鷹姫」。 絶海の孤島に木立と岩に囲まれた枯れた泉があります。その泉には、守り役として鷹姫(片山九郎右衛門)がいます。この泉に湧き出る水を飲むと永遠の命が得られるそうです。何十年もの間、命を水を求めて水が湧き出るのを待つ老人(大槻文蔵)がいます。枯れた泉の水は、不思議な「魔の時間」にだけ湧き出るのです。ところが、なぜか、老人は「魔の時間」が訪れると決まって意識を失い、目覚めると、再び、泉は枯れてしまっているのです。老人は、なんとか生き長らえ、来る日も来る日も、泉が沸くのを待ち続けています。そこへ海の彼方の国から若き王子・空賦麟(クーフリン・野村萬斎)がやってきます。泉の噂を聞いて、帆船に乗って遥々とやってきた彼は、老人と泉をめぐって言い争いになります。老人も、かつては、空賦麟のように泉を求めてやってきた若者だったのです。が、その時、鷹姫が鳴き声を上げて羽ばたき、泉の沸く予兆が起こるのです。しかし、鷹姫が舞うと、老人は力尽き、空賦麟は気を失ってしまいます。その時、泉の水が突如沸き出たのです。ところが、その水は、なんと鷹姫が飲み尽くして去って行ってしまいました。 再び枯れた泉となってしまい、力尽き幽鬼となって彷徨う老人。そして泉の水を求め続け、その苦悩を嘆きながら、最後には、老人は泉を囲む岩の一つになってしまったのです。この能は、今から100年も前、ノーベル文学賞を受賞したアイルランドの詩人ウィリアム・バトラー・イェイツが、日本の能に刺激を受けて劇作「鷹の井戸」を書き、それが日本に渡り、新作能「鷹姫」となったものだそうで、初演は、1967年だそうです。私が拝見したのは、今回で2回目。前回は、ずいぶん前ですが、国立能楽堂での上演で拝見したと思います。今回は、野村萬斎さんの演出で、劇場での上演ということもあり、この劇場ならではの3本の橋掛かりを使った舞台装置や、泉の噴出時の演出もありビジュアル的にとても分かりやすく楽しめたと思います。
2018年07月05日
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先週の木曜日に、「第21回称名寺薪能」を観に参りました。 この日の番組は、連吟「放下僧」・「六浦」、新作仕舞「野島」、狂言「文荷」、復曲能「金沢猩々」。 前日が大雨で、この日も朝方まで雨が降っていましたので、開演が心配されましたが、無事に予定通りに称名寺境内能舞台で開催されました。 開演の「挨拶」は、金沢区長さんがなさり、その後、演目解説をいつもの通り、櫻間右陣さんがなさいました。そして、毎年恒例の子供セミナー受講生の「放下僧」と、六浦セミナー受講生の「六浦」の連吟がありました。 金沢区制七十周年記念として作られた新作仕舞「野島」を、櫻間右陣さんが舞われました。 狂言「文荷(ふみにない)」。 主人(月崎晴夫)に文を届けるように命じられた太郎冠者(野村萬斎)と次郎冠者(深田博治)。それが恋文と察して気が進まず、互いに押し付けあいます。 ~実は、主人の奥様に知れたら大変なことになるので、できれば関わりたくない2人~。 結局文を竹に結び付けて二人で荷うことにします。 ~これが、この狂言の題名なんですね。~ 能の「恋重荷」の一節を謡いながら運んでゆくのですが、やがて文見たさに中を開いて読んでしまうのです…。この日の萬斎さんは、 銀座の観世能楽堂、三鷹市公会堂、そして、称名寺薪能と、3つの舞台を掛け持ちでした。ですが、お疲れもみせず、溌溂とした舞台でした。 復曲能「金沢猩々(かねさわしょうじょう)」。 武蔵国金沢に、酒を楽しみ日々を送る、酒慶(ワキ・森常好)という男がいました。ある日酒慶が、金沢の浜辺で友を招き、歌を詠み、酒を酌み交わしていると、 顔が赤く髪乱れる不思議な人(櫻間右陣)が現れます。 尋ねると、金沢の海に住む猩々と名乗り、酒の友にと願うので、 酒慶は快くもてなします。 時を忘れて酒宴は続きましたが、やがて猩々は渚で待っていてほしいとの言葉を残して夕波に帰っていきます。 酒慶たちが酒樽の前で待っていると、 再び猩々は現れ、 約束を忘れずに待つ酒慶に、 泉のように酒の出る壺を与えて舞を舞うと、 行く末を守り、また海へと帰ってゆくのでした。 金沢の海と浜を舞台に描かれる友情の物語。 題名の「金沢猩々」は、「かなざわしょうじょう」ではなく、「かねさわしょうじょう」と読むそうです。 「金沢」は、歴史的には、「かねさわ」と呼ばれていたそうですが、 江戸時代に加賀藩の金沢(かなざわ)が有名になり、その呼び方が広まってしまったのだとか。ですから、歴史では金沢文庫(かなざわぶんこ)で習いましたが、本来は「かなさわぶんこ」なんですね。
2018年05月11日
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日曜日に、国立能楽堂に「狂言ござる乃座 57th」を観に参りました。この日の番組は、狂言「佐渡狐」・「苞山伏」・「富士松」、小舞「海老救川」・「芦刈」、試演「狂言獅子」。狂言「佐渡狐」。佐渡のお百姓(野村萬斎)と、越後のお百姓(野村裕基)が、年貢を納めに行く道中、佐渡に狐がいるかいないかをめぐって賭けをします。実は、佐渡には狐がおらず、狐を見たこともない佐渡のお百姓は、判定を頼んだ奏者(取次役人・野村万作)に袖の下を送り、賭けに勝たせてもらうのですが…。親子三代で初共演の「佐渡狐」。裕基君も大学生。ホントに大きくなりましたね。この3人の「佐渡狐」を見る日が来るとは…感無量。狂言「苞山伏」。夜明け前に薪を取りに入った山人(岡聡史)が疲れて仮眠をとっていると、旅の山伏(内藤連)も長旅の疲れで、山人のそばでうたた寝してしまいます。 寝ている2人のそばを通りかかった男(深田博治)が、山人の藁苞(昼食用の弁当)を盗み食い、山伏に罪をなすりつけます。あらぬ疑いをかけられた山伏は、祈祷により真犯人を明らかにしようとします。これは、和泉流のみ伝わる専有曲だそうです。今回は、中堅と若手で演じられました。狂言に出てくる山伏はいい加減な人が多いのですが、この曲の山伏は確かな法力を持っています。 狂言「富士松」。無断で旅に出かけた太郎冠者(野村萬斎)~この時代は許されないことですね。もちろん主人(石田幸雄)に叱られますが、富士詣をしてきたと詫びると、主人は富士権現の威光を恐れて許すことにします。主人は、太郎冠者が持ち帰った富士松(落葉松)を欲しくなり所望するのですが、 太郎冠者は、富士の神酒を振る舞い、胡麻化そうとします。が、主人は連歌を詠みかけ、付けることができなければ、富士松を譲れと迫り、連歌の応酬が始まります。見事な連歌の応酬。言葉で聞いてすぐには、字が浮かんでこないので理解するのは慣れないと難しいですが、昔の人々にとっては、さぞやおもしろい遊びだったのではないかと思いました。小舞「海老救川」。野村太一郎。日本各地の海老のいる情景を描く小舞。野村万之丞さんの舞いは一度しか拝見したことはなかったのですが、やはりご子息、面影があるような気がしました。小舞「芦刈」。野村万作。能「芦刈」でシテの舞う「笠ノ段」を狂言小舞にしたもので変化に富む足拍子が特徴の舞いだそうです。ついお年を数えてしまいましたが、万作さん、お見事です。「狂言獅子 双之舞」。野村萬斎、野村裕基。 狂言「越後聟」で舞われる獅子舞を、「双之舞」としての新しい試み。 「越後聟」といえば、水車(側転)や、三点倒立があったなあ~と思っていたら、 見事に親子で演じられました。裕基君は、さすがに萬斎さんゆずりの足腰の強いバネがあり、もちろん若さもあって、見事な赤小獅子でした。万作さんと萬斎さんの「親子三番叟」を見た時も感動しましたが、今回の親子獅子も素晴らしかった…またもや感無量~です。能楽堂の桜~満開でした。
2018年03月29日
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金曜日に、世田谷パブリックシアターに「シャンハイ・ムーン」を観に参りました。井上ひさし作、栗谷民也演出。日本を憎みながらも、日本人を愛した中国人作家・魯迅と、彼を敬い匿った日本人たちの物語。昭和9年8月、上海。思想弾圧が激しくなる中、中国の偉大な文学者であり、文学革命、思想革命の指導者である魯迅(野村萬斎)にも、ついに、蒋介石の国民党政府より、逮捕命令が出ました。魯迅は妻の広平(広末涼子)とともに、親交のある日本人の内田完造(辻萬長)・みき(鷲尾真知子)夫妻の経営する内田書店の2階に匿ってもらいます。この時、魯迅の体は、病気の巣窟となっていて、ボロボロ。内田夫妻はなんとか医者に診せたいと思うのですが、なぜか魯迅は大の医者嫌い。~日本の仙台の医術専門学校に留学していた魯迅は、ここで、とても悲しい出来事に遭遇し、それで、医者になることをやめ、文学の道を歩むことになるのです。このエピソードは、物語の中で語られています。~一計を案じた内田夫妻は、医師の須藤五百三(山崎一)を大の魯迅ファンに、そして歯医者の奥田愛三(土屋佑壱)を肖像画家に仕立てて、なんとか、魯迅の診察をさせようとするのです。ところが、歯医者の奥田が使用した笑気ガスで、魯迅は人物誤認症や、失語症になってしまうのです。野村萬斎さんは、主役の魯迅なのに、あまり出番がない。出てきたと思ったら、ベットで寝ている~まあ、病人の役だからですが…。なぜかなあ~と思ったのですが、この物語は、魯迅とその魯迅を敬い助けた日本人たちの物語なんですね。ですから、魯迅を助けた4人の日本人の人物像が丁寧に描かれ、また、それぞれの役者さんがぴったりで生き生きと演じています。生(なま)広末も初めて見ました~^^!素敵な女優さんですね。ちょっと哀しくておもしろく、心が温まるような舞台でした。世田谷パブリックシアターは、3月11日(日)までですが、その後、各地をまわるようなので、是非、観ていただきたいなと思います。
2018年03月07日
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~お正月、1月2日に、国際フォーラムに、「三番叟 FORM Ⅱ」を観にまいりました。昨年のお正月に上演された野村萬斎さんの「三番叟 FORM」が、今回、より進化した形で上演されました。今回は、新たな演出で、身体、頭の動きや方向の変化、床の振動などを各種センサーによってデータ化して、あらゆる身体、表現の変化を、その場で生成されるリアルタイムCGで反映したとのこと。また、舞台全体の照明も、データに連動してリアルタイムに変化・反映させ、萬斎さんの舞い、演技と劇場空間がシンクロ、連鎖する演出を目指したそうです。昨年の「FORM」では、この日の萬斎さんの「三番叟」は、相変わらず、キレキレッで素晴らしく~、私としては、萬斎さんの舞いに集中したかったですが、映像が強すぎて、ちょっとなあ~残念でした。と思ったくらい、映像の印象が強すぎたように思いましたが、今回は連動感をリアルタイムで~ということで、確かに、かなりマッチングした感じはしました。
2018年01月09日
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先週の木曜日(10月19日)に、国立能楽堂に、「狂言ござる乃座 56th」を観にまいりました。 この日の番組は、狂言「舟渡聟」、新作狂言「なごりが原」。 狂言「舟渡聟」。 矢橋(やばせ)の船頭(野村万作)が、 朝一番に大津松本まで舟を渡し、戻りの舟の乗客を待っていると、 都近辺に住み、矢橋まで婿入りに行く男性(野村萬斎)が乗り込んできます。 ~昔は、初めて妻の実家に挨拶に行くことが「聟入り」だったそうです。~ ~ちなみに、矢橋、大津松本は、びわ湖周辺の地名~。 寒風の吹く中湖上で舟を操っていた船頭でしたが、 ふと男性が舅の土産に持っていく酒樽に目をつけます。 実は、船頭は、無類の酒好き。 この寒い中、舟を漕いでいるのだから、一杯飲ませろと無茶苦茶な要求。 舅への土産だからと、当然男性は承知しません。 すると、船頭は、舟を漕ぐのをやめたり、舟を揺らしたりして男性を脅かします。 ~ここで、揺れる舟の上で翻弄され、左右に飛ぶように動く様が、この曲のひとつの見どころ、 相変わらず、軽やかな萬斎さん!~ 男性は仕方なく、船頭に酒を飲ませます。 なんとか無事に舅の家に着いた聟を、姑(石田幸雄)は歓待し、 そこに外出していた舅が帰宅。 しかし、舅は聟の顔を見てびっくり仰天。 聟は、先程舟に乗せた客だったのです。 気まずさに、長年自慢の髭を剃りおとし、さらに顔を隠すようにして対面しますが…。 この3人の配役で何回見たことでしょう。 萬斎さんも、30年以上演じてこられたそうです。 ここ何年かは、萬斎さんの聟役も、これで最後かと思いながら見ています。 今回も、また、萬斎聟が見られてよかったです。 素囃子「神舞」。 大鼓・亀井広忠、小鼓・田邉恭資、太鼓・桜井均、笛・藤田六郎兵衛。 新作狂言「なごりが原」。 狐やあらゆる生き物が豊かに暮らす水俣の大廻り(うまわり)の塘(とも・土手)。 ここには、音曲の神・櫛稲田姫(くしなだひめ)と、その夫の素戔嗚尊(すさのおのみこと)が、上げ潮に乗って訪れ、 休息するという弁天岩があります。 祇園祭で見事な笛を吹いた後、櫛稲田姫から笛の秘曲を教えるという告げを受けた笛万呂(野村萬斎)が岩の上でまどろんでいると、 人間に化けた影身の守の草比古(深田博治)、虫比古(高野和憲)という狐が現れます。 ~ふさふさしたおっきな尻尾を着物に隠した姿がなかなか可愛いかったです。~ 彼らは、祇園祭の後の「なごりの祭」に集う神々や精霊のため、 「なごりの笛」を吹くよう、笛万呂に頼みに来たのです。 やがて櫛稲田姫(野村萬斎)が現れ、笛万呂の笛の音にひかれるように舞い始めます。 2007年に石牟礼道子さんが発表した新作狂言で、 子供の頃に遊び親しんだ熊本県水俣市にかつて実在した「大廻りの塘」を舞台に 祭や夢、音楽を媒体として、 人や動物と神々や精霊が交信する世界を表現した曲だそうです。 それを萬斎さんが演出なさいました。 弁天岩を模したであろう一畳台が出てきたり、すすきの作り物が舞台を飾るなど、かなり能仕立ての感じがしました。 精霊流しの場面があり、照明を落としたなか、 精霊を持った演者が、狂言の「茸」の動きで歩みます。 それがいかにも、川面を流れて行く精霊のようで‥さすがでした。 赤と白の巫女の衣装をまとった櫛稲田姫の萬斎さんの舞いは、 「三番叟」の「鈴の段」の舞いを取り入れたように思いましたが、 おごそかで美しい舞いでした。 おごそかな中に、ほのぼのとした味わいのある狂言でした。
2017年10月25日
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木曜日(10月5日)に、ティアラこうとうに、「狂言の夕べ 江東公演」を観にまいりました。 初めて行った会場でしたが、 「ティアラこうとう」は、外観がティアラに似ていることからつけられたそうで、 きれいな会場でした。 今回の解説は。野村萬斎さん。 また、いろいろお話のネタを考えられたようで、楽しい解説でした。 狂言「萩大名」。 都から帰国することになった大名(石田幸雄)が、 太郎冠者(内藤連)の案内で、清水寺近くの茶屋の庭に、萩の花を見に出掛けます。 風流者の茶屋の亭主(深田博治)が、 来客に必ず、一首所望するので、 和歌などが不得意な大名のために、太郎冠者が、歌を教えます。 しかし、これが、なかなか覚えらない大名なのです。 仕方なく、数字の出てくる歌なので、 太郎冠者が、扇の骨の本数で合図を送ることにします。 たかだか五七五七七でしょう~と思ったのですが、 ~解説で、萬斎さんが意地悪く?客席にこの歌を覚えさせようと3回ほど教えて下さったのですが… 文字を見て、意味を理解しながら覚えるのと違い、 口頭で聴きながら覚えるのは、結構難しい~。 大名が覚えられなかったのも仕方ないかも。 狂言「六地蔵」。 ある田舎者(月崎晴夫)が、地蔵堂に六体の地蔵を安置しようと、 都に仏師を探しに行きます。 すると、すっぱ(詐欺師・野村萬斎)が声を掛けてきて、 自分は高名な仏師であるので、 明日までに六地蔵を作ろうと申し出ます。 そして、仲間に地蔵の格好をさせて、田舎者をだまし、お金をせしめようとします。 が、六体の地蔵を3人で演じるので、なかなか大変。
2017年10月11日
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木曜日(9月28日)に、きゅりあん大ホールに、「品川薪能」を観に参りました。 2020年開催の「東京2020 オリンピック・パラリンピック競技会」に向けて、 スポーツ・文化振興のための品川区公認文化オリンピアードとして、 長く途絶えていた「品川薪能」を復活させたそうです。 本来は、文庫の森の特設舞台での開催予定でしたが、 あいにくの雨のため、きゅりあんでの開催になりました。 喜多流能楽師の金子敬一郎さんの丁寧な見どころ解説から始まりました。 「三番叟」。 五穀豊穣を願う舞。 三番叟・野村萬斎、千歳・野村太一郎、 笛・一噌隆之、小鼓頭取・鵜澤洋太郎、脇鼓・田邉恭資、脇鼓・清水和音、大鼓・亀井広忠。 萬斎さんの「三番叟」は、今年のお正月以来拝見いたしました。 萬斎さんは、他の狂言方よりは、かなり多く三番叟を舞われますが、 そのせいか、さらなるお稽古を休みなく積まれて舞われているなと思いました。 相変わらず素晴らしい三番叟でした。 休憩時間を挟んで「火入れ式」が行われました。 室内ですので、電気使用のかがり火でしたが、 最近のものは、炎が揺らぐようになっているので、本物に近いかがり火の風情があります。 能「船弁慶」。 平家討伐の立役者、判官源義経(子方・大島伊織)は梶原景時の讒言により、 兄源頼朝に疎まれて、 都を去り、西国へ落ちようとします。 落ち行く旅に女連れはよくないと、弁慶(ワキ・宝生欣哉)に進言された義経は、 大物浦で愛妾静(前シテ・粟谷明生)に別れを告げます。 催された名残の酒宴で、静御前は、涙ながらに別れの舞いを披露します。 船出した一行に、海は大荒れになり、 壇ノ浦で亡くなった平知盛の怨霊(後シテ・粟谷明生)が襲ってきます。 が、弁慶の必死の祈りに辛くも難を逃れます。 前半が悲哀を湛えた女性の静御前、後半が勇壮な武士・平知盛の亡霊という対照的な役を演じ分けるという大変な曲ですが、 静御前をシテツレ、平知盛をシテとして、別々の方が演じることも多いので、 1人で2役を演じるのは久しぶりに拝見したように思います。
2017年10月01日
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終戦記念日の8月15日に、寒川神社に、「第48回相模薪能」を観に参りました。 毎年の終戦記念日に、太平洋戦争の戦没者慰霊のために開催されるこの相模薪能、 昭和45年から開催されているそうで、今年で48回になるそうです。 今年は、朝からあいにくの雨。 以前は、開催が中止になったり、また寒川総合体育館での開催になったりしたことがありましたが、 この日は、予定どおり、寒川神社境内の特設舞台にて、開催されました。 のため、レインコートを着用しての観劇になりました。 式次第も、いつもどおり行われ、 薪の火入れも、薪の場所を舞台近くの屋根のある場所に移動して、いつもどおり行われました。 が、本舞台は水浸しなので、 上演は、本殿前の回廊で行われました。 能「羽衣 和合之舞」。 雨上がりの三保の松原で猟師白龍(ワキ・則久英志)は、美しい衣を見つけ、取って帰ろうとします。 ‥実際には、雨上がりではなく、一段と雨がひどくなってきた時間でした~。 すると、そこに現れた天女(シテ・中森貫太)が衣を返して欲しいと哀願するのですが、 白龍は宝にしようと持って逃げてしまうのです。 ですが、天女の嘆きを憐れんだ白龍は、 天女の舞いを見せることを条件に衣を返してあげます。 天女は喜び、優雅な舞いを見せながら昇天してゆきます。 月の世界には白い衣を着た天女が15人、 黒い衣を着た天女が15人いて、 合わせて30人の天女が毎日一人ずつ交代で出勤しているそうです。 ですので、白い衣の天女が15人揃うと満月になり、黒い衣の天女が15人揃うと新月になるそうです。 「羽衣」に出てくる天女は白い衣の天女で、休みの日に地球に来て、 静岡県の三保の松原で水遊びをしている時に、 大風が吹いて衣を飛ばされてしまったそうです。 確かに、本当に美しい白い衣の天女でした。 狂言「二人大名」。 都に遊びに出ようとする大名二人(野村太一郎、内藤連)。 あいにくこの日は、供の者が一人もいないので、 通行人の男(野村萬斎)をつかまえ脅して無理に太刀持ちをさせます。 腹を立てた男は、隙を見て、逆に刀を抜いて、大名を脅し、 脇差しや、衣類まで奪ってしまいます。 …狂言が始まったら、なぜか、雨が上がりました~。 萬斎さんが、通りの者をおやりになるのを初めてみました。 いつもは大名ですものね。 プログラムにも、シテは通りの者になっていた感じでしたが、 この「二人大名」の通常のシテは大名だったと思いましたが。 雨が上がったので、 舞台の水が拭かれて、能「船弁慶」は本舞台での上演になりました。 能「船弁慶」。 平家討伐の立役者、判官源義経(子方・富坂唐)は梶原景時の讒言により、 兄源頼朝に疎まれて、 都を去り、西国へ落ちようとします。 落ち行く旅に女連れはよくないと、弁慶(ワキ・殿田謙吉)に進言された義経は、 大物浦で愛妾静(シテツレ・観世喜正)に別れを告げます。 催された名残の酒宴で、静御前は、涙ながらに別れの舞いを披露します。 …静御前の涙でしょうか。 せっかく止んだと思った雨が、また再び降ってきました~。 船出した一行に、海は大荒れになり、 壇ノ浦で亡くなった平知盛の怨霊(中森健之介)が襲ってきます。 が、弁慶の必死の祈りに辛くも難を逃れます。 雨の中、レインコートを着ての観劇もなかなか風情?があったかも~。 寒かったけれど。
2017年08月19日
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先週の朝日新聞に、世田谷パブリリックシアターで上演中の「子午線の祀り」も演劇評が載っていました。 かなりの称賛の記事でした。 確かに、2004年の時の作品をさらに練り上げた面白い舞台になっていたと思います。 今回は、1度しか観劇する日程がなかったので、とても残念です。 前回の時は、ベースになっている「平家物語」も、少し読みました。 なかなか面白い人物像が出てきます。 大臣殿宗盛〔おおいとのむねもり〕。 平清盛の3男で、平知盛のすぐ上のお兄さん。 上の兄弟が亡くなったので、しかたなく、トップに立った人。 「平家物語」の中では、とても、コケにされています。 優柔不断で、気が弱い。 知盛が大反対したのにもかかわらず、都を捨てて、平家一門を流浪の旅に連れ出した人物です。 皆が源氏と戦おうとしている時に、「自分は讃岐の国をもらえればいいから」と言って、知盛をキレさせたり。 最も、みっともないのは、壇ノ浦の最後。 知盛が、女房どもを入水させた後、1人で、船内の塵を拾い、掃いたり、拭いたり清掃をしてから、鎧を2枚着て飛び込んでいるのに、彼と、息子の清宗は飛び込む勇気がなく、船の上でウロウロ。 見かねた家来に海に放り込まれてしまいます。 ところが2人とも、泳ぎ上手。 2人でお互い顔を見合わせながら、なかなか沈まない。 今回の舞台では、まるでシンクロナイズのような動きで表現していました。 そして、とうとう、源氏方に熊手で引き寄せられ、生け捕りにされます。 その後も源頼朝に、恥も外聞もなく、命乞いをしたそうですが、 結局は義経に斬首されてしまいます。 一説には、貴族的風采をもち、愛情深い心根の優しい人だったようでもありますが、かなり、かわいそうな人物像に描かれています。 前回は故観世榮男さんのが演じられましたが、今回は、河原崎國太郎さんが演じられました。 阿波民部重能〔あわみんぶしげよし〕。 清盛公以来の平家の家来。 知盛となにかにつけて反発しあうのですが、彼は知盛のことをとても好きだったのではないか と思います。 その思いからいろいろやりすぎてしまったように思えます。 彼は、もしもの時は、知盛一行を朝鮮半島に逃がそうと密かに準備をすすめます。 しかし、壇ノ浦の決戦の日、そのルートを九州の平家軍に塞がれたことを知り希望を失い、なんと、源氏軍に寝返ってしまうのです。 これも、平氏敗因の一因です。 演じられたのは村田雄治さん、新聞でも新境地を開いたと絶賛していました。 そして、九郎判官義経。 成河(ソンハ)さんが演じられました。なかなかステキな方です。 昔から、なぜか義経役はイケ面系の男優さんが演じます。 2005年のNHKの大河の義経はタッキーでしたものね。ちょっと美しすぎ、とも思います。 「平家物語」に出てくる義経は、「九郎は面長うして身短く、色白うして向う歯そりたる男なるぞ」となっていますね。 ようは、顔がでかくて、チビで、色は白いけれど、出っ歯…ということです。 まあ、容姿はともかく、この劇では、義経の性格がよく描かれていると思います。 人情型で、心は優しい。だから、家来は自分の身を捨てても、義経に付いて行く。 しかし、直情型で、真面目な義経は目の前のことに夢中になってしまう。 ある意味世間知らずなのかもしれません。 戦のために、自分のもとに駆けつけてくれた武士を鎌倉殿〔源頼朝〕に断りもなく、御家人に召したてると約束してしまう。 義経と、平知盛には、不思議な共通点があります。どちらも伝説が残っています。 義経は、平泉で死んだにもかかわらず、各地に義経の縁の地が残っていますし、蒙古に渡り、チンギスハンになったという説があります。 そして、知盛も、壇ノ浦で死んだはずですが、なぜか、九州で年老いて亡くなったというお墓がある。 また、朝鮮半島に逃げ延び、そこで、王になったという話も。 いずれも、悲劇の主人公、若くして亡くなった人物にはイケメン伝説と、生存説が作られるようですね。
2017年07月16日
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木曜日に、世田谷パブリリックシアターに、野村萬斎さん演出・主演の「子午線の祀り」を観にまいりました。 「子午線の祀り」は、木下順二さんが、「平家物語」に題材を得て、 平清盛の四男、新中納言知盛に、スポットあてて作られた戯曲です。 1979年の初演以来、何度か舞台化されていますが、 野村萬斎さんは、1999年と2004年に主役の平知盛を演じられました。 ~ちなみに、1999年の作品は、私は拝見していません。 …まだ追っかけをしていなかったので。 そして、今回で3回目。 前回の2004年の時は、三男の宗盛役を演じられた、観世流のシテ方故観世榮男さんの演出でしたが、 今回は、野村萬斎さんが演出をなさいました。 出演者も、かなり変わりました。 大臣殿宗盛・河原崎國太郎、 阿波民部重能・村田雄治~物語の流れに重要な人物です。~ 九郎判官義経・成河 武蔵坊弁慶・星智也~弁慶は、190センチ以上あったと言われていますが、 星智也さんも、190センチ以上あるようで、とっても、素敵な弁慶でした。 梶原平三景時・今井朋彦~NHK大河ドラマ『真田丸』で、豊臣家の重臣・大野治長を演じてましたね。 影身の内侍は、前回の高橋恵子さんにかわって若村麻由美さんに。とてもきれいでした。 この主人公の新中納言 平知盛は、平清盛の4男。 兄重盛、父清盛の死後、三男の宗盛が平家の総帥となりますが、 宗盛は気が弱く、平和な時であれば、家来にかしずかれなんとかその役を務めることができたでしょうが、 戦時という非常時では役に立たない。 それで、平家随一の知将としてしられた知盛が、実質的に平家一門の総大将として活躍することになります。 しかし、一の谷の合戦で、齢十六の息子、知章が知盛を救うため自ら犠牲となり討ち死にした頃から、 少しずつ平家の行く末を案じるようになります。 この地球には、北極、南極を通り、地球の中心を貫き、 はるかかなたの天空に繋がる子午線上の一点を月が通過する時に起きる巨大な人間には抗うことのできないエネルギーがある。 そのエネルギーの作用によって人間の運命は決まっていてそれはどうすることもできないのではないか…。 そんな運命を感じ取りながらも、彼を慕う平家一門のため、 戦わなければいけないというジレンマに絶えず悩みながら、 最後の壇ノ浦の合戦へと向かっていきます。 海上の戦には慣れた平家軍に対し、源氏軍は素人同様。 しかし、壇ノ浦の特殊な潮の流れを双方共に研究し、 東へ向かう潮にのって戦いを決しようとした平家軍、 逆に西に流れる潮の流れを利用しようとした、源義経率いる源氏軍は、 戦が始まるまでの戦術は双方互角だったはず。 しかし、そこに作用したのは、子午線によるわずかな潮の流れの誤算と家来の裏切り。 そして勝つためには手段を選ばないという源義経の掟やぶり。 ~水主楫取〔かこかんどり〕、船頭たちのことですが、他の兵士と区別するため、白い装束を着て船に乗り込んでいるのです。 その平家軍の船頭を切り殺すように命令をくだします。 これは、船戦さではやってはいけないことなのです。~ 船頭を失っては、平家の船団もひとたまりもありません。 知盛は、安徳天皇を始め一門の女性の入水を見届けて、船上を清め、体が浮かばないように鎧 を二重に着て、海に飛び込みました。 34歳という年齢でした。 劇場内にはいって驚いたのは、 真ん中にまるで吸い込まれていくような感覚を感じさせる黒い水たまりのある丸い空間。 近づいてみると水たまりではなかったのですが…。 幕もない舞台に「いきなり影身の内侍役の若原麻由美さんが現れ そして、客席から、続々と黒いシャツに黒いパンツ~まるでダンスの衣装のような~の俳優さんが現れ、 舞台は始まりました。 そして、そのダンス衣装のような黒服が、 場面ごとに少しずつ変化して、時代劇のような装束にいつの間にか変わっていたのです。 一番工夫されていたと感じたのは、波の動きをイメージしたような前後に動く細長い舞台。 これがいろいろな場面、場所を作りだしていました。 萬斎さんの演出には、毎回驚かされます。
2017年07月10日
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木曜日に、国立能楽堂に、「狂言ござる乃座 55th」を観にまいりました。 この日の番組は、狂言「附子」・「清水座頭」・「弓矢太郎」。 狂言「附子(ぶす)」。 所用で出かける主人(野村太一郎)が太郎冠者(野村裕基)と次郎冠者(野村遼太)に留守を言い付けると、 附子の入った容器を出してきて、 ここから吹く風に当たるだけでも「死んでしまうぞ」と2人に言い残して出かけて行きます。 ~「ぶす」とは、トリカブトから採れる毒薬だそうです。~ 最初は、附子におびえる2人でしたが、 やがて太郎冠者が恐いもの見たさで、附子の蓋を開けてしまいます。 そこに入っていたのは、 どんみりとした黒い塊…でもなぜか美味しそうな匂いが…。 中に入っていたのは、砂糖でした。 2人は夢中で舐めてしまい、 すっかりなくなってしまった附子の言い訳は…。 今回は、萬斎さんの長男の裕基君、従弟の遼太君、そして故野村万之丞さんのご子息の太一郎君と、 野村一門の若手3人が演じたフレッシュな「附子」でした。 ~故野村万之丞さんのご子息の野村太一郎さんが、野村万作家の演者として出演するということは、 万蔵家と万作家の関係からすると、かなり意外なことですね。 太一郎さんは、若くしてお父様である万之丞さんを亡くされて、 かなりご苦労をされたのでしょうね。 体格も良く、ハリのあるお声、 野村万作家の演者として、これからの活躍を期待いたします。~ 狂言「清水座頭」。 瞽女(盲目の女性・野村萬斎)が清水寺に参詣し、将来の幸いを祈ると、 続いて現れた座頭(野村万作)も、清水寺を訪れ。妻が欲しいと願います。 参詣人で賑わう堂内で2人はぶつかり口論になるのですが、 互いに目が見えないことがわかって誤解が解け、酒を酌み交わします。 やがて2人はそれぞれまどろむと、夢に中に観世音が現れ、 西門に行けば、願いが叶うとのお告げが。 それぞれ西門に向かった2人でしたが、 改めて2人は出会い、晴れて夫婦に。 そして、2人で一つの杖に寄り添いなら、帰ってゆくのです。 狂言には、お告げによって、清水寺の西門に向かう…は、よく出てきます。 清水寺の西門は、日没を眺めて西方の極楽浄土との縁を結ぶという霊験あらたかな所だそうです。 座頭と瞽女の2人は、ささやかな願いが叶い、これからの人生を供に… というあたたかい狂言でした。 狂言「弓矢太郎」。 天神講の当屋(当番)になった男(石田幸雄)の家に集まり、 まだ来ない太郎(野村萬斎)を脅かす算段をしています。 太郎は、とても臆病者で、それを隠すために、空威張りして常に弓矢を携え、 田畑を荒らす鳥獣を討ち取ったと豪語しているのです。 ~ちなみに天神講とは菅原道真の命日にあたる2月25日や毎月の25日に行う天満宮のお祭りだそうです。~ 太郎に夜に天神の森に行き、扇をおいて来れば、金をやろうと持ちかけ、 その太郎を脅かすために、当屋は鬼の姿をして太郎を待ち伏せようとします。 ところが、太郎も、妻に知恵を付けられ、鬼の装束で出かけます。 当然、鬼同士の2人は天神の森でバッタリ…。 野村一門総出で賑やかに演じられました。
2017年04月02日
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やっててよかった公文式。今月からCMが新しくなりました。 野村萬斎さんと、裕基君の親子共演です。 裕基君、ホント、大きくなりましたね…。
2017年02月16日
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