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2024年8月28日★★★8月はオリンピックとお盆休みに娘達が帰って来たこともあり、暫く読書から離れていたが、お盆も終わり、さあ読書を再開するかと未読の本棚を眺めていたら島田荘司や綾辻行人が絶賛していた麻耶雄高の本作が目に留まり、かなり前に読んだことは覚えてるが麻耶雄高の作品を読むのはいつ以来かなと調べてみると、なんと2014年末に読んだ「隻眼の少女」以来だとわかり、実に約10年振りに大どんでん返しの本作を期待して読んでみることにした。首なし死体、密室、蘇る死者、見立て殺人……。京都近郊に建つヨーロッパ中世の古城と見粉うばかりの館・蒼鴉城を「私」が訪れた時、惨劇はすでに始まっていた。2人の名探偵の火花散る対決の行方は。そして迎える壮絶な結末。島田荘司、綾辻行人、法月綸太郎、三氏の圧倒的賛辞を受けた著者のデビュー作。(BOOKデータベースより)本作は当時、京都大学在籍中のだった麻耶雄嵩さんが若干21歳の時の処女作で京都大学推理小説研究会の先輩に当たる綾辻行人さんからの推薦文の中で「この傑作の作者が自分ではないことが悔しくて仕方がない」とまで言わしめた作品である。本作の舞台は京都近郊に建つヨーロッパ中世の古城と見紛うばかりの館の蒼鴉城。その当主である今鏡伊都からの依頼を受け蒼鴉城に乗り込んだのは名探偵の木更津悠也とワトソン役の香月実朝だった。ところが到着するやいなや依頼人は首を切断されて殺されてしまう。ただ、これはこれから始まる連続首切り殺人の序章だったのだ…。一言で述べれば、なんでもありの本格ミステリで、様々なお約束事がぎっしり詰め込まれた作品である。密室、トリック、ロジック、アリバイ、絶対有り得ない奇跡、キリスト教、更に雑学からヨーロッパ文学、歴史などフルコース満載で私なんかが読むと意味不明のなんじゃこれはと感じた印象はこの作品の評価が賛否両論に分かれる理由なのかなと思う。何度か読み直すと理解できないことは無く、構成はこれでもかと言うほど凝っていて、第一部終盤からの奇想天外な木更津の推理と敗北。第二部に登場したメルカトル鮎の木更津犯人説の推理と木更津が対抗したとんでもない推理から、エピローグでは卓袱台をひっくり返したような大どんでん返しと私としては十分楽しめたと思う。しかし、メルカトル鮎が主人公だと思って読み始めた私にとっては、メルカトル鮎の役回りが気の毒で仕方がありません…。
2024.08.28
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2024年7月30日★★★図書館から借りた二冊を読んだあと、これまた予約していた2023年ミステリーランキング三冠(「このミステリーがすごい」、「ミステリが読みたい」、「週刊文春ミステリーベスト10」)達成となった米澤穂信の「可燃物」が確保出来たと連絡があったので、米澤穂信の作品としては2014年度の直木賞候補にもなり、本作同様ミステリーランキング三冠を達成した「満願」以来、実に9年半振りに読んでみることにした。余計なことは喋らない。上司から疎まれる。部下にもよい上司とは思われていない。しかし、捜査能力は卓越している。葛警部だけに見えている世界がある。群馬県警を舞台にした新たなミステリーシリーズ始動。群馬県警利根警察署に入った遭難の一報。現場となったスキー場に捜査員が赴くと、そこには頸動脈を刺され失血死した男性の遺体があった。犯人は一緒に遭難していた男とほぼ特定できるが、凶器が見つからない。その場所は崖の下で、しかも二人の周りの雪は踏み荒らされておらず、凶器を処分することは不可能だった。犯人は何を使って〝刺殺〟したのか?(「崖の下」)榛名山麓の〈きすげ回廊〉で右上腕が発見されたことを皮切りに明らかになったばらばら遺体遺棄事件。単に遺体を隠すためなら、遊歩道から見える位置に右上腕を捨てるはずはない。なぜ、犯人は死体を切り刻んだのか? (「命の恩」)太田市の住宅街で連続放火事件が発生した。県警葛班が捜査に当てられるが、容疑者を絞り込めないうちに、犯行がぴたりと止まってしまう。犯行の動機は何か? なぜ放火は止まったのか? 犯人の姿が像を結ばず捜査は行き詰まるかに見えたが……(「可燃物」)連続放火事件の“見えざる共通項”を探り出す表題作を始め、葛警部の鮮やかな推理が光る5編。(Amazon内容紹介より)本作は5編の全作品とも群馬県警捜査一課葛警部を主人公にした警察ミステリーの短編集である。それぞれで扱う事件はスキー場での遭難、バラバラ殺人、連続放火、人質立てこもり、交通事故など警察ミステリーによくある題材を集めたもので、感想としては、かなり細部まで丁寧に描かれていると感じるが、派手さや、盛り上がるようなものがないので、個人的には地味な小説かなと感じる。全作品通して、事件の細部に見られるちょっとした違和感。この違和感から真相に迫る葛警部の推理が読みどころでしょう。私には絶対わかりません(笑)。
2024.07.30
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2024年3月11日★★★★1月から2月にかけてガリレオシリーズなど東野圭吾の作品を続けて4冊読んだあと、末っ子の結婚式などでバタバタしていて読書に時間が取れなかったのですが、やっと落ち着いたので、さぁ次は何を読もうかと本棚を眺めていると、丁度図書館に予約していた2022年度の本屋大賞ノミネート作で最近話題作をいくつか出していて気になる作家の浅倉秋成の本作が確保されたとメールが入っていることに気が付き、何はともあれ図書館まで受け取りに行き読んでみることにした。成長著しいIT企業「スピラリンクス」が初めて行う新卒採用。最終選考に残った六人の就活生に与えられた課題は、一カ月後までにチームを作り上げ、ディスカッションをするというものだった。全員で内定を得るため、波多野祥吾は五人の学生と交流を深めていくが、本番直前に課題の変更が通達される。それは、「六人の中から一人の内定者を決める」こと。仲間だったはずの六人は、ひとつの席を奪い合うライバルになった。内定を賭けた議論が進む中、六通の封筒が発見される。個人名が書かれた封筒を空けると「●●は人殺し」だという告発文が入っていた。彼ら六人の嘘と罪とは。そして「犯人」の目的とは――。(BOOKデータベースより)本作は2022年本屋大賞ノミネート 、ブランチBOOK大賞、このミステリーがすごいなどの様々なミステリーランキングを席巻した作品で、就職活動を舞台に六人の登場人物の裏の顔が暴かれ、そこで明らかになった六人の嘘と罪の真相がクライマックスに向けて次々と伏線回収されていくパターンのミステリー作品である。最初に波多野の手紙から物語は始まり、その波多野の8年後の死ということから事態は動く。途中のインタビューなどを挟み、波多野が犯人ではないことから残りの5人中に犯人がいるというこのなのだが、二転三転と誰が犯人なのか全く分からない状況で進んでいき、最後の最後まで予想出来ないまま真相が解明するのだが、まさか彼が犯人とは…最後に嶌さんから波多野が好きだったと言う言葉に彼の行動が報われて良かったです。本作を読んで気になる作家がまた1人増えたようだ。
2024.03.11
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2023年12月20日★★★夏に続けて2冊読んだ江戸川乱歩賞作品だがまだ買いだめていたものが10冊程度あるため、読書の習慣が戻ってきた今ならスイスイと読み進められるのではと思い、乱歩賞随一の奇怪な小説と言われ、選考委員の満場一致で選ばれた第46回江戸川乱歩賞受賞作の「脳男」を前回読んだ「プリズン・トリック」以来、約半年ぶりに期待して読んでみることにした。連続爆弾犯のアジトで見つかった、心を持たない男・鈴木一郎。逮捕後、新たな爆弾の在処を警察に告げた、この男は共犯者なのか。男の精神鑑定を担当する医師・鷲谷真梨子は、彼の本性を探ろうとするが…。そして、男が入院する病院に爆弾が仕掛けられた。全選考委員が絶賛した超絶の江戸川乱歩賞受賞作。(BOOKデータベースより)本作は第46回江戸川乱歩賞受賞作品である。地方都市で起きた連続爆破事件で警察が犯人のアジトを突き止めるが、そこで犯人ともみあっていた男を逮捕するが犯人は逃亡する。その男は「鈴木一郎」と言うが言動が奇妙で精神鑑定のため、病院に送られるところから物語は始まる。いゃーなかなか癖のある作品で前半は鈴木を担当することになった医師の鷲谷真梨子と鈴木のやり取りと、鈴木の正体を探る内容が続き、良いのか悪いのか判断出来ないまま話は後半に進んでいくのだが、その病院に爆弾が仕掛けられたあたりから話は急展開されて面白くなっていく。この鈴木と言う男はヒーローなのか?ただの殺人鬼なのか?最後までわからない状態で終るのだが、まぁ続編「脳男II」が出ているので読んでみるしかないようです…
2023.12.20
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2023年11月26日★★★★最近めっきり少なくなった読書の数ですが今月はこれまでに既に3冊読んでいるので、次は4冊目になるのだが、いったい何時以来かと調べてみるとなんと2021年の12月と約2年振りなのがわかり、あの時は確か年間24作品の目標達成に向けてラストスパートをしたのを思い出しました。今回はあの時とは多少状況は異なるが、今年の目標である読書の年間24冊達成に向けて何を読もうかと考えた中で選んだのは、警察小説の短編を書かせたら横山秀夫か長岡弘樹の二人の作家の名前が上がるが、その一人の長岡弘樹の作品で代表作の「教場」シリーズの続編が出版されているのを知り、「教場X 刑事指導官・風間公親」以来1年4ヶ月ぶりに本作を読んでみることにした。最恐教官・風間公親の初陣!新章始動!第一話 鋼のモデリング風間公親は、警察学校第九十四期初任科短期課程の教官となった。助教の尾凪尊彦は、気になる生徒として、人命救助で警察に表彰されたことのある矢代桔平の名を挙げた。第二話 約束の指実家が町工場を営む笠原敦気は、マル暴刑事を希望している。クラブ活動ではソフトボールに力を入れ、元高校球児の助教・尾凪から手ほどきを受けているが、スローイングに難があった。第三話 殺意のデスマスク若槻栄斗は、ブラジリアン柔術の有段者。交番実地研修中に、通り魔を逮捕した若槻に、風間は現場の再現を命じる。第四話 隻眼の解剖医警察学校では課外授業として司法解剖を見学する。不快指数が高いと、犯罪が起きやすい。七月に入り、生徒の大半が嘔吐する講習が近づいていた。第五話 冥い追跡星谷舞美は性格が明るく、成績もトップクラスである。星谷と大学同窓の石黒亘は、下位から成績を上げてきた。卒配後は成績上位二名が最重要署のA署に仮配属となる。第六話 カリギュラの犠牲氏原清純はソリの合わない同期・染谷将寿と、卒業式のスライド上映担当を任された。当日、風間は祝辞の読み上げをやめ、最終講義を始める。(Amazon内容紹介より)本作は大好きな作家である長岡弘樹の「教場」シリーズの最新刊である。物語は風間が警察学校の教官として着任した直後から第94期初任科短期課程に入学した警察学校の生徒とのエピソードを描く。プロローグで警察学校の校長は思う、今までは新米刑事を鍛えていた風間なのだ、警察官のひよっこを相手をするのはある理由があってのことで、いずれ刑事捜査の第一線に戻るんだろうと…。各短編全てに助教である尾凪と生徒が絡む展開で進んでいく。中には風間に退校を突きつけられる生徒が何人も出てくるが、それには全て理由があり、風間にはしっかり見抜かれている。それを同様に見抜けない尾凪なのだが尾凪が鈍いわけではなく、風間が特別なのだ。最終話の卒業式で行われた風間の特別授業で風間の想定を超えた学生がいることを知り、エピローグで風間は校長に警察学校に残る決意を語って締めくくっている。本作の刊行時期が春の連続ドラマのスタートに合わせたのだろうとの想像がつくが、表紙の風間が木村拓哉に似ていると感じるのは私だけでしょうか?
2023.11.26
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2023年11月20日★★★★11月に入って週一冊のペースで調子よく読書を続いているので、このペースで行けば昨年末に目標にあげた年間24冊の読書も達成可能なので早速次は何を読もうかとミステリーランキングをネットで調べていると「週刊文春ミステリーベスト10」と「MRC大賞2022」のダブル受賞の他、数々のミステリーランキングにもランクインしている本作がみつかり、夕木春央という作家は全く知らなかったのだが、そんなことはぬきに読んでみることにした。9人のうち、死んでもいいのは、ーー死ぬべきなのは誰か?大学時代の友達と従兄と一緒に山奥の地下建築を訪れた柊一は、偶然出会った三人家族とともに地下建築の中で夜を越すことになった。翌日の明け方、地震が発生し、扉が岩でふさがれた。さらに地盤に異変が起き、水が流入しはじめた。いずれ地下建築は水没する。そんな矢先に殺人が起こった。だれか一人を犠牲にすれば脱出できる。生贄には、その犯人がなるべきだ。ーー犯人以外の全員が、そう思った。タイムリミットまでおよそ1週間。それまでに、僕らは殺人犯を見つけなければならない。(Amazon内容紹介より)読み始めると地下建築に閉じ込められるミステリー定番のクローズドサークル物だなと感じながら淡々と話が進んでいく。地下建築が地震により閉じ込められてしまった状況になり、全く動機が不明な第1の殺人が起こる。メンバーが助かるには生存可能な約1週間で残りの9人から犯人を見つけださないと行けない。その後謎だらけの第2の殺人、第3の殺人が起こるというひねりのある展開とはちょっと言い難い作品だなぁと読み進める中、いよいよクライマックスのエピローグに入るのだが、なんじゃこれわ!!の展開に誰もが読み返したのではないかと…。本作が評価されたのは間違い無くこのエピローグに尽きるでしょう。そこに至るまでの延々と続く前振りを我慢できるかで好き嫌いが分かれそうな作品ですが、私は楽しめました。皆さんはどっちに分類されるか読んでみてはどうでしょう。ただこの著者の別の作品を読んでみたいと思わないのは何故なんでしょうね…。
2023.11.20
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2023年10月28日★★★★先々週、藤原伊織の作品の「てのひらの闇」を久々に読んでみたがハードボイルドタッチで読後感も良かったので、すぐ続編の本作を読むつもりでしたが、嫁さんのインフルエンザ感染や自分のもろもろの事情から少し時間が空いたが、藤原伊織の最後に遺した長編小説である本作「名残り火 てのひらの闇Ⅱ」を続けて読んでみた。飲料メーカーの宣伝部課長だった堀江の元同僚で親友の柿島が、夜の街中で集団暴行を受け死んだ。柿島の死に納得がいかない堀江は詳細を調べるうち、事件そのものに疑問を覚える。これは単なる“オヤジ狩り”ではなく、背景には柿島が最後に在籍した流通業界が絡んでいるのではないか―。著者最後の長篇。(BOOKデータベースより)主人公は前作と同じで堀江雅之。物語は親友である柿島隆志が暴漢に襲われ、殺害されたところから始まる。柿島がなぜ殺されなければならなかったのか、堀江は真相を解明するために独自に調査を始める。優秀な協力者たちも絡んで物語が進んで行くが、柿島の妻奈穂子の過去から謎が徐々に解明されていく。物語に登場する一癖も二癖もある刑事の関根、サンショーフーズ社長のバイク好きの三上、前作に引き続き元部下の大原、堀江の行きつけの店のオーナーのナミちゃんなど登場人物の魅力が随所に引き出す著者の筆力を感じながら柿島の妻奈穂子からの手紙とクライマックスには脱帽しました。未読の本棚に残っている「ひまわりの祝祭」も近いうちに読んでみようと思う。
2023.10.28
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2023年10月16日★★★★最近読んでいない作家の作品をと先日荻原浩の作品を久しぶり読んでみたが、続けて第2弾として手に取ったのは藤原伊織の作品の「てのひらの闇」である。藤原伊織と言うと江戸川乱歩賞と直木賞のダブル受賞作の「テロリストのパラソル」が印象的だったが、その後に読んだのが遺作で未完に終わったにもかかわらず刊行された「遊戯」だったが、それを読んだのが確か2014年春だったので、実に9年半ぶりに藤原伊織の作品を読んでみることにした。二人の男の道を決定づけたのは、生放送中のスタジオで発せられた、不用意な、しかし致命的な一言だった―。二十年後、その決着をつける時が訪れ、一人は自死を、一人は闘うことを選んだ。著者の新たな到達点を示す傑作。 --このテキストは、絶版本またはこのタイトルには設定されていない版型に関連付けられています。(BOOKデータベースより)著者は59歳の若さで亡くなりましたが、実は私の友人も本作を完読する直前に先日同じ59歳で亡くなりました。何か不思議な縁を感じてしまい、気持ちがざわつきました。内容はと言うと早期退職の勧告を受け退職直前の飲料会社のサラリーマンの堀江が、恩義のある会長が自殺した死の謎の真相解明に奮闘する話です。ヤクザも絡むハードボイルドタッチで主人公の堀江がなかなか格好良く、主人公の周りの魅力的な女性が複数出て来て、それぞれの堀江や会長とのの関わりが本作のキモになっています。真相は読んで欲しいのですが、最後の1頁をめくったあと、堀江と会長との信頼関係に痺れました。本作の続編が出ているので続けて読んでみようと思う。
2023.10.16
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2023年9月30日★★★9月に入って東野圭吾の新作の「魔女と過ごした7日間」を読んだあと、次は最近読んでいない作家の小説を読もうと決めていたのだが、いざ読むとなると色々有りすぎて決まらずに日が経ってしまい、そろそろ何か読まないとと未読の本棚を眺めていると、ミステリー小説の「噂」、涙なしでは語れない「明日の記憶」、ユーモアたっぷりの痛快小説「誘拐ラプソディー」、サラリーマンの奮闘記描いた「神様からのひと言 」、直木賞受賞作の「海の見える理髪店」など何を書かせても感動を与えてくれる荻原浩の小説を約6年ぶりに読んでみた。霊長類研究センター。猿のバースディに言語習得実験を行っている。プロジェクトの創始者安達助教授は一年前に自殺したが、助手の田中真と大学院生の由紀が研究を継いだ。実験は着実に成果をあげてきた。だが、真が由紀にプロポーズをした夜、彼女は窓から身を投げる。真は、目撃したバースディから、真相を聞き出そうと…。愛を失う哀しみと、学会の不条理に翻弄される研究者を描く、長編ミステリー。(BOOKデータベースより)荻原浩さんの過去に読んだミステリーは評価が高い「噂」のみだが、この作品は、少し暗い話だったはず、本作は感情を揺さぶられた作品だった。内容はというと、東京霊長類研究センターに勤務する研究者の田中真が主人公。彼の恋人で大学院生の研究スタッフである藤本由紀が窓から飛び降りて死んでしまう。死因は自殺?それとも他殺?事件当時に由紀と一緒に居たのが、人間と会話が出来るサルのバースディだけだった。唯一の目撃者がサルという設定だが、想像以上の言語能力を示すバースディは、本作の重要な役割を担っていく…。大学という組織の裏側など徐々に真相が明らかになっていくが、哀しい結末は是非読んで感じて欲しい。最後に言えることは真と由紀とバースディは人間以上の絆で結ばれていたと言うことだ。
2023.09.30
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2023年8月31日★★★先日、西澤保彦の本格的なミステリーものを読んだあと、少し間が空いたが次は何を読もうかと未読の本棚をまた眺めていると「アヒルと鴨のコインロッカー」を読んだあと、お気に入りの作家の1人になったと感じて買いだめていた伊坂幸太郎の未読本が7,8冊あることがわかり、これは久しぶりに読まないとと手に取ったのは、続編となる「モダンタイムス」を先に読んでしまって後悔していた本作だが「モダンタイムス」の内容もかなり忘れてしまっているので気にせず読んでみることにした。会社員の安藤は弟の潤也と二人で暮らしていた。自分が念じれば、それを相手が必ず口に出すことに偶然気がついた安藤は、その能力を携えて、一人の男に近づいていった。五年後の潤也の姿を描いた「呼吸」とともに綴られる、何気ない日常生活に流されることの危うさ。新たなる小説の可能性を追求した物語。(BOOKデータベースより)本作は未来党の若き党首にして、歴史の教科書にも載っている五・一五事件で暗殺された総理大臣と同じ姓を持つ男の犬養。その犬養の主張はストレートで歴代総理が決して口にしなかった米国批判など思ったことは躊躇しないで発言する。その犬養に立ち向かおうとした兄弟の物語である。前半の「魔王」は兄、後半「呼吸」は弟が、それぞれの特異な能力を駆使して犬養に挑む。日本を変えてやるなどと大それたことを考えたわけではないが、ただ疑問を感じることからすべては始まると言う兄弟の共通の信念らしい。本作で伊坂幸太郎が読者に投げかけるものは軽くはない。ただ弟の潤也の能力は私も欲しいです。皆さんも同じですよね(笑)
2023.08.31
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2023年8月15日★★★★8月に入り読書から少し離れていたが、お盆休みに台風7号が近畿地方に直撃すると言う事で外出も出来ずに自宅で状況をみながら待機することになり、台風対策も済ませて一休みしていたところ、未読の本棚を眺めていたら西澤保彦の代表作の「7回死んだ男」の次に発表した作品と知り、読みたくて買ったのを思い出し、SFものが多い西澤作品とは異なり、本格的なミステリーものである本作を「人格移転の殺人」以来、約1年ぶりに読んでみることにした。嵐の山荘に見知らぬ怪しげな人たちと閉じこめられた万理と園子。深夜、男におそわれた万理は、不可抗力も働き彼ら全員を殺してしまう。その後、園子の部屋へ逃げこむと、園子も死体となっていた。園子を殺したのは誰なのか。驚愕のラストまで怒濤の展開。奇才が仕掛けたジェットコースター・ミステリー。(BOOKデータベースより)まず、登場人物の名前が数字で統一されているが普通には読めないので何度もページをもどったりして少し面倒だったが、あっと言う間に読み切れたと言うことは面白かったのかなと読後の素朴な感想です。嵐の中の閉ざされた別荘に集う人々というシチュエーションで主人公のマリこと六人部万里が次から次へと一体何人殺されるんだろうとコメディチック書かれているので恐怖感は無かったが、次々と予想外の展開が待ち受け、息をつく暇もない、まさにジェットコースター・ミステリでした。最後に判明する真相がありえんやろーの一言で、すっかり騙されました。これさすがに分かった人いないよなぁ…本作はかなり好き嫌いが分かれる作品でしょうが、私的には楽しめたので良しとしましょう。
2023.08.15
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2023年7月26日★★★今月始めに読んだ横関大のデビュー作であり、第56回江戸川乱歩賞受賞作の「再会」が期待以上だったので続けて多数ある未読の江戸川乱歩賞受賞作を眺めていると、その前年の受賞作である本作が目に止まり、トリックが凄いと言う事で選考委員を唸らせ、又反対に江戸川乱歩賞史上最大級の問題作とも評された本作を読んでみることにした。市原の交通刑務所内で、受刑者石塚が殺され、同所内の宮崎が逃亡。遺体は奇妙にも“前へ倣え”の姿勢をとっていた。完全な密室で起きた事件は、安曇野を舞台にした政治汚職にまで波及していく。単行本未収録の“ある人物からの手紙”を収めた最強のトリックミステリーを文庫化!。第55回江戸川乱歩賞受賞作。(BOOKデータベースより)本作は第55回江戸川乱歩賞受賞作品であるが、選考委員も悩ませた問題作のようだ。なかでも市原交通刑務所の内部や受刑者たちの生活の様子は知らない世界なので読んでいて興味深いが、刑務所内での殺人事件というのは聞いたことがなく前代未聞であり、さらに密室殺人というのだから、これをどう決着させるつもりなのか読み進めたが、選評でも指摘されている通り、視点人物が多く、必要なのかと疑問に思えるぐらい登場人物も多いので何度も読み返す事になり読み終えるのに時間がかかってしまった。また、本作の肝のトリックが成立する前提にはかなり無理があるような気がする。選考委員の1人である東野圭吾さんによると「どうにもならない大きな傷があまりにも多い」と言うがなるほどなぁと自分も納得してしまいました。本作後にベストセラーを出していればこの選考に意味があったのだと思えるが未だにくすぶっているようなので選考間違いだったのかと思ってしまう。がんばってそんな意見を見返して欲しいと願うしかない…
2023.07.27
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2023年7月8日★★★★先月読んだ井上夢人の短編集の「あわせ鏡に飛び込んで」を読んだあと出張が重なり少し間が空いたが、今月に入って時間も出来たので本棚から未読の小説を探してみたところ、推理小説の登竜門である江戸川乱歩賞受賞作が多数未読状態だったので、その中で最近ドラマ化された作品を出すなど精力的にがんばっている横関大のデビュー作であり、第56回江戸川乱歩賞受賞作でもある本作を読んでみた。小学校卒業の直前、悲しい記憶とともに拳銃をタイムカプセルに封じ込めた幼なじみ四人組。23年後、各々の道を歩んでいた彼らはある殺人事件をきっかけに再会する。わかっていることは一つだけ。四人の中に、拳銃を掘り出した人間がいる。繋がった過去と現在の事件の真相とは。第56回江戸川乱歩賞受賞作。(BOOKデータベースより)まず本作は第56回江戸川乱歩賞受賞作であるが、横関大はそこに至るまでになんと8年連続で応募し、この「再会」(受賞当時は「再会のタイムカプセル」)で念願の受賞に至ったのだから執念が実った作品だったようだ。2年半ほど前に読んだ下村敦史の「闇に香る嘘」と比べても他の人はどうかわからないが、この作品の方が私的には完成度が高いと思う。主な登場人物は4人で、みんな何が知ら秘密を隠しているが、その真相が分かる中、終盤までどんでん返しが続き、最後の結末には驚きを隠せませんでした。この作品はドラマ化されているようなので是非動画サイトを探して小説と比較してみたいと思う。また、新人でこれだけの作品を書けるのかと思うと他の作品も読んでみたくなる。
2023.07.08
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2023年5月23日★★★5月に入って全く読書をすることも無く、これはやばいと思っていたのですが、そんな時に図書館から昨年末に予約していた呉勝浩の「爆弾」が確保されましたと連絡があり、この作品は日本最大級のミステリーランキングの『このミステリーがすごいと! 2023年版』、『ミステリが読みたい! 2023年版』で2冠をとり、さらに第167回直木賞候補作にもなったというなんか凄い作品らしい。江戸川乱歩賞受賞作家でもある呉勝浩の作品を何はともあれ初めて読んでみることにした。些細な傷害事件で、とぼけた見た目の中年男が野方署に連行された。たかが酔っ払いと見くびる警察だが、男は取調べの最中「十時に秋葉原で爆発がある」と予言する。直後、秋葉原の廃ビルが爆発。まさか、この男“本物”か。さらに男はあっけらかんと告げる。「ここから三度、次は一時間後に爆発します」。警察は爆発を止めることができるのか。爆弾魔の悪意に戦慄する、ノンストップ・ミステリー。(Amazon内容紹介より)江戸川乱歩賞受賞作家であることは随分前から知ってはいたが著者の作品は今回が初読みでした。本作は警察と仕掛けた爆弾の容疑者として名乗り上げたスズキタゴサクとの駆け引きがほぼ8割を占める作品である。爆弾による緊迫感やスズキタゴサクとの頭脳戦が延々に続く展開に先が全く読めない状況で途中までかなりきつい作品でした。そのスズキタゴサクですがキャラが強烈で常識が全く通用しない無敵の人間のため、警察も翻弄されっぱなしで、何を考えているのかが予想もつかないし、不安と期待が入り混じりながら後半に突入して行くのだが、最後に真相に辿り着いたあとに、読み返すと様々な伏線が組み込まれており、この著者巧いなと関心させられました。結末への展開が駆け足に感じたが前半、中盤としんどい展開だったので、それがなんとか読み切れたのかもしれない。読み終わった印象としてはこんなに長い話にする必要があったのか疑問に思ったのは私だけ?多分この著者の作品はもう読まないかも…
2023.05.23
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2023年3月30日★★★先月末に読んだ逢坂冬馬の2022年本屋大賞受賞作の「同志少女よ、敵を撃て」から半月が経ち、またまた読書から離れていたが、休日の時間がある時に次は何を読もうかと未読の本棚を眺めていると「ソロモンの犬」が目に入り、これは道尾秀介の代表作として読書を始めた頃に「シャドウ」、「ラットマン」と一緒に買ったものだと思い出し、何れも評価が高かったので次はこれだと決めて「龍神の雨」以来、約1年2ヶ月振りに読んでみることにした。秋内、京也、ひろ子、智佳たち大学生4人の平凡な夏は、まだ幼い友・陽介の死で破られた。飼い犬に引きずられての事故。だが、現場での友人の不可解な言動に疑問を感じた秋内は動物生態学に詳しい間宮助教授に相談に行く。そして予想不可能の結末が…。青春の滑稽さ、悲しみを鮮やかに切り取った、俊英の傑作ミステリー。(BOOKデータベースより)本作は解説にも書かれているが道尾秀介としては珍しい大学生の男女が登場する瑞々しい青春ミステリーとして描かれている。序盤で少年の命が失われるという衝撃的な展開から始まり、少年の死の謎を追う過程で、さらに後半にかけて衝撃が続くというミステリーに軸足を置いた作品である。また、悲しい中にも青春ミステリーらしい甘酸っぱさを感じるところはきれいにまとまっているし、十分に楽しめたと思う。道尾秀介の作品はミステリーだけでなく個性豊かであるが、私はやっぱりミステリー系が好きだと感じる。沢山の作品を世に出されているので他の作品も読んでみようと思う。
2023.03.30
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2022年11月22日★★★★またまた読書から遠ざかっていたが、かと言って読書が嫌になったわけでもなく、なんとなく時間が経過したみたいで不思議である。実際読みたい本はまだまだ本棚に沢山並んでいるので、先週ごそごそと古めの作品を探していると、坂木司の作品が何冊か並んでいたのでどれか読んでみようとパラパラと眺めていると、確か一風変わった短編小説だと聞いて買っていた「短劇」を見つけて「ホテルジューシー」以来、実に8年ぶりに読んでみることにした。懸賞で当たった映画の試写会で私が目にしたのは、自分の行動が盗撮された映像だった。その後、悪夢のような出来事が私を襲う…(「試写会」)。とある村に代々伝わる極秘の祭り。村の十七歳の男女全員が集められて行われる、世にも恐ろしく残酷な儀式とは?(「秘祭」)。ブラックな笑いと鮮やかなオチ。新鮮やオドロキに満ちた、坂木司版「世にも奇妙な物語」(BOOKデータベースより)。まず読んだ感想は一言で今まで読んだ坂木司のイメージを覆す作品集である。一つの話が約10ページ程度とかなり短めの短編が全部で26編。あとがきにも書かれているが当初は「いい話」の連載として始まったというがだんだんブラックな話になっていき、中には暴力描写がきついものやグロテスクなものもあったりする。分類してみると、いい話は典型的な「カフェラテのない日」と「物件案内」、あとは「カミサマ」ぐらい。「カミサマ」はこのご時世だけに考えさせられる…。いい話とはちょっと外れて「最後の別れ」「ビル業務」は意表を突く作品かな。サイコホラー風の作品は「幸福な密室」「迷子」「ほどけないにもほどがある」「壁」「並列歩行」と多数あり面白い。ドロドロした作品は「目撃者」「雨やどり」「ケーキ登場」「しつこい油」でちょっとグロい話は「最先端」「眠り姫」「肉を拾う」「いて」あたり。社会派作品てしては「MM」「最後」「恐いのは」「穴を掘る」とちょいグロ系の「試写会」。あとカテゴリは悩むが超面白い「秘祭」「変わった趣味」「ゴミ掃除」は傑作でオススメです。分類は個人的主観のいいかげんなものなのでご注意を…。まあ自分で読んで分類してみてくださいませ(笑)。本作を読んで坂木司のデビュー当時の代表作である「ひきこもり探偵」三部作の残り二冊を読んでみたくなった。
2022.11.22
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2022年9月12日★★★7月に長岡弘樹の「教場X」を読んだと、長女に初孫が産まれてバタバタな1ヶ月があり、読書が完全に止まっていたのだが、これではまずいと9月に入って読み始めたのは、これまた警察小説の書き手である佐々木譲の北海道警シリーズで「笑う警官」「警察庁から来た男」「警官の紋章」「巡査の休日」の続編であるシリーズ第5弾を「巡査の休日」から実に6年半ぶりに読んでみた。神奈川で現金輸送車の強盗事件が発生し、犯人の一人に鎌田光也の名が挙がった。鎌田は一年前、ストーカー行為をしていた村瀬香里のアパートに不法侵入したところを小島百合巡査に発砲され、現行犯逮捕された。だが、入院中に脱走し指名手配されたまま一年が経ってしまっていたのだ。一方、よさこいソーラン祭りで賑わう札幌で、鎌田からと思われる一通の脅迫メールが香里の元へ届く。小島百合は再び香里の護衛につくことになるのだが…。(裏表紙引用)前作がかなり前に読んでいたので本作を読む前に読後ブログを確認すると前作ではストーカー被害という題材からか小島百合が主人公で佐伯や津久井がサブという感じで新宮に関しては出番も少なく殆ど活躍する場面もなく、このシリーズの中ではイマイチだと感想を書いていたようだ。本作では、佐伯をメインにサブとして津久井、小島、新宮のおなじみの顔ぶれに長正寺が加わり、函館、小樽、釧路の3つの事件のつながりを追い、その真相を暴くという展開で進んでいき、不満もなく楽しめたのだが、久しぶりの読書のせいかもしれないが、それぞれの事件との関係が少し複雑でスムーズに読み進められなかったのが残念に思う。あと本作のタイトルから麻薬などの密売人を予想していたが、読んでみるとなるほどなと思わせてくれるのはさすがですね。次作の「人質」も未読の本棚にあるので近々読んでみようと思う。。
2022.09.12
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2022年7月11日★★★★警察小説を横山秀夫、今野敏と続けて読んだあと、次は佐々木譲か大沢在昌かと考えていたが、長岡弘樹という大好きな作家をもう一人忘れていたことを思い出し、また、代表作の「教場」の続編が昨年出版されていて読んでみたいと思っていたことと警察小説の良い流れを継続させるため、風間が警察学校の教官になる前の刑事時代を書いた「教場0」の続編にあたる本作を「風間教場」以来1年ぶりに読んでみることにした。●第1話 硝薬の裁き益野紳佑の妻才佳は、半年前、車にはねられ亡くなった。事故の唯一の目撃者は娘の麗馨だった。警察は幼い麗馨の証言を採用せず、犯人とされた男は不起訴となっていた。●第2話 妄信の果て大学四年生の戸森研策は、地元新聞社から内定を得た。ゼミ論文の単位が取得できれば卒業も確定する。前途洋々の戸森のもとへ、担当教授から突然の連絡が入る。●第3話 橋上の残影経理事務の仕事をしている篠木瑤子は、十年前に恋人を自死により失っている。その死の原因となった男は刑期を終え、娑婆でのうのうと暮らしていた。●第4話 孤独の胎衣短大生の萱場千寿留は工芸家の浦真幹夫と関係を持ち、妊娠した。浦真は中絶費用を渡し、海外に旅立ったが、千寿留は新しい生命の誕生を待ちわびていた。●第5話 闇中の白霧名越研弥は、闇サイト経由で違法な薬物や商品を仕入れ、莫大な冨を得た。そろそろ足を洗いたいのだが、相棒の小田島澄葉を説得できずにいた。●第6話 仏罰の報い著名な有機化学者である清家総一郎は実験中の事故で両目に劇薬を浴び、一線を退いた。隠棲生活を送る清家の悩みの種は、娘・紗季の夫の素行だった。(Amazonの内容紹介より)本作は刑事であったころの風間が現場で新人刑事に教官として指導する「教場0」の続編に当たる。第一話の容疑がかかるのは承知の上、妻の命と娘の声を奪った男を銃撃し、証拠の隠滅は抜かりないはずだったが、逮捕の切っ掛けになったのは…。声が出ない娘が最後に父親に放った一言だけが僅かな救いだったの「硝薬の裁き」から前作のラストと繋がる第六話の被害者には全く同情出来ないが、問題はいかにして実行したのか?真相が明かされてみてもここまで壮絶な決意ができるか。また、もっと他の方法はなかったのだろうか思わせる「仏罰の報い」まで前作の「教場0」と同様に楽しめた。風間の片目を奪った犯人はまだ捕まっていないため、まだ続編がありそうだなと期待するのは私だけでは無いはず。
2022.07.11
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2022年6月25日★★★★今月頭に読み終えた薬丸岳の「Aではない君と」から出張があり、少し間が空いたが、次に読むのは警察物の小説と決めていたので、未読の本棚を眺めていると今野敏、佐々木譲、大沢在昌、横山秀夫の中で、さあ誰にしようかと迷ったが警察物でも人間味のある少し変わった小説を書く横山秀夫の本作が目に止まり、婦人警官を主人公にした短編小説の「顔FACE」以来約1年ぶりに読んで見ることにした。阪神大震災の前日、N県警警務課長・不破義仁が姿を消した。県警の内部事情に通じ、人望も厚い不破が、なぜいなくなったのか?本部長をはじめ、キャリア組、準キャリア組、叩き上げ、それぞれの県警幹部たちの思惑が複雑に交差する…。組織と個人の本質を鋭くえぐる本格警察サスペンス。(BOOKデータベースより)阪神大震災とN県警本部の不破警務課長の失踪が同時進行していく物語であるが主は人望も厚い不破が姿を消したことに県警幹部6人の思惑と利害から内部抗争が繰り広げられる一幕劇で、保身、野心から失踪の真相は二の次で幹部6人それぞれの駆け引きが本作の読みどころと言っても良いと思う。キャリア組である本部長の椎野勝巳46歳、ナンバー2に当たる警務部長の冬木優一35歳がキャリア組、地元組のトップ3である刑事部長の藤巻昭宣58歳、生活安全部長の倉本忠57歳、交通部長の間宮民男57歳が特に若い冬木に強烈な対抗意識を燃やしてキャリア組との内部抗争に発展していく。その中で内部抗争に疑問を感じ、情報は共有すべきと訴える警備部長の堀川公雄51歳がいるのだが準キャリアという中途半端な立場でどちらに付く気もないと誤解を生む。あと、幹部の妻たちの横の繋がりも大きなポイントで幹部の官舎は隣接しているのため夫の上下関係が妻たちの関係にも少なからず影響を与えている。中でも冬木の妻は若さからか末恐ろしい…。最後の藤巻と堀川の行動が警察組織として正しい方向へ導いて行くことを願うが誰も知る由もない。
2022.06.25
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2022年6月7日★★★★5月は結局、東野圭吾の「むかし僕が死んだ家」の1冊だけに終わってしまったので6月は最低3冊を目標にと本棚を眺めて最初に手に取ったのが少年犯罪を題材にした江戸川乱歩賞受賞作の「天使のナイフ」を読んで好きな作家になった薬丸岳の作品の中で、またまた少年犯罪を題材にした本作を「闇の底」以来、約3年半ぶりに読んでみた。あの晩、あの電話に出ていたら。同級生の殺人容疑で十四歳の息子・翼が逮捕された。親や弁護士の問いに口を閉ざす翼は事件の直前、父親に電話をかけていた。真相は語られないまま、親子は少年審判の日を迎えるが。少年犯罪に向き合ってきた著者の一つの到達点にして真摯な眼差しが胸を打つ吉川文学新人賞受賞作。(BOOKデータベースより)江戸川乱歩賞受賞作の「天使のナイフ」と同様に少年犯罪を題材にした重い内容だが本作は被害者の立場ではなく、加害者の父親という設定で本当に読み応えのある作品だった。少年法については、さまざまな意見があると思うが、やはり命を奪ってしまった事の重大さを思うとどんな理由があれど考えさせられてしまう。週刊誌の連載時は第二章で完結していたらしいが、単行本化されたときに第三章が付け加えられたのだが、この第三章が本作を吉川文学新人賞に導いたのは間違いない。読み終えて本当に薬丸岳の筆力を感じさせられた作品である。まだ数冊本棚に薬丸岳の作品を眠っているのでなるべく早く次の作品を読んでみたいと思う。
2022.06.08
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2022年4月25日★★★★先月末に読み切った海堂尊のバチスタシリーズ後、末っ子の引っ越しや新年度に入っての仕事の準備に出張が重なり全く読書から離れていたのだが、やっとゆっくり自分の時間が週末取れたので久しぶりに読書をと未読の本棚を眺めていたら西澤保彦の初期作品の「7回死んだ男」と並んで代表作であるSFとミステリーが融合した本作が目に止まり、いつ以来かと調べてみると、なんと7年ぶりなのが分かり「瞬間移動死体」以来、久しぶりに読んでみることにした。突然の大地震で、ファーストフード店にいた6人が逃げ込んだ先は、人格を入れ替える実験施設だった。法則に沿って6人の人格が入れ替わり、脱出不能の隔絶された空間で連続殺人事件が起こる。犯人は誰の人格で、凶行の目的は何なのか?人格と論理が輪舞する奇想天外西沢マジック。寝不足覚悟の面白さ。(BOOKデータベースより)本作はSF&本格ミステリの両方で高く評価されたというが、かなりSFチックな小説だと思って読んだ方がいいと思う。内容はというとファーストフード店にいた6人が突然の大地震で逃げ込んだ先がシェルターではなく、人格を入れ替える実験施設だったというところから物語は始まる。その存在は米国政府の極秘のものなのだが、政府にも全く手に負えないため施設だけがそのまま残されていたのだった…その人格移転とは一度人格転移が起きると一生人格転移が続き、2人ならば相互に3人以上ならば順番に人格がリレーされてぐるぐる何度も移転が続き、しかも転移する時間間隔は一定ではないという。そんな中、人格と身体が異なる6人が次々と殺されるていくという予想もつかない展開となり、身体はAだが人格はBというから、いったい犯人は誰なのかと読んでいて頭がこんがらがってくるのは私だけでは無いはず。奇想天外の面白い試みとは思うが、流石にややこしくて何度も読み返していたのが、途中で読み返すのをやめて先に進んだのが正直なところだ。6人以外に別にいた人物や動機などが最後に明かされるのだがあまりにも混乱していて素直に驚けず、えっそうなの?としか言いようがなかった。まぁ最後はハッピーエンドと言うことでめでたしめでたし…
2022.04.25
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2022年3月20日★★★冬季オリンピックが終わったらまた読書を再開しようと思っていたがパラリンピックも終わってやっと読書を再開して手に取ったのは大学病院の心臓手術での謎の術中死の原因調査に任命された万年講師の田口と厚生労働省の変人役人の白鳥が活躍するミステリー大賞受賞のバチスタシリーズ続編である本作を約9年振りに読んでみた。小児科病棟に勤務する浜田小夜の担当は、眼の癌=網膜芽腫の子供たち。看護師長・猫田の差配で、不定愁訴外来の田口公平は彼らのメンタルサポートをすることになった。だが同じ頃、患児の父親が殺され、小夜は警察に嫌疑をかけられてしまう。さらに、緊急入院してきた伝説の歌姫に、厚生労働省の変人・白鳥まで加わり、物語は思わぬ展開に―。大人気「バチスタ」シリーズ第2弾、装いを新たに登場!(BOOKデータベースより)デビュー作である「チーム・バチスタの栄光」の続編を現役の医師を続けながら発表した田口・白鳥のバチスタシリーズだか色々な意味でデビュー作とは異なる印象を感じた。文庫版の解説にも書かれている通り、一部読者からは批判の声も上がったらしい。東城大学医学部付属病院小児科の看護師浜田小夜と当院に緊急入院してきた伝説の歌姫水落冴子の二人の歌姫には、共通の能力があるらしい。その共通の能力が批判された理由に違いないが私もこれには大いに戸惑った。前作同様、田口に絡む白鳥が唐突に登場するのは予想どおりだが、それにもう一人の変人加納警視正がバラバラ殺人事件の捜査で病院に乗り込んでくる展開となり物語は進んでいく。今回もAiが解決のキーにはなっているが良くも悪くも、前作よりエンターテイメント的な作品と感じるのは私だけでは無いはず。バチスタシリーズ第3段の「ジェネラル・ルージュの凱旋」はミステリー色を強く打ち出した傑作らしいのでこれは読んでおきたいと思う。
2022.03.20
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2022年1月30日★★★★年始に読んだ岡嶋二人の「眠れぬ夜の報復」のあと、U-NEXTの動画にハマって読書が中断していたがそろそろ読書を再開するかと未読の本棚を眺めて選んだのは私を読書に導いてくれた道尾秀介の大藪春彦賞受賞作である本作を「貘の檻」以来、約2年振りに読んでみることにした。添木田蓮と楓は事故で母を失い、継父と三人で暮らしている。溝田辰也と圭介の兄弟は、母に続いて父を亡くし、継母とささやかな生活を送る。蓮は継父の殺害計画を立てた。あの男は、妹を酷い目に遭わせたから。―そして、死は訪れた。降り続く雨が、四人の運命を浸してゆく。彼らのもとに暖かな光が射す日は到来するのか?大藪春彦賞受賞作。(BOOKデータベースより)本作品はよく似た事情を抱えた二組の接点のない家族がある雨の日に結びつけられ、運命を狂わせていく。爽快感やドキドキ感もないドロドロした物語である。内容はというと二組の家族は両親の一方が亡くなり、その後再婚する。さらに血の繋がった親の方が亡くなり、血の繋がらない親と子供だけが残るという異例の状態から物語はスタートする。物語の前半は中だるみもあったが中盤以降、二組の兄弟が抱く義理の親への疑念がどんどん膨らんでいく。だが、その疑念が救いようの無い展開に進ませていってしまう…まんまと道尾秀介の騙しを見抜けなかったし、ミステリーによくあるトリックありきの内容ではなく、本当に飽きさせることのない後半のラストスパートの筆力は流石である。まだ数冊本棚に未読本をまた読んでみたくなった。
2022.01.30
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2021年12月28日★★★★先日、Amazonプライムの動画で新着情報を見ていたらなんと2年程前にWOWOWでドラマ化されていた麻見和史の「蝶の力学」がアップされている事を知り、確か映像を見る前には先に小説を見るべきだと判断し、ドラマを見るのを躊躇ったのを思い出した。あれから未だに読んでいない小説を前作を読んでから約2年半ぶりに読んでみることにした。惨殺された若き資産家の喉には可憐な花が活けられ、その妻は行方をくらました。新聞社には「警察とのゲーム」を仄めかす挑発的なメールが届き、殺人分析班の如月塔子ら警察は怨恨の線で動き出す。しかし犯人の魔の手は警察にも及び、ついに―。猟奇的な劇場型犯罪を緻密な推理で追い詰める人気シリーズ七作目。(BOOKデータベースより)このシリーズの読みどころであるが今回も喉を刃物で切られたと思われる傷口に青い花を四本差した猟奇的な殺人事件から始まる。警察を挑発するようなメールが大手新聞社に届き、如月塔子ら警視庁捜査一課第十一係の面々は捜査に追われる。 本作が前作までの作品と異なるのは捜査の途中で塔子の指導役である鷹野が犯人らしき人物に襲われけがを負い、普段はスマートでちょっと軽めの印象だった尾留川が塔子との新コンビを組む中での活躍ぶりが印象的だった。彼もやる時はやるんだなぁ…(笑)。最後の塔子の真相解明も様になってきて成長ぶりがうかがえる。また、鷹野の塔子とコンビを組む前の相棒とのエピソードも興味深い。「賢者の棘」まで13作続く本シリーズを全作読んでみたいと思う。
2021.12.28
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2021年12月5日 ★★★★ 先月読んだ島田荘司の名作「異邦の騎士」から仕事が忙しくなり少し経ってしまったが、読書意欲は衰えていなかったのでそろそろ何か読んでみようかと考えていた頃、夏に図書館で予約していたこのミス、文春ミス、本格ミスの三冠を達成した今村昌弘の「屍人荘の殺人」シリーズ第3弾の本作が届いていると連絡があり、前2作と同様クローズド・サークルものと言うことで慌てて受取に向い期待して読んでみることにした。 『魔眼の匣の殺人』から数ヶ月後――。神紅大学ミステリ愛好会の葉村譲と剣崎比留子が突然の依頼で連れて行かれた先は、“生ける廃墟"として人気を博す地方テーマパークだった。園内にそびえる異様な建物「兇人邸」に、比留子たちが追う班目機関の研究成果が隠されているという。深夜、依頼主たちとともに兇人邸に潜入した二人を、“異形の存在"による無慈悲な殺戮が待ち受けていた。待望のシリーズ第3弾、ついに刊行!(Amazon内容紹介より) これはぶっちゃけまず真相解明出来る人はいないでしょう。いるとしたら著者の今村さんだけだと思うぐらい最後に明かされた真相が桁外れの予想外でどうやってこんな真相を考えるのか著者に聞いてみい。このシリーズの評価が高いのは納得させられる。設定上のびっくり感もデビュー作のゾンビより本作の方が良くシリーズ一番ではないかと感じる。最後に次作への伏線としてデビュー作で登場の映研の重元が登場するがさらなるホームズ役の剣崎比留子を支える葉村譲の成長が楽しみだ。
2021.12.05
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2021年11月19日 ★★★★11月に入り少し読書から離れていたので先週久しぶりにBOOKOFFに寄ってみたのだが特に何かを探すわけでもなく100円コーナーの書棚を眺めていたらなんと東西ミステリーベスト100に入った島田荘司の名作2冊が綺麗な状態で見つかりパラパラとページをめくると無性に読んでみたくなりそのままレジに直行してしまいました…。本作は島田荘司の本当の意味の最初に書いた小説らしく前回読んだ占星術殺人事件以来なんと8年半振りに読んでみることにした。失われた過去の記憶が浮かびあがり男は戦慄する。自分は本当に愛する妻子を殺したのか。やっと手にした幸せな生活にしのび寄る新たな魔の手。名探偵御手洗潔の最初の事件を描いた傑作ミステリ『異邦の騎士』に著者が精魂こめて全面加筆修整した改訂完全版。幾多の歳月を越え、いま異邦の扉が再び開かれる。(BOOKデータベースより)ミステリー小説を読み始めた8年半前に読んだのが「東西ミステリーベスト100」のランキング3位となっていた島田荘司の代表作である「占星術殺人事件」。それが初めて読んだ御手洗シリーズだったのだが遥か昔過ぎて内容、トリックとも記憶に消えかけていたがに探偵役の御手洗と助手役の石岡は記憶に残っている。その二人の出会いから深い絆に至った経緯がわかるのが実質的な処女作の本作である。書評に本作を読む前に「斜め屋敷の犯罪」を読んだ方が良いとあるが、両方一緒に購入した私が判断したのは時系列を優先して本作でした。まだ「斜め屋敷の犯罪」を読んではいないが御手洗と石岡の出会いが本作で分かるので問題なかったと思っている。内容はと言うとベンチで眠っていて気がついたら記憶喪失という男の視点から始まり恋愛小説かと思わせる内容から二転三転とめまぐるしく展開していき、最後は復讐からの偽装殺人で完結かと思いき大ドンデン返しがドカーンと舞い降りてきます。著者の処女作で自身の青春時代を重ねているところからストーリー自体が今一つ繋がり感が無いかなと思うところも散見されるが大ドンデン返しが衝撃的で私は純粋に楽しめました。また、タイトルの「異邦の騎士」は気に入ってます。著者の後書きにも書かれているが色々な諸事情があって随分苦心したらしい。バイクにまたがる御手洗とチックコリアの「浪漫の騎士」からヒントを得たというがまるで着地点が最初から決まっていたようなナイスなネーミングだと思う。順番が逆になったかも知れないが次は「斜め屋敷の犯罪」を読んでまた感想を書いてみたいと思う。
2021.11.20
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2021年10月29日 ★★★ 今月頭に読んだ辻村深月さんの第15回本屋大賞受賞作「かがみの孤城」を読んで辻村深月さんと言えばミステリー作家でもあるので他の作品をとネットで探していると以前娘がタイトルはわからなかったが読んでいたことを思い出し、娘の本棚を探していると「ゼロ、ハチ、ゼロ、ナナ。」というちょっと意味不明なタイトルを見つけてパラパラと眺めてみると、一応ミステリー小説のようなので前作とまでは行かないだろうが少しだけ期待して読んでみることにした。 地元を飛び出した娘と、残った娘。幼馴染みの二人の人生はもう交わることなどないと思っていた。あの事件が起こるまでは。チエミが母親を殺し、失踪してから半年。みずほの脳裏に浮かんだのはチエミと交わした幼い約束。彼女が逃げ続ける理由が明らかになるとき、全ての娘は救われる。著者の新たな代表作。(BOOKデータベースより) 読後感想としてはちょっと期待したのが悪かったのかミステリーと言えばそうなのだが少し残念な印象を受けた。第1章ではみずほが母親を殺して逃亡する幼馴染みのチエミの行方を友人などを当たって捜索するが理由がいまいち理解できないで進む。第2章ではその殺人を犯したチエミの視点で描かれて最後は女性同士の友情の物語として完結する。女性が読んだら面白いのかもしれないが私にはちょっと合わなかったです。素晴らしい作家であることはまちがいないので多数ある作品から自分に合いそうな作品を選んでが読んでみたいと思う。
2021.10.29
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2021年7月11日 ★★★★ 先週久しぶりに読書で感動を与えてくれた東野圭吾の傑作である白鳥とコウモリを読んで余韻が残っていた状況で次の本を選ぶのに苦労するのではと考え少し時間を置いてから読書するつもりだったのだが、白鳥とコウモリの他の書評を見ていた時に直木賞受賞作の少年と犬の書評を目にして感動したという書評が多く書かれていたので無性に気になり、次は時間置いてからというのをすっかり忘れて読んで見ることにした。 家族のために犯罪に手を染めた男。拾った犬は男の守り神になった―男と犬。仲間割れを起こした窃盗団の男は、守り神の犬を連れて故国を目指す―泥棒と犬。壊れかけた夫婦は、その犬をそれぞれ別の名前で呼んでいた―夫婦と犬。体を売って男に貢ぐ女。どん底の人生で女に温もりを与えたのは犬だった―娼婦と犬。老猟師の死期を知っていたかのように、その犬はやってきた―老人と犬。震災のショックで心を閉ざした少年は、その犬を見て微笑んだ―少年と犬。犬を愛する人に贈る感涙作。(BOOKデータベースより) 多聞という犬と様々な問題を抱えた人の出会いのなかで人は飼い主として多聞に慰めれ希望を見いだす。しかしいずれ飼い主と多聞との悲しい別れがそれぞれ待っている。飼い主を失った多聞は自分の家族を求めてある目的地を目指して旅を続ける。そして感動と悲しい結末が最後に待っている… 多聞はある別れをしてから5年もの歳月をかけ日本列島を犬が縦断するというちょっと考えられない展開だが、人が犬によって人間らしさを取り戻していく話は読んでいて感動する。流石に直木賞受賞作品だと納得できた。馳星周のデビュー作の不夜城が有名だが是非読んでみたいと思う。
2021.07.11
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2021年6月16日 ★★★ 5月に本屋大賞受賞作の凪良ゆうの流浪の月を読んでから少し間が開いたが、読書を始めたころに買いだめていた古い未読本がまだかなりある事に先日古い本棚を整理していた時に気付き、その中で江戸川乱歩賞受賞作家で映画化された亡国のイージスの著者である福井晴敏のものが数冊目に止まり、その中に気軽に読める短編小説が一冊あったので、川の深さは以来なんと8年振りに読んでみることにした。 愛する男を待ち続ける女、隠居した天才的スリ、タクシー運転手として働きながら機が満ちるのを待った工作員。心に傷を持ちながら、独り誇りを抱き続けた者たちの消せない染み。あきらめることを知らない6つの魂が、薄明の世界に鮮烈な軌跡を刻む。著者が織り成す切なく熱い人間讃歌、人生を戦うすべての者へ。(裏表紙引用) う〜ん。読み終えるのになんと20日もかかってしまったが結論から言うと本作は面白かったと思う。ただ前2作品と比較するとこの作家は長編向きなのかなと感じた。各短編の内容が複雑なこともあり、これらを短編作品でまとめきるのはさすがに福井さんでも難しいのではないだろうか。以前読んだ2作品はあんなにのめり込んだのに… 内容的には何れも存在を秘匿された組織(市ヶ谷―防衛庁情報局)に所属する工作員の話で彼らは任務を与えられるが深く関与は許されない。背景に見えるのは国という名の汚れた世界である。普通の精神力や体力では務まらない裏の仕事をする主人公たちの存在意義は?と考えさせる作品である。近いうちに亡国のイージスを読んでみたいと思う。
2021.06.16
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2021年5月15日 ★★★★ 海外ミステリー小説の古典の代表として2年前にエラリー・クイーンのYの悲劇とアガサ・クリスティのオリエンタル急行の殺人を一冊づつ読んではいたが、二人の作品で気になる作品がまだあったので読書癖が戻って来てはいるがテレワークが主になっときている仕事の気分転換も兼ね久しぶりにアガサ・クリスティのそして誰もいなくなったを読んでみることにした。 その孤島に招き寄せられたのは、たがいに面識もない、職業や年齢もさまざまな十人の男女だった。だが、招待主の姿は島にはなく、やがて夕食の席上、彼らの過去の犯罪を暴き立てる謎の声が響く…そして無気味な童謡の歌詞通りに、彼らが一人ずつ殺されてゆく!強烈なサスペンスに彩られた最高傑作。(BOOKデータベースより) 本作は2012年版の東西ミステリーベスト100の海外部門一位に選ばれたミステリー界の女王と呼ばれるアガサ・クリスティーの代表作(映画やドラマ、演劇などで何度も取り上げられているので少なくてもタイトルぐらいは誰もが知っているでしょう)である。10人の登場人物が島から脱出不可能な「いわゆるクローズド・サークル」状況になり、童謡の歌詞に沿って一人ずつ殺されていく。容疑者が一人減るごとに疑心暗鬼を募らせてゆく生存者達の心境は並の状況では無い。犯人は10人の中に居る事は明らかになりお互いを牽制しあうところが微妙に面白い。結末はエピローグに書かれているが、綾辻行人の十角館の殺人を思い出させてくれる。綾辻行人や他の作家に多大な影響を与えた本作は不滅の名作と言われるが読んでみて納得させられる。また他の作品も読んでみようと思う。
2021.05.15
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2021年5月2日 ★★★ 4月に読んだ横山秀夫のFACE以来少し間が空いたがGWに入り時間も出来たので何か少し変わった作風のものを読んでみようかと本棚から昔買って眠っているものの中から40年前に江戸川乱歩賞を受賞した井沢元彦の猿丸幻視行が目に止まり、久しぶりに歴史も良いかと読んでみる事にした。 奥山に紅葉踏み分け鳴く鹿の声聞くときぞ秋は悲しき―百人一首にも登場する伝説の歌人、猿丸太夫が詠んだ歌に秘められた謎。そして“いろは歌”に隠された千年の暗号とは?友人の不可解な死に遭遇した、後の民俗学の巨人・折口信夫の若き日の推理が、歴史の深い闇をあぶりだす。江戸川乱歩賞受賞の永遠の傑作。(BOOKデータベースより) 本作は現代から明治後期へ開発された薬で脳がある人物にタイムスリップすると話である。そのタイムスリップする主人公となるのが現代にいる大学院生の香坂明から後の民俗学者、国文学者、国語学者であり、また詩人・歌人でもあった折口信夫に実行せれる。内容としてのメインは折口信夫の万葉仮名で記された猿丸額といろは歌に隠された意味を解読していく暗号小説であるがそこに深く関わるある人物の怪死事件の真相を究明していく歴史ミステリーでもある。読み終えた読後感想としては歴史は好きな方ではあるが和歌には全く興味の無い私ですら楽しめたので和歌に興味のある人が読めば更に楽しめるのではないかと思う。古い小説ではあるが新装版が出ているため入手もしやすいはずなので興味のある方は一読下さい。
2021.05.02
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2021年4月20日★★★★先週読み終えた恩田陸の「中庭の出来事」があまりにも期待はずれだったので、次は読みやすい短編小説で且つ期待はずれが無い作家となるとまず頭に浮かんだのはやはり警察物の短編小説を書かせたら右に出る者がいないと言われる横山秀夫しかないでしょう。まだ未読の短編ものが2冊本棚に眠っていたのでどっちにしようか少し迷ったが警察物としては珍しい婦人警官を主人公にした「顔FACE」の方を先に読んで見ることにした。「だから女は使えねぇ!」鑑識課長の一言に傷つきながら、ひたむきに己の職務に忠実に立ち向かう似顔絵婦警・平野瑞穂。瑞穂が描くのは、犯罪者の心の闇。追い詰めるのは「顔なき犯人」。鮮やかなヒロインが活躍する異色のD県警シリーズ。(BOOKデータベースより)まず読後感は期待通りスッキリした気分で読み終えられました。本作の主人公であるD県警所属の平野瑞穂巡査は本作が初登場ではなく、横山氏のデビュー作である「陰の季節」の中に収録された作品に既に登場している。その作中である事件から平野巡査は心に傷を負ってしまい休職を余儀なくされる。この物語はあの事件の1年後を描かれており、短編の全編を通じた平野巡査の成長の物語でもある。そのため前作が未読の方は先に読んでおく方が話に入りやすいと思う。警察=男社会と言う中で彼女が孤軍奮闘する魅力あふれた好編揃いの作品集で是非読んで欲しい作品です。
2021.04.20
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2021年4月13日 ★★★ 昔買った文庫本で未読のものを物色していた中に恩田陸の山本周五郎賞を受賞した本作が目に止まり、確か読む前にAmazonのレビューがイマイチだったので読まないまま放置していたのを思い出したが、まぁせっかく手に取ったんだし読んでみるかと思い直して「不連続の世界」を読んで以来実に6年3ヶ月振りに恩田陸の作品を読んでみた。 瀟洒なホテルの中庭で、気鋭の脚本家が謎の死を遂げた。容疑は、パーティ会場で発表予定だった『告白』の主演女優候補三人に掛かる。警察は女優三人に脚本家の変死をめぐる一人芝居『告白』を演じさせようとする―という設定の戯曲『中庭の出来事』を執筆中の劇作家がいて…。虚と実、内と外がめまぐるしく反転する眩惑の迷宮。芝居とミステリが見事に融合した山本周五郎賞受賞作。(BOOKデータベースより) う〜ん、読後の第一声は最近読書離れ気味の私がよくぞ最後まで読み切ったなぁと言うことかな。とにかく複雑で最初から謎だらけ、出てくる人たちの事件や謎、不思議な出来事などがあったかと思いきや、途中から台本のような形式になったり、舞台の話になったり私にとっては読み進めるのに多大な時間を要したきつ〜い小説でした。 まぁ本作のうまいところというかずるいところは、内と外の境界を完全にぼやかしてはいない点にあり、おそらくこういうことなんだろうか?と自分なりに解釈することが可能なところだが、それが正解かを確認する術はないのがまたまたきつい。 また、途中から現実と虚像(舞台)の世界が曖昧になり、混乱してしまった人は私だけではないはず。最後の最後で頭の中がすべてひっくり返されたような感覚になり、ページを戻って読み直したがやはり読後感は悪いままでした。恩田さんの作品は当たり外れが大きいのですが気になる作品が数冊未読状態なのでこれに懲りずに気長に読んでみたいと思う。
2021.04.13
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2021年3月19日 ★★★★ 今年に入って全く読書から遠ざかっていたと思いきや、3月に入り池井戸潤、東野圭吾と続けて2冊読んだあとテレビドラマ化や映画化もされた日本推理作家協会賞作にもなってずっと気になっていた江戸川乱歩賞受賞作家の桐野夏生のOUT(上下巻)を実に「猿の見る夢に」を読んで以来4年以上ぶりに読んでみることにした。 深夜の弁当工場で働く主婦たちは、それぞれの胸の内に得体の知れない不安と失望を抱えていた。「こんな暮らしから脱け出したい」そう心中で叫ぶ彼女たちの生活を外へと導いたのは、思いもよらぬ事件だった。なぜ彼女たちは、パート仲間が殺した夫の死体をバラバラにして捨てたのか?犯罪小説の到達点(上巻BOOKデータベースより) 主婦ら四人の結束は、友情からだけではなく、負の力によるものだった。その結びつきは容易に解け、バランスを欠いていく。しかし動き出した歯車は止まることなく、ついに第二の死体解体を請け負うはめになる。彼女たちはこの現実にどう折り合いをつけるのか。大きな話題を呼んだクライム・ノベルの金字塔。’98年日本推理作家協会賞受賞(下巻BOOKデータベースより) 先ず触れておかなければいけないのは、本作は日本で発表後に翻訳されたのだが、それだけでは無くなんと米ミステリー界のアカデミー賞といわれるエドガーに日本人作家として初めてノミネートされるという快挙を成し得た作品である。 読み終えた感想は一言で言うと恐ろしい。内容的には弁当工場にて様々な理由から深夜パートをする主婦4人。主人公の香取雅子は家庭崩壊、吾妻ヨシエは認知症の姑の介護、城之内邦子はローンや街金の多重債務、山本弥生はギャンブル狂の亭主からの暴力とそれぞれの悩みを抱えていた。そんな中、弥生が夫を殺害してしまう。雅子に相談した弥生を救うためヨシエと邦子を巻き込んで死体をバラバラにしたのちゴミとして分散投棄し証拠隠滅を図るが邦子が公園に捨てたことで殺人が露見してしまう。警察の捜査で有力容疑者として逮捕されたカジノのオーナーの佐竹が復讐のため弥生の周辺を探り始めたことから雅子たちの日常は確実に壊れはじめていく… 予想もつかない怒涛の展開に最後は一気読みでした。雅子と佐竹の激闘には息をもつかさない修羅場と化して最後は見物です。これを映像化したと言う事なんで是非探して見てみたいと思うが、こんな作品を女性である桐野さんが書いているとは凄いとしか言えません。女性だから書けるのかもしれませんが…。桐野夏生の他の作品も読んで見たくなります。
2021.03.20
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2020年12月14日 ★★★ 先月読んだ東野圭吾の短編集で読書習慣を復活したかと思ったが、なかなか昔のように熱中出来る状況とは言い難いが地道に読み続けることでまた好きな小説に巡り会えるのではと本棚から未読の小説を探してみたところ、推理小説の登竜門である江戸川乱歩賞受賞作が第40回ぐらいから買いあさっていたものがかなりあり、その中で選考委員の満場一致で受賞が決まった下村敦史のデビュー作を読んでみた。 孫への腎臓移植を望むも適さないと診断された村上和久は、兄の竜彦を頼る。しかし、移植どころか検査さえ拒絶する竜彦に疑念を抱く。目の前の男は実の兄なのか。27年前、中国残留孤児の兄が永住帰国した際、失明していた和久はその姿を視認できなかったのだ。驚愕の真相が待ち受ける江戸川乱歩賞受賞作(BOOKデータベースより) まず本作は2014年の江戸川乱歩賞受賞作にしてその年の『このミス』で第3位、週刊文春のランキングでも第2位と高評価を得た作品でしたが、わたし的にはそこまで評価出来なかった。 内容的には盲目の老人が主人公で戦時中の中国残留孤児に関する話がメインである。主人公がネガティブのため共感できないし、つまらない小説かと読み続けると終盤から様々なエピソードが綺麗に繋がる展開で最後はなかなか面白い作品だなと思って読み切れたところはさすが乱歩賞作品でした。ただこの著者の別の作品を読むかと問われるとまだまだ読みたい作品があるので当分は無いというのが正直な感想です。
2020.12.15
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2020年6月19日 ★★★★ 先週久しぶりに読んだ風間を主人公にした警察学校の教官シリーズの前日譚である教場0がなかなか良かったので読書の勢いを保ったまま続いて教場2の続編で短編小説の書き手である長岡弘樹さんの作品として初の長編かもしれないシリーズの最新刊の風間教場を期待して読んでみた。 後の退校希望者は、誰だ? 必要な人材を育てる前に、不要な人材をはじき出すための篩。それが、警察学校だ。警察学校第百二期短期課程の教官を務める風間公親は、警官の資質なしと見なした生徒には、容赦なく退校を命じる鬼として知られていた。その風間に校長の久光が命じたのは、「退校者ゼロ」の模範教場を作ることだった。妊娠する女生徒も現れるなか、風間はミッションをクリアできるのか!? 累計70万部のベストセラー最新作! シリーズ初の長編!(Amazon内容紹介より) 本作の大きな特徴は短編集とは違った長いスパンの物語で第百二期初任科短期課程に入校した37名の入校から卒業までの約半年間を描いている。過去作品での風間は不適格者を容赦なくふるい落としながら未来の警察官を育成していくのだが今回は校長から全員を卒業させろという難題を課される。この難題をどう切り抜けるのかが本作の見所である。そして卒業式の日、風間に難題を課した校長は風間にある事を指摘する。その事実に私はあ然としてしまった。何たる運命なのかそしてこの事実を気づいていたのは校長だけではなかったのだ…。わずか半年で大きく成長し巣立っていく次代の警察官たち。こういう結末になった教場シリーズだが果たして続編はあるのだろうか。風間の生きざまを最後に描いた続編をもう一冊読んでみたい。
2020.06.20
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2020年6月14日★★★★4月後半に伊坂幸太郎のモダンタイムスを読んだあと、何冊か読み始めるもに一冊集中が続かないので途中で中断して別のを小説を読むことを繰り返していたので約1ヶ月半が経過したが昔のようには行かないが読書は続いているので良しとするとして、久しぶりの読後感想は年明けにテレビドラマで木村拓哉が警察学校の教官である主人公の風間を演じて映像化された教場の前日譚であたる教場0である。T県警が誇る「風間教場」は、キャリアの浅い刑事が突然送り込まれる育成システム。捜査一課強行犯係の現役刑事・風間公親と事件現場をともにする、マンツーマンのスパルタ指導が待っている。三か月間みっちり学んだ卒業生は例外なくエース級の刑事として活躍しているが、落第すれば交番勤務に逆戻り。風間からのプレッシャーに耐えながら捜査にあたる新米刑事と、完全犯罪を目論む狡猾な犯罪者たちとのスリリングな攻防戦の行方は!?テレビドラマ化も話題の「教場」シリーズ、警察学校の鬼教官誕生の秘密に迫る第三弾。(BOOK データベー スより)まずは前作の教場2まででは風間が本当に何者なのか最後まで明かされなかったが本作である程度謎が明かされている。大まかな内容はAmazonの説明を引用すると以下の通りである。●第一話 仮面の軌跡御曹司から結婚を申し込まれた日中弓は、交際相手に別れを告げるが、二人の秘密を暴露すると脅された。●第二話 三枚の画廊の絵画廊を営む向坂善紀の息子・匠吾は、美術の才能があり芸大進学を望んでいる。しかし、その夢を阻む者が現れた。●第三話 ブロンズの墓穴佐柄美幸の小学生の息子は、いじめが原因で登校拒否になった。事実を認めない担任教師に、美幸は業を煮やしていた。●第四話 第四の終章隣室に住む女優から、佐久田肇は助けを求められた。彼女の部屋で劇団仲間が自殺しようとしているという。●第五話 指輪のレクイエムデザイナーの仁谷継秀は、自宅で仕事をしながら認知症の妻の介護をしていた。疲れきった仁谷には恋人がいた。●第六話 毒のある骸法医学教授の椎垣久仁臣は、司法解剖時に事故を起こし、部下に大怪我を負わせた。公になれば、昇進は見込めない。 いずれも、風間の眼力や着眼点に唸らされる。容疑者を心理的に揺さぶり、落とすことが、風間の真骨頂である。初めて教場シリーズを読んだ読者なら第六話の結末に愕然とするだろうが私も含めてシリーズを読んでいる読者なら、風間のあの事情はなるほどそういうことだったのかと…。最後に本作を読んで風間は刑事としても警察学校の教官としてもスタンスは全く変わらない。自らの経験から警察官の卵たちに覚悟を問うている。覚悟のない者をふるい落とすのは信念であり、彼なりの優しさでもあるのだ。
2020.06.15
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2020年4月26日 ★★★ めっきり本を読まなくなっいたここ数ヶ月でしたが新型コロナウイルスの影響で自宅や出張中での旅館で過ごす時間も増えたので、なんとこれが今年に入って3作目にですが久しぶりに何か読んでみるかと本棚の未読の小説眺めて上下巻と少し長めであるが主人公が以前の私と同じシステムエンジニアというのが気になり、久しぶりに伊坂幸太郎の少し古めのものを約3年振りに読んでみた。 恐妻家のシステムエンジニア・渡辺拓海が請け負った仕事は、ある出会い系サイトの仕様変更だった。けれどもそのプログラムには不明な点が多く、発注元すら分からない。そんな中、プロジェクトメンバーの上司や同僚のもとを次々に不幸が襲う。彼らは皆、ある複数のキーワードを同時に検索していたのだった。(BOOKデータベースより) いやーやっぱり上下巻は久しぶりの読書には長かった。面白く無かった訳でも無く読書をする時間は取れたのになかなか本に向き合うことができませんでした。やっぱりこれはマジで読書離れなのかもしれません… 本作はかなり前に読んだゴールデンスランバーと並行して書かれたと著者があとがきで書かれていた通り類似点が多い。それは一つ挙げると監視である。ゴールデンスランバーの物理的監視に対して本作はインターネット上での監視である。 インターネットであるキーワードで検索すると先輩社員の失踪、性犯罪者にでっち上げられる後輩社員、更に上司の自殺と安藤拓海の周囲で異変が続発する。拓海らが業務委託先のシステムを調べていくと特定のキーワードの組み合わせでネット検索をすると何かが起きるらしい。その検索を監視をするのは誰なのか?何のための監視するのか?そして何を隠しているのか?これらを調べる中、ある事件で英雄となった議員の永嶋丈にたどり着く… 本作は魔王の続編で50年後の近未来である。本棚に魔王も未読状態のままだったので短目の魔王を先に読むべきだったと途中で気がついたが出張に持って行ってたこともあり仕方なく先に読みすすめたのも遅読の原因だったかも… 魔王を読めば感想も変わるかもしれないので次は魔王を読んでみようと思う。
2020.04.26
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2020年1月25日 ★★★★ 新年を迎えても一向に以前の読書習慣には戻りませんが嫌になった訳でもないので地道に時間のある時に好きな作家や興味のある本を読んで行こうと決めて臨んた新年2作目は「深追い」以来約二年ぶりの横山秀夫の「ノースライト」を期待して読んでみた。 一級建築士の青瀬は、信濃追分へ車を走らせていた。望まれて設計した新築の家。施主の一家も、新しい自宅を前に、あんなに喜んでいたのに…。Y邸は無人だった。そこに越してきたはずの家族の姿はなく、電話機以外に家具もない。ただ一つ、浅間山を望むように置かれた「タウトの椅子」を除けば…。このY邸でいったい何が起きたのか?(BOOKデータベースより) 前作「64」から約6年ぶりの新作長編だが初出時期は2004年~2006年となっているので全面改稿の上、刊行した作品のようだ。 過去の作品は警察小説がメインだか本作の主人公の青瀬の職業は一級建築士である。その青瀬が情熱を注いで完成させたY邸の様々な疑惑やなぞが本作のメインである。作中に出てくるタウトという建築家は実在の人物らしく、日本に残した実績や影響力が本作から伝わってくる。 終盤に入るといよいよ謎が明かされる。それまでのこんなところにが伏線になっていたのかと驚かされるが本作は再起、家族、またはミステリーと様々な読み方ができる物語で過去に発表した横山秀夫作品同様に秀作なのは間違いない。なかなか出版されないので心配にはなるが、また良い作品を世に出してほしいと切に願います。
2020.01.26
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2019年11月2日 ★★★★ 先月末に読んだ今村昌弘の魔眼の匣の殺人で読書習慣が復活したので今度は加賀刑事シリーズのスピンオフ作品で松宮刑事を主人公にした東野圭吾の最新長編書き下ろしの「希望の糸」が最近出発されているのを知っていたので迷わず選んで松宮刑事の活躍を期待して読んでみた。 「死んだ人のことなんか知らない。あたしは、誰かの代わりに生まれてきたんじゃない」 ある殺人事件で絡み合う、容疑者そして若き刑事の苦悩。どうしたら、本当の家族になれるのだろうか。閑静な住宅街で小さな喫茶店を営む女性が殺された。捜査線上に浮上した常連客だったひとりの男性。災害で二人の子供を失った彼は、深い悩みを抱えていた。容疑者たちの複雑な運命に、若き刑事が挑む。(Amazon内容紹介より) 「祈りの幕が下りる時」の加賀刑事シリーズから約6年も経っていて、久々に加賀刑事の活躍かと思いきや現在の加賀は警視庁捜査一課に異動しており、今回の事件では捜査本部のデスクという立場のため、自ら動く場面は少ない。本作は加賀の従兄弟であり同じ捜査一課の松宮脩平が主役を担う。意味有りげで衝撃的でもある序章から最後まで一気に駆け抜けるところは過去の加賀刑事シリーズと本作も同じで楽しめた作品と言える。 内容的にはカフェを経営する女性が殺害され誰に聞いても悪い評判は出てこない。かつての夫とある常連客の男性が何らかの事情を知っていそうなのだが…。そしてページがかなり残っている段階で犯人が自首をするのだが真相はと言うと過去のあってはならないある出来事が複雑さを倍増させ、かなりややこしい展開へと話はまだまだ進んでいく。 また事件と並行し、松宮の個人的事情も描かれるのだが加賀家の事情も複雑だったがそれよりもっとびっくり仰天の複雑さだった。感じたことは松宮の母も父も強いと言うことこの一言です。最後の松宮とある人との対面は感動ものでした。 今後もスピンオフ作品でなく加賀シリーズと並んで松宮シリーズも続けて貰いたいと思うのは私だけではないでしょう。
2019.11.02
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2019年10月21日 ★★★★ 9月に読んだ井上夢人のバワー・オフからまたまた1ヶ月が経っていたので、そろそろ何か読んでみようかと探して見つけたのは昨年、このミステリーがすごい、週刊文春ミステリーベスト、本格ミステリ・ベスト10の三冠を達成した鮎川哲也賞受賞作で今村昌弘のデビュー作である「屍人荘の殺人」の続編が出ているの知り、またまたクローズド・サークルものであるらしく前作同様に期待して読んでみた。 その日、“魔眼の匣"を九人が訪れた。人里離れた施設の孤独な主は予言者と恐れられる老女だ。彼女は葉村譲と剣崎比留子をはじめとする来訪者に「あと二日のうちに、この地で四人死ぬ」と告げた。外界と唯一繋がる橋が燃え落ちた直後、予言が成就するがごとく一人が死に、閉じ込められた葉村たちを混乱と恐怖が襲う。さらに客の一人である女子高生も予知能力を持つと告白し――。ミステリ界を席巻した『屍人荘の殺人』シリーズ第二弾。(Amazon内容紹介より) 前作「屍人荘の殺人」は、伝統的な雪の山荘的なシチュエーションにゾンビという一ひねりを加えた作品だったが、今回も続けてクローズド・サークルでのオーソドックスな設定に予知能力者というひねりを入れて臨んだ作品だ。 本編でも書かれいるがクローズド・サークルものには、なぜ内部犯が疑われる状況で犯行に及ぶのか?これは私を含めて多くのミステリー読者が疑問に考えるだろうがそれを言っては元も子もないということで敢えて突っ込まないのがファンというものか…。本作はその内部犯というリスクを冒すことに真正面から立ち向かう作品と言える。 事件を引き寄せる体質を自覚している探偵役の剣崎比留子と葉村譲が斑目機関の情報収集に舞台となる魔眼の匣に出向き、そこで出会った予知能力者が本作の肝である。 まぁ途中のドタバタはあったが最後の最後に明かされた真実が予想外でこの作品を評価を多少高めてくれているのではないだろうか。前作ほどの設定上のびっくり度はない分、ロジックで勝負しているところは次回作に更なる期待を持たせてくれる。シリーズ化されたようで探偵役の剣崎比留子とワトソン役の葉村譲が斑目機関を巡る次回作が楽しみです。
2019.10.21
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2019年7月20日 ★★★ 最近NHKの朝ドラの過去作品にハマっていて、いつから小説を読んでいないのかと調べてみると5月に麻見和史の女神の骨格を読んで以来、なんと2ヶ月近く小説を読まない時間が経っていることを知り、ちょっとこれはまずいぞと慌てて何を読もうかと思案していると、最近映画化され話題になった本作が本棚に眠っていることがわかり、ラブストーリーというのでなかなか読まなかった本作だが期待して読んでみた。 親友の恋人を手に入れるために、俺はいったい何をしたのだろうか。「本当の過去」を取り戻すため、「記憶」と「真実」のはざまを辿る敦賀崇史。錯綜する世界の向こうに潜む闇、一つの疑問が、さらなる謎を生む。精緻な伏線、意表をつく展開、ついに解き明かされる驚愕の真実とは!?傑作長編ミステリー。(BOOKデータベースより) まず本作のオープニングは読み終えた後でも鮮明に思い出される。テレビドラマにありがちなパターンかもしれないが不思議な気持ちになりラブストーリー感ありありで新鮮でした。それがラストシーンはあまりにも拍子抜けた感じで期待はずれで、出だしの印象に残るオープニングに期待感が高すぎたからかもしれない。 主人公の崇史は、中学時代からの親友智彦に恋人の麻由子を紹介される。崇史と智彦はバイテック社のエリートでそこに麻由子も送り込まれることになり、麻由子と三角関係に陥ってしまう。そして智彦が手がける極秘プロジェクトの裏に隠された驚嘆の真相が…。 タイトルのラブストーリーという側面はもちろんあるがやっぱり本作はミステリー小説である。小説にあるこんなシステムが今現在も想像の世界だけであり存在しないし、研究もされているのかすらわからない。ただこんなシステムがあったらどんなに楽かと思うが、もし実現したらと思うとぞっとするのが本音ですが、皆さんはどう思われますか?
2019.07.21
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2019年5月20日 ★★★★ 2月に塔子の成長物語である警視庁殺人分析班シリーズ5作目の聖者の凶数を読んだあと直ぐに6冊目となる本作を購入していたのだか先にエラリー・クイーンやアガサ・クリスティの超伝説本を間に挟んで読んでいたためのびのびになっていたのだが出張からしばらく解放されたので会社の通勤電車の中で前作同様期待して読んでみた。 空き家だった洋館で火災が発生。鎮火後、殺人分析班の如月塔子は納戸の奥に隠し部屋があることを知る。部屋には無数の蒐集品とともに、白骨化した遺体が布団に寝かされていた。しかも人骨の頭部は男性、胴体は女性のものと判明する。別の部屋からは血痕が。複雑怪奇な難事件に推理捜査チームはどう挑むのか。(BOOKデータベースより) 今回も超難問の本格謎解きミステリーで今度の事件は東京都下国分寺で白骨死体が発見されるが、なんとそれは頭部が男性で身体が女性。この謎めいた事件を事件現場で押収された証拠品の分析捜査、現場近くの目撃者への聞き込み、事件関係者の相関の捜査、過去の事件の調査などチームがそれぞれ役割分担して地道な捜査で事件解決に進んでいく。それら捜査の過程の中で事件の動機や発生の経緯などの答えを見つけていくパターンは健在です。本作では塔子の捜査技能テストも兼ねていたようだがチームみんなが塔子の成長を認めているあたりは一人前に近づきつつあるのは読んでいてわかります。7作目以降と続く本シリーズでさらなる塔子の成長を見届けたいと思います。
2019.05.20
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2019年5月2日 ★★★ 2月にアガサ・クリスティのオリエント急行殺人事件を読んだあと海外小説家の中でもアガサ・クリスティとならんで一度は読んでおきたいと思っていたエラリー・クイーンの代表作である本作を3月に入って図書館に予約していたのだが、4月になって空きが出たと連絡があり受け取りに行ったあと期待して直ぐ読んでみることにした。 行方不明の富豪ヨーク・ハッターの死体がニューヨークの港に揚がった。警察は毒物による自殺と断定したが、その後、ハッター一族の邸では奇怪な事件が起こり始める。子供のジャッキーが毒物の入った飲み物で危うく命を落としそうになり、未亡人のエミリーがマンドリンという奇妙な凶器で殺害されたのだ。狂気じみた一族を巻き込んで展開される驚愕すべき完全犯罪―名探偵ドルリイ・レーンが解明にいどむ連続殺人の全貌とは?スリリングな謎、用意周到な伏線、明晰な論理性と、本格ミステリに求められるすべてを備えた不朽の名作。(BOOKデータベースより) 4月は殆どが出張だったこともあり、読み終えるのになんと約1ヶ月も費やしてしまいました。出張だったことを差し引いてもやはり遅読過ぎました… 内容的には最後の真相をレーンが明かす所などかなり面白い部分も多かったのだか、遅読の原因は2つあり、1つめは図書館で借りた本が字が小さくて読み難かったこと(ハズキルーペが欲しくなるほどかなりキツかったです)。2つめはYの悲劇は四部作の2作目にあたりXの悲劇を先に読んでいなかったことが考えられます。1つめは途中で図書館の本を借り換える事も考えましたが面倒くさいのでそのまま読み進めたのが失敗でした。2つめに関しては順番は最優先では無いと何処かでみたのでそれを信じて読んだのが間違いでした。まぁ読み終えてから色々言っても仕方がないので本作を一番楽しむためにも四部作を順番通りに読んでみないと駄目でしょう。そうしないと本当の意味での読後感想にはならないでしょう。 色々書きましたがとりあえず感想ですがうーん後味が悪いです。読む人それぞれの受け取り方ではあるが私は犯人は自分のやったことを悔いてあえて毒をのんだものかと思ったが、レーンが責任を持って殺したというのが通説なようです。確かに子供といえどもあのラストが最適解だったということなんでしょう…。この辺は続編に書かれているらしいので続編を読まないといけないです。それより前作のXの悲劇もまだ読んでないのでそっちを先に時間を作って読んでみようと思う。
2019.05.02
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2019年3月20日 ★★★★ 2月は4冊と読書の習慣が戻ってきたかと思ったのもつかの間、3月に入ってペースダウンしてしまい、これではまずいぞと後半のラストスパートと思い読みだしたら止まらない小説はないかと未読の書棚を眺めていたら大沢在昌の新宿鮫シリーズが数冊買いだめていた事がわかり、直木賞受賞作の無間人形以来約3年振りに読んでみることにした。 外国人娼婦殺害の現場に、植物防疫官の甲屋が割り込んできた。日本の稲作を壊滅に追い込む害虫「火の蛹」が、殺された女性によって南米から持ち込まれたというのだ。鮫島は甲屋とともに、娼婦殺害に関わるイラン人の行方を追う。その男は、鮫島が内偵を進めていた窃盗グループの一員でもあったのだ。放火、拉致監禁…。さらに燃え広がる事件に、鮫島が立ち向かう!(BOOKデータベースより) 今回は新宿を舞台にイラン人と中国人の抗争、サンディという娼婦を狙う男の存在、ラブホテルの連続放火事件、稲作を壊滅に追い込む恐れのある外国から持ち込まれた害虫といくつもの事件が絡み合いながら進んで行くので息をつく間もないほど物語に引き込まれました。なかでも普段は単独行動する鮫島が本作では防疫官の甲屋と一緒に行動するのだがこの甲屋がなかなか良い味を出していて面白い。また消防庁の吾妻も加わり錯綜した事件を彼らの協力を得て解決する所が本作のキモではなかろうか。このように鮫島の上司の桃井など人間味のある登場人物が多く出てくるのも本作の特徴でもある。新宿鮫シリーズは全部で10作あり、これで半分読んだわけだが完全読破までまだ5作残っているのでまだまだ十分楽しめそうです。
2019.03.21
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2019年3月8日 ★★★★ 今年に入って続けざまにガリレオシリーズの第5作の聖夜の救済と第6作の真夏の方程式を読んで長編でのこのシリーズの面白さを再確認したところですが本屋で『ガリレオ、再始動!6年ぶりの単行本が長篇書下ろしとして堂々の発売!第一作『探偵ガリレオ』の刊行から二十年――。シリーズ第九作として、前人未踏の傑作という帯びが目に止まり、そのままレジに直行し、湯川が海外から戻ってきての活躍を期待して読んでみた。 突然行方不明になった町の人気娘が、数年後に遺体となって発見された。容疑者は、かつて草薙が担当した少女殺害事件で無罪となった男。だが今回も証拠不十分で釈放されてしまう。さらにその男が堂々と遺族たちの前に現れたことで、町全体を憎悪と義憤の空気が覆う。秋祭りのパレード当日、復讐劇はいかにして遂げられたのか。殺害方法は?アリバイトリックは?超難問に突き当たった草薙は、アメリカ帰りの湯川に助けを求める。(BOOKデータベースより) まず読み切った感想は東野圭吾の本領発揮の一言でしょう。やっぱりさすがですわ。本作の主題は娘を殺された身内が殺人者がわかっているのに逮捕されずにノウノウと生きていている、警察が何も出来ないのなら自分で制裁を加えるしかないという部分でしょうか。それを実行したのは…です。 私は本作の制裁者(真犯人)はうすうすわかっていて残り50ページあたりでその人物が判明したところで珍しく真犯人があたったので喜んでいたのですが、まだ50ページも残っているのでおかしいなぁと思い読み進めていくとまさかのこんな結末になるとは予想もしませんでした。1度で2度美味しいとか良く聞きますがこれは1度に3度美味しいまたは4度美味しい小説ですね。久しぶりに読後感が最高でまた東野圭吾の別の小説を読んでみたくなるほど面白かったです。次のガリレオシリーズの長編はいつ出るかわかりませんが、気長に待ちたいと思います。そう言えばガリレオシリーズの短編小説はまだ1,2冊読んでなかったのでそれを先に読んでしまおうと思います。
2019.03.12
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2019年2月25日 ★★★ ミステリー小説を読み始めたころからエラリー・クイーンとアガサ・クリスティは海外小説家の中でも一度は読んでおきたいとずっと思っていたのだが、今まで機会がなく読まなかったが先日、久しぶりに東西ミステリー100の電子書籍を見ていてこの二人を読まなければミステリー小説好きではないと感じ、いくつかの翻訳本がある中、最近翻訳された新し目の文庫本を探してミステリー小説を読み始めて10年目にして初めて読んでみることにした。 豪華列車「オリエント急行」が大雪で立ち往生した翌朝、客室で一人の富豪の刺殺体が発見される。国籍も階層も異なる乗客たちにはみなアリバイが…。名探偵ポアロによる迫真の推理が幕を開ける!20世紀初頭の世界情勢を背景に展開するミステリーの古典にして不朽の人間ドラマ。(BOOKデータベースより) 内容的には列車内の殺人と言うだけでなく、雪で立ち往生した列車内での密室殺人である。またヨーロッパを横断する国際列車オリエント急行を舞台にしているので乗客の国籍、身分(小説内では階級と紹介)がとても様々でバリエーションに富んだ登場人物が、物語の重要な構成要素になっている。 たまたま乗り合わせた名探偵ポウロが乗客の聞き取り、残された物証を元に推理しながら物語は進んでいくが、はっきり言って当たり前かも知れませんが全く私には分かりませんでした。まぁ犯人があまりに意外な人物?だったということも予想がつかない理由でしょうが…。本当に映画やネタバレ付の読後感想を見なくて良かったと最後の真相を知った時に感じました。 最後の章でポアロは真相を突き止めるのだが、その推理した真相はふたつあり、どちらが真実かを問い詰めないあたりはポアロが警察官でなく探偵であり、また普通の人間であったということなんでしょうか。最近読んだ東野圭吾のガリレオシリーズにもあったと思うがこれが正義の在り方のひとつなのかもしれません。 次はエラリー・クイーンの「Yの悲劇」かアガサ・クリスティの一番有名な「そして誰もいなくなった」を読んでみたいと思う。
2019.02.26
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2019年2月15日 ★★★★ 石の繭から始まった新米女性刑事の如月塔子の成長物語である警視庁殺人分析班シリーズも本作で読むのは5冊目になる。このシリーズは講談社ノベルから既に11作出ているようで1作目の石の繭と3作目の水晶の鼓動がWOWOWでテレビ化され、配役が塔子役の木村文乃を始めハマっていて小説同様に面白かったのでその続編を楽しみにしているのだが、まだ放送されないようである。まぁそれはさておき前の4作同様当たり前のように期待して読んでみた。 暮れも押し迫った夜、上野の空きアパートの一室で、顔と両腕を損壊された遺体が見つかった。手がかりは、遺体の腹に記された謎の数字と、狩りの守護聖人のカードだけ。連続殺人を予測した如月塔子ら警察の捜査むなしく、第二の事件が発生。またも記された数字は、犯人からの挑発なのか。数字の意味は? 彼の意図は?謎と推理の応酬の果てに彼女らが辿りついた、残酷で哀しい真相とは。(BOOKデータベースより) 本シリーズは本格ミステリの謎解きを重視した作品が特徴で冒頭に提示された謎を捜査から推理によっての犯人特定という流れで進んでいきます。推理の手がかりは物証が多く、見術、医療、工業、建築など幅広いジャンルからの題材が出てくるのが特徴となっている。 今回は顔や両腕が薬傷し、遺体には謎の数字とポストカードが残すなどの残酷な猟奇的殺人を巡り、如月塔子ら殺人分析班のメンバーが犯人を追い求めるが第二、第三の事件が連続する… 全く正体が掴めないところから犯人像に少しずつ迫る面白さと余りにも出来過ぎた偶然が絡み先の読めないストーリーが面白い。全く私には推理不可能 でこれだけの謎解きを次から次へと良く考えるなと感心するばかりです。シリーズを重ねるごとに謎解きが増しており、次作を読むのが楽しみになってくる分、読者の要求も高くなっているのは確かなので書く方は大変でしょうね… 今後のさらなる塔子の成長を期待してます。
2019.02.16
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2019年2月10日 ★★★ 本作は第12回日本ホラー小説大賞受賞で、直木賞にもノミネートされていたようです。なぜ本作が目に止まったのかというと先日読売新聞の朝刊を読んでいて高校生の作品紹介の大会で最優秀賞に輝いて選考者の言葉がべた褒めしていたのでそんなに面白いのかと思ったからです。美しい文体で一風変わった独特の雰囲気をもったホラー小説のようなのでホラー小説にはあまり興味を持たない私ですが恒川光太郎の作品がどんなものなのか一度読んでみることにした。 妖怪たちが様々な品物を売る不思議な市場「夜市」。ここでは望むものが何でも手に入る。小学生の時に夜市に迷い込んだ裕司は、自分の弟と引き換えに「野球の才能」を買った。野球部のヒーローとして成長した裕司だったが、弟を売ったことに罪悪感を抱き続けてきた。そして今夜、弟を買い戻すため、裕司は再び夜市を訪れた―。奇跡的な美しさに満ちた感動のエンディング!魂を揺さぶる、日本ホラー小説大賞受賞作。(BOOKデータベースより) 女子大生のいずみと同級生の裕司が暗闇で妖怪たちが開く「夜市」という市場に入り込み、その夜市では欲しいものは何でも手に入り、人さらいの店で子供が売られていたりと常識では考えられないものが売られている。何でも手に入る怪しい夜市は大きな代価を支払う必要があり、実は幼いころ裕司は野球が上手くなる代わりに弟を売ってしまう。その罪と罪悪感に悩まされ続ける姿が描かれている。 ホラー小説として読むとちょっと期待はずれだが中編小説で文章も読みやすく途切れる事なく読み終えたのでそれなのに楽しめたと言うことでしょうか。ただ読んで損は無い小説ではあるが恒川光太郎の次作を読んでみたいかと聞かれたらもっと読みたい小説が沢山あるのでそれはないかなと思う。
2019.02.10
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2019年2月1日 ★★★★ 先週のガリレオシリーズ第5作の聖夜の救済に続き、今週は出張の合間を見つけては長編もので映画化もされていて、これまでのガリレオシリーズとは一風変わった湯川の活躍が期待されるガリレオシリーズ第6作を昔Amazonプライムで見た映像と小説とを比較しながら期待して読んでみた。 夏休みを玻璃ヶ浦にある伯母一家経営の旅館で過ごすことになった少年・恭平。一方、仕事で訪れた湯川も、その宿に宿泊することになった。翌朝、もう1人の宿泊客が死体で見つかった。その客は元刑事で、かつて玻璃ヶ浦に縁のある男を逮捕したことがあったという。これは事故か、殺人か。湯川が気づいてしまった真相とは。(BOOKデータベースより) まず読み終えての感想は小説も映画と同様面白かったの一言です。映画では死体遺棄の共犯者が玻璃ヶ浦の自然破壊反対派の首謀者だったが映画では旅館経営の夫婦だけであった点を除いてほぼ重要なセリフや湯川のロケット実験を含めて再現されている。 両親の都合で、夏休みを伯母一家が経営する旅館「緑岩荘」で過ごすことになった少年・恭平。美しい海を誇る玻璃ヶ浦にあるその旅館に湯川が海底鉱物資源の開発計画の説明会に招かれていたという設定で物語は始まる。 事件は翌朝、緑岩荘近くの岩場で、もう一人の宿泊客・塚原の死体が発見される。一見転落死のようだが判明した死因は一酸化炭素中毒意だった。 一番びっくりしたのは子供嫌いのあの湯川が恭平君の宿題の面倒を見る場面には特に玻璃ヶ浦の美しさを実証するために携帯電話を壊してまでロケット実験までしてしまうなんて…。 事件の真相は16年前の東京での出来事で旅館経営者の一人娘の成実が絡みどうやって幕を引くのかに興味は絞られる。あーなんて結末なのか… 塚原が行かなければ事件は起きなかった。たま湯川がいなければ事件は違う形で終わっていた。そういう点では結末は不幸な偶然だったかもしれない。ただ最後に湯川が語った成実と恭平への一言が忘れられません。
2019.02.04
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