雀坊の納戸~文鳥動向の備忘録~

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2008年05月07日
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 長らく愛用していたカワイ社のつぼ巣は、現在流通がほとんど止まっている状況にありますが、この件について、メーカーホームページに事情説明が掲載されていました。
http://www.jupiter-inn.com/xoops/index.php

 ようするに、中国での人件費と原材料費の上昇を価格に反映しないために、よりそれらを抑制できるはずの内陸部(「内陸など他の場所」とあるので、中国本土のより内陸の地域と解釈した)に生産拠点(工場)を移そうとしたところ、もともとの生産拠点の労働者が反発して生産がストップしたといったところのようです。 なるほど、メーカーが価格を抑える努力をするのは、企業努力として立派なことです。しかし、新しい生産拠点が順調に行けば、もともとの労働者(工場の職人)は自分の職を奪われることになるでしょうから、その反感も当然のことのような気がします。そもそも、一つ一つ手作りするしかないワラ細工のため、生産に近代的な機器を備えた工場を必要とはしないので、生産拠点自体は簡単に移動出来るでしょうが、それを作る技術を現地の労働者に伝えるのに時間がかかり、「旧工場」の「工人」も時間をかけて技術を身につけた職人だったはずです。せっかく身につけた技術を、ふいにされては心穏やかではいられないでしょう。

 文化的ギャップもある外国で、この間の日本のメーカー担当者の苦労を思えば、無関係なこちらまで胃が痛くなりますが、一方の中国の労働者の怒りにも同情すべき要素が多いと言えるでしょう。それでは、日本の消費者の立場としてはどうかと言えば、供給ストップという最悪の事態となっている現状が、ただひたすら迷惑なだけだと思います。 そして、あくまでも結果的にではありますが、長年愛用していた顧客(飼い主と小鳥たち)に迷惑をかけているメーカーに対しては、苛立ちを覚えるのも止むを得ないところでしょう。結果がすべてなのです。

 結果が出てしまっている以上、心配されるのは今後でしょう。とりあえず新しい生産拠点で製造が軌道に乗れば安心だというのが、メーカーのお考えでしょうが、その考え方は楽観的に過ぎるような気がします。むしろ、沿海部が駄目なら内陸で・・・といった対応は、数年のうちに破綻する可能性を多分に含んでいます。
 何しろ、現在の中国の沿海部と内陸部の経済格差は、これが同じ国かと疑わせるような状況で(同じ国でありながら、生産拠点の移動で事態が変わること現状そのものが、この国の不自然な状況を現している)、今年の北京オリンピックで、それはあまりにも露骨になるかもしれません(愛国心で盛り上がる裕福な都市部とテレビも見られない貧困にあえぐ地方)。 そもそも、世界の工場と呼ばれる中国沿海部の繁栄は、内陸部から流入した労働者が低賃金で働くことにより成り立っていた面があります。内陸部があまりにも低所得であるため、都市部に移動してくる人が多かったわけですが、もし、この国内の経済的不均衡が平和的に解消されるなら、内陸部の人件費も上昇しなければなりません。それは、もちろん非常に良いことですが、そうなった場合、日本のメーカーが内陸に生産拠点を移した意味が失われます。そして、・・・さて今度はどこに生産拠点を移したら良いのでしょうか?また、その移動の際には、日本でつぼ巣の供給停止が起きるのでしょうか?
 一方、もし内陸部で不平等な低賃金労働が改善しなければ、同じ国内で同じ労働をしながら賃金格差が甚だしいという矛盾が続くことになります。その本来あり得ざる不安定な状況のただ中に、つぼ巣の生産拠点などという手内職的なものに違いない日本のメーカーのそれが、ぽつねんと取り残され、内陸部の人たちが都市部並みの賃上げという正当すぎる要求をするのに、戦々恐々として過ごすことになるのは明らかでしょう。それが明日か、来年か、5年後か、10年後になるのかわかりませんが、より暴力的な事態に発展する可能性すら含んだ、大きな矛盾であることには十分に用心が必要です。

 あくまでも、会社組織の部外者で、パーソナルに被害を受けているだけの消費者の一人としては、むしろ、何もかもが高くなるのが昨今の現実である以上(配合エサがこの1、2年でどれだけ値上がりしているか・・・)、当面はせっかく育てた元々の工場の中国人職人たちを大切にして、メーカーからの売り渡し価格を少しずつ上げて消費者に経費上昇分の負担をしてもらいながら、他の手段を模索するような対応が望ましかったと思います。何しろつぼ巣は、小鳥の生活において必需品の面もあるものですから、値段の安定より供給の安定をこそ優先してもらわないと困るのです。
 そして、中国での生産コストがかさむようになったのなら、昔捨て去ったであろう国内生産拠点の再構築、と言うより、国内のワラ細工従事者の育成をはかっても良いものと思います。もし、中国の経済がこのまま発展すれば、人件費は日本のそれに接近してくるはずで、今以上に日本との内外価格差が縮まります。そうなれば、製造経費の圧縮のためそこに生産拠点を置くメリットは失われるのは明らかです。つまり、もはや中国のばら色の近未来を想定するのなら、日本のメーカーは中国からの撤収を現実的な選択肢として準備すべき時代となっていることを認識すべきでしょう。
 また、今現在の状況においても低価格路線は重要ですが、逆に高額なブランド路線があって良いでしょうし、ニーズもあると思われます。まだ中国で比較的に安価に大量生産が出来るうちに、半ば美術工芸品のような国産つぼ巣も作ってはどうでしょうか。いろいろと起こりうる海外生産でのリスクを考えれば、国産のラインも少しは残しておいて損は無いですし、むしろそうしない企業は経済優先で政治に疎くおめでたいだけかも知れません。いわゆる、国産ラインの確保は、リスクマネジメントになるわけです。
 当該メーカーにおいては、以前(今年2月)、「国産につきましては、申し訳ございませんが現在考えておりません」というお話でしたが、市場規模の小さな分野ながら、トップシェアのメーカーには相違ないはずなので、これだけ長期間にわたり供給を滞らせながら、またいつ同じ状況になるか不透明な国でのみ生産する体制を継続するとアナンウンスされても、すでに迷惑をこうむった消費者の不安を払拭するのは難しいと思います。中国に拠点を移して何年になるのかは承知していませんが、元々は国産だったはずなので、ゼロからスタートするわけでもないでしょう。早めに考えたほうが賢明のように思います。
 メーカーにとっては胃が痛む面倒な話でしょうが、消費者としては期待して頼りきっているので、頑張って欲しいところです。






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Last updated  2008年05月07日 15時49分24秒
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