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私の場合、大好きな「映画」を公開前に見ることができたり、
たまにだけれど、役者さんや監督にインタビューさせてもらえることが嬉しい。
作品のできた経緯や裏話、苦労話、そしてこだわった所など、
いつもワクワクしながら聞いてしまう。
それで、今回も上司に「映画の取材だけど、行く?」と振られた時、
「ハイ、ハイ! 行く、行く!」と二つ返事で手を挙げた。
しかしよく聞いてみれば、作品名は 「凶悪」

何ぃ!? このリリー・フランキーの顔。
これだけでも、
「こ、恐わそう…いや、ぜったい怖い!」と確信する。
なにげなくビビっている私に、上司は続けて言った。
「あ、監督への単独取材で 50分取ってあるから
」
えぇー! 今度は本気でビビった。
今までそんなインタビューしたことがない。
だいたい、合同取材で他のメディアと一緒だったり、
短い時は「15分でお願いします」と言われたり
監督と1対1で50分…。
できるのか私? でも、こんな経験めったにないよ。
と腹を決めて、取材に臨む。
で、もちろんその前に作品を観るのだけれど、
下調べをしていたら、こんなことが書いてあった。
「食事の前に観ると、食欲がなくなります」
「そ…そうですか」と、素直に食事をしてから観たら…
途中から、消化活動が止まってしまった。
そんな「凶悪」のストーリーは、
ジャーナリストの藤井修一(山田孝之)が、上司から1通の手紙を渡される。
それは死刑囚・須藤純次(ピエール瀧)からのものだった。
拘置所に会いに行った藤井は須藤から、
「自分は他に3件の殺人事件に関わっており、
その背後にいる先生(リリー・フランキー)が無罪放免であることが許せない。
ひいてはそれらの事件を探り、
記事を書くことで先生を追い詰めてほしい」
と告白される。
半信半疑で調査を始めた藤井だったが、
やがて須藤の“告発”に信ぴょう性があることに気付き始め……
というもの。驚くのは、これが実際にあった事件だということだ。
この3人も実在している。
原作は、こちら↓
凶悪 ある死刑囚の告発/新潮45編集部
映画では「胸が悪くなる」凄惨なシーンの数々が描かれ、
狂気と、陰うつさに巻き込まれて体中の力が抜けない。
でも、どうしても目が離せない!
そして、後から考えても「観なければよかった」とは思わない。
なぜだろう?
ひとつには、とにかく「見ごたえ」があったからだと思う。
導入の殺人シーンからグッと引き込まれ、
張りつめた緊張感を緩める隙を与えず、
エンディングまで持っていく 「力量」
時系列を上手く組み合わせ、スリリングな展開で
事件の真相に迫っていく 「脚本の上手さ」
生々しい演出と、事実から目をそらすこをと許さない 「信念」
コビたり、小細工したりすることが全くない
『骨太で重量級の日本映画』
であることは間違いない。
もうひとつは、
人間ドラマとしての奥の深さを
衝撃とともに味わったからだろうと思う。
全編を通じて強く感じたのは、とにかく 「人間はもろい」
ということ。
それは 、「肉体的」
にも 「精神的」
にも。
どんなに命乞いをしても、アッという間に「死体」になっていく人たちや
「正義」の下に動いていたはずが、狂気に取り込まれていくジャーナリスト。
家族であっても、その関係はお金の前にボロボロと崩れさっていき
「恐ろしい決断」にはしる様を見ていると、
自分も同じ「もろい存在」であることに気づき、
ジットリした恐怖が背中に張り付く。
キャスティングも秀逸だった。
ピエール瀧は「どうか、一生こんな人に会いませんように!」
と神様に祈りたくなるほどの、残忍なヤクザ須藤を演じ、
今までにない芝居の境地を開いたことを印象付けたし、
冷酷に計画を練り人を操る、これまた恐ろしい「先生」役は、
どう考えてもリリー・フランキーが最適。
ジャーナリスト藤井の微妙な心情の変化は、山田孝之が
持ち前の演技力で魅せてくれた。
他にも、池脇千鶴を始め脇を固める出演者も、
実のある演技で、キッチリと作品を支えていた。
だからと言って、誰にもでおすすめできる映画ではないけれど、
この手のものに耐えられる精神力を持っている人なら
きっと満足すると思う。
と、作品の「すごさ」はわかったものの、
その監督はどういう人だろう…と心配になった。
あんな残酷なシーンを演出する人だもの、
へたなこと言ったらキレたりしちゃうんじゃ…。
などとモヤモヤ考えながらも、取材の日はやってきた。
(つづく)
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