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2025.01.30
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カテゴリ: 報徳記を読む
報徳記を読む 報徳記  【2】先生横田村里正円藏を教諭す その2



横田村の庄屋である円蔵が、家を新築しようとして、資金が不足することから、尊徳先生に借金を申し出た。
尊徳先生は、庄屋たるものの任務を順々と説いてこうさとされたのであった。

「私は小田原候の命を受け、ここに赴いて以来、廃家を興し、民を恵み、昼と無く夜と無く肝胆を砕き、復興の道を施し、民を安んじようとするほか暇がないことはおまえもまた知るところである。
 いやしくもおまえに誠の心があるならば、里正として民を憐れんで救い行うこともなく、亡村にも等しい衰廃に陥ったあやまちを後悔して、自分の資産を減じて節減を尽くし、民に先立って貧苦に甘んじ、余財を生じ、荒地を開き、民の飢えや寒さを救い、一村復興の道に尽力し、里正の本意を達成しようと願うべきではないか。
 それを何ということか、家を新築し、一身の安泰のみを計り、なお不足の財を借りて望みを達しようとするのは過ちの上に過ちを重ねるものではないか。
 今、おまえの家が覆るというのならいたしかたがない。
たとえ旧家で損じ傾くとはいっても倒れるわけではあるまい。
細民の家を見よ。
一日も風雨を支えることはできないではないか。
どうしてお前の家に比べられよう。
しかし、私に不足の金を借りようと求めなければ、こうして私がその過ちを教えることができなかった。
おまえが私の言葉をそのとおりだと思うならば、速やかに家の新築を止めよ。
そして私に借りないで、仮に二十金を借りたとして、今から五年の間返金せよ。

試みに借らずして返納のみしてみよ。
そうする時はおまえ自ら村民を救い助けることができなくても、私がおまえのかわりに村を復興してやろう。
 里正たるもの、細民に先立って艱難をなめるべきの任であるから、細民を安んじた後におまえの望みもかなえよう。
そうすれば民の怨みも生ずることはあるまい。
もし、この言葉に従わなければ、おまえは人望を失い、細民から怨みが起こり、一家を保つことも難しくなるであろう。」

円蔵は尊徳先生の言葉に感激して、すぐに新築を止め、先生の教えに従って借りないで毎年返金を納めて、利息まで納めたのであった。
 後に横田村が完全に復興し、すべての村民が居住を安んじてから、先生はその地方で最第一の家を作って円蔵に与え、更にまた新たに家を作り、円蔵の子弟二人に与えたのであった。

 借りない借金を返す、なんというユニークな方法であろう。
 それを高利で積み立てておいて、村が復興した後、円蔵に家を新築してやった。
いわば建築用の財形貯蓄を陣屋でしてあげたということにほかならない。
しかもその預かった金を生かして村内の復興の資金にあてたのである。
 尊徳先生は、服部家の仕法でも女中の給金を預かって利息をつけて増やしてやったことがあるから、こうしたやりかたを思いつかれたのではあるまいか。尊徳先生の知恵のユニークなること、驚くほかはない。しかもいつも至誠が通底している。

「補注報徳記」(佐々井典比古)によると
「天保五年(1834)に建てられたこの横田宅は現存している。
 その入口の戸に節穴が一つあいている。
 これは先生が毎朝回村の折、のぞいて、母親との喧嘩の有無を調べるため特に明けられたものであった。
 円蔵母子はあるとき気がついてその穴をふさいだ。
 先生は大いにそれを叱って再び明けさせたが、それから母子の間は至極円満になったと伝えられる。」

 なんという愉快なエピソードであろう。
 尊徳先生は、親子や夫婦の不和もあるときは叱り、あるときはなだめ、あるときはこうして言わずしてたしなめられたのであった。

回村像




【2】先生横田村里正円藏を教諭す(2)

地頭之を憂ひ、數年の力を盡し、舊復の方法を下し玉ふといへども其(その)驗(しる)しなく、遂に小田原へ歎願せられ、小田原候より興復の道を盡されしも、彌々(いよいよ)衰弊に流れ、引立の色顯(あら)はれず。
我れ命を奉じ出張せしより以来、癈(すた)れたるを興(おこ)し、民を惠み、晝(ひる)となく夜となく肝膽(かんたん)を碎(くだ)き再復の道を施し、上(かみ)君命を辱しめず、下(しも)邑(いふ)民を安んぜんとするの外、他事なきことは汝も亦明かに知る所なり。

君公の下民を憐み玉ふ高恩は斯(かく)の如くにして、邑(むら)の里正(しゃうや)たる汝漠然と與(あづ)からざるものの如くなるは又何の心ぞや。
いやしくも汝誠の心あらば上君の仁澤を辨(わきま)へ、舊來(きうらい)里正(しゃうや)として民を憐れみ撫育するの行ひなく、亡村にも等しき衰癈にも陥りし過(あやまち)を悔い、己の家産をも減じ、節儉を盡し、君の憂勞を安んじ、里正(しゃうや)の本意を達せんとこそ願ふべきに、何ぞや祖先以來の家を癈し、新に家作を爲し、一身の安居のみを計り、猶不足の財を借りて望みを遂んとするは過(あやまち)の上の過(あやまち)にはあらずや。
若し君より汝の行(おこなひ)を見玉はゞ、何ぞ忠義の心となし給はん。
邑(いふ)民之を見ば誰か怨みを生ぜざらん。
誰か其の不可を誹(そし)らざらんや。
上より不忠の咎(とが)めあり、邑民皆怨み誹らば、
假令(たとひ)如何なる美屋を作るといへども何を以て其の家に安居することを得んや。
今汝の作る家覆らば、居住なきが故に巳むことを得ざるなり。
假令(たとひ)舊家にて損じ傾くといへども倒るゝにはあらず、何の居住しがたきことあらん。
細民の家を見よ、一日も風雨を支ふることあたはざるものあり。
豈(あに)汝の家の類(たぐ)ひならんや。
然れども我に不足の金を借らんと求めざれば、我其(その)不可を教ふるに暇あらず。
我に求むるが故に其(その)過を諭すなり。
汝我が言を是なりとせば速かにそれ之を止めよ。
而して我に借らずして、 假(かり)に二十金を借りたりとして、今より五年の間に返金せよ。 若し家作を止め、平生の處にて返金を難しとする時は、多分の費用を以て家を作り、其の後の返金は彌々(いよいよ)難き事必せり。
返金の能はざるを知りて借るは是れ我を欺くなり。
家を作りて猶返金容易(たやす)からば、作らずして返金する何の難きことあらん。
試に借らずして返納のみせよ。

里正(しやうや)たるものは細民に先立ち艱難を嘗(な)むべきの任なるが故に、細民安ずる事を得ば、其(その)後に汝の望みも爲し與(あた)ふべし。
然れば邑(いふ)民の怨望何に由って生ぜん。
誰か汝の行を非とせんや。
若し此(この)言に随はずんば人望を失ひ怨言起り、一家を保つことも難るべしと。

圓藏大いに感激し、速に家作(かさく)を止め、先生の教に隨ひ、借らずして毎年返金を納め、猶(なほ)業(げふ)を勤めて利足をも納め、加之(しかのみならず)邸内の竹木を伐り、之を鬻(ひさぎ)て價(か)を納む。

後、横田村全く興復し、細民恩澤に浴し、一民も居住を安んぜざるものなきに至り、采邑四千石中に最第一の家を作り、之を圓藏に與(あた)ふ。
入費百有餘金、里正(しやうや)大いに悦(よろこ)び、邑(いふ)民も亦共に悦(よろこ)びて聊かも怨望の心なきものは、始め圓藏借らざるの返金を立たる殊勝の行ひあるが故なり。
先生又新に家を作り、圓藏の子弟二人に與(あた)へ、分家二軒を立つ。
圓藏感歎すること限なし。

噫(あゝ)里正(しやうや)一度先生の教に從って不朽の大幸を得たり。
先生庸夫(ようふ)を導き感發せしめ、道を踏み、過を改むるに至って大いに仁惠を施し、諸人をして悉く其處を安んぜしむること往々斯くの如し。





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最終更新日  2025.01.30 00:00:22


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