有栖川有栖『砂男』
~文春文庫、 2025
年~
江神二郎&学生アリスシリーズの未収録短編2編、火村英生&作家アリスシリーズの未収録短編2編に加え、ノンシリーズの短編2編と、計6編の作品が収録された短編集です。
それでは、簡単にそれぞれの内容紹介と感想を。
―――
「女か猫か」
泊まるといけないと言われていた離れに肝試しで泊まることになった学生。密室状況の中、翌朝、彼の顔には傷ができていた。彼に思いを寄せる女性バンド3人組の仲は不穏になり始めるが…。
「推理研 VS
パズル研」
ある日パズル研メンバーと食事をともにしたモチと信長は、一つのパズルを出題される。頭を悩ませるが、江神部長の助けを借り、奇妙なパズルの設定自体を成立させる状況にまで推理を広げていくことになる。
「ミステリ作家とその弟子」
スランプ気味の作家が、弟子を志望する青年を家事手伝いも兼ねて雇い、ミステリ執筆の講義を行う。昔話に創造的な突っ込みを入れよ、との課題に青年が出した答えを受け、一緒に物語を膨らませていくが…。
「海より深い川」
口論する男女の声を聞いていた隣人は、「海より深い川」という気になる言葉を聞いていた。別の場所で同様の言葉を聞いたという有栖川の証言を聞いた火村の推理とは。
「砂男」
子どもたちの間に広まりつつある都市伝説「砂男」について研究を進めていた社会学者が何者かに殺された。被害者には、砂がかけられていて…。現場近くにいた彼の教え子や、なぞの男の思惑とは…。
「小さな謎、解きます」
商店街で探偵事務所を開いた男に持ち込まれる小さな謎たち。サークルで出されたミステリの答えや、ある音楽を不気味に思い始めた女性の謎とは。
―――
冒頭2編は江神シリーズ。どちらも日常の謎系で好みでした。
2つのシリーズに間に置かれた「ミステリ作家とその弟子」は、 『作家小説』
などいくつかの作品をほうふつとさせるような、ユーモアあふれる作品…だけにとどまらないのにやられました。
第4~5話は火村シリーズ。どちらも社会情勢の変化で、短編集などに収録できなかった作品とのこと。どちらも興味深いですが、都市伝説を扱う「砂男」がより好みの作品でした。
最終話はほっこりできる味わいで、好みの物語でした。
(2025.03.15 読了 )
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