H・シュリーマン(佐藤牧夫訳)『古代への情熱―発掘王シュリーマン自伝―』
~角川文庫、 1967
年~
Heinrich Schliemann, Selbstbiographie bis zu seinem Tode vervollst ändigt
, 1892
幼少期からホメロスの詩が史実と信じて、トロイアを発掘し、遺跡を発見したシュリーマン (1822-1890)
「自伝」との副題ですが、実際には、著書『イーリオス』に含まれる自叙伝を抜粋しながら、アルフレート・ブリュックナーがシュリーマンの業績を時系列に紹介する体裁です。
幼少期、幼馴染のミンナと誓った結婚と発掘。しかし父が牧師職を退き、貧しくなったことを受けて様々な店で見習いをはじめ、やがて様々な縁もあり豪商となります。
貧しい見習い時代、シュリーマンはひたすら語学にいそしみます。「一生懸命に勉強すればこの貧乏から抜けだせるという確実な見通しこそが、なににもまして私をはげまして勉強させたのである」 (22
頁 )
。まず英語を、半年で身に付けます。ここでいうシュリーマンの勉強法は、声を出して多読すること、短文を訳すこと、一日に一時間は勉強すること、作文して先生に訂正を受けて暗記すること、などで、複数の語学を勉強していくくだりは印象的です。
やがて、実業家として成功して十分な収入を得た後は、仕事を退き、トロイアの発掘に専念します。その他、ミケーネ、ティリンスなどの発掘にも従事し、ギリシア考古学に多大な貢献をすることになるあたりが語られます。
誇張、思い違いなどもあるのでしょうし、このままうのみにはできないにしても、学問への思いの熱さが印象的な1冊です。
(2025.07.09 読了 )
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