ピカルディの三度。~T.H.の音楽日誌/映画日誌(米国発)

Jul 6, 2008
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「セロ弾きと機関銃」

 今日はピーター(vn)宅でカルテットの練習。ジム(va)とマシュー(vc)とは初顔合わせ。僕はファースト。
 ボロディンは 二ヶ月前に別の団体で合わせてみた 曲だけど、今日は目からウロコ。面子が違うとここまで曲の印象が変わるものかと驚いた。

 チェロのマシュー君、ただのお坊っちゃんかと思いきや、なかなかのツワモノ。百年以上も前に作られたオールドのチェロをごうごうと鳴らしながら、音楽の輪郭をかっちりと抑えてしまう。「上層部」の我々は、あくまでその枠の範囲内でルバートをかけるなり強弱を表現することを強いられる。正直言って強引かつ無表情な音楽というのが第一印象だった。

 例えば1楽章アタマ。いきなりチェロそしてファーストに継がれる旋律。ビブラートかけまくって情感豊かに歌うべきかと思ってたけど、マシューはかなりあっさり弾きたがる。フラジオ使っちゃったりして飄々と。
 彼にそう弾かれてしまうと当方は出鼻をくじかれた感じ。「こぶし」の利かせどころかと思ってたのに。

 しかし、弾き進めていくうちに彼の真意がつかめてきた。
 そもそも二拍子のアレグロなんだし、しかも冒頭はp(ピアノ)。この楽章はカンタービレと明記された第2主題がちゃんとメゾフォルテで出てくるので、歌うならそっちのほう。あと、3楽章アンダンテとの差別化も図るべき。



 2楽章スケルツォもやはりマシューが陰の主役となった。バイオリン二人が三度でハモりながら優雅に円舞するとこ、氏は容赦なく八分音符で機関銃のようにドドドドッと突進する。
 なるほど、この2楽章はあまり優雅さを前面に出さないほうがいい。
 やはり、続く3楽章ノクターン(ノットゥルノ)を意識して、対照的に快活に。

低弦の提言 にはハッとさせられることが多い。

*****

 十何年も前にCDは買ってあるのに、僕は今までこの曲をほとんど聴いてなかった。いい曲だとは思うけど、どうも好きになれないでいた。
 でも今日チェロ主導で合わせてみて、その奥深さにやっと気づいた。

 あと、「楽章間のバランス」ということも学んだ。1楽章と3楽章でねっとり押しつけるんじゃなくて、2楽章と4楽章を軸とし、ややあっさりめの、しかしメリハリのある音づくりをすると冗長にならずに済む。
 要所要所でファーストが締めるのは当然ながらも、特に1、2楽章はビオラとチェロに主導させ、バイオリンらはそれに乗っかる感じがちょうどいいかも。

 今までこの曲を避けていた自分を反省。実はすんごい名曲かつ難曲!





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最終更新日  Jul 7, 2008 11:09:18 AM
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