ピラミッド入口では3-4人のセキュリティが立っていて、鞄の中をチェック。
内部は暗そうだが、懐中電灯が必要なほどでもない。
初めは思ったより緩やかな坂を下る。
傾斜自体はそんなんでもないのに、天井が低いので中腰スタイルのまま進まなくてはならない。
小さく生まれて、これだもの、大きな人は難儀そう。
早くも太ももがワナワナしだした時、行き止まりとなった。(←私の目からみると)
行き止まりは壊れた手摺が両側にある、階段とも壁ともつかない妙な感じだ。
私たちはツアーで先頭に入ったので、迷ったか?とふうふう言いながら立っていた。
頭上からかすかに声が聞こえて、欧米人が真赤な顔でびしょびしょになって降りてくる。
こんな道が切れてる、探検みたいなとこ、登るんだ!
それはちょっと私にはジャングルジムを登るような感覚でこんな動作何十年ぶりだって感じだった。
そこを上がるとこんどはずーっと、ずーっと長い階段を登って行く。(←中腰で)
暑くはないんだけど、湿気で具合が悪くなりそう。
頭をこすりそうなので、振り向かず(お母さん、来てる?)
健脚自慢の母は「いますよ! 」
両側にある手摺を思いっきりつかんで、腕の力で惰性で登って行く。
もう体中痛い!
(大丈夫?)
「大丈夫ですよ!」
天井はカッパドキアの地下都市のようにたまにいきなりもっと低くなったりする。
辛いからと言って下だけ見てたら激突しそうだ。
はぁ、まだ?
通路はここだけなので、戻ってくる方々とたまにすれ違う。
男女ともバケツで水かぶったんですかってくらいベチョベチョ。
皆様辛そうでニコリともしない。
やっと着いた! !
そこは天井は高いけれど、暗めでコンクリートよりももっと濃いグレーのリビングくらいの部屋だった。
こ、これか?
湿度が通路よりひどくて息苦しい。
聞いてはいたけれど、なーんにもなくて、バスタブのような石の箱があるだけだった。
全て濃いグレーの単色。なーんにもなし。
ツアーメンバーの方々が1人、2人と到着。
はぁ、はぁ、はぁ。(←全員無言)
これからまた来た道を戻るのか・・・
とっとと出発しよう。
階段の進むと、薄い暗がりの前方に怪しく蠢く物体が。
震えながら進んでいる。
あまりに異様なので暫し母とじっと観察。
それは、白人男性で、襟のあるシャツにコットンパンツ、ライトをくわえている。
パンツを汚したくないのか、膝はつけず、でも四つん這いなので昆虫みたい。
小さく生まれてよかったなとこの時ほど思ったことはなかった。
この人はこうしないと、ここから出られないのだ。
ぐったりしてた筈なのに興味深くてすっかり疲れていたのを忘れてずっと見ながら下りて行く。
少し行くと、もう限界に達したのか、膝をつき始めた。
ちらっと顔が見えたけれど、シャワー中ですかってくらい濡れている。
大変だな・・
止まった。
「ちょっと、止まりなさいよ。悪いから」
その人の休憩を邪魔しないように背後で待つ。
またライトを口にくわえて始動。
まだまだ先は長い。
茶系のような髪はどんどんひっついて顔と一体化してる。
パンツの前面は真っ白だな。
グループでワイワイ言いながら、この格好で進むのは楽しいかもしれない。
でも、たった1人で・・どうしてあなたはここに。
外に出て、立ち上がったその人を見ると、180cmどころか190cmは絶対ありそうな長身だった。
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