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隣の家に出された表札には<名探偵 夢水清志郎>と書かれていた。名探偵を自称する男と三つ子の姉妹が出会うのは巨大遊園地での少女消失事件。しかも、伯爵と名乗る犯人は五人の消失を予告してみせたのだ。「謎はわかった」と豪語する名探偵はどうするのか・・・ 青い鳥文庫で登場以来12年、ついに講談社文庫入りした「名探偵夢水清志郎」シリーズ第1作。 もともと青い鳥文庫だっただけに、読み手として低年齢層が強く意識されているようです。語り手として三つ子姉妹の長女亜衣が設定されていたり、夏休みに遊園地で少女が誘拐されるというあたり、あるいは平易な語り口とか。わかりやすいストーリー構成や善悪関係もそうですね。いくら宮部さんが帯で「はやみねかおるさんは子供たちだけのものではありません。」なんて言っていても、子供たち向け作品であることは確かでしょう。 ただし、それは「子供だましである」というわけではありません。難解とはいえないもののそれなりに作りこまれ、大人が読んでもしっかり楽しめるものになっています。この辺のバランスが見事。 また、夢水清志郎と伯爵の関係はそのまま明智小五郎と怪人二十面相のようで、ならば捜査に協力する三つ子姉妹は少年探偵団の役どころでしょうか。古の子供向け探偵小説を現代のジュブナイルミステリにアレンジしたかのようで、好感が持てます。 常に警察を小馬鹿にし続けている夢水が一時的にでも警察と手を組んだり、あるいは上越警部がこの事件の解決についてのよき理解者であることもいいですね。2007年12月19日読了
2007.12.24
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愛知県警に勤務する警部補・京堂景子は、その冷静沈着な態度と容赦ない捜査から「鉄女」「氷の女」などと影で囁かれていた。そんな彼女もひとたび帰宅すると若い夫・新太郎にメロメロ。彼は自宅勤務のイラストレーターで、家事が得意なだけでなく、どんな難事件も解決する名探偵だったのだ・・・ 安楽椅子探偵ものを中心とした10の短編。各編とも短めで、さすがに特別な目新しさを感じるものはないものの、要所をキッチリと押さえていて、それなりに楽しませてくれます。 基本は刑事である景子が遭遇する一風変わった厄介な事件を、家で待つ新太郎が推理し、ひとつの結論を導き出すと言うパターン。新太郎が必ず犯人まで特定するとは限りませんが、時には限りなく犯人に近いヒントを出すときもあります。 各編のタイトルにあるような変わった事件ばかりなのですが、中でも「じっくりコトコト殺人事件」はかなり異常な状況かと。また単純なワンヒントをもとに真相にたどり着くものが多いのも特徴でしょうか。 また、異色な存在の「ミステリなふたり happy lucky mix」もちょっと違った意味で楽しませてくれます。 もっとも、この作品の本当の魅力は景子と新太郎かもしれません。職場と自宅で二つの顔を持つ景子と、彼女を支えながら謎を解く新太郎。このふたりの関係が絶妙です。 読みやすく、気軽に読める短編集です。続編も書かれているようで楽しみ。収録作:「ミステリなふたり」「じっくりコトコト殺人事件」「エプロン殺人事件」「お部屋ピカピカ殺人事件」「カタログ殺人事件」「ひとを呪わば殺人事件」「リモコン殺人事件」「トランク殺人事件」「虎の尾を踏む殺人事件」「ミステリなふたり happy lucky Mix」2007年12月16日読了
2007.12.22
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優秀な物理学者だった志方清吾。だが、彼は二十数年前、精子バンクに自分の精子を残して失踪してしまった。しかも、彼の父親は50%の確立で遺伝する遺伝病「アキヤ・ヨーク病」で亡くなっていたのだ。残された彼の子供たちは、人生の岐路に立たされていた・・・ 連作短編集。著者お得意のサイエンス・ミステリです。●「愛の結晶」 探偵に父親探しを依頼した翔は、見つかるや否や刺してしまった・・・いきなりややこしいどんでん返しの連発。理解できるまで何度でも読み返してください。●「あなたの明日」 人工授精で生まれ育ての親の実子として育てられた里佐は、遺伝子検査を依頼したが・・・これまたクルクル変わる展開がおもしろい。シンプルな分これがベストか。●「子供の顔」 人工授精で生まれ、すでに子供も出産している夏美だが・・・遺伝といえば「これ」なのですが、すっかり忘れていたので驚きです。まあ、エゴですね。●「大切な人」 君保のもとに、父親を断定する男・越沼が現れた。彼は君保の亡母とは知り合いだったという・・・いよいよ志方の秘密が明らかになってくるのですが、もう何がなんだか。混乱してしまいます。●「運命の鎖」 志方の子供たちは、試料をまとめて検査することでリスクを分散しようと試みる・・・とうとう明らかになる遺伝の有無。ですが、あっさりしすぎていて尻すぼみです。 とにかくどんでん返しの連続で、これでもかこれでもかとばかりに新しい事実が発覚し、様相が一変するのです。遺伝病や人工授精に関する話なので、世間体を慮ってか関係者もなかなか知っているすべてを話そうとはしません。隠し事はもちろんのこと、偽名や偽証も出てきます。しかも、真実を聞かされてもそれが真実とはわからないからなおさら。人間関係も実の親子から遺伝上の親子、戸籍上の親子までさまざま。 もちろん、子供たち自身の遺伝子を調査してしまえば話は簡単なのですが、できることなら志方がアキヤ・ヨーク病の遺伝子を持っていない(=子供にも遺伝していない)ことを確認して済ませたいと考えているので、なかなか踏み切れないのです。 各編を振り返ると、前半の3編は切れ味が鋭く、どんでん返しの効き目が強い作品です。どれも騙し、騙されという感じで、その駆け引きも楽しませてくれます。 ですが、後半に入り志方捜しの色彩が濃くなるとどうでしょうか。途端に面白みが失せてしまったように感じます。最後もあれあれという間にあっさり終わってしまって尻すぼみ。前半の切れ味が印象深いだけに、がっかりしてしまいました。収録作:「愛の結晶」「あなたの明日」「子供の顔」「大切な人」「運命の鎖」2007年12月14日読了
2007.12.18
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花にとって淳悟は遠縁であり、父であり、子どもであり、そして男であった。24歳になり、嫁いでいく花を待ち受けていたものは・・・震災孤児として引き取られた花と、彼女にして「最低だけど最高」と言わしめる淳悟の禁断の愛の物語。 狂気を秘めた深い愛。その圧倒的な筆致に、何者にも妨げることができない強い愛に、もうたじたじなのです。 また、時系列を逆にするという一点だけで、この物語は単純な禁忌から別れへというストーリーから脱し、読者をより強く引きずり込み、歪みを正当化する力を与えられているように思えてなりません。構成力の勝利でしょうか。 しかしながら、この作品を楽しめたかというとどうでしょう。残念ながら、あまり楽しめたとは言えませんでした。 別に、この二人の禁断の関係を生理的に受け入れられないとかそういうことを言うつもりはありません。ただ、東京での逃亡生活や極寒の北国での生活があまりに閉塞的で息苦しく、楽しめるようなものではなかったのです。 少なくとも、この作品は僕が桜庭さんに期待したものではありません。そこが残念。2007年12月11日読了
2007.12.17
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大分の沖に浮かぶ角島。そこは異端の建築家中村青司が十角館なる邸宅を残した孤島。半年前に連続殺人の舞台となった角島は、K**大学のミステリ研究会のメンバー7人が訪れたとき、ふたたび悲劇の島へと姿を変えた・・・ 言わずと知れた“新本格ミステリはここから始まった”という記念碑的作品。初めて綾辻さんの作品を読んだのですが、この作品を読む限り、ロジックよりもトリック重視という印象が強く残りました。なにしろ、あの衝撃の一行の破壊力といったら…あの部分がこの作品の肝のように思うのですが、旧版と比較すると、さらに強い衝撃が与えられるようになっていますね。 また、中盤までに出てきた某専門用語もまた非常に効果的に活用されていました。これを事前に出しておくのとおかないのでは随分効果が違うでしょう。 ただし、終盤の犯人による回想(=真相)は冗長に感じられ、また回想という形態を採ったことにやや疑問を感じました。なぜならば、これによってこの作品全体が静かに終結してしまったように感じられるからです。そこに関係する何者かがいて、犯人が追及されたり、糾弾されたり、あるいは自供したりというある意味お決まりのシーンがないために、やや最後の盛り上がりに欠けます。プロローグとエピローグを関連付ける意図があるのはわかりますが・・・ 全体を通してみておもしろい作品だったのは確か。20年前、この作品がミステリ界に与えた衝撃が大きかったであろうことは容易に想像できます。今でも十分に楽しめる本格ミステリの象徴的作品です。2007年12月5日読了
2007.12.10
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神山高校に入学し、心ならずも古典部に入部してしまった折木奉太郎。「やらなくてもいいことなら、やらない。やるべきことなら手短に」をモットーとする省エネ主義者の奉太郎だが、福部里志、伊原摩耶花、そして千反田えるといった仲間たちは、彼に安息の時間を与えてくれなかった・・・ 「古典部」シリーズの第4作は、奉太郎たち4人が神高に入学してから一年間を綴った短編集です。●「やるべきことなら手短に」 学校の七不思議。えるは早くも好奇心を露わにするが、奉太郎は・・・うまいことやったとは思いますが、素直に解決した方が手間がかからない気がします。●「大罪を犯す」 厳格な数学教師は、まだ教えてない部分を教えたものとなぜか勘違いした・・・真相とおぼしきものは極めて単純なことなのですが、そこに行き着くまでが楽しい作品。●「正体見たり」 合宿に行った先は工事で休業中の宿。怪談話をした夜に、摩耶花とえるが幽霊らしき人影が見えた・・・古典部として合宿に行って何をするの?という疑問はあるのですが、それはさておき、合宿先の状況や登場する姉妹がうまく使われています。「影法師は独白する」改題。●「心あたりのある者は」 放課後に入った教頭による呼び出しの校内放送。誰を、どんな理由で呼び出そうとしているのか・・・校内放送をもとに推論を重ねる安楽椅子探偵もの。こういう推理合戦的なものは結構好きです。『九マイルは遠すぎる』も読んでみたいものですが。●「あきましておめでとう」 初詣に行った神社で、偶然納屋に閉じ込められてしまった奉太郎とえる。脱出を試み悪戦苦闘するが・・・大胆に伏線が提示されていておもしろい作品。ちょっと予想していませんでした。●「手作りチョコレート事件」 摩耶花が里志のために手作りしたバレンタイン・チョコ。だが、置いてあった部室でチョコレートは何者かに盗まれてしまった・・・なんとも苦さが残る作品。考えれば考えるほど、思えば思うほど、でしょうか。●「遠まわりする雛」 雛祭りの行列は、ちょっとした手違いで通れるはずだった橋が通れなくなってしまった。生き雛役のえるが気を利かせたのだが・・・推理の結果をお互いに見せ合う、どこかで見たようなシーンかもしれませんが、この作品集の掉尾を飾るのにふさわしい一編でした。彼が撮ったであろう写真も見てみたいものです。書き下ろし。 「氷菓」事件、「女帝」事件、「十文字」事件という3つの大事件の間を繋ぎ合わせるように語られる7つの短編。その順番が時系列で並べられているので、古典部4人の成長と心の移り変わりがより鮮明になります。 特に終盤のいくつかは、ミステリとしてもさることながら、○○小説に軸足を移したのかと思うくらい。奉太郎にとって、やるべきことが何なのか、今後じっくり考えて欲しいものです。 米澤さんによれば、このシリーズは卒業までとのこと。あと2年、この先古典部はどう変わっていくのでしょうか。 ところで、収録されていた「心あたりのある者は」は、推協賞の最終候補作だったわけですが、惜しくも落選。その選評は推協のHPで読むことができます。まあ、少し納得できない部分もあるのですが・・・収録作:「やるべきことなら手短に」「大罪を犯す」「正体見たり」「心あたりのある者は」「あきましておめでとう」「手作りチョコレート事件」「遠まわりする雛」関連作:『氷菓』『愚者のエンドロール』『クドリャフカの順番』2007年12月2日読了
2007.12.06
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取材費の前借りとアルバイトの探偵稼業で金欠をしのぐ“刑事事件専門のフリーライター”柚木草平。元上司で愛人の冴子や担当編集者の直海からの依頼を引き受け、今日も美女にまつわる事件を調べていく・・・ 単行本未収録作品を集めた短編集。●「秋の手紙」 冴子の依頼で、従姪の女子高生にラブレターを送り続ける中年歯科医と話をつけようとした柚木だったが、相手は手紙に心当たりがないと否定し続ける・・・殺しよりも何よりも、ある意味一番悲しい結末。短編としてまとまっているものの、若干物足りなさも感じます。●「薔薇虫」 亡くなった代議士の家で、飼っていた犬と猫が相次いで死んだ。直海に頼まれ調べると、2匹はの死因はどちらも毒によるものだった・・・上流家庭を舞台にした切ない物語。それ自体は珍しくもないでしょうが、ペットの死に関心が向きました。●「不良少女」 飲み歩いた夜にコンビニで出会った金髪に染めた少女は、いくつもビルを持つ富豪の一人娘。彼女の祖父の死は複雑な家庭環境に変化を加えようとしていた・・・中編。もっとも女性に翻弄された感が強い作品。冴子を放ってまでユカのもとへと急ぐ草平がシリアスに探偵をしている姿を表しているよう。●「スペインの海」 常に3人の男性と援助交際する女性。何も問題はなかったはずだが、相手の元にはそれぞれデートの写真が送りつけられた・・・なんとも切ないラストが印象的。自業自得と言えばそれまでですが。●「名探偵の自筆調書 柚木草平」 これはおまけ。柚木ならもう少し口調が重い気がし、違和感が残りました。 毎度のことですが、さまざまな女性と出会い、振り回される柚木草平。今回は短編集ですので、それだけの人数の美女が登場します。 ただ、短編集だけにそれぞれにはやや物足りなさを感じました。事件の底が浅いというか、あるいは仕掛けが足りないというか。ここでもう一山、もうひとひねりと期待したところでフェードアウトしていくような。ですから、いちばん楽しませてもらったのは中編の表題作「不良少女」。やはり、このシリーズは長編の方が適していると再確認しました。新作『捨て猫という名前の猫』に期待。 なお、あとがきに書かれている文体を変えたという件ですが、まったく気付きませんでした。違和感がなかったと言うか、むしろ読者として気にしていなかったというべきでしょうか。 余談ですが、「名探偵の自筆調書」は10年ほど前の連載時に楽しませてもらったものです。またどこかで似たようなことをやってもらえれば。 これで「プラスチック・ラブ」も収録されていればコンプリートだったのですが・・・収録作:「秋の手紙」「薔薇虫」「不良少女」「スペインの海」「名探偵の自筆調書 柚木草平」関連作:『彼女はたぶん魔法を使う』『初恋よ、さよならのキスをしよう』『探偵は今夜も憂鬱』『誰もわたしを愛さない』『刺青白書』『夢の終わりとそのつづき』2007年11月28日読了
2007.12.01
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