こんな国に生まれて…日本狼…純粋バカ一代…山崎友二

こんな国に生まれて…日本狼…純粋バカ一代…山崎友二

2021.01.30
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カテゴリ: 純粋バカ一代
【1】
巡視員をしている時代に「阪神・淡路大震災」が起こった。テレビで、高速道路が横倒しになっている映像を見て、「これが日本で起こったことなのか」と驚いた。
仮にもだけど、土木技術者の俺がこんなのんきな仕事をしてていいのかという思いになった。
所属する会社の社長に電話をした。
「神戸へ行きたいんですけど」
もちろん、土木関係の仕事が激増するだろう。俺も少しは力になれるかもしれないと思って言ったのだが、社長の答えは
「なんで行きたいんだ?旅行か?」だった。
この会社は辞めようと思った。神戸へ派遣してくれそうな会社に転職しようと思った。
巡視員時代に「一級土木施工管理技士」の資格にも合格していたし、国家の一大事に、自分のステップアップも兼ねて動くことに決めた。

【2】
人材紹介会社で紹介されたのは、大阪本社の東京支店と東京本社の横浜支店の2社の建設会社だった。
東京支店の会社は、面接に3時間くらいかかるかもということで、現場見学でもするのかと思ったら、小論文を書かされた。
タイトルは決められていて「建設業の現状と将来に思うこと」だった。
2時間で、原稿用紙2枚か。書けないことはないけど、なにをどう書こうか迷って、時間ぎりぎりまで考えて、一気に書いた。
書き出し「セックスは~」として、頭のつかみを考えて、内容は、普通に自分なりの建設業の将来の展望を書いた。
高速道路の補修を専門とする会社で、神戸にも仕事で行けそうだし、将来性もある感じだった。



横浜の会社は、東京に本社がある東日本支社だった。マリコンの親会社から現業部門が独立した前年度年商100億円、従業員数300人の中堅大手だった。
支社での面接では、総務部長、土木部長、土木一課長、土木二課長、最後には支社長も現れた。みんな気さくな人たちで、緊張はあまりなかった。

事務所は、海沿いのビルの4階だった。古いビルなので、いや歴史のあるビルなのでエレベーターがなかった。しかし、毎朝4階まで駆け上がっっていた。しかも、2段ずつ飛び上がるように駆け上がっていた。
4階まで上がると、息を静かに収めた。ここで、はぁーはぁー言っているようではかっこ悪いと思っていた。

【4】
ある日、いつものように2段跳びで階段を上がっていったら、踊り場に、女子社員が立っていた。笑顔で…
「おはよう」とだけ言って、また2段跳びで上がったら、次の階の踊り場にも女子社員がいた。次の階にもいた。
「どうしたの?」と聞いても「えへへ」と笑うだけだった。
4階までまで登り切って、鼻で息をして整えた。そこには、総務のお局様がいた。驚いたような顔をしている。
下から、踊り場に立っていた女子社員たちが上がってきた。
「本当だったでしょう」とお局様に言っている。
どうやら、俺が2段跳びしながら上がってくることを検証したようだ。
「なんだ、そういうことか。ごくろうさま」
(終)





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最終更新日  2021.01.30 06:11:53
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