

もう一人の若手技術者は、プラント設計部主任の上戸恭介さん。1986年生まれで名古屋大、東京大大学院で土木工学を学んだ。2011年4月の三菱重工への入社を控えた3月11日、プラント設計者の志は暗転する。福島第1原発事故だ。その時、上戸さんはシンガポールへの卒業旅行のため自宅を出る30分前だったという。
3月11日までは世にいう「原子力ルネサンス」。国内外の電力会社の間では新増設ラッシュに沸き、原発エンジニアはあちこちで引っ張りだこだった。自らも希望に胸を膨らませ入社を待ちわびていた。ところが、ルネサンスは跡形もなく消えた。「原発の時代は終わるのではないか」。父親からも心配され、不安を抱えながら神戸造船所に赴任した。
担当は建屋の構造設計。建屋が地震などの揺れに対し安全に耐えられるかどうか解析したり、建屋の各種機器を最適に配置したりする設計業務を担う。だが、新増設のプロジェクトはすべてストップ。設計するプラントがない中、一年目に任されたのは今ある原発のストレステスト(耐性評価)だった。先輩たちと一緒になって日夜、過酷な自然災害に耐えられる構造かどうか検証し続けた。
「絶好のチャレンジ」
その後、原子力規制委員会が原発再稼働の条件として電力会社に求めた「新規制基準」の対応に伴走。新たな耐震設計の目安としてクリアしなければならない「基準地震動」や「基準津波高さ」などは福島事故前より格段に厳しくなったが、「土木設計者として絶好のチャレンジ」とむしろ逆境をバネに力をつけた。
腕の良さが認められ、今は三菱重工が次世代軽水炉と並行して開発を進める小型炉(SMR)の構造設計も任されている。SMRもプライオリティは「安全」だ。
蒸気発生器や原子炉など主要機器が一体となったコンパクトな小型炉は直径約18m。従来の大型炉は蒸気発生器だけで18m、原子炉だけで11.5mあった。最大の特徴は、地下に埋設できることだ。航空機の衝突やテロから防護できるほか、格納容器も二重になっており放射性物質を厳重に封じ込められる。
そうした長所が多い分、設計は一筋縄ではいかない。「地下だと地盤から建屋への地震の伝わり方がこれまでと違うため、新たな構造計算が必要になる」。また、建屋を広げすぎると岩盤を掘削する量が増えコストが跳ね上がる。小型プラントとなればコンパクトに各種機器を配置する難しさもある。
こうした難題に最新のコンピューティングや地震のシミュレーション技術を用いて挑む。「何が起きても安全に支障をきたさないプラント建屋を設計したい。試行錯誤の繰り返しだが、安全こそ自分たちに課せられた使命。やりがいはある」と上戸さんは語る。
脱炭素電源足りない日本
安全な原発を追求する若手エンジニアだが、そもそもなぜ、そこまで原発にこだわるのか。根底にあるのは再生エネ限界論だ。
国が10月に決めたエネルギー基本計画では30年度の電源構成を再生エネ36~38%、原子力20~22%、石炭火力19%などとしている。30年度に温暖化ガスを19年比46%削減する目標を掲げる日本政府にとって、未達は許されない。
この原発比率を実現するには、電力会社が政府の原子力規制委員会に申請済みの原発全27基の稼働が必要だ。だが、現実は10基しか動いておらず、電源構成に占める比率は10%程度にとどまっている。再生エネと合わせた脱炭素電源は足元で2~3割にすぎず、英国やドイツの5~6割、フランスの9割超に遠く及ばない。ちなみにフランスは原発比率が7割、再生エネが2割と原発を主軸にしている。
脱炭素に再生エネは欠かせないが、グエンさんは「日照や風の勢いに差がある太陽光や風力だけだと安定した電気は供給できない。一定の出力で電気を賄える原発は(日本がカーボンニュートラルを目指す)50年に向けて必要になるはず」と強調する。
グエンさんは周囲から「原発は怖い。危ない」とよく言われるが、「再生エネが増えるからこそ、ベースロード(長時間安定)電源として欠かせない」とよく反論するという。上戸さんも「周囲から原発にネガティブな印象を持たれる」が、グエンさんと同じ意見を持っているのだそうだ。
「核のゴミ」なお難題
グエンさんや上戸さんのライバルは世界中にいる。現在、世界では米国、中国、英国などで80基近いSMRが建設中または計画中で、ロシアでは稼働もしている。
中でも注目株は米スタートアップのニュースケール・パワーだ。米国でいち早くエネルギー当局から型式認定を取得、安全性審査をおおむね完了している。以前の記事(『出資ラッシュの小型原子炉 日本の“お弁当箱”技術に頼る』)で紹介したように、同社にはプラントエンジニアリングで実績がある日揮ホールディングスやIHIが今春相次ぎ出資した。
ほかにも米GE日立ニュークリア・エナジーや米ウェスチングハウスも小型炉の開発を進めている。フランスでは10月、フランスのマクロン大統領が小型炉を30年までに国内で導入すると発表。10億ユーロ(約1300億円)を投じる計画を発表した。
だが、原発には重い難題が横たわる。使用済み核燃料、いわゆる「核のゴミ」の廃棄処分だ。取材に同席した技術企画課の木村芳貴主席チーム統括は、「核燃料の再利用など採算性を持って事業を進めないといけない課題。この解決なしに真の意味で原子力産業は成り立たない」と説明。使用済み燃料の再処理などには三菱重工も他社や国と一緒に参画しており、責任を果たす立場にある。核のゴミ問題を提起されると分が悪いが、逃げてはいけない課題だ。
三菱重工は30年代に次世代軽水炉、40年代前半にSMRを完成させる計画。上戸さんは「自分が設計に携わったプラントを一つでもいいから稼働をさせたい」、グエンさんは「プラントが起動する瞬間に立ち会いたい」と話す。
このほど発足した岸田文雄政権ではにわかに原発再稼働の機運が高まっている。再稼働後、運転開始から40年を超える老朽化原発は30年までに11基に達する見込みで、運転延長か安全性の高い原発へのリプレースか、政府は判断を迫られる。リプレースに加え、新増設ともなれば、新型炉で日立製作所より先を行く三菱重工にチャンスが巡ってくる。「脱炭素の流れの中で、いつ原発が求められてもいいよう対応していきたい」。木村さんは話す。
原発は「国策民営」といわれる。若手エンジニアらの努力が結実するかどうかは国次第。国を動かすほどのプラントを完成させるべく今日も安全を巡るデータと 格闘する。
-------------------私の意見--------------------------
こうした若者に私は日本の未来は明るいと感じる。さすがのスリーダイヤモンド、被爆国だから放射能から逃げるのでなく、克服してこそ日本の未来、いや人類の未来があると私は確信する。
火力は人類を絶滅危惧種にするものなのだ、岸田さんには是非ともこういった技術に予算配分し日本の戦略技術とすべきだろう。安全に妥協するな、本当にいい言葉だと思う。リスク管理をけちるなということだ。
地球温暖化阻止はもう待ったなしのところまで来ている。ここからは政治の決断しかないのだ。今の地球は私達だけのものではない、未来の人類のものなのだ。
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