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2011年01月30日
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『異星人の郷』読み終わりました。


【送料無料】異星人の郷(上)

SFを読みつけている人、ヨーロッパの中世が好きな人、
どちらにもおすすめの作品だと思います。

まず冒頭の文章でやられてしまいました。

「わたしは星々への道のありかを知っている。扉は遠い昔、はるかな、似つかわしくない場所で一度開き、また閉じてしまった。これはその扉がどのように開き、どのように閉じ、なぜそうなったかについての物語だ。」

この、星々への憧れと、そこはかとない喪失感を含んだ文章で、
これは面白そう、と確信しました。

以下、ネタバレも含むので未読の方はご注意下さい。











さて、本作は二つの物語が交互に語られる。



もうひとつは「現代のアメリカ。宇宙物理学者と統計歴史学者のカップルが別々に自分の研究テーマを追いかけるうちに、なんたる偶然、二人の研究対象が意外なところで結びつく」という物語。

中世ドイツという現代の読者にとっての異文化世界へ入っていけるように、中世パートの視点人物は自然哲学の素養をもった神父に設定されている。中世とはいえ、当時の教会関係者は限られたインテリ層であるから、不時着した異星人を冷静かつ分析的な目でとらえている。また、神父に信頼をおいている領主マンフレートは聡明で現実的な人物で、打算もあろうが異星人を非常に公正に扱う。一般の村人は当然のごとく、異星人を悪魔だと恐れるのだが、神父と領主らによって異星人たちは村に次第に受け入れられて行く。

異星人達は故郷の星に帰るために、14世紀に可能な限りの技術を求め、宇宙船を修理するのだが、それには2年近い月日がかかる。その間、異星人側の内紛、領主の関わる戦闘への協力、神父との神学的および自然科学的な対話などが織り交ぜられていて話に奥行きを増している。

異星人が生化学的に地球人と大きく違うことが現代パート・中世パートの端々に示唆されており、これが不吉な予感をかもしだしつつ、さらにそこにペストの流行が絡んできて、物語は終盤、カタストロフになだれこんでいく。

ほか、中世パートにオッカム(あの「オッカムの剃刀」のオッカム)が登場したり、現代パートのラストでカール・セーガンの名が出たり、SFファン・科学ファンがうれしくなるようなネタもちりばめられていて楽しめる。

ラスト、宇宙物理学者が中世の紋章と自分の研究との符号に気づく場面、それから彼らが「異星人の郷」を発掘に行く場面がもっともカタルシスを覚えるところになるはずなのだが、ここはちょっと不満。あの、良質のSFやミステリを読んだときの「すべてのピースがはまった!」という快感が思ったほどないのである。なぜだかわからないが、今のところ思うのは、
現代パートにあまり感情移入できないこと。本来現代パートは現代人に理解しがたい中世世界を現代人の思考の枠組みでとらえるための窓口になるはずなのだろう。ところが、中世世界に次第に感情移入し始めると、現代パートを読むのがわずらわしくなってくるのである。また、発掘の場面はなくても、紋章と物理学の符号に気づく場面だけで充分だったのではないかという気もする。

不満も書いたが、SF読みが見慣れたものが方々に登場し、それが中世と出会ったことで、とえも読み応えのある作品になっている。
【送料無料】異星人の郷(下)





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最終更新日  2011年01月30日 21時53分43秒


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