理想の退職年齢については長年議論されてきたが、米国経済の急激な不況に伴い、「働くのに年を取りすぎなのは何歳か(how old is too old to work?)」という疑問が人々の最大の関心事となっている。住宅ローン問題や株価暴落の影響による退職金の減少が懸念され、90歳を過ぎても働き続けるほかないという冗談もささやかれるが、実際にそのようなことが可能なのだろうか。
米スタンフォード大学(カリフォルニア州)精神科臨床准教授のJoy L. Taylor氏は、技術を磨き続けることで仕事の実績に差が出ると強調している。同氏は、米国連邦航空局(FAA)が職業パイロットの退職義務年齢を60歳から65歳に引き上げたことを受け、40~69歳の非職業パイロットを対象に年齢が認知能力に及ぼす影響について検討した。その結果、60~69歳のパイロットは、最初は若いパイロットに比べて技術が劣っていたが、フライト全体の成績では差が小さくなったほか、時間とともに「回避(traffic avoidance)」能力については若手よりも大きな向上がみられることがわかった。