2004年06月14日
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「もし日本がサッカー先進国の仲間入りを果たしたいと願うなら、白と黒のボールを足や頭で操り、相手陣地のゴールに入れた回数を競うこの競技のことを“サッカー”と呼ぶのを、金輪際止めるべきである!」

 アメリカに住んでいると、つくづくそう思ってしまう。
 皆さんもよくご存知の通り、Soccerは米語であり、この競技の発祥の地であるイングランドをはじめとする多くの英語圏では、footballという言語を使う。
 だがアメリカでは、footballと言えば、とりも直さず、アメリカン・フットボールのこと。彼らは、この競技が試合中に足を使うことなど数回しかないというパラドキシカルな事実を不問に付し、プロテクターに身を包んだマッチョガイたちによる陣取りゲームのことを、なんのためらいもなく“football”と呼ぶ。そのかわりに、世界の共通語とも言える“footballL”という実に利にかなった名称の代わりに“soccer”というナゾの造語を使うのだ。そしてこの行為は、アメリカに住む多くの欧米人を最もげんなりさせていることの1つである。

 現在ポルトガルで開催されている『EURO2004』は、欧州各国によるサッカー(ここでは従来どおりこう呼びます)の国別対抗戦であり、世界中のサッカーファンの関心を集めている。
 だが、ここアメリカは、サッカー不毛の地である(特に観戦競技としては)。地上波はおろか、ケーブルTVやサテライトなどありとあらゆる手段を駆使しても、EUROを見るということは、生半可な覚悟じゃままならないのだ。
 そしてここアメリカは、世界各国の人々が集まる自由の国である。欧州からの移民や留学生、ビジネスマンは山ほどいる。そして彼らは、如何にアメリカにいながらにしてEUROを見るかということに血道をあげているのだった。
 その事実を証明するかのごとく、アメリカ最大のサッカーファン掲示板は、ここ数ヶ月間この話題でもちきりである。掲示板なので、情報の質や信憑性は虚実混交。それでも皆、「見られるらしい」という情報があると、あるものは欣喜雀躍として、またあるものは騙される可能性があるのを覚悟のうえで果敢にトライしていくのだった。そしてこの掲示板には、そんなチャレンジャーたちの亡骸が死屍累々と横たわっているのである。

 とりあえず、アメリカ在住のfootball愛好家たちの最低限のよりどころは、BBCのWEBラジオである。もちろんラジオなので音声のみだが、掲示板で最初にこの情報を提供してくれた人いわく、
「it's better than nothing.」ということだ。
 この表現は、かなり使用頻度の高い日常英会話でもある。
「何もないよりは、マシ」。
 どうしても見るのが無理だったら、このラジオを聴くことにするか……という諦念を胸に、彼らはより良い手段を模索し続ける。
 実を言うと、EUROをアメリカでTV観戦することは不可能ではない。「金に糸目をつけなければ」の話だが。試合はすべてペイパービュー。一試合のみの観戦だと$20で、全試合のセットだと$178だから、約2万円!! 高っ!! 
 だがそれでもよいから見たい、という人はかなりいる。たしかに、母国の一世一代の大勝負ということになれば、これくらいのお金は惜しくないという人もいるだろう。
 ところが、あるとき掲示板に「セットはないと言われた」という書き込みが出現したのだった。彼は、地元のケーブル会社に連絡し、最高責任者にまでご登場いただいたが「契約形態の都合でセットは取れない。見たければ一試合ずつ払え」と言われてしまったというのだ。先ほど一試合あたりの観戦料金は$20と書いたが、これは一次リーグの話で、試合のグレードが上がるにつれて料金も吊り上げられていくという寸法。仮に全試合見たら、その総額はなんと約$800にも達してしまう!!! 彼は狂わんばかりに掲示板上で怒りをぶちまけたが、その後、同様の書き込みがいくつか現れた。そして大会を数日後に控えたある日から、EUROの放映権を所持しているケーブル会社のwebサイトから「EURO全試合パッケージ」という項目は消えてしまったのである。契約上の都合か何かだろうか、いずれにしろ、この高いながらもお得な全試合観戦パッケージは雲散霧消してしまったようなのだ!!
 高給取りのビジネスマンならまだしも、学業のために来ている苦学生には、これはとても手の出る価格ではない。
「It's the only reason i hate living in the US, i can't watch my team (Espana) play!」というスペイン人留学生の魂の叫びも、むべなるかな。
 だが、ここでまた、新たな情報が登場した。なんと、アルバニアに世界中のテレビ番組をオンラインで配信している会社があり、そこと契約すれば、$10でEUROの全試合を見ることができるというのだ!!(いったい、どうやって調べたんだか)。ネットというのがかなり難ではあるが、そしてアルバニア語しか流れないというのも物悲しいが、それこそ


 昨日より、euroは始まった。
 掲示板には、以下のような文章が書き込まれていた。

「since when portugal-greece were playing i went to this tele-sport albania and saw nothing. instead they were showing some documentary about refree colina.」

 彼は、ポルトガル対ギリシャ戦を見るためパソコンの前に陣取り、期待と不安に胸を膨らませながら、今や遅しと、開始のホイッスルを待ちわびていたのだ。だが彼のパソコンに映し出されたのは、なんと世界最高のレフェリー、ピエール・ルイージ・コッリーナさんのドキュメンタリーだったのだ!! 


 自由の国、アメリカに夢を求めて訪れた若者は多い。だが彼らを待ち受けていたのは、晴れ舞台に立つ母国の戦士たちの姿を見ることさえ許されないという、何とも非インターナショナルな悲しき現実。
 どこの国かは解らないが、異国の地からやってきたであろう若者は、この事実にいたくショックを受けた旨を述べた後に、こう記した。
「I thought they accepted everyone's cultures. HA HA HA, no.
If you want to watch Euro 2004, call it football like everyone else (or something similar), not soccer.」

↑言わずと知れた、コッリーナさん





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最終更新日  2004年06月14日 10時27分36秒
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