近代日本文学史メジャーのマイナー

近代日本文学史メジャーのマイナー

Calendar

Archives

・ 2026.10
・ 2026.09
・ 2026.08
・ 2026.07
・ 2026.06
・ 2026.05
・ 2026.04
・ 2026.03
・ 2026.02
・ 2026.01
全て | カテゴリ未分類 | 明治期・反自然漱石 | 大正期・白樺派 | 明治期・写実主義 | 昭和期・歴史小説 | 平成期・平成期作家 | 昭和期・後半男性 | 昭和期・一次戦後派 | 昭和期・三十年男性 | 昭和期・プロ文学 | 大正期・私小説 | 明治期・耽美主義 | 明治期・明治末期 | 昭和期・内向の世代 | 昭和期・昭和十年代 | 明治期・浪漫主義 | 昭和期・第三の新人 | 大正期・大正期全般 | 昭和期・新感覚派 | 昭和~・評論家 | 昭和期・新戯作派 | 昭和期・二次戦後派 | 昭和期・三十年女性 | 昭和期・後半女性 | 昭和期・中間小説 | 昭和期・新興芸術派 | 昭和期・新心理主義 | 明治期・自然主義 | 昭和期・転向文学 | 昭和期・他の芸術派 | 明治~・詩歌俳人 | 明治期・反自然鴎外 | 明治~・劇作家 | 大正期・新現実主義 | 明治期・開化過渡期 | 令和期・令和期作家
2011.08.24
XML
カテゴリ: 昭和期・後半女性

『犬婿入り』多和田葉子(講談社)

 久し振りに本棚を整理していたら、二列に重ねて置いてある奥の列の、一番端からこの本が出てきました。
 大概この手の本は、何度かの本棚整理の際に棄てるか売るかして、また読みたくなったら次は文庫で買うというのが、私の現代小説の読書パターンだったのですが、なぜかこの本は本棚の隅でひっそりと生き残っていました。
 だから(というのか何というのか)、この本は文庫ではありません。(文庫にもなっていることは、ネットで調べてみて分かりましたが。)

 1993年の芥川賞受賞作品ですね。
 私がこの本を最初に読んだのも、たぶんその当たりだと思いますが、案外といっては何ですが、なんかもう少し古い感じがしていたんですがね。

 以前にも、どの報告だったか拙ブログで、少し筆者について触れた覚えがあります。
 確か、このあたりの時期の芥川賞で立て続けに女性作家が受賞した、という話ではなかったか、と。
 そのメンバーは、

多和田葉子・笙野頼子・川上弘美・小川洋子

と、こんな4人ではなかったか、と。
 そしてこの中で、文学性の高そうなのが前2人、ポピュラリティの高そうなのが後2人、と。

 うーん、今私の書いた「評価」は、一体誰が言ってたのでしょうかねー。
 まさか、私が考え出したわけではないでしょうが、こうして20年ほどが経って改めて見てみると、やはりそんな感じですものねー。
 まー、デビュー作には作家のすべてが詰まっている、みたいな言い方で考えると、ある程度予想された結果だとも言えますしねー。

 さて、本書には二つの作品が入っています。これです。

『ペルソナ』(「群像」1992年6月号)
  『犬婿入り』(「群像」1992年12月号)


 本の後ろに書いてある「初出」から、あわせて少し情報を書き込みましたが、うーん、僅か半年でこう変わるかー、とも思いますし、まー、半年あればこれくらいは変わるだろうとも思えるような変貌が、この二作品間にはあります。

 これもネットで少し調べてみたのですが、『ペルソナ』も芥川賞の候補になっているんですね。でも受賞を逸した、と。
 しかし、この逸し方はよかったですねー。だって半年後に、これはいかにも受賞に相応しいという作品が書き上がってきたのですから。

 『ペルソナ』も悪い作品ではないと思いますが、なにか「同人誌の中の出色作品」という印象が抜け切れません。少し意地悪に言うと、小説としてはやや貧相である、と。

 一方『犬婿入り』は、半年後の同作家の作品かと見まがうほどの物語の出来ている小説になっています。物語空間が作品の中に流れています。

 「みつこ」の元に「太郎」が現れるまでの、いわば段取り作りのエピソードも出色です。
 「団地妻の噂話」という切り取り方が秀逸で、私は何度も声を出して笑ってしまいました。

 ところが、重要人物の「太郎」が現れてからは、それに相応しい象徴的なエピソードが、深く書き込まれていきません。もっと分厚く深く書き込めてもいいだろうにと思うんですが、多くの場面や展開が、中途半端に端折られてしまって、次の話題に進んでいくという物足りなさが少し感じられました。

 しかしそれは結局、こんな「現代の伝承潭」のような書き方は(あたかも前半は「団地妻」による伝承が大切なトリックになっています)、ストーリーを重層的に縦に深めていくのが難しいと言うことを表しているのかも知れません。

 だから作品の「幕を下ろす」のもやはり難しく、本作の最後も、少し情に流れたような、戸惑い気味のエンディングになってしまいました。

 と、作品の後半をなんだか少し「不出来」のように書いてしまいましたが、それは半分以上私の「好み」みたいなものを含んだ感想なので、「読者の自由な読み」ということで、おまけしておいてくださいね。

 そして読み終えてみると、上記に私は『ペルソナ』と同作家の作品とは思えないと書きましたが前言取り消し、「やはり相通い合う二作品」という感じがしました。

 結局、いわゆる多くの作家の取る「成長過程」みたいななものでしょうか。
 うまい例えになっているかどうか分かりませんが、例えば漱石にも、

『虞美人草』→『坑夫』→『三四郎』

という流れがあったりしますものね。

 ……えっ? この例えの方が、よく分からないですって?
 ……どうも申し訳ありません。


 よろしければ、こちら別館でお休み下さい。↓

俳句徒然自句自解+目指せ文化的週末

にほんブログ村 本ブログ 読書日記へ
にほんブログ村






お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう

Last updated  2011.08.24 07:57:00
コメント(0) | コメントを書く
[昭和期・後半女性] カテゴリの最新記事


【毎日開催】
15記事にいいね!で1ポイント
10秒滞在
いいね! -- / --
おめでとうございます!
ミッションを達成しました。
※「ポイントを獲得する」ボタンを押すと広告が表示されます。
x
X

PR

×

Favorite Blog

映画の時間 アレハ… New! シマクマ君さん

やっぱり読書 おい… ばあチャルさん

Comments

analog純文 @ Re:「バイブス」「ペニー」「キャパい」「ガンダ」(08/08)  シマクマ君さん、コメントありがとうご…
シマクマ君 @ Re:「バイブス」「ペニー」「キャパい」「ガンダ」(08/08)  ボクも読みました。結構素直な作品とい…
analog純文@ Re:主人公の心情がよくわからない(06/14)  シマクマさん、コメントありがとうござ…
シマクマ君 @ Re:主人公の心情がよくわからない(06/14)  昔、この作品が出たころ読んで面白かっ…
シマクマ君 @ Re:思っていたよりも「重く」ない(02/21) 純文さんへ  あたたかいお返事ありがとう…

© Rakuten Group, Inc.
Design a Mobile Site
スマートフォン版を閲覧 | PC版を閲覧
Share by: