近代日本文学史メジャーのマイナー

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2015.05.31
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『英霊の声』三島由紀夫(河出文芸選書)

 先日、なんとなくぶらっと図書館に行って、なんとなくぶらぶらっと本棚を見ていましたらこんな本がありました。

『世界最高の日本文学』許光俊(光文社新書)

 この筆者はドイツ文学がご専門の方だそうですから、その専門方面でも著名な方なのか、わたくし、寡聞にして存じ上げないんですが、ただクラシック音楽が好きなものとしては、あ、知ってる、という感じの方であるのは間違いないと思います。
 この筆者の、クラシック音楽関係の本が結構出ているんですね。わたくしも何冊か買いまして、とっても楽しく読ませていただきました。

 で、この本の中に、三島由紀夫の『憂国』について触れてあったものだから、また、上記に記したタイトルにも興味が持てましたもので、借りて帰って家で読みました。

 えー、まず、いわゆる「苦言」から申させていただきたいんですけどー。
 本のタイトルと内容が、これ違うんでないかい、と感じてしまう本は、わたくし今までにもけっこう読んだことがあります。そして、そんな一冊を読んだ時に、実は本のタイトルは(特に新書なんかは)、筆者の意向ではなしに、主に出版社の販売促進を担当する方たちの意向でつくことが多い、ということを知りました。

 本書でも、後書きに筆者が、はっきり言ってかなり苦しいタイトルについてのエクスキューズを書いていらっしゃいます。
 実際本書について、タイトルと、内容に取り上げられてある小説は、どう考えても異なります。(ちょっとついでに書きますと、もちろん世の中の事柄はほとんどすべて、屁理屈をこねればなんだって理論だてはできましょうけれど。)

 えー、わたくしは、たいがい世間のことを知らない人間でありますゆえ、何そんな寝惚けたことを言っているのかと言われれば、ははぁ、世の中というものはそんなところで回っているんですね、と、まぁ、納得してもいいんですが、何と言いますか、すっごく悲しい思いが残っちゃうんですね。

 「銀が泣いている」といったのは将棋指しの坂田三吉氏であったと思いますが、あたかも「本が泣いている」というように感じる私は、惚けた文学老人故でありましょうか。

 ……いえ、つまんないことから、書き始めてしまいました。

 そもそもの話に戻ります。
 現在慶応大学法学部の教授でいらっしゃる筆者は(ただし奥付による2005年現在の話ですが)、大学の授業で『憂国』を取り上げたところ、学生のほとんどみーんながこの作品のファンになってしまい、中には、この作品に登場するような軍服姿で成人式の写真を撮影したと得意げに見せてくれた男子学生もいた、と報告されてあります。

 ……なるほどねぇ。
 対象の学生が慶応大学法学部で、授業で習った後に成人式があったようですから、大学二回生、十九歳か二十歳が中心ですか……、ぼんやりと学生集団のイメージが分かるような、分からないような、そんな感じではありますね。
 しかし、確かに短編小説『憂国』には、それくらいの力があるだろうなということは、今回、たぶんわたくしこの作品はかつて3回くらい読んだとなんとなく思い出すのですが、思いました。

 新潮文庫の、三島由紀夫短編集の解説は三島自身が書いていたと思いますが、その中に『憂国』に対する筆者の偏愛は書かれていました。
 実は今回読んだ古い河出文芸選書の最後にも、本書収録の3作品に対する自作解説が書かれています。

 三島由紀夫は、様々な文学ジャンルに優れた業績を残した方ですが、どのジャンルの作品が最も優れているかについて、ちょっとうろ覚えなんですが、「一に戯曲、二に評論、三四がなくて、五に小説」と、まぁ、戯れ文みたいなものでしょうが、そんな言い回し(だったかな)を思い出します。

 今回取り上げた冒頭の本には、この三作が収録されています。

『英霊の声』『憂国』『十日の菊』

 そもそも古いこの本を、私は四十年ぶりくらいに再読したのですが、なるほどそういうことであったかと、筆者の後書きにあたる『二・二六事件と私』を読んで、たぶん四十年程前の私にはきっとよくわからなかっただろうと思うのですが、とてもすっきりと理解することができました。

 三島の自作解説がとってもうまいんですね。
 実に論理的に冷静に、へんに謙遜したりすることもなく、堂々と書いています。もちろん三島由紀夫の文章ですから、とても明晰です。

 ただついでに触れますと、三島作品は、トータルとしてとてもすっきりと理解することができ、それは一般的には優れた点でありましょうが、「文学」的に論じた場合には、時に物足りない一面と評価されてしまうところでもあります。

 ともあれ、今回の報告、もう少し続きます。


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Last updated  2015.05.31 10:25:01コメント(0) | コメントを書く
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analog純文 @ Re:「バイブス」「ペニー」「キャパい」「ガンダ」(08/08)  シマクマ君さん、コメントありがとうご…
シマクマ君 @ Re:「バイブス」「ペニー」「キャパい」「ガンダ」(08/08)  ボクも読みました。結構素直な作品とい…
analog純文@ Re:主人公の心情がよくわからない(06/14)  シマクマさん、コメントありがとうござ…
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