地球人スピリット・ジャーナル1.0

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2007.02.28
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カテゴリ: マルチチュード

「私にとってオウムとは何だったのか」
早川紀代秀 川村邦光 2005/3



の本で語られるテーマや、この本の持っている意味について、そのあまりの重要性により、乱雑に書き進められる私のブログのようなところで、総括的に書かれてはいけないと思う。ゆえに、この本を読んだ、という記録とともに、忘備録として、気になる数ポイントを箇条書きにメモしておくことにとどめる。

 この本は、林郁 夫の
「オウムと私」  とともに 、麻原集団「元・幹部」によって書かれた数少ない本とされている。とすると、林の本は98年にでていて、私にとってはやや早すぎた「反省」のように思えたが、こちらの早川の本は、やや「遅すぎた」本、という感じもする。80年代中半からの麻原集団の形成過程については、林の本とそれほど大きな差異はない。ただ、前々日まで地下鉄サリン散布実行を知らされていなかった林や、幾多の凶悪犯罪に手を染めたにせよ、サリン散布に実行犯として参加しなかった早川のこの二冊を読む限りにおいて、まだまだ麻原集団の核心に迫れた、という思いはない。

 このような葛藤 から、伊東乾がかつての同級生であり、地下鉄サリン実行犯のひとりである豊田亨への呼びかけ
「さよなら、サイレント・ネイビー」 を書きたくなる 心境というものもわからないではない。実行犯ひとりひとりの心境というものを編集なしにダイレクトに知ることはかなわないまでも、せめて早川がこのような本を残したことは、記憶にとどめておく必要があると思う。

 早川の述懐「消えない足跡」の最終部分「現在の心境」からの抜書き。

害者やご遺族の方々に対しては、お詫びの言葉もありません。
 私達の与えた苦しみは、決して今生だけで償いきれるものではないと思っています。
 当時、グルの指示なら、殺生も救済になると信じていましたが、己を知らない思い上がりでした。
中略)
 死刑が確定すれば、死んでお詫びをいたしますが、今はただ、自分達のしたことを直視し、ひたすら許しを乞うとともに、少しでも被害者やご遺族の方々の苦しみが和らぐようにと日々祈るしかありません。私が事件のことを供述しだしたのは、それが一つの償いとなると思ったからでした。しかしそれが、ご遺族の方々が持っておられたわずかな望みを打ち砕くものであったと知ったとき、そういうことに思いいたらなかった自分を恥ずかしく思いました。また事件を明らかにしていくなかで、ご遺族の方々が不快に思われることがあったとしたら、それもお詫びしなければなりません。本当に申 しわけありませんでした。 (後略)p215

 早川には92年の段 階ででた
「市民ユートピアの原理―ルソーから真理へ (上)」オウム刊 という本があるらしい。今 はあまり読みたいとは思わないが、今回の本と読み比べてみる価値はあるかもしれない。

91年9月ごろ、ある人物からソビエト政府がオウムに興味を持ち、そのころからオウムが全国の劇場で上演していた「死と転生」というミュージカルをボリショイ劇場で上演するほか、グル麻原にモスクワ大学などで講演してほしいという要望を持っているが、教団としてはどうかというような話を持ちかけられ、これに興味を示したグル麻原が、新實に交渉をさせていました。しかし、どうも話がうますぎると思ったグル麻原は、91年10月ごろ私に、新實に一緒に交渉に参加し、この話が本当かどうか確かめるようにと指示しました。 p176

 林にせよ、早川にせよ、一橋 文哉
「オウム帝国の正体」 に書 かれたような裏世界との接触はほぼなにも書いていないが、この辺の「ある人物」と称される部分から、なんらかの新たなる推測が生れるのは避けられないことであるが、ここでは深追いしない。

リーメーソンについては、私はグル麻原から88年ごろに初めて聞かされ、そういう団体があることを知ったのですが、この時の話では、グル麻原の前世がフリーメーソンで、アメリカの独立にかかわったというものでした。ですからフリーメーソンを別に敵視はしていませんでした。それが91年ごろには、敵の代名詞としてフリーメーソンが語られるようになりました。この点について、グル麻原は次のようなことを言っていました。
 「近代フリーメーソンは私が創ったものなのだよ。そしてアメリカ独立戦争のときも私はフリーメーソンのリーダーとして生れている。このころまでのフリーメーソンは激しい修行もし、霊性も高くよかったんだよ。ところがその後、物質主義にとりつかれて退廃していったんだよ。そして今のフリーメーソンは際限のない欲望を肯定する悪の勢力に与(くみ)してしまっている」と。そしてメーソン国家であるアメリカ合衆国軍隊とオウムは近い将来戦うことになると言われました。
(後略)p182

「オウムと9.11」 2006 /7で島田裕巳は、「この考え方を麻原に吹き込んだのは井上と早川で、その点は中川の法廷での証言などで裏付けられている」としている。また「麻原もそうした書物に影響された弟子たちから吹き込まれ、フリーメーソンを唱えるようになったわけである。」と書いている。島田は、この早川の本を読んだ(筈だ)後に、「オウムと9.11」を書いた筈であり、この部分の齟齬は一体、どう説明すればいいのだろう。早川が自らの裁判を睨みながら、極力自らを「善人」にみせようとしているのか。あるいは島田が麻原を擁護するために、意図的に「井上や早川」たちから「吹き込まれた」としているのか。いずれにしても、島田の論理的な煮詰め方は少なからず「甘い」と再び思わざるを得ない。

 早川の本の中にはほとんど林の件はでてこない。一箇所だけでてくるのは93~94年ごろになってからのことである。

 (前略) はそれを聞いて、グル麻原が少し前ごろから林郁夫のスパイチェックをいたく信用するようになっていたのを思い出し、「そうかスパイチェックか、それはどんなもんか知らんけど間違いないんやろ・・・・。えらいもんがでてきたな・・・」つぶやいたものの、それ以上は何も言えなくなりました。 p192

 各個人による十分ではない書き込みを、あまり腰が入っていない私が十分ではない読み込みをしているので、ますます明瞭ではないが、この辺を読む限り、麻原集団、とはいうものの、麻原を同心円状に取り巻きながら、それぞれの「幹部」クラスの弟子であっても、横の連絡が密ではなかったイメージがある。逆に、林や早川レベルでは、事件の全体像を見ていなかったということになるのか。だとするなら、全体を見ていたのは誰か。殺害された村井か、あるいは他の幹部か、麻原本人か。いや、これらの人々も「全体」を見ることはなかったのではないか。

中に書籍を差し入れてもらえるようになってからは、妻や弁護士さんから、ヨーガやチベット密教をはじめ精神世界に関する様々な本を差し入れてもらっては、むさぼるように読みました。そして、考え、瞑想し、オウムの教義や活動について必死に内省しました。オウムに入信してからは、オウムの本以外はいかなる精神世界の本も読んではいけないことになっていましたから読んでいませんでしたし、入信前も宗教関係の本はほとんど読んでいませんでしたので、こうした読書は、私にとって、オウムの教義や活動、自分達のしたことを冷静に見つめ直すよい機会となりました。読み出してから2年ほどで7~800冊の本を読んでいました。 p203

 2年ほどで7~800冊、ということは、 ほぼ一日に一冊。ジャンルも読み方も違うだろうが、現在での私のブログでの読み込みとほぼ同じくらいと言える。なお
「チベット密教」 の共著者、正木晃は、早川の弁護人側として裁判の証人になっている。現在(2005年当時)の早川は 「麻原への帰依は揺らぎ、断絶するにいたったが、それでもブッタ・シャカムニへの信仰心により平静さを取り戻したという。」p316

読書からは、色々な本から数多くのことを得ましたが、なかでも、デビット・ニールの「チベット魔法の書」という本からは大きな衝撃を受けました。この本は、チベットに入った初めての西洋人女性によって、チベット密教が本格的に紹介された古典的名著の和訳本ですが、この本の中では、呪殺する能力があっても、生き返らせる能力がないかぎり、呪殺してはいけないとはっきり述べられていました。 p204

 なお、私はこの本において、村 上春樹が
「約束された場所でーunderground 2 」 という 本で、オウム信者たちへのインタビューをまとめているということを初めて知った。






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Last updated  2009.02.09 21:54:35
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