「チベット聖者の教え」
エリック=エマニュエル・シュミット/ 阪田 由美子 2004/7 単行本 62p PHP研究所
Vol.2 No.330
★★★☆☆
(ネタばれあり)
同じ ミラレパの話
だが、 エヴァ・ファン・ダム
のコミック本よりもさらにシンプルなストーリー。作者はフランスのベストセラー作家。時空を超えた自分探しの物語とは言え92頁とはなんともシンプル。「あなたの前世はチベットの・・・・ 魂を浄めるために夢から夢へと駆け巡った900年---------」の帯のコピーは、どこまで本気(笑)だろうか。
もし、アバター多火手がチベットに生きていたとしたら、1215~1236頃、系譜としては、レーチェンパ(1084~1161)以降の伏流水の孫弟子あたりの位置か。
「あなたはなにも知らないのよ」と女は決めつけるように言った。「あなたの名前はスヴァスティカ。あなたは自分の魂を浄めようとして、この何百年というもの、夢と夢と駆け巡っている。あなたは憎しみから解放されたいと思っている。そのためには、あなたが闘った相手の話をしなくてはならない。最も偉大な行者、ミラレパの話をね。十万回話したあかつきに、ようやくサンサーラから・・・・輪廻から逃げられるわ」。
女は自分の席に戻り、青みがかった揺らめく煙の壁の向こうから、もう一度言った。
「いいこと、十万回よ、十万回・・・・・・」
p5
ストーリーの中で時空もアイディンティティも大きく揺らぐ。
妙な話なんですが、ある個所までくると、いつもミラレパのことを”私”と言ってしまうんです。私がミラレパだなんて・・・・・・冗談じゃない。話に熱中して、ついその気になってしまって。シモンからスヴァスティカ、スヴァスティカからミラレパへと渡り歩くうち、自分がどこのだれかを忘れ、”私”という、この習慣と反射の集まりをどこかに置いてきてしまうんです。おかげで、以前より身近に動き回れますけどね。
p36
この本にはDale TerBushの彩度の高いイラストが10数枚挟まれている。
ミラレパは愛弟子レーチュンパのほうに身を乗り出し、こう言った。
「レーチュンパ、私は老いた。この体はひび割れている。もうじき、私はつぎのしるしを見せる。老いと病のしるしを」
p58
エリック=エマニュエル・シュミットという作家が、母国フランスでどのような位置に存在するのかわからない。他にどのような作品を発表しているのかも知らない。だが、洋の東西を超えて、ミラレパやその周辺の物語は、たくさんのインスピレーションをひとりひとりに与えてくれることは間違いない。
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