読書日記blog

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2005.09.28
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カテゴリ: ノンフィクション


新潮文庫

兵士に聞け

「自衛隊とは本にならない原稿を書きつづけるところ」

この言い方は見事に的を得ている感心した。安全保障が目指すのは戦争に勝つことではなく、戦争にならないようにすることである。自衛隊の役割として期待されているのは抑止力。開戦は安全保障政策の失敗を意味している。
抑止力である自衛隊に実戦という出番が来てはならない。しかし、それに備えて訓練に訓練を重ねなければならない。そのような矛盾した役割を担う自衛官はどこに仕事のやりがいを見出しているのか。杉山隆男は自衛官の声を我々に伝えてくれる。

戦史や兵器について詳しく分析した本はごまんとある。自衛隊について法的側面や政治的側面、軍事的側面から見た本もたくさんある。しかし、一人の人間として自衛官を取り上げた本は少ない。自衛官を国防のための駒としてしか見られないのは大きな問題だ。大局的見地ばかりに気をとられ、人間というものを忘れるのは危険である。

今年作品が三本も映画化され一気に時の人となった福井晴敏。『亡国のイージス』で日本人の心を揺さぶった福井晴敏の人気の秘訣は、人間の描写が良かったからだといわれている。従来の軍事ものは兵器や戦局ばかりに着目し人間の描写が甘かったが、福井晴敏は人間に重きを置いた。最新鋭のイージス艦にしても、F-2支援戦闘機にしてもそれを動かしているのは人間である。ちなみに、『亡国のイージス』の主要参考文献の中には、この『兵士に聞け』も入っている。

小説ですら人間が大切なのだから、現実の自衛隊を考えるときにそこで働く人々を見なければならないのは明白だ。今日は自衛隊への関心も高まり、その活動も評価されるようになってきた。とはいえども、まだまだ自衛官に対する偏見や無関心は根強いように思う。






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Last updated  2005.10.14 02:16:39
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