読書日記blog

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2007.02.21
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カテゴリ: 教養・実用


東方書店



蒋介石とは何者だったのか。公開されている蒋介石日記の複写や、関係者の日記、著者自身の経験を手がかりに、マクロヒストリー史観から、中国革命における蒋介石の役割を検討する。


伝統的社会体制を変革し、中国を近代国家として生まれ変わらせる一連の革命はマクロヒストリー史観から見ると、三つの段階に分けることができる。蒋介石の上層組織の構築、毛沢東による基層の改革、そして現在進む海峡を挟んでの重商政策による上下を繋ぐ法律体系の整備。この本では、蒋介石がいかにして上層組織を築き上げたのか、なぜ下層を纏めることができなかったのかが検討される。

蒋介石が活躍した当時の中国は、旧社会の残滓が残る軍閥の時代であり、外部からは列強に蚕食され、もはや統一した国家の体をなしていなかった。蒋介石は、黄埔軍校の校長からスタートし、内憂外患に苦しむ中国の改革に乗り出す。党内左派との熾烈権力闘争や北伐と国共合作を繰り返しつつ、蒋介石は党・政・軍を掌握する。そして、周囲の声に圧され、準備不足のまま、勝てなくとも負けるわけにはいかない抗日戦に突入してしまう。長年わたる抗日戦争は英米の援助によって勝利の目処が見えてくるも、他力本願によらざるを得なくなった蒋介石はかつてのカリスマを失い、外部の批判や叱責を避けられなくなってゆく。そのころ中共は農地改革によって農村の人民と物量を手にし着々と実力を蓄えつつあった。そして蒋介石は、抗日戦に勝利した後に始まった国共内戦で台湾に追いやられてしまう。


授業で使った本は基本的にこのblogでは紹介してこなかったが、これからこのテーマは流行りそうなので紹介しておく。2月9日(金)に再放送されたNHKスペシャル「日中戦争 ~なぜ戦争は拡大したのか~」もけっこう良かった。前半は蒋介石日記を元に作られており、映像で見ると本ではわからない雰囲気も伝わってくる。ただ、後半は昔ながらの歴史観。
講義の報告のために章ごとにレジュメにまとめたのだが、かなり分厚い本なので要約もページが多くなり結構疲れた。今回blog用に概略だけシンプルにまとめたのだが、やはり本の主張を上手くまとめ切れていない上、つまらない。もちろんマクロヒストリー史観の社会変革を三つの段階に分けてみるという見方がこの本のメインではある。とはいえこの時代の中国史を読むときの一般的な面白さは、常に誰かと繰り広げる熾烈な権力闘争にあるだろう。そこを簡潔に紹介できないのが残念だ。それと蒋介石の心情の分析も興味深かった。やはり要約は難しい。





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Last updated  2007.02.23 10:00:11
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