読書日記blog

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2007.03.25
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カテゴリ: 教養・実用


岩波書店



蒋経国と李登輝からみる台湾現代史。

大陸と睨み合いながら台湾に戒厳令を敷いて開発独裁を行なった蒋経国。民主化を推し進め新しい台湾人を作ろうとした李登輝。現在の台湾を語る上で欠かすことのできない二人だが、その出自の違いが面白い。方や大陸から移ってきた蒋介石の息子。方や日本統治下に生まれ2.28事件では狙われたほうにいた本省人エリート。この二人の人生を辿れば、台湾が抱える課題が見えてくる。

この本のサブタイトルは“「大陸国家」からの離陸?”。毛沢東に追われて台湾に来た国民党は、中国全国を代表する正統性を主張すると共に、大陸の中国共産党との違いを強調する必要に迫られた。数百年前に大陸から移民し台湾に移り日本統治の経験を経た本省人は、中国人とは違う台湾人としてのアイデンティティーを持つに至った。外省人と本省人が大陸から離陸した経緯は違うが、いまや民主主義と経済発展の中で新台湾人という共通のアイデンティティーを確立しつつある。
両岸関係が経済的に深まっていく中で、これからも台湾は中国とは一線を画す国であり続けることができるのか。台湾が大陸を台湾化しつつあるのだというものの、経済的結びつきが強くなればなるほど、大陸の台湾への影響力は大きくなる。経済学をやる人はEUの例を挙げながら経済と政治は別だと説くが、本当にそうだろうか。中華世界は恐ろしい。これまでの中国の歴史で、幾たび中国を征服した異民族を中国化してきたことか。本気とも思えないが、もし大陸が民主化すれば大陸との統一もありうるとの主張もある。大陸を台湾化しているつもりが、逆になってしまいかねない危うさを感じる。そのようなことはないとは思うが、経済的結びつきが政治的独立にどう影響を与えていくのか気になるところである。
もっとも、大陸から離陸した台湾は、高度を上げすぎても国際問題になってしまう。もう大陸に墜落する心配はないと思うが、果たしてどの程度の速度でどの程度の高さを飛べばいいのか。国民国家に着陸するための航路を手探りで探しながら飛び続けているのが、いまの台湾である。李登輝の「転向」問題は、日本人にもそのあたりのことを考えさせる契機となった。





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Last updated  2012.04.10 23:20:10
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