読書日記blog

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2007.06.19
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カテゴリ: 教養・実用


新潮新書



なぞり書きや習字教室、ペン字講座では悪筆は直らない。字がうまくなるための極意とは。


本のタイトル通り、本書で提唱される字がうまくなるための極意は「字配り」である。要諦のみ紹介すると、ゆっくりと書く、線と線はきちんとくっつける(※楷書の場合。行書の場合ははなす)、方向を変えるときはきちんと折る、横線の向きをそろえる、漢字は大きく仮名は小さく、行の最後をそろえる、となる。本書では、楷書の場合、行書の場合、縦書きの場合、横書きの場合と、書き方ごとに細かく字配りのポイントが紹介されている。


私は中学時代に万年筆に出会って以来その魅力の虜になり、このblogで万年筆関係の本を何度も取り上げてきた。しかし、今回私がこの本を読んだことからもわかるように、実は私の字は自他共に認める悪筆である。とても人様に見せれたものではない。万年筆好きのくせに字が下手では格好がつかない。本書でも紹介されているように、万年筆は字を美しく書くのに最適の筆記具である。私の場合も下手ゆえに万年筆にのめり込んでいったいう面もある。確かに、私の場合でも万年筆で書けば、シャーペンやボールペンで書いたときよりは幾分ましな字が書ける。それでもやはり万年筆が好きである以上、お気に入りの万年筆で「幾分まし」ではなく、「比較的綺麗な字」を書書くことに憧れている。高価な万年筆を使っている以上、それなりの字を書かねば万年筆に申し訳が立たない。万年筆好きとして日々、己の悪筆に悩んでいるのである。
そうはいっても、私はこれまで悪筆を改めるための特段の努力を払ってこなかった。大人になれば自然に綺麗な字が書けるようになると問題を先送りしてきた子供時代を悔やんでも、いまさら手遅れだと半ば諦めていた。さりとてこのままずっと字が下手なままでいるのも嫌だ。かといって、なぞり書きを始めるほどの根気もない。そこで最近気になっていたのが、手軽に綺麗な字を書けるようになるような気配を漂わせてる書店で字の書き方に関するハウツー本コーナーである。とりあえず手に取ったこの本を、物は試しと読んでみることにした。

読み物としても興味深かった。楷書と行書の違いについてはこれまで意識したこともなかったので、参考になった。また、文豪の誤字のエピソードはとても面白かった。今度塾の生徒に誤字脱字を指摘されたら、島崎藤村の話でも紹介してみようと思う。本書で説かれる「字配り」にも納得で、これを極めれば確かに字が上手くなりそうである。

とはいっても、本書で実際に字が上手くなるかは暫く様子を見なければわからない。私の場合は残念ながらそんなに上手くなるとも思えない。というのもここで紹介された話の半分ほどは、すでに知識として知っていたが実践できないでいたからだ。
確かに、この本で紹介されたことを実践すれば確実に今より綺麗な字になる。また、内容もそんなに難しいことではなく誰でもすぐに実践可能なことである。それでも自分がそれらをすべて実践するかといえば即答しかねる。身に染みた悪癖はなかなか抜けきらないもので、習慣を変えるのは頭でわかっても実践しにくいのだ。
そもそも、悪筆の人も、綺麗な字の書き方はあちらこちらで教わってきているし、上手い人の書きかたを見ればどう書けばいいのかは大体わかる。それでも字の下手な人は自分の間違ったやり方を変えない。それは大方私も含め、悪筆であることに諦念を持っているからではないだろうか。「悪筆」といわれている人でも、丁寧に書いたときはそこそこ読める字を書ける。にもかかわらず、常々丁寧に書こうとしないから悪筆になってしまう。頭でわかっても、常に実践しなければ字は上手くならない。


この本を読んだところで、この本を実行しようという気を常に持ち続けることができなければ、字は上手くならない。暫くの間は意識し続けるであろうから、この本のお陰で少しは私も字が上手くなっただろう。その後、意識して字を書き続ければ、その書き方がくせになり本当に字が上手くなるだろうし、厭きて止めてしまえば元の木阿弥となる。そうはならないように頑張りたいが、果たして上手くいくかどうか。





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Last updated  2007.06.20 00:36:12
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