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2010.10.05
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「わかってるわ。あやまっても済むことじゃない。ただ、どうしても伝えなくちゃならないことがあって。鵜原さん言ってたわ。あなたとなら生まれ変わることができる、新しい時代を一緒に生きていくことができるって。あの時、間違いなく誰よりも、鵜原さんはあなたのことを愛していた」

昨年は、作家・松本清張生誕100周年の年だったようだ。
本作「ゼロの焦点」は、それを記念して製作された映画で、およそ50年前にも野村芳太郎監督作品として公開されているため、そのリメイク版とも言える。
松本清張氏は、言わずと知れた社会派サスペンス作家の走り的存在であった。
松本清張氏の後継として、森村誠一氏や夏樹静子女史などが続き、大衆的な推理小説を奥行のある重厚なヒューマンドラマにまで高めることに成功した。
『或る小倉日記伝』で芥川賞を受賞しているが、その時、松本氏はすでに40代。
作家としては遅咲きの花であった。
ペン一本で食べて行く決意をした夫・清張を、実に辛抱強く妻が支えた。

それでも清張という人物を信じて、家族を養い続けたのである。
そんな内助の功に、ただただ脱帽だ。

お見合いを経て結婚に至った鵜原憲一と禎子。
禎子は、夫が余り自分の過去を話さないところに不安がよぎったが、これから少しずつ理解していけばいいのだと自分に言い聞かせていた矢先のこと。
20101005b
結婚式から一週間が経ち、仕事の引継ぎで金沢へと出張になった憲一は、待てど暮らせど帰っては来なかった。
胸騒ぎを覚えた禎子は、単身、金沢へ向かうのだった。

作品の内容としては、やはり戦後の時代性を伴うもののため、平成を生きる我々には若干馴染みの薄いものを感じるかもしれない。
敗戦国である日本が抱えて来た、戦後の混沌とした世相の中、女が身一つで生きるには血反吐を吐くような思いで、倫理と法を掻い潜るしか手段がなかったのだと、そういう悲哀が根底にある。
金と名誉を手に入れた後も、いつも纏わりつくのは過去のどす黒い記憶で、枕を高くして眠る日はなかったであろう。
我が身の地位を守りたい一方で、実は過去との決別のための殺人ではなかったかと想像した。
辛酸と苦杯を嘗め続けた松本清張氏だからこそ書くことのできた、人間の底知れぬ暗黒の部分を描いているのだ。


【監督】犬童一心
【出演】広末涼子、中谷美紀、木村多江

また見つかった、何が、映画が、誰かと分かち合う感動が。
See you next time !(^^)





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最終更新日  2010.10.05 12:49:21 コメントを書く
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