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2013.04.02
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【ブラック・ダリア】
20130402

「お前が必要とするものはある」
「つまり? 俺みたいな間抜け? それが必要か?」
「何を言う・・・」
「エリザベス・ショートを殺し、偽装したな。ポルノ映画もあんたが撮った。セットを見たよ。証拠も全て揃ってる」
「銃を下ろせ」


ポスト・ヒッチコックと表現したものか否か迷うところだが、本作を手掛けたデ・パルマ監督は、かなりヒッチコック作品の影響を受けておられる。
それは、さりげなく目を向けた窓の向こう側の捉え方や、ブラインドを下ろさずドア越しに見えてしまう情事の模様など、カメラの捉え方に類似性を感じてしまうからだ。
だが全てが全て、意識的な模倣なのかと言えばそれは違う。
明らかに違う。
デ・パルマ監督のスローモーションによる時間の引き延ばし、インパクトの加味は独特のものなのだ。
さて、ここで“ブラック・ダリア事件”について少しお話しておく。
この事件は実際に起きた、1947年ロサンゼルスにおける猟奇事件のことである。
被害者は女優志望のエリザベス・ショート。
死体には激しい損傷があり、胴から二つに切断という残虐な事件であった。


元プロボクサーのバッキーは、ロス市警の警官として働いていた。
警察の好感度アップと昇給嘆願のためにボクシングの試合に出場したバッキーは、対戦相手であるリーと仕事上でもコンビを組む。
ある日、胴から二つに切断された若い女性の死体が発見される。
被害者は女優志望ながら夢破れて娼婦まがいの生活をおくるエリザベス・ショートであった。
バッキーとリーは、事件の究明に乗り出す。

吟遊映人は、もともとサスペンスものが大好きである。
特にヒッチコック作品には十代のころから傾倒している。
イギリスの生んだ“サスペンスの神様”ヒッチコック監督は、恐怖という感情を次のように表現している。
『自分が安全だと思えば、むしろ味わってみたくなるもの』
なるほどと思った。
たとえどんなに血生臭い本を読んだとしても、恐怖映画を観たとしても、『ランプの傘の下に広がる甘く暖かな雰囲気や、私たちが座る心地良い柔らかな肘掛椅子のありがたさを改めて思い知らせてくれる』のだ。

本作「ブラック・ダリア」では、デ・パルマ監督の演出やカメラワークもさることながら、その錚々たる役者陣の顔ぶれも素晴らしい。
スカーレット・ヨハンソンやヒラリー・スワンクの古典的な美貌は、相当なスクリーン効果がある。

個人的な好みを押し付けることを好しとしない吟遊映人ではあるが、デ・パルマ監督はヒッチコック作品の後継者として実に見事なサスペンス・スリラーを披露してくれる人物である。
ぜひともこのような質の高い作品をご覧いただき、日常の幸福を改めて実感していただきたいのだ。
『人間が本当に興味を持つのは自分自身か、自分の心を動かす物語だけだからだ』(アルフレッド・ヒッチコックの自伝より)


【監督】ブライアン・デ・パルマ
【出演】ジョシュ・ハートネット、スカーレット・ヨハンソン

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最終更新日  2013.04.02 06:29:41
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