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2015.09.06
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カテゴリ: 読書案内
【藤堂志津子/めざめ】
20150906

◆微妙な年齢の女性たちの焦りと孤独
不思議なもので四十代も半ばになると、やたらハッピーエンドの結末にしらじらしさを感じるようになった。
惚れたはれたの苦悩に涙する年齢ではないという、寂しい現実なのかもしれない。
そんな中、微妙な年齢の女性たちの様々な恋愛模様を克明に描いた小説と出合ってしまった。
藤堂志津子の『めざめ』である。
表紙を飾るタイトルは『めざめ』だが、収録されているのは5編の短編小説だ。

『厚化粧』『微笑がえし』『黒い瞳』『ピエロの微笑』『水色のノート』

どれも環境や性格の違う女性が男性を意識し、ふり回したり、ふり回されたり、どこか滑稽にさえ感じられるドラマを展開してくれる。
5編の小説どれもが、それぞれに味わい深いものだが、個人的にとくに好きなのは『黒い瞳』である。

著者の藤堂志津子は札幌出身で、北海道新聞文学賞という地方文学賞を受賞することで世に出ている。

最近ではなかなか地方文学賞から中央に出て来る作家がいないので、きっと藤堂志津子の経歴に励まされる作家志望者は多くいるに違いない。
また、著者が札幌出身ということもあってなのか、舞台が北海道という設定が多い。
東京や横浜あたりがメインになりがちな恋愛小説の中にあって、それだけでも藤堂志津子の作品は異彩を放っている。

『黒い瞳』ももちろん札幌が舞台である。
ストーリーはこうだ。
28歳のOLである恭子は、2年間交際している平野とギクシャクした関係になっていた。
平野はデートのたびに不機嫌さを隠さず、恭子の何気ない言葉にもいちいちつっかかって来たり、舌打ちするという具合だった。
それでも今の恭子には、平野以外の結婚相手は考えられなかった。
そんなある時、義妹の美奈が、平野という男は恭子には向かないと忠告して来た。
恭子と美奈は、血のつながらない姉妹だった。
両親が再婚したことで家族となったのだが、美奈は継母のつれ子だった。

恭子はますます平野への愛情を強くし、美奈の忠告には聞く耳を持たなかった。
一方、平野は美奈の美貌に惹かれ、恭子の存在など無視して美奈に接近するのだった。

この作品は、リアリティという点から言ってしまうと「ありえない」なりゆきに少々興ざめしてしまうかもしれない。
ところが「家族愛」とか「姉妹愛」というドラマ性にあこがれを抱く者にとっては、ラストでしみじみとした感動を覚えるのだ。
結婚に焦りやあこがれを持つ女性の多くが、結婚=(イコール)幸せだと勘違いしている。

とはいえ、現実はどうかと言うと、それほどキレイゴトで済まされるものじゃない。
「こんなはずじゃなかった」と思うことが多々あるのも否めない。
それでもなぜ女性は結婚にこだわるのか?
おそらく、自分の「居場所」が欲しいのだろう。
だが、本当のところはわからない。
十人十色、それぞれの思惑があるからだ。

微妙な年齢にさしかかっている女性の方々に、この『めざめ』を読んでいただきたい。
新しいタイプの恋愛観を学ぶことができるかもしれない。

『めざめ』藤堂志津子・著



コチラ から
★吟遊映人『読書案内』 第2弾は コチラ から



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最終更新日  2015.09.06 06:26:33
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