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2016.10.16
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カテゴリ: 読書案内
【万葉集/新潮古典文学アルバム】
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歌わずにはいられない気持ちをストレートに表現する
暑い暑いと言っていたら、ここのところ急に朝夕涼しくなってきた。
コオロギの声も聴くようになり、いよいよ秋らしくその気配をひしひしと感じるようになった。
いにしえの人なら、さしあたり萩の花などを愛でた歌などをひねったかもしれない。
たとえば次のようにだ。

『秋萩の 咲きたる野辺は さ男鹿そ 露を分けつつ 妻問ひしける』

これは万葉集からの引用だが、季節の花と鳥獣とを組み合わせている。
後世の、季語を一つだけ使った俳句とはだいぶ趣きが違う。

今回は、新潮古典文学アルバムの2巻を手に取ってみた。
『万葉集』である。

俵万智と言えば、『サラダ記念日』で一世を風靡したベストセラー歌人である。
“恋多き女”とも呼ばれ、ある意味職業と私生活が上手い具合にコラボして、今の立ち位置を確立した凄腕の人物だ。
現代人には取っつきにくい『万葉集』だが、この俵万智のエッセイを読むだけでもちょっとだけ短歌への興味がそそられるのだから不思議だ。

一つ勉強になったのは、

相聞歌(そうもんか)⇒「あなたのことが好きです」
挽歌(ばんか)   ⇒「あなたが死んで悲しい」

これを高校時代の古典の授業で、これほどシンプルに先生から教えてもらっていたら良かったのに。
俵万智は「あらっぽい言い方かもしれない」と前置きしながらも、万葉歌を突き詰めた形で解説してくれる。
西欧のポエムにも通じるものがあるが、もともとは心から伝えたいこと、自然を謳歌する気持ちなどをストレートに表現するところから始まったのである。
ものすごく単純で、おおらかで、「見るからにそれだけのこと」でしかない歌。

私は長野の善光寺に詣でた際、門前町のお土産物屋さんでカタクリの花が刻まれた印鑑ケースを買った。

この古典文学アルバムをめくっていると、万葉歌は植物について歌われているものも多々あり、その一つとしてカタクリの花(かたかごの花)の写真が掲載されている。
見ると、可愛らしいけれど地味な花である。
大伴家持が次のように歌っている。

『もののふの 八十をとめらが 汲みまがふ 寺井の上の かたかごの花』

なんだか奥行も何もない感じだが、本当にそのままストレートな歌である。

私は好きだ。
俵万智も、おそらく万葉集の手を加えていない素朴の持つ新鮮さとか力強さに惹かれたに違いない。
その証拠に「とれたての野菜は、塩をかけただけでおいしい」と述べている。

最近の若い人はラブレターなんて書かない、だろう。
ましてや好きな人に想いを込めて歌に詠むことなど、皆無に違いない。
我々の先祖がどれほどの情熱を持ち、奔放な愛を歌いあげたかを知るには『万葉集』が一番かもしれない。
その入門としてこの古典文学アルバムをおすすめしたいと思う。

新潮古典文学アルバム2『万葉集』 森淳司◆俵万智

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最終更新日  2016.10.16 06:45:40
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