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2017.05.21
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カテゴリ: 映画/青春
【17歳】
20170521

「いいえ」
「自分の価値を知るため?」
「そんなんじゃない!」


「あーあ、女子高生(JK)に戻りたいなー」などとぼやく友人がいる。
ちょっとしたおしゃべりに興じている最中の戯言なので、どこまでホンネかはわからない。
とはいえ、少なくとも高校時代が楽しい思い出の1ページであることにはまちがいなく、青春を謳歌していたのだと思う。
でも私はそうではなかった。
家庭環境のこともあるし、自分自身に対する言いようのない嫌悪感や、鬱屈したものを抱えていたからだ。
とてもじゃないが、テレビドラマにありそうな恋とか友情などに彩られたバラ色の青春などではない。
もっと暗く、内向的な思春期だった。
私は今さら高校生のころになど戻りたくはない。
だが、四十代も半ばを過ぎてみると、あのころを思い出すことはある。

あのころの若さは、言葉は悪いが、核兵器みたいなもので、敗北を知らない恐ろしい武器なのだ。

今回はTSUTAYAでフランス映画の『17歳』をレンタルしてみた。
フランソワ・オゾン監督による作品だ。
この監督の過去の作品からするとサスペンスモノが多いのだが、『17歳』はどちらかと言うとヒューマンにスポットを当てている。
ざっくり言ってしまえば、不機嫌な17歳(女子高生)の物語だ。

ストーリーはこうだ。
高校生のイザベルは、夏のバカンスで家族とともに別荘に来ていた。
ランチのあと皆はそれぞれ昼寝をするのだが、イザベルの弟ヴィクトルはなかなか寝付けない。
興味本位でこっそり各人の部屋をのぞいて回るヴィクトルは、イザベルの部屋を見て息を呑む。
なんとイザベルは裸で自慰行為に耽っているのだった。
その後、イザベルはドイツ人青年フェリックスと出会い、夜の海辺で初体験を済ます。

翌日になるとフェリックスに素っ気ない態度を取り、自分の17歳のバースデーパーティーにも呼ばない。
こうして短い夏のアバンチュールは終わった。
高校では後期の授業が始まったものの、イザベルはいつも物憂げで不機嫌な感情を抱えていた。
そのはけ口としてSNSで知り合った様々な男たちと密会を重ね、300ユーロと引き換えにその肉体を提供していた。
ケチでつまらない男がほとんどの中、とても紳士的な老人ジョルジュは、女性の扱い方をよく知り、イザベルでさえも安心できる相手だった。

ある日、心臓に持病のあるジョルジュはバイアグラを使用したことで、イザベルとの行為の最中に発作を起こす。
イザベルは息をしていないジョルジュに必死で心臓マッサージを行うなどの応急処置をしたものの、再び息を吹き返すことはなかった。
イザベルは売春の発覚を恐れ、助けを呼ぶこともなくその場を立ち去ってしまうのだった。

私は『17歳』を見て「これが青春のリアリティだ」と思った。
女子高生のみんながみんな援助交際に手を染めているわけではないし、年がら年中不機嫌なわけでもない。
だが、少なくともドラマや漫画で描かれている理想的な青春は、あくまでも「学生とはこうあるべき」だとする大人の視点から表現したものに過ぎない。
その点、『17歳』は見事に現実をあぶり出している。
思春期は人間ならばだれもが通る通過点だが、とても入り組んだ迷路のような難しい時期である。
性というものに興味を持つ一方で、精神が成熟していないのでいつも自分を持て余し、行き場のないエネルギーの放出に囚われてしまいがちになる。
主人公のイザベルがお金に不自由しているわけでもないのに売春に手を染めているのは、一体なぜなのか?
その部分を突き詰めていくと全体像がより鮮明になるかもしれない。

主人公イザベルに扮するのは、マリーヌ・ヴァクトである。
やや小ぶりの胸のふくらみが成熟していない少女の美しさをかもし出している。
この作品が初の主演作品らしいが、何やら堂々とした演技で見事なものだった。
濡れ場も多くあるのに、エロスや官能というものからは離れ、クールでドライな美しさに魅せられた。
親への反抗や退屈な日常との決別、刺激を求めてやまない若さゆえの加速。
我々は親の立場となった今なら、あのころの自分に伝えたい何かがあるはずだ。
私は決してイザベルのような思春期を送ったわけではない。
なのにあのころの自分を思い出し、不思議と共鳴するものを感じるのだ。

さてみなさんはこの作品を見て、しょせんドラマ上の作り話だと思うだろうか。
それとも・・・

2013年(仏)、2014年(日)公開
【監督】フランソワ・オゾン
【出演】マリーヌ・ヴァクト


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最終更新日  2017.05.21 06:51:20
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