《櫻井ジャーナル》

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2010.05.31
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カテゴリ: カテゴリ未分類
 日本でも国民監視システムは築かれてきた。そうした流れの中、プロバイダーのサーバーから個人情報を入手する仕組み「DPI」をカネ儲けに利用することを総務省の官僚たちが認めたと報道されている。

 日本のエリートはアメリカの後を追いかけてきた。監視システムについてもこれは当てはまる。アメリカでは電子情報機関が個人情報を収集分析するシステムを開発、批判を受けながらも使い、最近では「潜在的な反体制派」を探しだして予防拘禁をしそうな雰囲気だ。

 例えば、アメリカのフロリダ州では、司法当局が常習犯罪者になる未成年者を「予言」するIBMのコンピュータ・システムを導入すると言われている。つまり、犯罪へ向かうであろう未成年者を「予防更正」させて「安全な社会」を築くのだという。犯罪を生み出す社会的な原因には手をつけないということだが、それは当然。そうした問題を解決しようとすれば、エリートが大金を稼ぐうえで邪魔になる。

 ところで、DPIが広がるとさまざまの問題が生じる。例えば、ダミーの会社を作れば、どの国の情報機関でも、捜査機関でも、犯罪組織でも、日本に住む人々の個人情報を手にすることができるわけだ。勿論、そのターゲットには庶民だけでなく、インターネットを利用している全ての人や団体が含まれる。政治家も官僚も経営者も例外ではない。

 歴史を振り返ると、第2次世界大戦が終わって間もない頃からアメリカの電子情報機関NSA(国家安全保障局)はイギリスのGCHQ(英政府通信本部)と共同でUKUSA(ユクザ)なる連合組織を創設し、地球規模の通信傍受(盗聴)システムECHELONを運用してきた。

 このシステムについてイギリスのジャーナリスト、ダンカン・キャンベルが触れたのは1988年のことだが、NSAの存在も一般に知られるまでには時間を要した。創設から四半世紀後の1972年にアメリカの雑誌「ランパート」が元NSA分析官にインタビューし、その中で「全ての政府」を監視しているNSAの存在を明らかにしたのだ。

 1975年には、オーティス・パイク下院議員を委員長とする下院特別委員会で、ウイリアム・コルビーCIA長官はNSAが国際電話を傍受している事実を認め、一般市民の通信も盗聴されていると証言している。アメリカ人の通信を傍受する際には、イギリスなど「友好国」の情報機関に依頼していたともいう。

 通信を傍受するだけでなく、不特定多数の個人情報を記録分析するシステムも開発されている。1970年代から1990年代にかけてはPROMISと呼ばれるシステムが有名だった。民間のINSLAWという会社がアメリカ政府の資金を使って開発したのだが、1980年代、つまりロナルド・レーガン政権に情報機関の関係者が「トラップ・ドア」を組み込んで世界中に売っていた。イスラエルの情報機関もPROMISのプログラムを入手、独自にやはり「トラップ・ドア」を組み込んで売っていた。アメリカやイスラエルの情報機関が手を加えたPROMISを導入した政府、機関、企業の情報はアメリカやイスラエルに筒抜けになった。

 このPROMISに日本の法務省も興味を持った。遅くとも1979年にはINSLAWと接触、このシステムに関する概説資料と研究報告の翻訳を法務総合研究所が1979年3月と80年3月に「研究部資料」として公表している。この時、実際に動いていたのは敷田稔(後の名古屋高検検事長)であり、その上には一等書記官として日本大使館に勤務していた原田明夫がいた。言うまでもなく、原田は後に刑事局長として「組織的犯罪対策法(盗聴法)」の法制化を推進、事務次官を経て検事総長に就任している。



 1997年8月に最高裁判所は司法省の言い分を認める判決を言い渡しているが、破産裁判所、連邦裁判所、そして下院司法委員会は司法省が民間企業の開発したシステムを横領したと認めたのである。大変なスキャンダルだが、日本のマスコミは無視していた。アメリカの司法省が横領するのは日常茶飯事だと思ったのだろうか?

 ちなみに、アメリカの最高裁が絶対的な信頼を寄せ、司法省の言い分を認める根拠にした証言をした人物とは、イラン・コントラ事件で偽証して有罪になったロバート・マクファーレンや、証券詐欺や銀行詐欺などでロサンゼルスの連邦地裁で有罪の評決を受けるアール・ブライアンたちだ。

 ジョージ・W・ブッシュ政権になると国民監視システムの開発はさらに活発化、国防省のDARPA(国防高等研究計画局)はTIAというプロジェクトを開始、個人の学歴、銀行口座の内容、ATMの利用記録、投薬記録、運転免許証のデータ、航空券の購入記録、住宅ローンの支払い内容、電子メールに関する記録、インターネットでアクセスしたサイトに関する記録、クレジット・カードのデータなどあらゆるデータの収集と分析に乗り出した。TIAが発覚するとMATRIX、このシステムが露見すると別のシステム・・・というように監視システムは強化され続けている。

 情報支配の問題を「カネ儲け」という視点からしか論じられない日本のマスコミ。怒りを通り越し、哀れみを感じてしまう。





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最終更新日  2010.06.01 03:08:20


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