全33件 (33件中 1-33件目)
1
ウクライナの最高議会で議長を務めた経験のあるアンドレイ・パルビーが8月30日、ポーランドに近いリビウで殺害された。この人物はウクライナにおけるネオ・ナチの幹部のひとりだ。 1991年にオレフ・チャフニボクとウクライナ社会ナショナル党(後のスボボダ)を結成、1998年から2004年にかけて彼は準軍事組織「SNPU(ウクライナ愛国者)」を率いていた。2004年に彼はオレンジ革命に参加しているが、これはビクトル・ヤヌコビッチを排除し、新自由主義者のビクトル・ユシチェンコを大統領に据えるため、アメリカが仕掛けたものだ。 ユシチェンコ時代にオレンジ革命の指導層は西側資本の手先としてウクライナ人の富を略奪、自分たちの富を築いたが、国民は貧困化していく。その結果、2010年の大統領選挙ではヤヌコビッチが勝利、大統領に就任した。彼を嫌っていたアメリカ政府は2013年11月から14年2月の期間、ウクライナでクーデターを仕掛けて成功させている。そこから現体制は始まった。 年明け後にクーデターは激しくなり、キエフのユーロマイダン(ユーロ広場、元の独立広場)ではネオ・ナチのメンバーが登場して暴力行為をエスカレートさせていく。2月18日頃から棍棒、ナイフ、チェーンなどを手にしながら石や火炎瓶を投げ、ピストルやライフルで銃撃を始めた。その頃、2500丁以上の銃をネオ・ナチは広場へ持ち込んでいたとも言われている。 こうした状況を一気に悪化させたのは広場での狙撃。第1発目は音楽協会ビルから撃たれたのだが、そこを管理していたのはアンドレイ・パルビーにほかならない。スナイパーは外国からも雇われていた。 この狙撃を調査するため、2014年2月25日にエストニアのウルマス・パエト外相がキエフへ入った。その結果を彼は26日にEUのキャサリン・アシュトン外務安全保障政策上級代表(外交部門の責任者)へ電話でスナイパーはヤヌコビッチでなく、反ヤヌコビッチ勢力だと報告しているが、ヤヌコビッチの排除を優先するアシュトンは「議会を機能させなければならない」と応じている。 2017年11月にはパエトの報告を裏付けるドキュメントがイタリアで放送されている。その中で自分たちが狙撃したする3人のジョージア人が登場、警官隊と抗議活動参加者、双方を手当たり次第に撃つよう命じられたとしている。この3人は狙撃者グループの一部で、治安部隊のメンバーとしてジョージアから送り込まれたいう。 その証言者によると、キエフのクーデターはジョージアで実行されたバラ革命と同じシナリオ。狙撃の指揮者はアンドレイ・パルビーだとも語っている。 またふたりの研究者、オタワ大学のイワン・カチャノフスキーとカリフォルニア州のCETIS(テロ情報研究センター)のゴードン・ハーンも狙撃はスボボダや右派セクターなどによって行われたという結論に達しいている。(Medea Benjamin & Nicolas J. S. Davies, “War In Ukraine,” OR, 2022) パルビーは2014年5月2日のオデッサ虐殺において中心的な役割を果たした。この虐殺では、数十人のロシア系住民が労働組合会館に閉じ込められ、建物が放火された後に殺害された。元SBU職員のヴァシリー・プロゾロフによると、パルビーは当日、武装民族主義過激派のオデッサへの移送を組織し、その調整を監督していた。 その日、オデッサではサッカーの試合が予定されていて、サッカー・ファンを乗せた列車が午前8時に到着、そのファンをネオ・ナチの「右派セクター」が挑発、広場へと誘導、住民虐殺に繋がった。 西側諸国はロシアを舌先三寸で騙すことに失敗、停戦に持ち込んでウクライナの戦力を回復させるための時間を稼ぐという目論見は失敗に終わった。ウクライナは兵力も兵器も枯渇、ロシア軍の勝利は決定的で、戦争を推進してきたネオコンや配下のヨーロッパの「エリート」は迷走している。簡単に勝てるという前提で結束していた反ロシア勢力は分裂を始めているが、今回の暗殺にもそうした背景があるのかもしれない。**********************************************【Sakurai’s Substack】https://sakuraiharuhiko.substack.com/
2025.08.31
ロシアのFSB(連邦保安庁)はドイツが資金を出した戦術弾道ミサイル「サプサン」とミサイルの発射装置を製造する工場を破壊、その際にドイツの技術者が死亡。その1週間後にはドニプロペトロウシクのパウロフラード(パブログラード)にあり、射程距離3000キロメートルという巡航ミサイルの「フラミンゴ」を組み立てていた工場をロシア軍は破壊、その時にはイギリスの技術者が死亡している。フラミンゴを保管していた兵器庫も破壊された。8月2日には、オチャコフでロシアのスペツナズ(特殊部隊)がオチャコフでイギリス陸軍のエドワード・ブレイク大佐とリチャード・キャロル中佐、そしてMI-6の工作員ひとりを拘束したと報道されている。 フラミンゴの製造工場が破壊された翌日にはイギリス海軍大将のアントニー・ラダキン国防参謀総長とイギリス空軍のリチャード・ナイトン空軍参謀長(次期国防参謀総長)がキエフを緊急訪問した。パウロフラードに対するロシア軍の攻撃はイギリス軍にとって、それだけ重大な出来事だったのだろう。イギリスの軍や情報機関はクリミア橋を破壊してクリミアを軍事的に制圧しようと必死だ。アメリカやイギリスの偵察機がクリミア周辺を飛行しているのもそのためだと見られている。 キエフでウォロディミル・ゼレンスキーと会談したラダキンとナイトンはオデッサとオチャコフを防衛するために部隊を派遣すると約束、その代わり領土の問題でロシアに譲歩せず、これ以上ロシア軍に占領地を拡大させないように要求した。 領土の問題でロシアに譲歩するなとイギリスに言われたウォロディミル・ゼレンスキーも以前からロシアの領土拡大を認めないと宣言してきた。ネオ・ナチの一派はもしゼレンスキーが譲歩したら殺すと脅している。 ドナルド・トランプ米大統領も領土が問題だと認識しているようで、領土を交渉材料だと考えているようだが、少なからぬ人が指摘しているように、ロシアが要求しているのはウクライナの非軍事化、非ナチ化、NATOに加盟しないことの保証、ロシア国境付近への西側諸国軍の展開の制限、ウクライナに対する武器供与の制限、ウクライナにおけるロシア語使用の保証、また西側諸国が凍結したロシア資産を返還し、ウクライナの中立を維持すること、そして領土の「現実」(ドネツク、ルハンシク、ザポリージャ、ヘルソン)を承認することなどで、領土の拡大はロシアの直接的な目的に入っていない。 ここまでウクライナ/NATOが追い詰められたのは、2022年3月上旬の段階でキエフのクーデター体制がロシアと停戦で合意しなかったためである。 ロシア軍の攻撃が始まった直後からイスラエルやトルコを仲介役とする停戦交渉が始まり、仲介役のひとりだったイスラエルの首相だったナフタリ・ベネットは交渉の内容を長時間のインタビューで詳しく話している。 ベネットは2022年3月5日にモスクワへ飛んでウラジミル・プーチン露大統領と数時間にわたって話し合い、ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領を殺害しないという約束をとりつけることに成功、その足でベネットはドイツへ向かってオラフ・ショルツ首相と会っている。 その3月5日、SBU(ウクライナ保安庁)のメンバーがキエフの路上でゼレンスキー政権の交渉チームで中心的な役割を果たしていたデニス・キリーエフを射殺。クーデター後、SBUはCIAの配下で活動している治安機関だ。 停戦交渉はトルコ政府の仲介でも行われ、やはり停戦でほぼ合意に達している。その際に仮調印されているのだが、「ウクライナの永世中立性と安全保障に関する条約」と題する草案をプーチン大統領はアフリカ各国のリーダーで構成される代表団が2023年6月17日にロシアのサンクトペテルブルクを訪問した際に示している。 こうした和平の流れを止めたのはイギリス。2022年4月9日、イギリスの首相だったボリス・ジョンソンがキエフへ乗り込み、ロシアとの停戦交渉を止めるように命令(ココやココ)、その後も姿勢を変えることはなかった。 その当時から西側では政府も有力メディアも「ウクライナが勝っている」と主張していた。次は「膠着状態」や「反転攻勢」と言うようになり、今はロシアの進撃が遅いと宣伝してきた。 ロシアは死傷者が続出で訓練を受けていない兵士を前線へ送り出している、「経済制裁」で疲弊している、社会に不満が溜まっているとも主張してきたが、いずれも事実に反していることは本ブログでも繰り返し書いてきた。こうした苦境に陥っているのはウクライナ/NATOにほかならない。2022年2月当時から戦況は一貫してロシアが優勢なのだ。 途中、ロシアを舌先三寸で騙し、停戦に持ち込んで戦力を回復させるための時間を稼ぎ、その一方でウクライナ/NATOが勝利しているというイメージを広げようとしていたが、2014年の「ミンスク1」と15年の「ミンスク2」で西側諸国に煮湯を飲まされたロシアは応じなかった。今後も時間稼ぎに過ぎない停戦に応じることはないだろう。 それに対し、西側はロシアに打撃を与えるためにNATO軍を投入していると見られている。その一環としてアメリカはウクライナへ3350機のミサイルを供給することを決めた。射程距離が約400キロメートルだという拡張射程攻撃兵器(ERAM)と呼ばれる空中発射型巡航ミサイルの一種だ。 トランプ政権もロシアとの直接的な軍事衝突へ向かっていると言えるのだが、アメリカを含む西側諸国はロシア軍が大きな損害を受け、兵員不足で不安定化していると思い込んでいるようだ。そうした状況にないことは現実を直視すれば明白なのだが、ロシアには簡単に勝てるという思い込みで戦争を始めたネオコンをはじめとする好戦派は自分たちの見通しが間違っていたとは認められないのだろう。 ロシア軍の戦闘能力は高まっている。ロシアは一貫して穏便に事態を収拾させようとしてきたが、NATOがクリミア攻撃に乗り出した場合、プーチン大統領は本格的な戦争へ移行するのではないかと懸念する人もいる。**********************************************【Sakurai’s Substack】
2025.08.30

厚生労働省は8月29日、6月分の「人口動態統計速報」を発表した。死亡者数は11万5780人。COVID-19(2019年-コロナウイルス感染症)騒動が始まる前年の2019年の同じ月に比べて1万3426名増えている。 騒動の引き金を引いたのはWHO(世界保健機関)。2020年3月にパンデミックを宣言、パニックを誘発したのだが、その前、2020年2月28日にアンソニー・ファウチNIAID(国立アレルギー感染症研究所)所長を含む3名の研究者はCOVID-19の致死率が1%未満かもしれないと発表している。つまり季節性インフルエンザ並みだと報告していた。 COVID-19でパンデミックが宣言できたのは、「新型インフルエンザ(豚インフルエンザ)」が流行(2009年1月から10年8月にかけての時期に)する直前にパンデミックの定義が変更されたからだ。「病気の重大さ」、つまり死者数が多いという条件が削られたのである。そこで死者がインフルエンザ並みだったCOVID-19でもパンデミックが宣言できたわけだ。この豚インフルエンザは通常のインフルエンザより穏やかで、パンデミックを宣言するような状態ではなかった。。 しかも、診断基準が曖昧だった。WHOやアメリカのCDC(疾病予防管理センター)は2020年4月、医学的な矛盾がなく明白な別の死因がないならば、あるいは適度な確かさがあるならばCOVID-19を死因としてかまわないと通達した。 アメリカ上院のスコット・ジャンセン議員は2020年の4月8日にFOXニュースの番組に出て、病院では死人が出ると検査をしないまま死亡診断書に新型コロナウイルスと書き込んでいると指摘、その実態を告発する看護師も少なくなかった。患者数は大幅に水増しされたということである。病院がそうした政策に協力した理由のひとつは、COVID-19に感染している場合には病院が受け取れる金額が多くなることにあった。 COVID-19騒動を煽るために使われた手段のひとつがPCR(ポリメラーゼ連鎖反応)検査。この検査で陽性の反応が出ると「感染者」と見なし、死亡すると因果関係の証明なしに原因はCOVID-19であるかのように宣伝されたのだが、この検査は特定の遺伝子型を試験管の中で増幅する技術であり、その増幅サイクル(Ct)を増やしていけば、医学的に意味のないほど微量の遺伝子が存在しても検出でき、ミスも起こる。 PCRを病原体の検査に使うと「偽パンデミック」を作り出す危険性があるということだが、この問題は2007年にニューヨーク・タイムズ紙が指摘している。同紙によると、アメリカのニューハンプシャー州にあるダートマース・ヒッチコック医療センターでそうした事態が生じている。2006年4月にひとりの医師が2週間ほど咳き込み、他の医療関係者も咳をするようになり、百日咳の感染が疑われたのだ。 医療センターで働く1000名近くが簡易検査を受け、勤務から外されて142名が感染しているとされた。その結果、数千名がワクチンを接種する事態になったのだが、本格的な検査を実施しても百日咳菌に感染していた人は確認されず、通常の風邪だった可能性が高いことが後に判明した。関係者は伝染病が発生したとする警報はまちがいだったことを知らされたのは、騒動が始まってから8カ月後のことだ。こうした間違いを引き起こした原因のひとつがPCRのような高感度の簡易検査だと指摘されている。 Ct値を上げていくと(コピーの回数を増やすと)偽陽性が増えていくため、偽陽性をなくすためにはCt値を17以下にしなければならない。35を超すと偽陽性の比率は97%になるとも報告されている。2020年3月19日に国立感染症研究所が出した「病原体検出マニュアル」を見ると、その値は40。つまり、日本で行われてきたPCR検査は無意味だ。 医薬品会社や監督官庁は「COVID-19ワクチン」が有害だということを知っていたようで、この新薬に関するファイザー社の関連文書をFDA(食品医薬品局)は75年間、封印しようとした。 しかし、アメリカでは一部の専門家が情報の開示を求める訴訟を起こし、迅速な公開を裁判所が命じ、文書は明らかにされた。そうした文書を分析したサーシャ・ラティポワはCOVID-19騒動を軍事作戦だと発表している。2022年初頭のことだ。 こうした軍事作戦を実行しているのはアメリカの国防総省だが、人びとの目を中国へ向けさせようとしている人も少なくない。SARS-CoV-2は人工的に作られた可能性が高いのだが、このウイルスに感染した動物は中国でなく、北アメリカで見つかっている。 北アメリカの自然界ではシカ、ノネズミ、コウモリを含む5種類の動物が感染していることが判明、それらの種はモンタナ州にあるロッキー・マウンテン研究所で実験動物として使用されていたことが突き止められた。(Jim Haslam, “COVID-19 Mystery Solved,” Truth Seeking Press, 2024) ラティポワによると、2020年2月4日に保健福祉長官はCBRN(化学、生物、核、放射線)緊急事態に関するふたつの宣言をしている。そのひとつがEUA(緊急使用許可)で、大量破壊兵器が関与する重大な緊急事態を想定、CBRN物質に対する対抗手段を安全性と有効性を確保するため、規制監督なしに使用する許可だ。**********************************************【Sakurai’s Substack】
2025.08.30

海上自衛隊は8月4日から12日にかけてイギリス、アメリカ、オーストラリア、スペイン、そしてノルウェーとフィリピン海で軍事演習を実施した。アメリカからは空母「ジョージ・ワシントン」、イギリスからは空母「プリンス・オブ・ウェールズ」、そして日本からは空母「かが」を含む艦船が参加、12日にプリンス・オブ・ウェールズはアメリカ軍の横須賀基地へ入港している。演習中、イギリス軍のF-35B戦闘機を「かが」に着陸する訓練も実施された。 日本とイギリスは軍事面で関係を強め、イタリアと共に次世代戦闘機プロジェクトのGCAP(グローバル戦闘航空計画)を始動させている。プロジェクトの本社はイギリスに置かれ、機体の設計や開発を担当するエッジウィングはイギリスのBAEシステムズ、イタリアのレオナルド、そして日本の日本航空機産業振興(JAIEC)のジョイントベンチャー。なお、JAIECは日本航空宇宙工業会と三菱重工業が共同出資で設立した会社で、昨年7月10日に事業を開始した。 どのようなタグを付けても「かが」は航空母艦である。2022年3月に広島県呉市のジャパンマリンユナイテッド(JMU)造船所で初期改修を開始、24年4月に完了、さらに艦内の改修が26年後半に始まり、27年度末までに完了する予定だ。この改修はF-35B運用に向けてのもので、「空母化」と言える。飛行甲板の艦首部分を台形からアメリカ海軍のワスプ級およびアメリカ級強襲揚陸艦に見られるような正方形に形状を変更した。姉妹艦の「いずも」の改修は2024年度に開始、26年度末に完了する予定になっている。 今回の演習について海上自衛隊は「自由で開かれたインド太平洋の実現」と、参加海軍間の戦術能力の向上および協力強化にあるとしているが、アメリカの戦略に基づき、中国の海上輸送路を抑え込むことにあるだろう。 イギリスは同じアングロ・サクソン系国のオーストラリアやアメリカとAUKUSを創設、アメリカ、オーストラリア、インド、日本はクワドなるグループを編成、軍事的な連携を強化してきた。ロシア国家安全保障会議のニコライ・パトロシェフ議長はAUKUSが中国やロシアを仮想敵とする「アジアのNATO」だと批判した。 実際、NATO(北大西洋条約機構)のイェンス・ストルテンベルグ事務総長は2020年6月、オーストラリア、ニュージーランド、韓国、日本をメンバーにするプロジェクト「NATO2030」を開始すると宣言している。AUKUSの後、JAPHUS(日本、フィリピン、アメリカ)なる軍事同盟も編成した。 AUKUSではアメリカ製の攻撃型原子力潜水艦を売却することになっている。そうした潜水艦を動かすためにはアメリカの軍人が乗り込む必要があり、事実上アメリカ海軍の潜水艦になるとも言えるだろう。山上信吾オーストラリア駐在大使はキャンベラのナショナル・プレス・クラブで2022年11月14日、日本がオーストラリアの原子力潜水艦を受け入れる可能性があると表明している。 しかし、ここにきてドナルド・トランプ政権はAUKUSに消極的な姿勢を見せていることから、原子力潜水艦の売却規模を縮小するのではないかとも言われ始めた。その推測が正しいなら、イギリスが出てきても不思議ではない。 東アジアだけでなく、ウクライナでもイギリスの攻撃的な姿勢が目立つ。ボリス・エリツィン時代にオリガルヒとしてロシアの資産を略奪していたミハイル・ホドルコフスキーによると、彼が所有していたロシアの石油会社ユーコスを支配していたのは、ジェイコブ・ロスチャイルドだったという。 黒土が広がるウクライナは穀倉地帯としても有名だが、その約4分の1や外国企業が所有している。2022年には約3分の1をカーギル、デュポン、モンサントの3社が所有、この3社は効率性を高めるため、コンソーシアムとして契約を締結して事業を開始した。このコンソーシアムは事実上、ウクライナの土地の半分以上を支配している。 このカーギル、デュポン、モンサントの主要株主には巨大金融機関のブラックロック、バンガード、ブラックストーンが名を連ね、ウォロディミル・ゼレンスキーはブラックロックのほかJPモルガン・チェースやゴールドマン・サックスと協力関係にある。ブラックロックは2022年後半からウクライナ政府のコンサルタントを務め、ブラックロック傘下の企業はウクライナの戦略的資産の大部分を支配するようになったと報道されている。ちなみに、ドイツのフリードリヒ・メルツ首相はブラックロックで監査役を務めていた人物で、エマニュエル・マクロン仏大統領はロスチャイルド銀行で働いていた。 ウラジミル・プーチン露大統領はイギリスのシティを拠点にしていたジェイコブ・ロスチャイルドが手にしようとしていた莫大なロシアの資産をロシア人の手に取り戻したわけだ。ジェイコブはロシアの資産を奪うために多額の資金を投じているはずで、ウクライナで負けるわけにはいかないのかもしれない。**********************************************【Sakurai’s Substack】
2025.08.29
欧米諸国の支援を受けてガザの住民を大量虐殺しているイスラエルを非難する声が世界的に高まっている。オーストラリアもそうした国のひとつだが、そのオーストラリアの政府は駐豪イラン大使のアフマド・サデギと3名の同僚に対し、反ユダヤ主義的な放火事件を画策したとして7日以内に国外へ退去するよう8月26日に命じた。 アンソニー・アルバニージ豪首相は8月17日、イスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相から手紙を受け取っている。アルバニージ政権によるパレスチナ国家承認の決定はオーストラリア国内に蔓延する反ユダヤ主義を煽ると批判、6月にメルボルンのシナゴーグが破壊され、7月にもユダヤ人が標的になったと指摘し、ユダヤ暦の新年である2025年9月23日までに政策をかえろと要求している。ガザでの大量虐殺に抗議する人びとを厳しく取り締まることも求めているのだろう。 ところで、オーストラリアにはASIOのほか、対外情報機関のASISや電子技術を利用して情報を収集するDSD、またJIOはアメリカの情報機関CIAの分析部門の下部機関として機能している。 DSDはアメリカのNSAとイギリスのGCHQを中心に組織されたアングロ・サクソン系情報機関の連合体であるUKUSAに含まれているが、米英の情報機関と同格ではない。NSAとGCHQの下部機関としてオーストラリア政府の動向も監視している。 オーストラリアの情報機関は国外でもアメリカの支持で動いているのだが、1972年12月月の総選挙で勝利、首相に就任したゴウ・ウイットラムはASISに対し、CIAとの協力関係を断つように命令、アメリカの情報機関は危機感を募らせた。(David Leigh, "The Wilson Plot," Pantheon, 1988) ウィットラム政権の司法長官は1973年3月、情報を政府に隠しているという理由でASIOのオフィスを捜索、翌年8月には情報機関を調査するための委員会を設置している。(前掲書) アメリカは国家安全保障大統領補佐官を務めていたヘンリー・キッシンジャーの指揮下、CIAの破壊工作部門がオーグスト・ピノチェトを利用したクーデターでサルバドール・アジェンデ政権を倒したが、この工作でもASISはCIAに協力していた。 また、オーストラリアのパイン・ギャップにはCIAの通信傍受施設があり、1976年までに秘密協定を更新しないと基地を閉鎖しなければならなかった。その重大な時期の首相がウィットラム。彼が更新を拒否することをアメリカ側は懸念した。 そこでCIAは1975年11月、イギリス女王エリザベス2世の総督であるジョン・カー卿を動かしてウイットラム首相を解任した。総督は名誉職だと考えられていたが、そうではなかったのである。 アメリカのジャーナリスト、ジョナサン・ウイットニーによると、カーは第2次世界大戦中の1944年、オーストラリア政府の命令でアメリカへ派遣されてCIAの前身であるOSS(戦略事務局)と一緒に仕事をしている。大戦後はCIAときわめて深い関係にあった。(Jonathan Kwitny, "The Crimes of Patriots," Norton, 1987) これがオーストラリアの実態。この国の政府はアメリカ、イギリス、この2カ国と緊密な関係にあるイスラエルの命令に従わざるをえないのだが、今回、イラン大使を追放したのはイスラエルの対イラン攻撃が迫っているからだという見方がある。 イスラエル軍は6月13日にイランをミサイルとドローンで攻撃した。相当数はイラン国内から発射され、イラン軍のモハンマド・バゲリ参謀総長や革命防衛隊(IRGC)のホセイン・サラミ司令官を含む軍幹部、さらに少なからぬ核科学者を殺害、その直後、アメリカのドナルド・トランプ大統領はその攻撃を「素晴らしい」と表現した。 これでイランは屈服すると考えていたのかもしれないが、間もなくしてイランは報復攻撃を開始、テルアビブやハイファといったイスラエルの都市がイランのミサイル攻撃を受け、ビルが破壊された。ネゲブ砂漠にあり、F-15戦闘機とF-35戦闘機の大半が配備されているネバティム空軍基地をはじめとする軍事基地、あるいはイスラエル軍のアマン情報本部が破壊され、同時にモサドの本部にも命中。軍事研究の中枢であるワイツマン科学研究所も壊滅的な被害を受けた。またイランはイスラエルの兵器企業「ラファエル」への攻撃にも成功し、ハイファの港湾施設も大きな被害を受けた。 イランの攻撃がイスラエルや欧米諸国の予想を上回り、イスラエルやアメリカのミサイルが足りなくなったところで停戦になったが、続けていたならイスラエルは数日、あるいは数週間以内に崩壊していたと言われていたが、イランは停戦に応じた。宗教的な理由からだと言われているが、イランのアッバース・アラグチ外相は最近、「もし侵略が繰り返されるならば、われわれは躊躇することなく、より断固とした方法で、そして隠蔽不可能な方法で対応する」とXに投稿している。 イスラエルとアメリカがイランを攻撃する準備ができたと判断すれば攻撃すると推測されている。国内で追い詰められているネタニヤフは攻撃のタイミングを早めるかもしれないが、攻撃する場合、アメリカ軍をイランとの全面戦争に巻き込まなければならない。**********************************************【Sakurai’s Substack】
2025.08.28
イギリスの有力メディアのひとつ、タイムズ紙は先日、ネオ・ナチの中核だった「右派セクター」で指導者のひとりだったセルヒー・ステルネンコを登場させ、注目された。ステルネンコは2014年の5月2日にオデッサで引き起こされたネオ・ナチ集団による反クーデター派住民虐殺に関係している人物で、ロシアとの戦争継続を主張、「もしゼレンスキー大統領が征服されていない土地を放棄するなら、彼は政治的に、そして実際に、死体になるだろう」とステルネンコは語っている。 アメリカのバラク・オバマ政権がネオ・ナチを利用して仕掛けたクーデターで2014年2月22日にビクトル・ヤヌコビッチ政権は倒され、街中をネオ・ナチの一団が跋扈するようになった。そして5月2日、オデッサで虐殺が引き起こされたのだ。 その日の午前8時にオデッサへ列車で到着したサッカー・ファンの一団を右派セクターのメンバーが挑発、ネオ・ナチ主導のクーデターを拒否していた住民の活動拠点だった広場へ誘導していくのだが、その一方でネオ・ナチのメンバーは市民を労働組合会館へ避難するように説得、女性や子どもを中心に住民は建物の中へ逃げ込んだ。その建物の中で住民はネオ・ナチのグループに虐殺されたのだ。 焼き殺された人もいたが、撲殺されたり射殺された後、焼かれた人もいた。その際、屋上へ逃げられないよう、ネオ・ナチはドアはロックしていた疑いが濃厚だ。 このとき50名近くの住民が殺されたと伝えられているが、これは地上階で確認された死体の数にすぎない。地下室で惨殺された人を加えると120名から130名になると目撃者はその場で証言していた。この虐殺にステルネネコも参加していたということだ。 この虐殺の前、4月12日にCIA長官だったジョン・ブレナンがキエフを極秘訪問し、14日にはクーデター政権が東部や南部の制圧作戦を承認している。22日にはジョー・バイデン米副大統領がキエフを訪れ、その直後から軍事力の行使へ急速に傾斜していった。 クーデター直後、ウクライナはネオ・ナチ体制になったのだが、そうした状況は現在まで変わらない。ゼレンスキーがロシアとの和平の応じれば、ネオ・ナチによって殺される可能性がある。 ウクライナ/NATOがドンバスに対する本格的な軍事侵攻を実行する直前、2022年2月24日にロシア軍はドンバス周辺に終結していたウクライナ軍や軍事基地、あるいは生物兵器の研究開発施設を攻撃した。 ロシア外務省によると、その時にロシア軍が回収したウクライナ側の機密文書には、ウクライナ国家親衛隊のニコライ・バラン司令官が署名した2022年1月22日付秘密命令が含まれていた。これにはドンバスにおける合同作戦に向けた部隊の準備内容が詳述されていた。 ロシア国防省のイゴール・コナシェンコフ少将によると、「この文書は、国家親衛隊第4作戦旅団大隊戦術集団の組織と人員構成、包括的支援の組織、そしてウクライナ第80独立空挺旅団への再配置を承認するもの」で、この部隊は2016年からアメリカとイギリスの教官によって訓練を受けていたという。 ロシア軍の攻撃が始まった直後からイスラエルやトルコを仲介役とする停戦交渉が始まる。仲介役のひとりだったイスラエルの首相だったナフタリ・ベネットは、交渉の内容を長時間のインタビューで詳しく話している。 ベネットは2022年3月5日にモスクワへ飛んでウラジミル・プーチン露大統領と数時間にわたって話し合い、ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領を殺害しないという約束をとりつけることに成功、その足でベネットはドイツへ向かってオラフ・ショルツ首相と会っている。 その3月5日、SBU(ウクライナ保安庁)のメンバーがキエフの路上でゼレンスキー政権の交渉チームで中心的な役割を果たしていたデニス・キリーエフを射殺した。クーデター後、SBUはCIAの配下で活動している治安機関だ。 停戦交渉はトルコ政府の仲介でも行われ、やはり停戦でほぼ合意に達している。その際に仮調印されているのだが、「ウクライナの永世中立性と安全保障に関する条約」と題する草案をプーチン大統領はアフリカ各国のリーダーで構成される代表団が2023年6月17日にロシアのサンクトペテルブルクを訪問した際に示している。 こうした和平の流れを止めたのはイギリス。2022年4月9日、イギリスの首相だったボリス・ジョンソンがキエフへ乗り込み、ロシアとの停戦交渉を止めるように命令(ココやココ)、その後も姿勢を変えることはなかった。そのイギリスの対外情報機関MI-6にゼレンスキーは操られていると考えられている。 そのゼレンスキーをイギリスは「用済み」と判断したようで、切り捨てようとしている。その後継者と考えられている人物はバレリ・ザルジヌイ元軍最高司令官ではないかと言われている。ザルジヌイは昨年2月に解任され、5月から駐英大使。その当時のアメリカ大統領、ジョー・バイデンはウクライナに対して「玉砕攻撃」を命令、兵士を無駄死にさせる作戦に反対していたザルジヌイと対立していたのだ。 そのザルジヌイはネオ・ナチと親密な関係にあることでも知られる。今でもザルジヌイは多くの軍司令官とも連絡を取り合っているようで、軍への影響力は維持しているようだ。また、ガザで住民を虐殺しているイスラエルを彼は模範と考えているという。**********************************************【Sakurai’s Substack】
2025.08.27

ヨーロッパ経済を牽引してきたドイツの製造業が破綻しつつある。例えば、大手自動車メーカーのフォルクスワーゲンでは昨年10月、経営者が従業員代表に対し、ドイツ国内の少なくとも3工場を閉鎖する意向を伝えた。また大手化学/製薬会社のバイエルはフランクフルト・ヘキスト工業団地の工場を閉鎖、労働者500名を解雇すると伝えれている。ドルマーゲン工場でも200名の人員削減が計画されているという。 経済が失速したドイツにおける今年4月の倒産は個人と法人を合わせて1626件に達し、ハレ経済研究所(IWH)によると、この数値は2008年から09年にかけて世界を揺るがした金融危機の当時を上回り、2005年7月以来だ。 こうした状況に陥った直接的な原因は、ドイツの製造業を支えていた安価なロシア産天然ガスを入手できなくなったことにある。その天然ガスを運んでいたパイプラインが通過していたウクライナでアメリカのバラク・オバマ政権がクーデターを仕掛けた上、ウクライナを迂回し、バルト海を経由して運ぶために建設しされたパイプライン、「ノードストリーム(NS1)」と「ノードストリーム2(NS2)」が2022年9月26日から27日にかけての間に破壊された。 ドナルド・トランプ政権下の2020年7月には国務長官のマイク・ポンペオがNS2を止めるためにあらゆることを実行すると発言、2021年1月に大統領がジョー・バイデンに交代したあとの22年1月27日にビクトリア・ヌランド国務次官はロシアがウクライナを侵略したらNS2を止めると発言、同年2月7日にはジョー・バイデン大統領がNS2を終わらせると記者に約束していた。 ジャーナリストのシーモア・ハーシュによると、アメリカ海軍のダイバーがノルウェーの手を借りてノードストリームを破壊したという。アメリカのジョー・バイデン大統領は2021年後半にジェイク・サリバン国家安全保障補佐官を中心とする対ロシア工作のためのチームを編成、その中には統合参謀本部、CIA、国務省、そして財務省の代表が参加してい他としている。12月にはどのような工作を実行するか話し合ったという。そして2022年初頭にはCIAがサリバンのチームに対し、パイプライン爆破を具申している。ロシアがウクライナに対する攻撃を始める前の話である。 つまり、ドイツをはじめとするヨーロッパにおける経済を破壊したのはアメリカ政府なのだが、EUの「エリート」たちはアメリカ政府の政策に従っている。アメリカやイギリスの金融資本を中心に築かれた支配システムの手先として個人的な富と名声を手に入れたヨーロッパの「エリート」たちは自分の国やヨーロッパの破壊を厭わない。そうしなければ彼らは破滅するからだ。 国民の怒りが彼らの支配者へ向かないように敵役を作り上げ、そこへ怒りが向かうように有力メディアは仕向ける。その敵役は米英金融資本のライバルであるロシア、中国、イランなど。世界的に見るとその手口は通用しなくなってきたのだが、日本に対しては今でも有効なようだ。 米英金融資本の利益を増大させるために活動してきたネオコン(新保守)はシオニストの一派で、ジェラルド・フォード政権で台頭した。言うまでもなく、フォードはリチャード・ニクソンの失脚を受け、副大統領から昇格した人物だ。 1980年代にはイラクのサダム・フセイン体制をどのように評価するかで石油資本と結びつきの強い旧保守勢力とネオコンは対立した。旧保守に属していたジョージ・H・W・ブッシュ大統領は1990年8月から91年3月にかけての湾岸戦争を戦い、イラクを叩くが、フセイン体制を破壊しなかった。そこでネオコンは激怒するのだが、その際にソ連が出てこなかったことからネオコンは自分たち勝手気ままに軍事力を行使できるという考えを強めた。 そのソ連は1991年12月に消滅、92年2月にアメリカの国防総省は新たな軍事戦略DPG(国防計画指針)の草案を作成した。作成の中心は国防次官を務めていたポール・ウォルフォウィッツだったことから、この文書は「ウォルフォウィッツ・ドクトリン」とも呼ばれている。 ソ連の消滅でアメリカは唯一の超大国になったとネオコンは確信、世界制覇戦争を始めようというわけだが、そのドクトリンにはドイツと日本をアメリカ主導の集団安全保障体制に統合し、民主的な「平和地帯」を創設すると書かれている。要するに、ドイツと日本をアメリカの戦争マシーンに組み込み、アメリカの支配地域を広げるということだ。 また、旧ソ連の領土内であろうとなかろうと、かつてソ連がもたらした脅威と同程度の脅威をもたらす新たなライバルが再び出現するのを防ぐことが彼らの目的だともしている。西ヨーロッパ、東アジア、そしてエネルギー資源のある西南アジアが成長することを許さないということだが、東アジアには中国だけでなく日本も含まれている。 1990年代以降、日本の経済が衰退、社会が疲弊する一方、軍事力の増強が顕著だが、そのベースにはウォルフォウィッツ・ドクトリンがあると言える。消費税(付加価値税)が日本に導入された1989年4月はソ連の消滅が見通されていた頃。日本社会を破壊する工作は1970年代から始まってはいたが、消費税の導入は大きな出来事だ。この税金は大手輸出企業に大きな利益をもたらすが、日本の社会システムを破壊し、大多数の国民を苦しめる。日本の破壊を大企業に推進させるということにほかならない。こうした悪い影響はさまざまな人が指摘しているが、それこそが導入の目的だったと言える。**********************************************【Sakurai’s Substack】
2025.08.26
アメリカ陸軍に所属するジョナサン・エストリッジ軍曹の投稿が話題になっている。ガザで住民を大量虐殺しているイスラエルを批判したところ、エストリッジは「国家安全保障上への脅威」だとされ、捜査の対象になったという。 パレスチナで虐殺を続けるイスラエルに抗議したアメリカの軍人はエストリッジの前にもいる。例えば、2024年2月25日にはアメリカ空軍の兵士、アーロン・ブッシュネル。彼はワシントンDCのイスラエル大使館前で「ジェノサイドには加担しない」と宣言した後、自らの体に火を放ち、死亡した。 アメリカのドナルド・トランプ大統領が「親イスラエル」で、シオニストの富豪をスポンサーにしていることは知られているが、前任者のジョー・バイデンも「親イスラエル」であることを隠していなかった。在任中、イスラエルを批判した大統領はジョン・F・ケネディくらいだろう。彼はイスラエルの核兵器開発を懸念していた。**********************************************【Sakurai’s Substack】
2025.08.25

NATOのマーク・ラッテ事務局長は「ウクライナの安全保障」を確かなものにする仕組みにアメリカとNATOは参加、停戦後にウクライナ軍の戦力を強化するとしている。どのようなタグがつけられているかには関係なく、ウクライナにNATOの部隊が駐留し、ロシアを制圧する準備をするということにほかならず、そうしたミンスク合意のようなことをロシア政府が容認するとは思えない。 アメリカのバラク・オバマ政権は2014年2月、NATOの訓練を受けたネオ・ナチを利用したクーデターでビクトル・ヤヌコビッチ政権を倒したのだが、ネオ・ナチ体制を拒否するウクライナ人は少なくなかった。 特に、ヤヌコビッチの支持基盤だった東部や南部の住民はクーデター政権に対する反発は強く、南部のクリミアでは住民はロシアとの一体化を選び、東部のドンバスでは武装闘争が開始された。 軍や治安機関のメンバーのうち約7割がクーデター政権を拒否して離脱、その一部はドンバス(ドネツク、ルガンスク)の反クーデター軍に合流したと言われ、戦況は反クーデター軍が優勢だった。そこでドイツやフランスが仲介する形で停戦合意が成立する。2014年の「ミンスク1」と15年の「ミンスク2」だが、クーデター政権は合意を守っていない。 この停戦はクーデター政権の戦力を増強する時間稼ぎが目的だったことを、のちにアンゲラ・メルケル元独首相やフランソワ・オランド元仏大統領が認めている。この経験があるため、ロシア政府はウクライナ/NATOとの停戦に慎重だ。 ロシアは恒久的で安定した平和を実現するため、ウクライナを非軍事化すると同時に非ナチ化し、ウクライナの恒久的な中立を確かのものにし、西側諸国が凍結したロシア資産を返還させ、そして領土の「現実」を認めることなどを求めている。ウクライナ軍はドンバスのほか、ザポリージャやヘルソンから撤退するということだ。NATOによるウクライナへの軍事支援をすべて中止することが求められているが、NATOのタグを外してNATO加盟国のタグに付け替えても意味なない。 経済的に締め付ければロシアは屈服、あるいは交渉に応じると西側諸国は信じていたようだが、そうした「制裁」は効果がなく、ダメージを受けているのは西側諸国。軍事的にも西側はロシアに圧倒されている。 西側の有力メディアはウクライナでの戦闘で「ロシアは負けている」と主張、「ロシア兵の戦死者数は100万人を超えている」と宣伝してきた。ウォロディミル・ゼレンスキーはウクライナの戦死者は4万6000人以下だとしていたが、本ブログでも繰り返し書いてきたように、現実がその御伽話を圧倒し始めている。 イギリスの国防相を務めていたベン・ウォレスは2023年10月1日にテレグラフ紙へ寄稿した論稿の中で、ウクライナ兵の平均年齢はすでに40歳を超えていると指摘、ウクライナの街頭で男性が徴兵担当者に拉致される様子が撮影され、世界に向かって発信されている。2023年当時から兵士不足は深刻で、十分に訓練しないまま前線へ送り込まれるため、数週間で戦死するとも言われている。 ウォー・ティアーズという団体はウクライナ兵の戦死者数を8月14日時点で少なくとも76万7285人と推定しているが、これは控えめの数字だ。アメリカのダグラス・マクレガー退役大佐は最大で180万人のウクライナ兵が死亡したと述べましたと推測。ロシアのハッカー集団Killnetはウクライナ軍参謀本部のデータベースに侵入することに成功、2022年2月に始まった戦闘で173万9900人のウクライナ兵士が死亡または行方不明になったことがわかったとしている。ロシア側はその1割と見られている。 ウクライナを破滅へ追い込んだロシアとの戦争は1990年代に仕掛けられたのだが、それを可能にしたのはその前に引き起こされたソ連の消滅にほかならない。 1980年代に入り、ソ連は混乱した。1982年11月にレオニード・ブレジネフ書記長が死亡、KGBのユーリ・アンドロポフが後継者になるのものの、84年2月に死亡、その後を継いだコンスタンチン・チェルネンコは85年3月に死亡した。そして登場してくるのがミハイル・ゴルバチョフだ。 その間、1983年4月から5月にかけてアメリカ軍はカムチャツカから千島列島の沖で大規模な艦隊演習を実施した。この演習にはアメリカ海軍の3空母、つまりエンタープライズ、ミッドウェー、コーラル・シーを中心とする機動部隊群が参加、演習では空母を飛び立った艦載機がエトロフ島に仮想攻撃をしかけ、志発島の上空に侵入して対地攻撃訓練を繰り返し、米ソ両軍は一触即発の状態になっている。(田中賀朗著『大韓航空007便事件の真相』三一書房、1997年)この重大な演習を日本のマスコミは無視した。 1983年8月31日から9月1日にかけて、大韓航空007便がソ連の領空を侵犯する。アラスカのアンカレッジ空港を離陸した後、NORAD(北米航空宇宙防衛司令部)が設定した緩衝空域や飛行禁止空域を横断、ソ連の軍事基地上空を飛行、最終的には警告を無視しての結果だった。カムチャツカではKAL007の機影がソ連軍のレーダーから消えている。飛行ルートの延長線上にはウラジオストクがある。その2カ月後の11月にはNATOが軍事演習「エイブル・アーチャー83」を計画、核攻撃のシミュレーションも行われることになっていた。これをソ連の情報機関KGBはそれを「偽装演習」だと疑う。全面核戦争を仕掛けてくるのではないかと警戒、戦争の準備を始めたと言われている。 ソ連にとって、こうした軍事的な緊張以上に深刻な出来事が1986年4月26日に起こる。チェルノブイリ原子力発電所の事故だ。ゴルバチョフ政権はいきなり大きな問題を抱えることになった。 ゴルバチョフはニコライ・ブハーリンを「別の選択肢」として研究していたグループのひとりで、西側の「民主主義」を信じていたと言われている。そのゴルバチョフはソ連の「改革」に乗り出し、打ち出したのがペレストロイカ(建て直し)だが、これを考え出したのはKGBの頭脳とも言われ、政治警察局を指揮していたフィリップ・ボブコフだとされているが、そのボブコフはCIA人脈と結びついていたという。(F. William Engdahl, “Manifest Destiny,” mine.Books, 2018) 西側のエリートは1991年7月、ゴルバチョフをロンドンで開催されたG7首脳会議に呼び出し、新自由主義の導入を求めるが、拒否したとされている。「クーデター未遂」でゴルバチョフが排除されるのはその翌月のこと。代わって実権を握ったのがボリス・エリツィンにほかならない。 そのタイミングでウクライナの最高会議で独立宣言法が採択され、12月8日にはロシアのエリツィン大統領、ゲンナジー・ブルブリス、ウクライナのウクライナのレオニード・クラフチュク大統領、ビトルド・フォキン首相、ベラルーシのソビエト最高会議で議長を務めていたスタニスラフ・シュシケビッチとバツァスラフ・ケビッチ首相がベロベーシの森で秘密会議を開き、国民に諮ることなくソ連からの離脱を決め、ソ連は消滅することになる。 それに対し、1991年1月20日にクリミアで実施された住民投票でクリミア自治ソビエト社会主義共和国の再建が94.3%の賛成多数で承認された。ウクライナの最高会議で独立宣言法が採択されたのは、その半年後のことである。ウクライナを征服しようとしていた西側諸国はクリミアの住民投票を無視、ウクライナの独立は認めた。こうした動きを潰すためにキエフ政権は特殊部隊を派遣してクリミア大統領だったユーリ・メシュコフを解任、クリミアの支配権を暴力的に取り戻した。1994年3月27日にはドンバス(ドネツクとルガンスク)でこの地域におけるロシア語の地位、ウクライナの国家構造などを問う住民投票が実施され、キエフ政権にとって好ましくない結果が出た。 ウクライナの東部や南部に住む人びとの意思はソ連時代から明確で、一貫している。ビクトル・ヤヌコビッチを排除するため、2004から05年にかけて実施された「オレンジ革命」、そして2013年11月から14年2月にかけてのクーデターに東部や南部の人びとが反発、内戦に突入したのは必然だった。 その内戦はロシアやEU/NATOにとっても重要な意味を持つ。ロシアにとっては祖国防衛戦争であり、EU/NATOにとっては略奪のための帝国主義戦争だ。その結果、ウクライナでは侵略勢力の敗北が決定的になっている。**********************************************【Sakurai’s Substack】
2025.08.25
イスラエル軍の機密情報データベースによると、ガザでイスラエル軍に殺害されたパレスチナ人の83%以上は民間人だとガーディアン紙、+972誌、ローカル・コールは伝えている。ガザの住民は「巻き添え」でイスラエル軍に殺されているのではなく、狙われていると言わざるをえない。 パレスチナではイスラエル軍によるジェノサイド(大量虐殺)が続いているわけだが、医学雑誌「ランセット」は2023年10月7日から24年6月30日までの間にガザで外傷によって死亡した人数は6万4260人と推計し、そのうち女性、18歳未満、65歳以上が59.1%だとする論文を発表した。「ハーバード大学学長およびフェロー」のウェブサイト「データバース」に掲載されたヤコブ・ガルブの報告書では、イスラエル軍とハマスの戦闘が始まる前には約222万7000人だったガザの人口が現在は185万人に減少、つまり37万7000人が行方不明になっているという。死亡者の約4割が子どもであり、女性を含めると約7割に達するという推計を採用すると、殺害された子どもの数は15万人になる。 この虐殺は2023年10月7日にハマス(イスラム抵抗運動)がイスラエルを奇襲攻撃したところから始まったと言われるが、その前にイスラエル政府からの挑発があった。 例えば、イスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相は2023年4月に警官隊をイスラムの聖地であるアル・アクサ・モスクへ突入させ、同年10月3日にはイスラエル軍に保護された832人のイスラエル人が同じモスクへ侵入してイスラム教徒を挑発。ハマスなどの武装集団がイスラエルを陸海空から攻撃したのはその後だ。 勿論、虐殺の原因は先住のアラブ人を排除してシオニストが「イスラエル」なる国を1948年5に建国したことにある。そこまでの道筋を作り上げたのはイギリスにほかならない。 シオニズムが生まれたのイギリス。エリザベス1世の時代だとも言われている。その直前、1590年に出版された『失われた十部族』には、アングロ・サクソン人、ケルト人、スカンジナビア人、ゲルマン人などが旧約聖書に登場するイスラエル人の直系の子孫であると書かれている。 イギリスや西側世界にシオニズムを広めた人物としてブリティッシュ外国聖書協会の第3代会長を務めた反カトリック派のアントニー・アシュリー-クーパー(シャフツバリー伯爵)が知られているが、17世紀初頭にイギリス王として君臨したジェームズ1世(イングランド王)/ジェームズ6世(スコットランド王)は自分をダビデ王の末裔だと信じていたようだ。その頃始まった「ブリティッシュ・イスラエル主義」がシオニズムの始まりだとも考えられている。 その息子であるチャールズ1世はピューリタン革命で処刑されたが、その革命で中心的な役割を果たしたオリヴァー・クロムウェルをはじめとするピューリタンも「イスラエルの失われた十支族」話を信じていたという。クルムウェルはユダヤ人をイングランドへ入れることを許可したが、稼ぎ方を海賊行為から商取引へ切り替えるためだったとされている。 ピューリタン革命を率いたクロムウェルは革命で仲間だったはずの水平派を弾圧、その後にアイルランドへ軍事侵攻して住民を虐殺。侵攻前の1641年には147万人だったアイルランドの人口は侵攻後の52年に62万人へ減少。50万人以上が殺され、残りは「年季奉公」や「召使い」、事実上の奴隷としてアメリカなどに売られたと言われている。 ダブリン出身でプリマス・ブレザレンを創設したジョン・ネルソン・ダービー牧師は1830年代から宗教活動を始めたが、彼はキリストの千年王国がすべての文明を一掃し、救われるのは選ばれた少数のグループだけだと考えていた。一般的にシオニズムの生みの親とされるセオドール・ヘルツルという無神論のユダヤ人が『ユダヤ人国家』という本を出版したのは1896年のことだ。 2023年10月7日の攻撃では約1400名のイスラエル人が死亡したとされ、その後1200名に訂正された。殺害したのはハマスだと宣伝されたが、イスラエルのハーレツ紙によると、イスラエル軍は侵入した武装グループを壊滅させるため、占拠された建物を人質もろとも砲撃、あるいは戦闘ヘリからの攻撃で破壊している。イスラエル軍は自国民の殺害を命令したというのだ。いわゆる「ハンニバル指令」である。 その攻撃から間もなく、ネタニヤフ首相は「われわれの聖書(キリスト教における「旧約聖書」と重なる)」を持ち出し、パレスチナ人虐殺を正当化している。聖書の中でユダヤ人と敵だとされている「アマレク人があなたたちにしたことを思い出しなさい」(申命記25章17節から19節)という部分を彼は引用、「アマレク人」をイスラエルが敵視しているパレスチナ人に重ねたのである。 その記述の中で、「アマレク人」を家畜と一緒に殺した後、「イスラエルの民」は「天の下からアマレクの記憶を消し去る」ことを神は命じたというわけだ。「アマレク人」を皆殺しにするという宣言だが、このアマレク人をネタニヤフたちはアラブ人やペルシャ人と考えている可能性がある。 サムエル記上15章3節には「アマレクを討ち、アマレクに属するものは一切滅ぼし尽くせ。男も女も、子供も乳飲み子も牛も羊も、らくだもろばも打ち殺せ。容赦してはならない。」と書かれている。これこそがガザでイスラエルによって行われていることだと言えるだろう。ネタニヤフによると「われわれは光の民であり、彼らは闇の民」なのである。その発言通り、ネタニヤフ政権は子どもを含むパレスチナの民間人を虐殺、それを欧米諸国は支援してきた。**********************************************【Sakurai’s Substack】
2025.08.24
ロシアとドイツがバルト海に建設したパイプライン、「ノード・ストリーム(NS1)」と「ノード・ストリーム2(NS2)」が2022年9月に爆破されたが、その犯人として指名手配されていたSBU(ウクライナ安全保障庁)の元大佐、セルゲイ・クズネツォがイタリアで逮捕されたと伝えられている。クズネツォを含む7人のチームで爆発物を仕掛けたとされているのだが、このシナリオは現実的でない。 この爆破工作に関する調査を求める決議をロシアと中国は国連の安全保障理事会に求めたが、賛成したのはロシア、中国、ブラジルの3カ国にすぎない。12カ国は破壊工作の真相が明らかになることを望んでいなかったのだ。国連の理事国に限らず、アメリカの影響下にある国々は真犯人が明らかになっては困るようだ。 NS1とNS2の爆破の真相に最も迫ったのは、ジャーナリストのシーモア・ハーシュだと考えられている。2023年2月8日、アメリカ海軍のダイバーがノルウェーの手を借りてノードストリームを破壊したとする記事をハーシュは発表している。 ハーシュによると、アメリカのジョー・バイデン大統領は2021年後半にジェイク・サリバン国家安全保障補佐官を中心とする対ロシア工作のためのチームを編成、その中には統合参謀本部、CIA、国務省、財務省の代表が参加していた。その年の12月にはどのような工作を実行するか話し合ったという。そして2022年初頭にはCIAがサリバンのチームに対し、パイプライン爆破を具申している。 バラク・オバマ政権が2013年11月から14年2月にかけてウクライナでクーデターを仕掛けた最大の理由はNATOをウクライナへ進めてロシアの喉元にミサイルを配備、軍事的な圧力を加えて脅すことにあったのだが、ウクライナを制圧することでヨーロッパとロシアを分断することも目的のひとつだった。ロシアからヨーロッパへ天然ガスを運ぶパイプラインはウクライナを通過していた。 当時、ヨーロッパとロシアは天然ガスで関係を強めていた。低価格のロシア産天然ガスを入手することでヨーロッパの製造業は成り立ち、社会を安定させていた。その天然ガスが絶たれた後、ヨーロッパの製造業は苦境に陥り、社会は不安定化。 キエフのクーデターを仕掛けたネオコンはロシアから巨大なマーケットを奪うことでロシアもヨーロッパと同じように経済が破綻、社会が不安定化すると計算していたようだが、そうした展開にはならなかった。事前に準備していたこともあるが、アメリカのやり口を見た中国がロシアに接近、中露は同盟国へと発展して強大なライバルが誕生した。 ロシアとドイツはウクライナを迂回する天然ガスのパイプラインを建設していた。それがバルト海を経由するNS1とNS2。NS1の建設は2010年4月に始まり、11年11月から天然ガスの供給が始められる。ウクライナの体制がクーデターで変わった後の2015年6月にガスプロムとロイヤル・ダッチ・シェルは共同でNS2の建設を開始、18年1月にドイツはNS2の建設を承認、21年9月にパイプラインは完成した。 それに対し、マイク・ポンペオ国務長官は2020年7月30、上院の公聴会で、NS2が「欧州を脅かすことのないよう、あらゆる手段を講じる」と述べ、「ロシアが望んだとしても停止されることのない、真に安全で安定したエネルギー資源を欧州が確保できるようにしたい」と付け加えた。要するに、ロシアから買わず、アメリカから買えということだ。 サリバンと同じようにバイデン政権を戦争へと導いていたビクトリア・ヌランド国務次官は2022年1月27日、ロシアがウクライナを侵略したらノード・ストリーム2を止めると発言、2月7日にはバイデン大統領がノード・ストリーム2を終わらせると主張、記者に実行を約束した。 こうした発言の背後には爆破計画があったわけだが、それと並行してアメリカをはじめとするNATO諸国から支援されたキエフ政権はドンバスへの軍事侵攻を計画していたとされている。 ロシア外務省によると、ロシア軍が回収した機密文書の中に含まれていたウクライナ国家親衛隊のニコライ・バラン司令官が署名した2022年1月22日付秘密命令には、ドンバスにおける合同作戦に向けた部隊の準備内容が詳述されている。 ロシア国防省のイゴール・コナシェンコフ少将によると、「この文書は、国家親衛隊第4作戦旅団大隊戦術集団の組織と人員構成、包括的支援の組織、そしてウクライナ第80独立空挺旅団への再配置を承認するもの」で、この部隊は2016年からアメリカとイギリスの教官によって訓練を受けていたという。そして2022年に入るとウクライナ軍はドンバスに対する砲撃を強めたが、ウクライナ軍が攻撃する直前、ロシア軍はミサイルなどでウクライナ軍を攻撃し始めた。 ところで、パイプラインの爆破計画の拠点として選ばれた場所はノルウェー。当時のNATO事務総長、イェンス・ストルテンベルグの母国。ハーシュによると、3月にはサリバンのチームに属すメンバーがノルウェーの情報機関に接触、爆弾を仕掛けるために最適な場所を聞き、ボルンホルム島の近くに決まったという。 爆破にはプラスチック爆弾のC4が使われたが、仕掛けるためにはロシアを欺くカムフラージュが必要。そこで利用されたのがNATO軍の軍事演習「BALTOPS22」だ。その際にボーンホルム島の近くで無人の機雷処理用の潜航艇を使った訓練が行われていた。 このパイプライン爆破はヨーロッパに致命的なダメージを与えたものの、ロシアが受けた打撃はさほど大きくない。おそらくネオコンやイギリス政府はキエフでのクーデターによってロシアとヨーロッパを弱体化させようとしたのだろうが、ロシアは強くなった。 8月15日にアンカレッジで開かれたドナルド・トランプ米大統領とウラジミル・プーチン露大統領の会談ではウクライナにおける停戦ではなく、今後の米露関係に力点が置かれていたようだ。 ウクライナの戦況を理解している人なら停戦で合意することがありえないことを理解していたはず。そうしたことを期待できる状況ではないのだ。トランプ大統領は会談後、単なる停戦協定でなく和平協定を結ぶことが戦争を終わらせる最善の方法だと語っている。それはウクライナの降伏を意味するが、そうした場合にのみ、ウォロディミル・ゼレンスキーと会談するとプーチン大統領は語っている。ロシア政府は自分たちの要求が受け入れられない限り、戦闘を継続するだろう。**********************************************【Sakurai’s Substack】
2025.08.23
ここにきてイギリスの対外情報機関MI-6の動きが活発だ。ロシアのスペツナズ(特殊部隊)がオデッサに近いオチャコフでイギリス陸軍のエドワード・ブレイク大佐とリチャード・キャロル中佐、そしてMI-6の工作員ひとりが拘束されたと報道されたたのは8月2日。その日、ウィトコフ特使がモスクワを訪問する予定になっていた。その報復という意味もあり、MI-6のチームはウクライナ軍と手を組み、クリミア橋を破壊する作戦を進めていた。 フィンランドで製造されたプラスチック爆弾130キログラムを積み、ヨーロッパの5カ国を移動していたシボレーをFSB(連邦保安庁)が抑えたのだが、FSBによると、テロ作戦の首謀者はMI-6だった。 イギリスをはじめとするNATO諸国がテロに傾斜しているのはウクライナ軍の敗北が決定的で、テロに頼るしかなくなっているからだと見られている。ハッカー集団のKillNetはウクライナ軍参謀本部のデータベースに侵入することに成功、2022年2月に始まった戦闘で170万人のウクライナ兵士が死亡または行方不明になったことがわかったと主張している。 ロシア兵の戦死者はこれを大きく下回る。戦場において発射した砲弾の数は死傷者数に反比例すると言われているているが、発射した砲弾の数は6対1から10対1でロシア軍が上回る。ロシア軍の戦死者数はウクライナ軍の6対1から10対1だと推測でき、17万人から28万人ということになる。ロシア軍は自軍の兵士の死傷者をできるだけ少なくする作戦を立てていることから、さらに少ないだろう。 元CIA分析官のラリー・ジョンソンによると、戦闘に参加しているロシア軍の兵力は113万5000人から132万人。2022年2月から徴兵されたり契約を結んだ兵士は、退役、契約満了、死傷などがなかったと仮定するならば242万0500人。足りない人数は128万人から110万人ということになるが、実態は半分程度だと推測できる。死亡者と負傷者の比率は1対4とされているので、戦死者数は最大で22万人から25万人、実態は12万人強だとみられている。 ジャーナリストのシーモア・ハーシュによると、アメリカの軍や情報機関は2022年2月から死傷したロシア兵の数を200万人だとしているようだが、これは現実からかけ離れた数字だ。訓練されたロシア軍兵士は農民に取って代わられ、優秀な中級将校と下士官は皆戦死、最新式の装甲車両と戦闘車両はすべてガラクタだというのだが、ウクライナの街頭で男性が拉致されている状況を見ても、これはウクライナ軍の実態。イギリスの国防相を務めていたベン・ウォレスは2023年10月1日にテレグラフ紙へ寄稿した論稿の中で、ウクライナ兵の平均年齢はすでに40歳を超えていると指摘していた。現在の状況は当時よりはるかに状況は悪くなっている。 ドナルド・トランプ米大統領とウラジミル・プーチン露大統領は8月15日にアンカレッジで会談した。ウクライナでの停戦に関する何らかの合意があるのではないかと推測していた人もいるようだが、今後の米露関係に力点が置かれていたようだ。 ウクライナの戦況を理解している人なら停戦で合意することがありえないことを理解していたはずだ。そうしたことを期待できる状況ではないのだ。トランプ大統領は会談後、単なる停戦協定でなく和平協定を結ぶことが戦争を終わらせる最善の方法だと語っている。 アメリカのスティーブ・ウィトコフ大統領特使は米露首脳会談の前、8月6日に会談した。その報告書の冒頭、ロシアとアメリカの関係について、これまでと全く異なる、互恵的な基盤の上に築かれるとされていることに注目するべきだと元CIA分析官のレイ・マクガバンは書いている。問題は、こうした気持ちがあっても状況の認識が間違っていると破綻してしまう。 ウクライナでロシアがNATOに勝利したことは明白であり、NATOにしろウクライナにしろ、戦闘を終わらせたいなら、ロシア側の要求を呑むしかない。プーチン大統領がゼレンスキーに会うのはその後のこと。ロシアが求めているのは、ウクライナの非軍事化、非ナチ化、NATOに加盟しないことの保証、ロシア国境付近への西側諸国軍の展開の制限、ウクライナに対する武器供与の制限、ウクライナにおけるロシア語使用の保証、また西側諸国が凍結したロシア資産を返還し、ウクライナの中立を維持するほか、領土の「現実」(ドネツク、ルハンシク、ザポリージャ、ヘルソン)を承認することなどであり、安全はウクライナだけでなくロシアも保証されなければならない。ロシアは領土を広げるために戦っているわけではないのだ。 トランプがプーチンとの会談でウクライナでの停戦協定ではなく、和平協定で合意したいと語り、アメリカとロシアの関係修復を望む姿勢を示した。トランプはウクライナ情勢を理解しているように見える。こうした流れに反発しているのはイギリスをはじめとするNATO諸国とウクライナのネオ・ナチだ。 トランプはウクライナでの戦闘を「バイデンの戦争」と呼んでいる。実際には、バラク・オバマ政権が2014年2月にネオ・ナチを主力とするクーデターでビクトル・ヤヌコビッチ政権を倒したところから始まっている。そのオバマ/バイデン人脈はトランプをロシアゲートで攻撃したものの、失敗。ここにきてジェフリー・エプスタインのスキャンダルで攻撃していたが、ロシアゲートのでっち上げでトゥルシ・ギャバード国家情報長官は逆襲した。 ギャバード長官は7月18日、バラク・オバマ政権がアメリカをロシアとの核戦争へと向かわせようと意図的に行っていることを示す100ページ以上に及ぶ未編集の電子メール、メモ、高官級の通信を公表。ロシアには2016年の選挙に干渉する「意図も能力も」なかったという結論を下した情報を覆すため、組織的に動いたことをそれらの文書は明らかにした。 大統領だったオバマのほか、国家情報長官を務めていたジェームズ・クラッパー、CIA長官だったジョン・ブレナン、FBI長官だったジェームズ・コミー、国家安全保障問題担当大統領補佐官を務めていたスーザン・ライスたちが行ったことは「物語の構築」にすぎず、ロシアの関与を否定する情報分析をすべて破棄し、捏造された主張に置き換えたことを示唆しているとされている。これをギャバードは「反逆的な陰謀」だと表現している。 ちなみに、エプスタインの話は、その真相が明るみに出たなら、世界の支配システムが崩壊してしまう。トランプを攻撃するだけでは終わらない。**********************************************【Sakurai’s Substack】
2025.08.22
パレスチナではイスラエル軍によるジェノサイド(大量虐殺)が続いている。医学雑誌「ランセット」は2023年10月7日から24年6月30日までの間にガザで外傷によって死亡した人数は6万4260人と推計、そのうち女性、18歳未満、65歳以上が59.1%だとする論文を発表、「ハーバード大学学長およびフェロー」のウェブサイト「データバース」に掲載されたヤコブ・ガルブの報告書では、イスラエル軍とハマスの戦闘が始まる前には約222万7000人だったガザの人口が現在は185万人に減少、つまり37万7000人が行方不明になっているという。死亡者の約4割が子どもであり、女性を含めると約7割に達するという推計を採用すると、殺害された子どもの数は15万人になる。 アメリカのドナルド・トランプ政権はパレスチナ人を難民として入国させること認めてないのだが、地獄のような場所からパレスチナ人を救出しようという動きもある。例えば、パレスチナの子どもや若者が高度の医療、教育、緊急支援、そして成長の機会に恵まれるようにすることを目指している「ヒール・パレスチナ」という団体は、負傷したパレスチナの子どもたちを医療のためにアメリカへ入国させていた。費用はこの団体が負担、治療で完全に回復した子どもたちはアメリカから出国する仕組みだ。 しかし、こうした行為を非難する声に応える形でアメリカの国務省はガザ出身者へのビザ発給を全面的に停止した。そうした声を上げた人物はドナルド・トランプの支持者として知られているローラ・ルーマーだが、そうした動きを批判する声を上げた人物もいる。ジョージア州選出下院議員のマージョリー・テイラー・グリーンだ。アメリカの体制は健全だと主張する人びとにとって都合の悪いことを事実に基づいて取り上げる政治家だが、そのため、「陰謀論者」というタグを付けられ、誹謗中傷のターゲットにされている。 グリーン下院議員は同時にイスラエルと小児性愛の関係にも言及している。ラスベガス警察は8月16日、小児性愛者を標的にした囮捜査を実施、8名を逮捕した。そのうちのひとりがイスラエルの国家サイバー局で局長を務めるトム・アレクサンドロビッチだった。専門家会議に出席するため、アメリカに滞在していたという。この捜査にはFBI、警察、国土安全保障省、ネバダ州司法長官事務所が参加していた。 アレクサンドロビッチは尋問後に釈放されてホテルへ戻り、2日以内にイスラエルに帰国した。警察の記録によると、この容疑者はヘンダーソン拘置所に収監され、その後、判事の面前で1万ドルの保釈金を支払って釈放されている。誰が保釈金を支払ったのか、どのようにして出国し、イスラエルへ戻れたのかは不明だ。 イスラエルは小児性愛者を受け入れている国としても知られている。CBSニュースによると、多くのアメリカ人小児性愛者がイスラエルに逃亡、彼らは法の裁きを受けていない。イスラエルには「帰還法」と呼ばれる法律があり、ユダヤ人であれば誰でもイスラエルへ移住し、市民権を取得できる。 小児性愛の容疑者を追跡しているアメリカの団体「JCW(ユダヤ人コミュニティ・ウォッチ)」は2014年から活動を開始、それ以来、60名以上がアメリカからイスラエルへ逃亡したとしているが、実数ははるかに多いと考えられている。 イスラエルでは今年6月、クネセト(国会)で数人の女性が未成年時代に宗教儀式の一環として受けた性的虐待について証言した。被害者のひとりであるヤエル・アリエルによると、彼女は5歳から20歳まで儀式的な虐待を受け、ほかの子どもたちに危害を加えることを強要されたという。警察に被害届を出しても数カ月で却下。しかも彼女が自分の体験を明かにすると脅迫を受けたとしているが、これは彼女だけではないようだ。別の被害者、ヤエル・シトリットによると、人身売買は全国で行われていた。薬物も使用され、レイプを含むサディスティックで残酷なことも行われ、その行為は撮影されていたとされている。被害者がそうしたことを証言しても荒唐無稽の話だと思われ、信じてもらえなかったという。 被害者たちによると、聖書の物語を模倣した虐待を受けたともいう。例えば、加害者がイサクの縛りを真似て被害者の女性を縛り付け、間に合わせの割礼の儀式を行うという儀式に強制的に参加させられたと複数の女性が証言している。 ひとりの被害者はいとこから虐待を受け、14歳になると地域社会の著名人から拷問と飢餓に苦しめられていたと主張した。「一般公開のイベントがあり、手錠をかけられて高い柱に縛り付けられる内部儀式もありました」と彼女は当時を振り返り、月経血を飲む儀式や猫などの動物の屠殺についても説明した。 2023年10月7日にイスラエルを攻撃したハマスの戦闘員がイスラエル人女性をレイプしたという話は嘘だったことが判明しているが、その嘘を広めていた西側の有力メディアはイスラエルが関係した小児性愛に絡む犯罪行為にはさして興味を示してこなかった。そしてグリーン下院議員のような人びとを「陰謀論者」と呼び、現実から目を背ける。**********************************************【Sakurai’s Substack】
2025.08.21

ロシアのウラジミル・プーチン大統領は8月15日、アメリカの石油大手、エクソンモービルを含む外国企業が「サハリン1」プロジェクトの株式を再び取得できるようにする大統領令に署名した。言うまでもなくこの日、プーチンはアメリカのドナルド・トランプ大統領とアラスカで会談している。 エクソンモービルは、2022年2月にロシア軍がウクライナを攻撃し始めた後にロシア事業から同年3月に撤退、46億ドルの減損損失を計上している。 同社は2022年3月に撤退を決める前、サハリン1の運営権益30%を、またサハリン石油ガス開発も同じく30%を保有していた。その他インドのONGCが20%、ロシアはロスネフチの子会社2社が合計20%。サハリン石油ガス開発は日本の経済産業省、伊藤忠商事、丸紅、石油資源開発などが共同出資している。 サハリン2では2022年8月に三井物産と三菱商事が新たな運営会社であるサハリンスカヤ・エネルギヤに出資参画することを明らかにした。出資比率はそれぞれ12.5%と10%。27.5%を保有していたイギリスのシェルは同年2月に撤退、ロシアのガスプロムが50%プラスから77.5%へ増加している。 日本はロシア産天然ガスの開発を重要だと認識、アメリカの圧力を跳ね除けて出資を継続したのだが、その決定が発表される直前、その間、7月8日に安倍晋三は射殺された。 ロシア産天然ガスはロシアとヨーロッパもつないでいた。ヨーロッパは廉価なロシアの天然ガスはヨーロッパの製造業だけでなく社会を支えていたのだが、ヨーロッパとロシアが接近することをアメリカは嫌う。そして2013年11月から14年2月にかけてバラク・オバマ政権はキエフでクーデターを仕掛け、ビクトル・ヤヌコビッチ政権を倒すことに成功した。 ロシアとヨーロッパを結ぶパイプラインの多くはウクライナを通過している。特に重要なパイプラインはソユーズ。このパイプラインとベラルーシやポーランドを経由してドイツへつながるヤマル-ヨーロッパは遮断されたが、ドイツとロシアはウクライナを迂回するパイプラインも建設していた。バルト海を経由する2本のパイプライン「ノードストリーム(NS1)」と「ノードストリーム2(NS2)」だ。 NS1は2010年4月に建設が始まり、11年11月から天然ガスの供給が始められる。ウクライナの体制がクーデターで変わった後の2015年6月にガスプロムとロイヤル・ダッチ・シェルは共同でNS2の建設を開始、18年1月にドイツはNS2の建設を承認、21年9月にパイプラインは完成した。 アメリカやポーランドはNS1やNS2の建設や稼働に強く反対し、ドナルド・トランプ政権下の2020年7月には国務長官のマイク・ポンペオがNS2を止めるためにあらゆることを実行すると発言。2021年1月に大統領がジョー・バイデンに交代しても状況に変化はなく、22年1月27日にビクトリア・ヌランド国務次官はロシアがウクライナを侵略したらNS2を止めると発言している。2月7日にはジョー・バイデン大統領がNS2を終わらせると主張し、アメリカはそうしたことができると記者に約束した。 2022年2月24日にロシア軍はウクライナに対する軍事作戦を開始、アメリカ政府の圧力でEUは新パイプラインの稼働を断念。アメリカはさらにNS1も止めさせようとした。 ジャーナリストのシーモア・ハーシュは2023年2月8日、この爆破について記事を書いているが、それによると、アメリカ海軍のダイバーがノルウェーの手を借りてノードストリームを破壊したという。アメリカのジョー・バイデン大統領は2021年後半にジェイク・サリバン国家安全保障補佐官を中心とする対ロシア工作のためのチームを編成、その中には統合参謀本部、CIA、国務省、そして財務省の代表が参加してい他としている。12月にはどのような工作を実行するか話し合ったという。そして2022年初頭にはCIAがサリバンのチームに対し、パイプライン爆破を具申している。ロシアがウクライナに対する攻撃を始める前の話である。 ウクライナ制圧とノードストリーム爆破でロシアは巨大マーケットを失、ヨーロッパは廉価なエネルギー源を失い、両方とも弱体化するとネオコンは計算していたようだが、ロシアは中国と接近、新たなマーケットを手に入れた。ロシアと中国はその後、関係を強め、強力なアメリカのライバルが出現することになった。すでにアメリカは中露と比べて劣勢だ。**********************************************【Sakurai’s Substack】
2025.08.20
米露首脳会談にネオコンは激怒 アラスカで開かれたウラジミル・プーチン露大統領とドナルド・トランプ米大統領の会談ではウクライナ情勢だけでなく、ロシアとアメリカの貿易、エネルギー、テクノロジー、宇宙などに関する問題、そして北極圏における両国の協力などについて話し合われたという。米露の関係修復が議題になったことが明確になってきた。 この会談の成果をプーチン大統領やトランプ大統領は概ね満足しているようだが、ロシアを疲弊させ、その利権にありつくために戦争を推進してきたイギリス、ドイツ、フランスをはじめとするヨーロッパ諸国、ロシアとの戦争を始めたネオコンに担がれたヒラリー・クリントンらは激怒、その配下の有力メディアはプーチンやトランプに罵詈雑言を浴びせている。それだけ実り多い会談だったのだろう。 ウクライナでの戦争を煽ってきたヨーロッパ諸国やアメリカのネオコン、そして西側の有力メディアはこの戦争でロシアが疲弊し、経済は破綻して政権が転覆、再び西側の属国、あるいは植民地になると主張してきたが、現実のロシアは経済が成長、プーチン政権は盤石で、その存在感が強まっている。経済が破綻、体制が揺らぎ、言論統制を強化して締め付けを強めているのはEU諸国だ。民意が反映されないEUという寡頭制体制は破綻したと言えるだろう。 本ブログでは繰り返し書いてきたように、戦況はロシア軍が圧倒的に有利で、勝利は確定的。その現実を認識しているトランプ政権もロシア側の要求を基本的に受け入れているようだ。EU諸国はウクライナの戦力を増強する時間を稼ぐための「停戦」を望んでいるが、ロシアとアメリカは「本格的な平和条約」を目指している。 会談に参加したアメリカのスティーブ・ウィトコフ大統領特使によると、アメリカとロシアはウクライナの安全保障に関して合意した。ただし、これはロシアの安全を保証することとセット。ロシアの要求をアメリカは基本的に受け入れざるをえないため、マルコ・ルビオ国務長官によると、ロシアはウクライナを「完全に占領」することはないものの、必然的に領土の一部は失う。 ロシアはウクライナの非軍事化、非ナチ化、NATOに加盟しないことの保証、ロシア国境付近への西側諸国軍の展開の制限、ウクライナに対する武器供与の制限、ウクライナにおけるロシア語使用の保証、また西側諸国が凍結したロシア資産を返還し、ウクライナの中立を維持するほか、領土の「現実」(ドネツク、ルハンシク、ザポリージャ、ヘルソン)を承認することなどだ。ソ連時代にロシアからウクライナへ人びとの承認を得ずに割譲された全地域をロシアは取り戻したいのだろうが、そこまでは要求していないようだ。 トランプ大統領はイギリスのガーディアン紙に対し、クリミアをウクライナへ戻すことやNATOへ加盟させることはないと発言、こうした現実をウォロディミル・ゼレンスキーが受け入れれば戦争はすぐに終結するともしている。ネオコンの対ロシア戦争 アメリカとロシアとの関係を悪化させる政策を推し進めた大統領はバラク・オバマにほかならない。彼の任期は2017年1月までだが、15年の段階でアメリカのエリート層はヒラリー・クリントンを次期大統領にすることで内定していたと見られている。彼女の旧友であるジム・メッシナが2015年6月にオーストリアで開かれたビルダーバーグ・グループの会合に出席していたからだ。反ソ連/ロシアの投機家、ジョージ・ソロスが2016年の大統領選挙で民主党(事実上、ヒラリー陣営)を資金面で支援、明らかにされているだけで2500万ドル以上になることも判明している。 ヒラリーはネオコンのマデリーン・オルブライトやビクトリア・ヌランドと親しい好戦派で、上院議員時代から軍需産業のロッキード・マーティンをスポンサーにしていた。オバマと同じようにロシアを敵視していたことから、ヒラリーが大統領に就任した場合、ロシアとアメリカは核戦争に近づくとも言われていた。 ところが、2016年2月10日にヘンリー・キッシンジャーがロシアを訪問してウラジミル・プーチン大統領と会談、22日にシリアで停戦の合意が成立、風向きが変わった。キッシンジャーの背後にいる勢力はロシアとの核戦争を望んでいなかったのだろう。その後民主党ではバーニー・サンダースが支持者を集め、共和党ではドナルド・トランプが台頭してくる。 キッシンジャーは破壊工作機関のOPC(後にCIAの破壊工作部門の中核になった)に所属したことがあり、ロックフェラー色の濃いCFR(外交問題評議会)と深く結びついている。ビルダーバーグ・グループでも中心的な役割をはたしてきた。中国とロシア/ソ連を分断する政策を進めていたキッシンジャーから見ると、ウクライナの政権をクーデターで倒すような強引なことをしてロシアと中国を同盟させてしまったネオコンの政策は危険だったのだろう。 3月になるとWikiLeaksがヒラリーの電子メールを公表、その中にはバーニー・サンダースが同党の大統領候補になることを妨害するよう民主党の幹部に求めるものがあり、サンダースの支持者を怒らせることになった。民主党幹部たちが2015年5月の時点でヒラリー・クリントンを候補者にすると決めていたことを示唆する電子メールもあった。 選挙キャンペーンの最中に民主党だけでなくソロスのオープン・ソサエティ基金もハッキングされ、電子メールが明らかにされた。そうした電子メールの中には、ソロスがヒラリー・クリントンに対してアルバニア情勢に対する対処の仕方をアドバイスする2011年1月24日付けのメールもある。当時、クリントンは国務長官だ。 WikiLeaksのジュリアン・アサンジは6月12日、ヒラリー・クリントンのメールを保有しており、公開する予定であると発表。6月14日にクラウドストライクはDNC(民主党全国委員会)のサーバーへ「侵入」があったと発表、6月中旬にジョン・ブレナンCIA長官はイギリスの電子情報機関GCHQのロバート・ハニガン長官と会談した。7月22日にWikiLeaksは民主党全国委員会のサーバーから盗み出した約2万通の電子メールを公開する。これらの電子メールは民主党全国委員会がバーニー・サンダースの選挙運動を組織的に妨害していたことを、多くの点で示していた。 クラウドストライクはIISS(国際戦略研究所)のデータを分析に利用しているが、そのIISSはクラウドストライクによるデータの使い方が誤っていると主張、IISSとクラウドストライクの報告書との関係を否定し、クラウドストライクはIISSに接触していないともしている。 それに対し、IBMのプログラム・マネージャーだったスキップ・フォルデンは転送速度など技術的な分析からインターネットを通じたハッキングではないという結論に達している。DNCの内部でダウンロードされて外へ持ち出されたというわけだ。本当にハッキングされたのなら、その証拠をNSAは握っているとウィリアム・ビニーも指摘している。ビニーは情報機関で通信傍受システムの開発を主導し、NSA史上最高の数学者にひとりと言われている人物だ。 電子メールをWikiLeaksへ渡したのはDNCのコンピュータ担当スタッフだったセス・リッチだと推測する人は少なくない。その漏洩した電子メールをロシア政府がハッキングしたとする偽情報を流したのはブレナンCIA長官だと言われている。そのリッチは2万件近い電子メールが公表される12日前に射殺体として発見された。 ヒラリーを支援するためにCIA副長官を辞めたマイク・モレルは2016年8月、テレビの番組で司会者のチャーリー・ローズに対し、ロシア人やイラン人に代償を払わせるべきだと語ってる。ローズからロシア人とイラン人を殺すという意味かと問われると、その通りだと答えたうえ、わからないようにと付け加えているのだ。 その発言の直後、2016年9月6日にモスクワでウラジミル・プーチン露大統領の運転手を40年にわたって務めた人物の運転する公用車に暴走車が衝突、その運転手は死亡した。 さらに、ロシア政府の幹部が変死していく。例えば、2016年11月8日にニューヨークのロシア領事館で副領事の死体が発見され、12月19日にはトルコのアンカラでロシア大使が射殺されている。その翌日、12月20日にはロシア外務省ラテン・アメリカ局の幹部外交官が射殺され、12月29日にはKGB/FSBの元幹部の死体が自動車の中で発見された。2017年1月9日にはギリシャのアパートでロシア領事が死亡、1月26日にはインドでロシア大使が心臓発作で死亡、そして2月20日にはロシアの国連大使だったビタリー・チュルキンが心臓発作で急死した。モレル発言の前、2015年11月5日にはアメリカ政府が目の敵にしてきたRTの創設者がワシントンDCのホテルで死亡している。 結局、ヒラリーは選挙でトランプに敗れ、2017年1月にトランプが大統領に就任することが決まる。そうした中、2016年12月にオバマはロシアとアメリカとの関係を悪化させるため、外交官35名を含むロシア人96名を追放した。 トランプは選挙期間中、ロシアとの関係改善を訴えていたが、アメリカ国務省は2017年8月31日、サンフランシスコにあるロシア領事館とワシントンDCやニューヨーク市にある関連施設から9月2日までに立ち退くように命令、その領事館や館員の自宅をFBIなど当局が捜索するともしている。 それに対し、ロシア側は米露の駐在外交官数を均衡させるとしてロシアで活動しているアメリカ外交官を455名まで減らさせた。ロシアのアメリカ大使館には1210名の外交官がいたようで、755名が追放するたことになる。それだけの外交官が必要だとは思えず、大半は情報活動に従事していたのだろう。ロシアゲート その一方、アダム・シッフ下院議員が2017年3月に下院情報委員会で「ロシアゲート」の開幕を宣言した。2016年の大統領選挙にロシアが介入したとする声明を出したのだが、証拠は何も示していない。そして、同年5月にマラーが特別検察官に任命された。 シッフの主張は「元」MI6(イギリスの対外情報機関)オフィサーのクリストファー・スティールが作成した報告書だが、根拠薄弱だということはスティール自身も認めている。 スティールに調査を依頼したのはフュージョンなる会社で、そのフュージョンを雇ったマーク・エリアス弁護士はヒラリー・クリントン陣営や民主党全国委員会の法律顧問を務めていた。 フュージョンを創設したひとりであるグレン・シンプソンによると、同社は2016年秋にネリー・オーなる人物にドナルド・トランプの調査と分析を依頼している。その夫であるブルース・オーは司法省の幹部で、このオーとシンプソンは2016年11月に会っている。その直後にブルースは司法省のポストを失い、フュージョンはスティールに調査を依頼することになる。 アメリカの電子情報機関NSAの不正を内部告発したことでも知られているウィリアム・ビニーも指摘しているように、ロシアゲートが事実ならすべての通信を傍受、記録しているNSAからその傍受記録を取り寄せるだけで決着が付く。特別検察官を任命する必要はない。特別検察官を任命した大きな理由はトランプの周辺にいる人物を逮捕、司法取引で偽証させることにあったと推測する人もいる。 ところがその工作は失敗、ロシアゲートはヒラリー・クリントン陣営を中心とする民主党幹部、CIA、FBIがイギリスの対外情報機関の「元エージェント」の協力を得て、西側の有力メディアが広めた作り話であることが判明してしまう。ヒラリーが当選していれば、こうした工作は隠蔽できただろうが、落選したため、そうしたことができなかった。そして現在、ロシアゲートは工作した人びとを刑務所へ送るだけの破壊力を示している。世界の相当数の要人を巻き込むジェフリー・エプスタインのスキャンダルより使いやすい。**********************************************【Sakurai’s Substack】
2025.08.19
このブログは読者の皆様のお力で支えられています。経済情勢が厳しくなっていますが、ブログを存続させるためにはカンパ/寄付が必要です。よろしくお願い申し上げます。【振込先】巣鴨信用金庫店番号:002(大塚支店)預金種目:普通口座番号:0002105口座名:櫻井春彦 ロシアのウラジミル・プーチン大統領を乗せた航空機が8月15日午前10時54分(現地時間)にアラスカのエルメンドルフ・リチャードソン基地に到着、ドナルド・トランプ米大統領の出迎えを受けました。 その後、11時26分から3時間にわたって米露両国の大統領が会談、ロシア側からユーリ・ウシャコフ大統領補佐官、セルゲイ・ラブロフ外相、アメリカ側からマルコ・ルビオ国務長官、そして大統領特使のスティーブ・ウィトコフが同席しています。 ウクライナにおける戦況に関しても話し合われたようですが、プーチン大統領はこれまでの条件を維持し、この問題で特に大きな変化は見られません。トランプ大統領もウクライナでNATOがロシアに敗北したことは認識しているようで、関心は今後の両国関係にあるのでしょう。 ウクライナでの戦闘はアメリカ/NATOが2014年から22年にかけて築いたマリウポリ、マリーインカ、アブディフカ、ソレダルの地下要塞を結ぶ要塞線はすでに突破され、軍事拠点は次々に陥落、武器弾薬は枯渇し、兵士不足も深刻です。そうした状況を西側の有力メディアは逆さに描いてきました。 しかし、今回の会談でもロシアは停戦条件を変えません。ウクライナの非軍事化、非ナチ化、西側諸国が凍結したロシア資産の返還、そしてウクライナの中立を維持するほか、領土の「現実」を認めるように求めていますが、西側の有力メディアはそうした流れに苛立っているようです。ロシア社会が疲弊し、戦場で負けているという御伽話が通用しなくなりつつあります。その御伽話サークルからトランプ大統領が抜け出そうとしていることを有力メディア、そして背後のスポンサーは許せないのでしょう。 トランプは性的人身売買で逮捕されたジェフリー・エプスタインと交友関係がありました。それに絡んでトランプは脅されていたと見られていますが、トゥルシ・ギャバード国家情報長官はトランプ勝利の正当性を覆すためにオバマたちが行なった「反逆的な陰謀」を明らかにし、ネオコンに反撃しました。バラク・オバマ政権がアメリカをロシアとの核戦争へと向かわせようと意図的にロシアゲートをでっち上げたことを示す100ページ以上に及ぶ未編集の電子メール、メモ、高官級の通信を公表しました。 この工作に関する捜査がさらに進むと、オバマのほか国家情報長官を務めていたジェームズ・クラッパー、CIA長官だったジョン・ブレナン、FBI長官だったジェームズ・コミー、国家安全保障問題担当大統領補佐官を務めていたスーザン・ライスたちが法的な責任を問われる可能性があります。 この「ロシアゲート」ゲートはエプスタイン・ファイルが衝突しているようですが、これは前者の方がインパクトが強いように思えます。しかもエプスタイン・ファイルはトランプだけでなく、少なからぬ世界の有力者が巻き込まれると見られ、この問題にメスを入れることに反対する力は強いはずで、有力メディアもこの問題を深く追及できないでしょう。そうしたメディアの内部にもエプスタインの罠にかかった人もいるようです。 すでに西側の有力メディアは情報機関として機能していません。支配システムを動かしている人びとにとって都合の良い幻影を人びとに信じ込ませているだけだと言えるでしょう。そうした有力メディアの呪術に打ち勝たなければなりません。このブログが呪術を打ち破る一助になればと願っています。櫻井 春彦【振込先】巣鴨信用金庫店番号:002(大塚支店)預金種目:普通口座番号:0002105口座名:櫻井春彦
2025.08.18
ウラジミル・プーチン露大統領とドナルド・トランプ米大統領がアラスカのエルメンドルフ・リチャードソン基地で会談、ロシア側からユーリ・ウシャコフ大統領補佐官、セルゲイ・ラブロフ外相、アメリカ側からマルコ・ルビオ国務長官、そして大統領特使のスティーブ・ウィトコフが同席した。会談後、両国から正式な発表はなく、実際に何が話し合われたのかは不明だ。会談はレッドカーペット上での短い会話を含め、3時間にわたった。 プーチン大統領は会談の「建設的で敬意に満ちた」雰囲気を称賛し、トランプ大統領との合意が新たな国際バランスへの政治的移行への道を開くことを期待すると述べ、トランプ大統領は正式な合意に至っていないことを認めつつも、会談は「非常に生産的」だったと述べた。 今回の会談でもウクライナ問題に関してロシア側の要求は変化していない。ウクライナの非軍事化、非ナチ化、NATO非加盟の保証、ロシア国境付近への西側諸国軍の展開の制限、ウクライナに対する武器供与の制限、ウクライナにおけるロシア語の特別扱い、また西側諸国が凍結したロシア資産を返還し、ウクライナの中立を維持するほか、領土の「現実」(ドネツク、ルハンシク、ザポリージャ、ヘルソン)を承認することなどだ。 この会談でトランプが口にしていた「制裁」などは消え、アメリカの有力メディアに登場するコメンテーターはプーチンに対して罵詈雑言を浴びせていたが、それしか「コメント」することができなかったようである。今回の会談で中国などからのウクライナ和平に関する圧力も減ると見られている。 2013年11月から14年2月にかけてアメリカのバラク・オバマ政権はウクライナでネオ・ナチを使ったクーデターを実行、ビクトル・ヤヌコビッチ政権を倒し、そこからアメリカの対ロシア戦争は本格化していくのだが、ウクライナ国内にはクーデター体制を拒否する人びとは少なくなく、ミンスク合意による「停戦」で戦力を増強するための時間を稼ぐ必要があった。 オバマ政権を戦争へと導いたのはシオニストの一派であるネオコンだが、この勢力は1970年代、ジェラルド・フォード政権で台頭、どの政権でも軍事と外交に大きな影響を及ぼしてきた。ソ連が消滅した直後に「ウォルフォウィッツ・ドクトリン」を作成、それに基づいて世界征服プロジェクトを始めたのもこの勢力。このプロジェクトはソ連が消滅した後にロシアを属国(植民地)にできたという前提で作成されているのだが、その前提た21世紀に入ってプーチンがロシアを再独立させたところで揺らぎ始め、迷走することになった。 西側の有力メディアはオバマのクーデターを正当化するために「暴君を民衆が倒した革命」というイメージを広め、その「勇敢な革命政権がロシアを倒そうとしている」と宣伝してきた。ロシア軍は崩壊寸前で、ロシア経済は破綻しているというわけだ。これはソ連消滅直後にネオコンが作成したシナリオにはそう書かれているのだが、その御伽話が現実によって崩壊しつつあり、ネオコンの宣伝機関と化している有力メディアは慌てている。 ロシアのセルゲイ・リャブコフ外務次官はアラスカでの会談について、両国間の正常な対話が再開し、危険な状況に陥っている戦略問題と軍備管理問題への対応を始めることが重要なのだとしている。つまり、今回の会談で何か重要なことが決まったということではないということのようだ。ウクライナの問題でもプーチン大統領はこれまでに示してきた停戦条件を維持し、この問題で特に大きな変化は見られなかった。 それに対し、イギリスの情報機関や政策立案者たちは米露首脳会談を阻止すべきだと主張していた。ロシアとアメリカが正常な対話を再開して緊張が緩和されることを恐れている。アラスカで会談が開かれる直前にはアメリカのE-3A(AWACS)、E-7T(AEW&C)、11日からはイギリス軍のRC-135偵察機がクリミアからクラスノダールにかけての空域を飛行、何らかの作戦を目論んでいるのではと見られていた。 そうした中、8月14日にロシア軍はウクライナ北部のチェルニーユにある軍事訓練場を短距離弾道ミサイルのイスカンデルMで攻撃、数十人が死亡したと伝えられている。ここではウクライナ人約70名とイギリス人約30名の工作員がクリミアとクラスノダールを攻撃する準備を進めていたという。イギリスは追い詰められているようだ。イギリスの対外情報機関MI-6のエージェントだと見られているウォロディミル・ゼレンスキーの立場も厳しくなっている。**********************************************【Sakurai’s Substack】
2025.08.17
侵略戦争と結びついた靖国神社を日本の政治家はパフォーマンスの舞台と考えているようである。「終戦の日」に参拝すれば、あたかも「愛国主義者」、「国粋主義者」、「民族主義者」、「右翼」であるかのように宣伝できると考えてか、少なからぬ政治家が参拝してきた。 この神社は日本が第2次世界大戦で敗北して間もない頃、日本を占領していたGHQ/SCAP(連合国軍最高司令官総司令部)の内部では、将校の多数派が靖国神社の焼却を主張していたという。それを阻止したのは自分だと書いているのはブルーノ・ビッテル神父だ。(朝日ソノラマ編集部『マッカーサーの涙』朝日ソノラマ、1973年) ビッテルはニューヨークのフランシス・スペルマン枢機卿の高弟だとされている聖職者。スペルマンはジョバンニ・モンティニ(後のローマ教皇パウロ6世)を除くと、最も重要な教皇庁とCIAを結ぶパイプ役だとされていた。ビッテルもCIA人脈ということだ。 雑誌「真相」の1954年4月号に掲載された記事よると、1953年秋に来日したリチャード・ニクソンはバンク・オブ・アメリカ東京支店のA・ムーア副支店長を大使館官邸に呼びつけ、「厳重な帳簿検査と細かい工作指示を与えた」た際、ビッターも同席していたという。 その会談から2カ月後、ビッテルは霊友会の闇ドル事件にからんで逮捕されている。外遊した同会の小谷喜美会長に対し、彼が法律に違反して5000ドルを融通した容疑だった。当時の日本人エリートは海外旅行する際、日本カトリック教団本部四谷教会のビッテルを介して闇ドルを入手していたとされている。 ところが、ビッテルが逮捕された際に警察が押収した書類をふたりのアメリカ人が警視庁から持ち去り、闇ドルに関する捜査は打ち切られてしまった。秘密裏に犬養健法相が指揮権を発動したと言われている。靖国神社には「魂」だけでなく、闇資金も何らかの形で関係していると噂されている。 闇資金の原資は関東軍が中国大陸で略奪した財宝だと言われている。スターリング・シーグレーブとペギー・シーグレーブによると、略奪プロジェクトが始動するのは1937年12月に関東軍が南京を攻略したときだという。中国政府が保有する資産だけでなく、銀行や裕福な家に保管されていた金や宝石などを憲兵隊は奪った。その総重量は6000トンに達したという。 上海派遣軍の司令官として南京攻略戦に参加、事実上の最高責任者だった人物は朝香宮鳩彦。昭和天皇の叔父にあたる人物だ。南京で財宝略奪作戦「金の百合」を指揮したのは秩父宮雍仁で、その補佐役は竹田宮恒徳。その後も略奪作戦は続き、財宝はフィリピンに集積した後、日本へ運ばれるが、途中で戦局が悪化して輸送が困難になり、相当部分がフィリピンに隠された。運び出しに成功した金塊は東京にあるスイス系銀行、マカオにあるポルトガル系銀行、あるいはチリやアルゼンチンの銀行に運び込まれたという。(Sterling & Peggy Seagrave, “Gold Warriors”, Verso, 2003) 日本が降伏すると、アメリカ軍のエドワード・ランズデール大尉(当時)は1945年10月中旬、財宝の隠し場所を日本軍の捕虜から聞き出すことに成功した。 ランズデールは戦時情報機関OSSのメンバーだったが、彼がフィリピン入りした直後にOSSは廃止になり、ランズデールを含むOSSの50名はチャールズ・ウィロビー少将が率いるフィリピンのG2(アメリカ陸軍の情報部門)へ配属になる。財宝の隠し場所を聞き出した時、ランズデールはG2に所属していた。 ランズデールはその情報を東京にいたダグラス・マッカーサー元帥、ウィロビー少将、そしてGS(民政局)のコートニー・ホイットニー准将に報告、さらにワシントンDCへ行き、ジョン・マグルーダー准将に説明している。ランズデールをフィリピンへ行かせたのはこのマグルーダーにほかならない。マグルーダー准将はウィリアム・ドノバンOSS長官の部下だった。マグルーダー准将の指示で、ランズデールはハリー・トルーマン大統領の国家安全保障を担当していたスタッフにも会っている。 金の百合の回収が進められていた頃、ヨーロッパでは「ナチ・ゴールド」が回収されていた。ジョン・ロフタスとマーク・アーロンズによると、ナチスがヨーロッパで略奪した資金はドノバンのWCC(世界通商)でロンダリングされ、戦後にタイへ運ばれたという証言もある。(John Loftus & Mark Aarons, “The Secret War against the Jews”, St. Martin’s Press, 1994) 1946年にドノバンがイギリス人の仲間と設立した会社がWCC。そのイギリス人、ウィリアム・スティーブンソンは大戦中、BSC(英国安全保障局)の責任者だった。ここはイギリスの対外情報機関MI-6の下部組織で、アメリカの情報機関との連絡を担当していた。戦後も米英両国が情報活動で協力することを目的としてWCCは作られたという。 WCCの背後には経済界の大物が名を連ねていた。その中にはネルソン・ロックフェラー、ジョン・マックロイ、あるいはゴールドマン・サックスに君臨していたシドニー・ワインバーグ、アヘン取引で富を築いて香港上海銀行を創設した一族のビクター・サッスーンなども含まれている。(Peter Dale Scott, “American War Machine”, Rowman & Littlefield, 2010) 日本軍から得た情報に基づいて財宝の掘り出し作業が始まり、1945年から47年にかけてフィリピンで回収された金塊は42カ国の銀行の176口座に分散して預けられ、「ブラック・イーグル・トラスト」と呼ばれる秘密の基金が創設されたという。シーグレーブによると、後にイギリスの金融関係者も同トラストに参加した。**********************************************【Sakurai’s Substack】
2025.08.16
1945年8月15日は昭和天皇(裕仁)が「ポツダム宣言」の受諾をアメリカ、イギリス、中国、ソ連の4カ国に伝えたと「臣民」に発表した。つまり、今年は日本が第2次世界大戦に敗れてから80年目にあたる。 日本の敗北が決まった日は1945年9月2日。東京湾内に停泊していたアメリカの戦艦ミズーリで政府全権の重光葵と大本営(日本軍)全権の梅津美治郎が降伏文書に調印したのだが、戦争を始めたのはいつのことなのか。 アメリカとの戦争は1941年12月7日にハワイの真珠湾を攻撃した時に始まったと言えるだろうが、中国侵略は1872年に琉球を併合した時から始まる。「維新」で誕生した明治体制は琉球の後、台湾派兵、江華島への軍艦派遣、日清戦争、日露戦争へと進んだが、こうした侵略はアメリカやイギリスの外交官に煽られてのことだった。自覚していたかどうかはともかく、明治体制はアメリカやイギリスの手先として動いていたのだ。 明治維新で暗躍したジャーディン・マセソンは中国(清)の茶や絹をイギリスへ運び、インドで仕入れたアヘンを中国へ持ち込んむという商売をして大儲けしていた。19世紀に麻薬取引を支配していたのは同社と「東方のロスチャイルド」ことサッスーン家だ。明治維新の黒幕は麻薬業者だったとも言える。 この商売を中国に押し付けたのが第1次アヘン戦争(1839年9月から42年8月)と第2次アヘン戦争(1856年10月から60年10月)。この戦争をビクトリア女王にさせたのは反ロシアで有名な政治家、ヘンリー・ジョン・テンプル(別名パーマストン子爵)にほかならない。2度のアヘン戦争でイギリスは勝利したわけだが、これは海戦でのこと。無陸部を制圧する戦力を持っていなかった。 ジャーディン・マセソンは1859年に長崎へトーマス・グラバーを、横浜へウィリアム・ケズウィックをエージェントとして送り込んだ。歴史物語ではグラバーが有名だが、大物はケズウィック。母方の祖母は同社を創設したひとりであるウィリアム・ジャーディンの姉なのである。 グラバーとケズウィックが来日した1859年にイギリスのラザフォード・オールコック駐日総領事は長州の若者5名をイギリスへ留学させることにする。選ばれたのは井上聞多(馨)、遠藤謹助、山尾庸三、伊藤俊輔(博文)、野村弥吉(井上勝)だ。 この5名は1863年にロンドンへ向かうが、この時に船の手配をしたのがジャーディン・マセソンにほかならない。1861年に武器商人として独立したグラバーも密航の手助けをしているが、ケズウィックは1862年にジャーディン・マセソンの共同経営者となるために香港へ戻っていた。 長州の若者5名が出向する前の月、つまり1863年5月に長州はアメリカ商船のペンブローク、オランダ通報艦のキャンシャン、オランダ東洋艦隊所属のメデューサを相次いで砲撃。それに対し、6月に入るとアメリカの軍艦ワイオミングが報復攻撃、長州藩の海軍を壊滅させ、さらにフランス海軍のセミラミスとタンクレードも報復攻撃した。この攻撃は長州とイギリスの八百長戦争だったのか、あるいは長州内部に対立があったのだろう。この当時、グラバーは大量の武器弾薬を買い込んでいた。 日露戦争は1904年2月8日、日本軍が仁川沖と旅順港を奇襲攻撃したところから始まる。その際、日本に戦費を用立てたのはロスチャイルド系のクーン・ローブを経営していたジェイコブ・シッフ。日本に対して約2億ドルを融資、その際に日銀副総裁だった高橋是清はシッフと親しくなっている。 この戦争について、セオドア・ルーズベルト米大統領は日本が自分たちのために戦っていると語り、日本政府の使節としてアメリカにいた金子堅太郎はアングロ・サクソンの価値観を支持するために日本はロシアと戦ったと説明していた。1910年に日本が韓国を併合した際、アメリカが容認した理由はこの辺にあるだろう。(James Bradley, “The China Mirage,” Little, Brown and Company, 2015) 関東大震災の復興資金調達の結果、日本の政治や経済をアメリカの巨大金融資本JPモルガンの影響下に入った。そして日本では治安維持法によって思想弾圧が強化され、「満蒙は日本の生命線」と言われるようになった。 1927年5月に日本軍は山東へ派兵する。1928年6月に関東軍は張作霖を爆殺し、31年9月に柳条湖で南満州鉄道を爆破、中国東北部を制圧することになる。いわゆる「満州事変(九一八事変)」の勃発だ。 その後、軍事的な緊張が高まり、一触即発の状況になり、1937年7月に「盧溝橋事件」が起こる。二・二六事件の結果、米英金融資本に反発していた軍人が粛清されたのはその前年、1936年2月のこと。1939年5月にノモンハン付近で満州国警備隊と外モンゴル軍が交戦、関東軍が陸軍省と参謀本部の方針を無視して戦闘を続け、敗北した。 1941年6月にドイツ軍はソ連への軍事侵攻を開始する。バルバロッサ作戦だ。その翌月に日本軍は「関東軍特種演習」という名目でソ連への軍事侵攻を目論むのだが、8月に関東軍特種演習の中止が決まり、この年の12月にマレー半島とハワイの真珠湾を奇襲攻撃してアメリカとの戦争が始まった。アメリカとの戦争は日本が行なっていた戦争の一幕にすぎない。 実は、日本が真珠湾を奇襲攻撃する前、イギリスには「日本・アングロ・ファシスト同盟」を結成しようという案があった(Anthony Cave Brown, “"C": The Secret Life of Sir Stewart Graham Menzies,” Macmillan、1988)のだが、ノモンハンでソ連軍に敗北したこともあり、その後に南進、つまり東南アジアへ矛先を向けてイギリスの利権と衝突、この同盟は不可能になった。 1945年4月12日にフランクリン・ルーズベルト米大統領が急死、翌月にドイツが降伏すると、イギリスのウィンストン・チャーチル首相はソ連への奇襲攻撃を目論み、JPS(合同作戦本部)に対して作戦の立案を命令する。そして5月22日にアンシンカブル作戦は提出された。 その作戦によると、攻撃を始めるのはその年の7月1日。アメリカ軍64師団、イギリス連邦軍35師団、ポーランド軍4師団、そしてドイツ軍10師団で「第3次世界大戦」を始めることになっていたが、この作戦は発動していない。参謀本部が計画を拒否したからだ。(Stephen Dorril, “MI6”, Fourth Estate, 2000)その代わり、アメリカ軍はソ連に対するメッセージとして、2発の原爆を日本に投下した。**********************************************【Sakurai’s Substack】
2025.08.15
ヨーロッパで言論統制が厳しくなり、プロパガンダ機関化が進んでいる。西側を支配している強大な私的権力の意向に反する情報を封印するため、欧州委員会は2022年9月にEMFA(欧州メディアの自由法)と呼ばれる法律案を採択、24年3月に欧州議会で可決され、25年8月8日から完全に適用されているが、これも統制を強化するための法律だ。 法律の目的は政治的干渉と監視からの保護、公共サービスメディアへの安定した資金提供の確保、メディア所有権の透明性、そして国営広告の配分を確保することだとされているが、実態は違う。ヨーロッパの支配層が懸念しているのは情報統制のシステムが統制しきれなかった情報が伝えられること。そのためのEMFAであり、EMFAは言論の自由に対する脅威にほかならない。 EMFAには偽情報とされるものへの措置を求める条項が多数含まれ、「公共の利益」にかなう場合、ジャーナリストの逮捕も正当化されていることも批判されている。 言うまでもなく、「公共の利益」が何を意味するかは体制を支配する私的権力が定める。その結果、権力者の不正、違法行為などを追及するジャーナリストは権力機関から妨害や脅迫を受け、重要な仕事を続けることが困難になる。民主主義の重要な柱とされる言論の自由がヨーロッパでは風前の灯だ。 パレスチナでは事実を知られたくないイスラエルがジャーナリストを殺害しているが、西側のメディアはそうしたイスラエルを擁護。ウクライナのドンバスではNATOを後ろ盾とするキエフのクーデター体制による破壊と殺戮を伝えていたジャーナリストが弾圧され、例えばドイツ人ジャーナリストのパトリック・バーブは職を失い、アリナ・リップは銀行口座を接収され、ゴンサロ・リラは獄中で死亡した。拷問の末、殺害されたと言われている。 8月10日にイスラエル軍はガザのジャーナリスト・キャンプを空爆して7名を殺害、そのうち5名はアフ・ジャジーラのジャーナリストだった。その殺害について、BBCの記者は「たったひとりのジャーナリストが標的だったのに、5人のジャーナリストを殺害することが正当化されるだろうか?」と述べ、ひとりのジャーナリスト、アナス・アリ-シャリフの殺害を容認するかのような発言をしている。過去2年間にガザで殺された200名以上のジャーナリストのことも忘れているようだ。 アメリカでは1948年から組織的な情報操作プロジェクトが始められている。「モッキンバード」だ。このプロジェクトを指揮していた人物はCIAのコード・メイヤー。実際の活動で中心的な役割を果たした人物は4名いて、ひとりは情報機関に君臨していたアレン・ダレス、ダレスの側近だったフランク・ウィズナーとリチャード・ヘルムズ、そしてワシントン・ポスト紙の社主だったフィリップ・グラハムだ。(Deborah Davis, “Katharine The Great”, Sheridan Square Press, 1979) ウォーターゲート事件の調査で有名になったカール・バーンスタインは1977年にワシントン・ポスト紙を辞め、ローリング・ストーン誌に「CIAとメディア」という記事を書いている。その記事によると、20年間にCIAの任務を秘密裏に実行していた「ジャーナリスト」は400名以上に達し、そのうち200名から250名が記者や編集者など現場のジャーナリスト。現在はさらにネットワークが強化されているだろう。 また、フランクフルター・アルゲマイネ・ツァイトゥング(FAZ)紙の編集者だったウド・ウルフコテは2014年2月、ドイツにおけるCIAとメディアとの関係をテーマにした本を出版、その中で多くの国のジャーナリストがCIAに買収されていて、そうした工作が危険な状況を作り出していると告発している。CIAに買収されたジャーナリストは人びとがロシアに敵意を持つように誘導するプロパガンダを展開し、ロシアとの戦争へと導いて引き返すことのできないところまで来ていると彼は警鐘を鳴らしていた。 映画も情報操作の道具として使われている。警視監を経験した松橋忠光によると、アメリカは1959年から「1年に2人づつ警視庁に有資格者の中から選ばせて、往復旅費及び生活費と家賃を負担し、約5か月の特殊情報要員教育を始めた」という。その前は「数か月の期間で3、4人の組というように、あまり秩序立っていなかったようである。」(松橋忠光著『わが罪はつねにわが前にあり』オリジン出版センター、1984年) 公式文書に記載された渡航目的は「警察制度の視察・研究」だが、実際はCIAから特殊訓練を受けるのだという。またCIAから受けた講習の中でハリウッドのスパイ映画を何本か見せられ、「その製作に相当関与」していることをそれとなく教えてもらったとも書いている。 単純にソ連や中国などを悪役にするだけでなく、CIAなどアメリカの情報機関が何か悪いことをするという設定でも、組織全体が悪いとはしない。あくまでも悪いのは個人や一部のグループであり、組織全体は健全だということにする。アメリカの体制は健全であり、悪い人物や集団を処分すれば健全になると信じさせたいのだ。**********************************************【Sakurai’s Substack】
2025.08.14
アラスカで8月15日に開催されるドナルド・トランプ米大統領とウラジミル・プーチン露大統領の会談をEUは妨害しようとしている。トランプの発言から判断すると、イランにしろウクライナにしろ、これまで情勢に関する正確な情報を知らされていなかったのかもしれないと思えるが、ここにきて理解できたのか、EUの主張と違いが大きくなってきた。 ウクライナでの戦闘でロシアがNATOに勝利することは2022年の段階で決定的だった。それでもロシアに勝てる、少なくとも疲弊させることができると考えていたようだが、その目論見も失敗。ここにきてロシア軍の進撃スピードは加速、ウクライナ軍にそれを止める能力はない。しかもロシア経済は順調だ。崩壊し始めているEUとは違う。 ロシア政府が示しているウクライナでの戦闘を終結させる条件は、恒久的で安定した平和を実現するため、ウクライナを非軍事化し、非ナチ化を実現、西側諸国が凍結したロシア資産を返還し、ウクライナの中立を維持、そして領土の「現実」を認めることなどだ。ロシアはウクライナがドンバス(ドネツク、ルガンスク)、ザポリージャ、ヘルソンから軍隊を撤退させ、NATOがウクライナへの軍事支援をすべて中止することを要求している そこでトランプ政権はウクライナでの戦闘に見切りをつけたようだが、キア・スターマー英首相、フリードリヒ・メルツ独首相、エマニュエル・マクロン仏大統領、ウルズラ・フォン・デア・ライエン欧州委員会委員長たちはロシア敵視政策を続けている。そうせざるをえない事情があるのだろう。 EUは非民主的な寡頭制と呼べるシステム。民意は反映されにくく、寡頭制を支配するエリートと一般の人びとの対立が激しくなってきた。そこで言論統制が強化され、力づくで押さえ込もうとしている。 そのEUに支えられているウォロディミル・ゼレンスキーは8月10日、バシーリー・マリュークSBU長官やキリーロ・ブダノフ国防省情報総局長と会い、8月15日の米露首脳会談を妨害するための行動について話し合ったと伝えられている。できることはテロ攻撃くらいのように思えるのだが、米陸軍欧州アフリカのクリス・ドナヒュー司令官は7月16日、ドイツで開催されたアメリカ陸軍協会主催の会議において、カリーニングラードを「前代未聞の速さで、地上からこれを撃破する」ことができると述べている。トランプ大統領はイギリスのレーケンフィールドを含むヨーロッパの少なくとも6カ所にB61-12核爆弾を再配備した。 しかし、もしカリーニングラードが本当に攻撃された場合、ロシアは容赦せずに報復する可能性が高く、核兵器を使用する可能性があるとも主張している。リトアニア、ラトビア、エストニアは制圧されそうで、フィンランドとポーランドも非武装化と非ナチ化の対象となると見られている。 ここにきてロシア軍は原子力推進で核兵器を搭載できる巡航ミサイル9M730を複数試射する準備をしていると伝えられている。このミサイルは低高度で数カ月間飛行できると言われ、地球上全ての場所を攻撃でき、安全な場所はない。新たな世界大戦が始まったなら、第2次世界大戦までとは違い、アメリカだけは戦火を免れるということにならない。帝国主義国の行き詰まりを戦争で解決することはできない時代になっている。人類の死滅を目指すカルト的な人びともいるが、その人びとの信仰通りにことが運ぶとは言えない。カルト的な人びとは核戦争で死滅する道を選ぼうとしているが、支配層の内部でも支持する人は多くないだろう。 米露首脳会談の場所がアラスカに決まった理由のひとつは北極圏の利権が関係しているという見方もある。この海域は新たな航路として注目されているが、それだけでなく、石油や天然ガスの開発が考えられている。自然環境を悪化させる可能性があるものの、エネルギー資源を喉から手が出るほど欲しがっている人びとにとっては無視できない。すでに北極圏ではロシアとアメリカが鍔迫り合いを演じているが、両国が協定を締結して利権を分け合う可能性もある。**********************************************【Sakurai’s Substack】
2025.08.13
イスラエル軍は8月10日、ガザのジャーナリスト・キャンプを空爆して7名を殺害した。そのうち5名はアル・ジャジーラのジャーナリスト。そのひとり、アナス・アリ-シャリフはガザの人道危機について伝えていたことで知られ、イスラエル軍に狙われていた。殺害される直前、彼はイスラエル軍機による「容赦ない爆撃」について伝えていた。 現地の状況を世界に発信するジャーナリストは医療関係者と同じようにイスラエル軍の目標になっているが、パレスチナにおけるイスラエル軍の大量殺戮を擁護している西側の有力メディアはイスラエルの仲間。こうした仲間に守られたイスラエル軍は「テロリスト」というタグをつければ誰でも殺せると考えているようだ。 8月10日に開かれた国連の安全保障理事会でロシアのドミトリー・ポリャンスキー国連次席代表はイスラエルに対し、パレスチナ人をゲットーに閉じ込め、完全に絶滅させようとしていると非難したが、アメリカのドロシー・シェア国連臨時代理大使はイスラエルがジェノサイドを犯しているとする批判について「全くの虚偽」だと主張、イスラエルによる大量虐殺を「悲劇」だと表現、擁護した。 今年1月9日、医学雑誌「ランセット」は2023年10月7日から24年6月30日までの間にガザで外傷によって死亡した人数の推計値が6万4260人に達し、そのうち女性、18歳未満、65歳以上が59.1%だとする論文を発表した。ガザの保健省は同じ時期において戦争で死亡した人の数を3万7877人と報告、これでも衝撃的な数字だったのだが、それを大きく上回る。 しかし、「ハーバード大学学長およびフェロー」のウェブサイト「データバース」に掲載されたヤコブ・ガルブの報告書の内容はさらに凄まじいものだ。2023年10月7日にイスラエル軍とハマスの戦闘が始まる前には約222万7000人だったガザの人口が、ガルブによると、現在の推定人口は185万人。つまり37万7000人が行方不明だ。ガザは事実上の強制収容所であり、住民が逃走した可能性は小さい。つまり殺された可能性が高いと言える。 現在の状況を作り出す切っ掛けはイスラエル政府が意図的に作り出している。イスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相は2023年4月に警官隊をイスラムの聖地であるアル・アクサ・モスクへ突入させ、同年10月3日にはイスラエル軍に保護された832人のイスラエル人が同じモスクへ侵入してイスラム教徒を挑発した。ハマスなどの武装集団がイスラエルを陸海空から攻撃したのはその後、10月7日のことだ。 この攻撃では約1400名のイスラエル人が死亡したとされたが、その後、1200名に訂正される。イスラエルのハーレツ紙によると、イスラエル軍は侵入した武装グループを壊滅させるため、占拠された建物を人質もろとも砲撃、あるいは戦闘ヘリからの攻撃で破壊している。イスラエル軍は自国民の殺害を命令したというのだ。いわゆる「ハンニバル指令」である。2023年10月7日の攻撃が突然始まったわけではない。 その攻撃から間もなく、ネタニヤフ首相は「われわれの聖書(キリスト教における「旧約聖書」と重なる)」を持ち出し、パレスチナ人虐殺を正当化している。聖書の中でユダヤ人と敵だとされている「アマレク人があなたたちにしたことを思い出しなさい」(申命記25章17節から19節)という部分を彼は引用、「アマレク人」をイスラエルが敵視しているパレスチナ人に重ねたのである。 その記述の中で、「アマレク人」を家畜と一緒に殺した後、「イスラエルの民」は「天の下からアマレクの記憶を消し去る」ことを神は命じたというわけだ。「アマレク人」を皆殺しにするという宣言だが、このアマレク人をネタニヤフたちはアラブ人やペルシャ人と考えている可能性がある。 サムエル記上15章3節には「アマレクを討ち、アマレクに属するものは一切滅ぼし尽くせ。男も女も、子供も乳飲み子も牛も羊も、らくだもろばも打ち殺せ。容赦してはならない。」と書かれている。これこそがガザでイスラエルによって行われていることだと言えるだろう。ネタニヤフによると「われわれは光の民であり、彼らは闇の民」なのである。 ネタニヤフ政権はパレスチナ人だけでなく家畜も皆殺しにした上、彼らの存在を歴史から抹殺すると言っているのだが、神が旧約聖書を書いたわけではない。歴史書でもない。そこに書かれたことを裏付ける証拠はない。ユダヤ教徒、キリスト教徒、イスラム教徒が「聖典」にしているので、多くの人に受け入れられているだけである。 一般的に「近代シオニズムの創設者」とされている人物は1896年に『ユダヤ人国家』という本を出版したセオドール・ヘルツルだが、その前からシオニズムという考え方は存在した。海賊行為で富を蓄積していたエリザベス1世の時代(1593年から1603年)、イングランドに出現した「ブリティッシュ・イスラエル主義」が始まりだと考えられている。 その当時、イングランドの支配層の間で、アングロ-サクソン-ケルトは「イスラエルの失われた十支族」であり、自分たちこそがダビデ王の末裔だとする信じ、人類が死滅する最後の数日間にすべてを包括する大英帝国が世界を支配すると予言されているという妄想が広まっていた。 イギリスや西側世界にシオニズムを広めた人物としてブリティッシュ外国聖書協会の第3代会長を務めた反カトリック派のアントニー・アシュリー-クーパー(シャフツバリー伯爵)が知られているが、17世紀初頭にイギリス王として君臨したジェームズ1世も自分を「イスラエルの王」だと信じていたという。 その息子であるチャールズ1世はピューリタン革命で処刑されたが、その革命で中心的な役割を果たしたオリヴァー・クロムウェルをはじめとするピューリタンも「イスラエルの失われた十支族」話を信じていたとされている。クルムウェルはユダヤ人をイングランドへ入れることを許可したが、稼ぎ方を海賊行為から商取引へ切り替えるためだったとされている。ユダヤ人は商取引や金貸しに長けていた。 エリザベス1世が統治していた時代、イングランドはアイルランドを軍事侵略、先住民を追放し、イングランドやスコットランドから入植者をアイルランドのアルスター地方へ移住させた。好ましくないと判断した人びとを排除し、好ましいと考える人びとを移住させたわけだが、その後、そうした手法を彼らは繰り返す。 ピューリタン革命の時代にもアイルランドで先住民を虐殺している。クロムウェルは革命で仲間だったはずの水平派を弾圧した後にアイルランドへ軍事侵攻して住民を虐殺したのだ。 侵攻前の1641年には147万人だったアイルランドの人口は侵攻後の52年に62万人へ減少。50万人以上が殺され、残りは「年季奉公」や「召使い」、事実上の奴隷としてアメリカなどに売られたと言われている。 ダブリン出身でプリマス・ブレザレンを創設したジョン・ネルソン・ダービー牧師は1830年代から宗教活動を始めたが、彼はキリストの千年王国がすべての文明を一掃し、救われるのは選ばれた少数のグループだけだと考えていた。 世界の邪悪な力はエゼキエル書で特定されている「ゴグ」であり、そのゴグはロシアを指すと主張、ユダヤ人がイスラエルに戻って神殿を再建したときに終末を迎えるとしている。つまりキリストが再臨するということ。シオニストにとって対ロシア戦争とパレスチナ制圧は一体のことである。 19世紀のイギリス政界では反ロシアで有名なヘンリー・ジョン・テンプル(別名パーマストン子爵)が大きな影響力を持っていた。彼は戦時大臣、外務大臣、内務大臣を歴任した後、1855年2月から58年2月まで、そして59年6月から65年10月まで首相を務めている。ビクトリア女王にアヘン戦争を指示したのもパーマストン卿だ。 このように始まったシオニズムは19世紀に帝国主義と一体化し、パレスチナ侵略が具体化してくる。イギリス政府は1838年、エルサレムに領事館を建設し、その翌年にはスコットランド教会がパレスチナにおけるユダヤ教徒の状況を調査、イギリスの首相を務めていたベンジャミン・ディズレーリは1875年にスエズ運河運河を買収。そして1917年11月、アーサー・バルフォアがウォルター・ロスチャイルドへ書簡を出してイスラエル建国への道を切り開く。いわゆる「バルフォア宣言」だ。 ピューリタンはアメリカへも渡り、先住民である「アメリカ・インディアン」を大量虐殺し、ヨーロッパ系移民が入れ替わった。同じことを中東でも行おうとしている人がいるように思える。**********************************************【Sakurai’s Substack】
2025.08.12
ドナルド・トランプ米大統領とウラジミル・プーチン露大統領は8月15日にアラスカで会談すると発表された。この会談から交渉は始まるのであり、ここで結論が出ることはないだろうと見られている。すでに任期が切れているウォロディミル・ゼレンスキーの正当性をロシア政府は認めていない。ゼレンスキーが会議に参加する余地はないということだ。 恒久的で安定した平和を求めているロシアが示している戦闘を終結させる条件は、ウクライナの非軍事化と非ナチ化、西側諸国が凍結したロシア資産の返還、ウクライナの中立維持、そして領土の「現実」を認めること。ロシアはウクライナがドンバス(ドネツク、ルガンスク)、ザポリージャ、ヘルソンから軍隊を撤退させ、NATOがウクライナへの軍事支援をすべて中止することを要求している。この要求が認められなければ、ロシアは軍事力でドニエプル川東部の全地域を統合することになるだろう。 トランプ大統領はプーチン大統領に対し、50日以内に停戦に応じなければロシアからの輸入品に100%の関税を課すとともに、ロシアとの取り引きを継続する国や企業に対し、二次的な制裁を課すと脅していたのだが、7月28日、期限を50日ではなく10日から12日後に短縮すると発表していた。 強気のように感じた人もいるようだが、ロシアの攻勢が強まり、ウクライナ軍はロシア軍と接触している場所全てで深刻な状況に陥っているからだと考える人が少なくない。50日も待てないということだ。 2014年2月にアメリカのバラク・オバマ政権はネオ・ナチを使ったクーデターでビクトル・ヤヌコビッチ政権を倒したが、ヤヌコビッチの支持基盤だった東部や南部の住民はクーデター政権を拒否、南部のクリミアでは住民がロシアとの一体化を選び、東部のドンバスでは武装闘争が開始された。軍や治安機関のメンバーのうち約7割がクーデター政権を拒否して離脱、その一部はドンバスの反クーデター軍に合流したと言われている。 劣勢になったクーデター軍の戦力を増強するための時間を稼がねばならなくなった。ドイツやフランスが仲介する形で停戦合意が成立する。2014年の「ミンスク1」と15年の「ミンスク2」だ。この停戦がクーデター政権の戦力を増強する時間稼ぎにすぎなかったことを、のちにアンゲラ・メルケル元独首相やフランソワ・オランド元仏大統領が認めている。 アメリカ/NATOは8年かけ、兵器の供与や兵士の育成だけでなく、マリウポリ、マリーインカ、アブディフカ、ソレダルの地下要塞を結ぶ要塞線をドンバスに築いた。ロシア軍を挑発し、この要塞線の内側へ誘い込む計画だったようだが、その前にロシア軍がウクライナに対する攻撃を開始、ウクライナ/NATOは劣勢になった。その後、ウクライナ/NATOの置かれた状況は悪化し続けている。 8月2日にイギリス陸軍のエドワード・ブレイク大佐とリチャード・キャロル中佐、そしてイギリスの対外情報機関MI-6の工作員ひとりがオデッサに近いオチャコフでロシアのスペツナズ(特殊部隊)に拘束され、8月9日にロシア軍はキエフとオデッサにあるウクライナ軍とNATO軍の軍事施設を攻撃した。 8月9日の攻撃で特に注目されたのはオデッサ。石油貯蔵石油がドローンで攻撃されて大火災が発生、「レクリエーションセンター」はドローンのほか短距離弾道ミサイルのイスカンデルMで攻撃された。ここには西側諸国が供給したミサイルが保管されていて、それらが大爆発、キノコ雲が目撃された。また、そのセンターにいた数十人のイギリス軍将兵が死傷、ヘリコプターで運ばれる様子が目撃されている。このところイギリス軍やフランス軍の将兵が死傷したとする話をよく聞くようになった。 米陸軍欧州アフリカのクリス・ドナヒュー司令官は7月16日、ドイツで開催されたアメリカ陸軍協会主催の会議において、ロシアの飛地であるカリーニングラードを前代未聞の速さで、地上からこれを撃破することができると述べた。この人物は7月30日、第1回ランドユーロ会議において、NATOの東部側面防衛に関する新たなドクトリンを発表、ロシアとの全面戦争が発生した場合にNATOがカリーニングラードを攻撃する計画について語っている。 ロシアの領土であるカリーニングラードを攻撃するという意味を米陸軍欧州アフリカの司令官は理解できていないのか、あるいは正気でないのか。 そのドナヒューはイラクとアフガニスタンにおける軍事作戦に参加、アメリカ軍がカブールから不様な撤退をした時、米陸軍第82空挺師団の司令官を務めていた。ウクライナでは第18空挺軍団司令官としてウクライナ空軍への武器、情報、訓練の供給を担当している。**********************************************【Sakurai’s Substack】
2025.08.11

ウクライナにおける戦争でロシアが勝利するのは決定的だ。アメリカのバラク・オバマ政権が仕掛けた2013年11月から14年2月にかけてのクーデターで始まった戦争だが、返り討ちにあったわけだ。 しかし、イギリスは最後の抵抗を試みている。8月2日にはイギリス陸軍のエドワード・ブレイク大佐とリチャード・キャロル中佐、そしてイギリスの対外情報機関MI-6の工作員ひとりがオデッサに近いオチャコフでロシアのスペツナズ(特殊部隊)に拘束されたが、それに対してイギリス軍はヘルソンやニコラエフに部隊を送り込んだと言われている。その部隊にはラテン・アメリカの傭兵も含まれているようだ。 ドナルド・トランプ米大統領は自分が「和平交渉」を主導しているかのような演出をしているが、ロシア政府の要求は一貫している。軍事作戦でウクライナの非軍事化と非ナチ化を実現し、西側諸国が凍結したロシアの資産を返還させ、ウクライナに対しては中立の立場の維持と領土の「現実」を認めさせることだ。この目的が達成されない限り、ロシア軍は停戦に応じないだろう。 そうした中、アルメニアのニコル・パシニャン首相とアゼルバイジャンのイルハム・アリエフ大統領は8月8日にワシントンで会談、両国はアメリカの影響下に入ったようだ。 両国はナゴルノ・カラバフと呼ばれる地域を巡り対立してきた。この地域における多数派のアルメニア人は1988年2月から94年5月にかけての軍事衝突後、アルツァフ共和国(ナゴルノ・カラバフ共和国)という看板を掲げ、統治する。 アルメニアでは2018年5月からパシニャンが首相を務め始めると、ロシアの影響力が低下。2020年9月にアゼルバイジャン軍はナゴルノ・カラバフとその周辺地域を攻撃し、第2次ナゴルノ・カラバフ戦争が勃発する。2020年11月にアゼルバイジャン、アルメニア、ロシアの3か国間で停戦協定が締結され、戦争は終結するのだが、ナゴルノ・カラバフ周辺の大半はアゼルバイジャンに支配されることになった。 そのアゼルバイジャンは2023年9月、ナゴルノ・カラバフにおいて新たな大規模な軍事攻撃を開始、アルツァフは解体され、アルメニア人の大半は脱出。アルメニア人はナゴルノ・カラバフに1000年の間生活していたのだが、その歴史に終止符がうたれた。 こうした状況を作り出したアルメニアのパシニャン首相は今年6月、エレバン国立大学で学生に対し、祖国の一部を失ったが、国家を獲得したと発言した。祖国の一部を失う以前、アルメニアは国家でなかったということになるが、パシニャン首相の時代にアルメニアは主権を奪われ続け、ロシアから離れ始めている。パシニャンはウォロディミル・ゼレンスキーの後を追っているようだ。 ロシアが設立したユーラシアにおける軍事同盟、CSTO(集団安全保障条約)からアルメニアは2026年初頭までに脱退する計画だと報じられている。この合意が成立すれば、西側はアルメニアとアゼルバイジャンをNATOに加盟させると秘密裏に約束したとも報じられている。しかもアメリカ軍がアルメニアに展開する予定だというのだ。 そのアルメニアは8月12日から20日までの期間、アメリカと合同軍事演習「イーグル・パートナー2025」を8月12日から20日までアルメニアで実施する。 アメリカの国防総省系シンクタンク「RANDコーポレーション」が2019年に発表した報告書には、拡大しるロシアを抑え込むため、ウクライナの武装を強化、シリアのジハード傭兵への支援を強化、ベラルーシの体制を転覆、そしてアルメニアとアゼルバイジャンの緊張を煽り、トランスニストリアを孤立化させるとしている。ベラルーシの体制転覆は失敗したが、他は実現しつつある。**********************************************【Sakurai’s Substack】
2025.08.10

ジョージ・W・ブッシュ米政権が2003年3月にイラクを先制攻撃してサダム・フセイン体制を破壊した後、アメリカ軍の上層部は軍事ビジネスと結びついた軍人が幅を利かせるようになり、ヨーロッパではアメリカに従属する政治家の支配力が強まった。そして2014年2月、バラク・オバマ米政権はキエフでクーデターを成功させる。このクーデターを指揮したのはネオコンだが、政権における統括責任者と言われている人物はジョー・バイデン副大統領にほかならない。 現在、ヨーロッパでネオコンの政策を推進しているのはシオニストのキア・スターマー英首相、巨大金融機関ブラックロックで監査役を務めていたフリードリヒ・メルツ独首相、そしてロスチャイルド銀行出身のエマニュエル・マクロン仏大統領だ。ブラックロックは「闇の銀行」のひとつ。「闇の銀行」とは銀行のような規制は受けない巨大金融機関であり、メディアやシリコンバレーのハイテク企業を含むアメリカの主要500社の9割近くを支配、ウクライナにも利権を持っている。 いずれの政治家とも国内で批判の声が高まっているが、特にマクロン。彼のパートナーに関する疑惑が特に注目されている。そうした中、8週間の間にマクロンを批判していた著名な3名が変死したのだ。 そのひとりが共和党の議員だったオリビエ・マルレ。鉄道関連企業であるアルストムに関する疑惑などを追及していた。2014年にアルストムの電力送電部門がゼネラル・エレクトリックへ売却されたが、この取り引きにマクロンが関与、それはマクロンの秘密選挙資金に関係していたというのだ。 もうひとりは整形外科医のフランソワ・ファーブル。ジャーナリストのキャンディス・オーウェンズによると、マクロンのパートナーであるブリジットの整形手術をしたのはパトリック・ビュイだという。 ブリジットはパリのアメリカン病院で性別適合手術を受けたと主張していたパリ在住のフランソワ・フェーブル医師は6月29日、4階の窓から転落して死亡している。パリの検視官事務所によると、フェーブルの死因は自殺だが、彼の家族によると、フェーブはマイアミでの休暇を計画していた。 また、マクロンの政策を批判していたフランス軍情報部の元分析官、エリック・ドゥネセが6月9日に死亡した。2000年にはシンクタンク、CF2R(フランス情報研究センター)を設立していた。経済的な理由による自殺とされているが、家族や友人は強く疑っている。自殺するほど苦しい状況ではなかったというのだ。 ドゥネセが所属していたのがアングロ・サクソン系国の情報機関ではなかったということもあり、アメリカやイギリスを舞台とした出来事に関し、アングロ・サクソンの公式見解を否定する分析を公表していた。 ウクライナ大統領を名乗っているウォロディミル・ゼレンスキーはイギリスの対外情報機関であるMI6のエージェントで、そのハンドラー(エージェントを管理する担当オフィサー)はリチャード・ムーアMI6長官だと推測しているスコット・リッターが製作したドキュメンタリーにもドゥネセは登場している。リッターはアメリカ海兵隊の元情報将校でUNSCOM(国連大量破壊兵器廃棄特別委員会)の主任査察官を務めた人物だ。 ドゥネセは生前、ウクライナを舞台とした戦争についても発言している。ウクライナの内戦を引き起こし、ロシア軍の介入を誘発したのはアメリカのバラク・オバマ政権だが、ドゥネセはアメリカ政府を現実主義者だと主張、戦争にのめり込んでいるヨーロッパを見捨てると見通していた。そのアメリカを離脱させないように、戦乱を拡大させるように動いているのがイギリスの情報機関だ。イギリスの情報機関はアメリカの情報機関と連携し、アゼルバイジャンとアルメニアを新たなウクライナにしようと目論んでいる。**********************************************【Sakurai’s Substack】
2025.08.09

アメリカのスティーブ・ウィトコフ中東担当特使は8月6日にモスクワでロシアのウラジミル・プーチン大統領と会談した。クレムリンのユーリ・ウシャコフ補佐官は、プーチン大統領とドナルド・トランプ米大統領が近日中に会談するとしている。プーチン大統領は会談に適した候補地としてアラブ首長国連邦を挙げた。 プーチンとウィトコフはウクライナにおける戦闘のほか、ロシアと米国の間で戦略的パートナーシップを構築する見通しについても話し合われたとされているが、先日、ロシアのスペツナズ(特殊部隊)がオデッサに近いオチャコフにあるウクライナ軍の司令部で拘束したイギリス陸軍のエドワード・ブレイク大佐とリチャード・キャロル中佐、そしてMI-6の工作員ひとりの解放について交渉したとも推測されている。ウィトコフのロシア訪問は当初、この拘束が伝えられた8月2日に予定されていたが、延期された。 ロシア政府は軍事作戦でウクライナの非軍事化と非ナチ化を実現し、西側諸国が凍結したロシアの資産を返還させ、ウクライナに対しては中立の立場の維持と領土の「現実」を認めさせようとしている。この目的が達成されない限り、ロシア軍は停戦に応じないはずだ。 ウクライナの防衛線は2、3カ月で完全に崩壊するという見方も出てきた。トランプ大統領が7月28日に停戦合意の期限を50日ではなく10日から12日後に短縮すると発表した理由もそこにあるというのだ。この分析が正確かどうかは不明だが、ウクライナでの戦闘でNATOがロシアに負けていることは間違いない。ロシアが首脳会談に同意したということは、アメリカが現実をある程度受け入れたということなのかもしれない。 イギリスのジョン・ヒーリー国防大臣の戦略顧問に就任したマルコム・チャーマース元RUSI(王立防衛安全保障研究所)副所長は2022年5月、ウクライナによるクリミア半島奪取をめぐるロシアとの「ステロイド入りキューバミサイル危機」こそがロシアを屈服させる最善の選択肢かもしれないと提言、今年3月にはエコノミスト誌のシャシャンク・ジョシに対し、イギリスが潜水艦からロシアを核攻撃することに何ら問題はないと述べたことで知られている。実際、イギリスの特殊部隊や情報機関はクリミアに対するテロ攻撃を目論んできたが、成功していない。 ここにきて注目されているのはロシアの飛地であるカリーニングラード。米陸軍欧州アフリカのクリス・ドナヒュー司令官は7月16日、ドイツで開催されたアメリカ陸軍協会主催の会議において、カリーニングラードを「前代未聞の速さで、地上からこれを撃破する」ことができると述べたが、勿論、NATOに加盟するヨーロッパの軍隊にそうした能力はない。トランプ米大統領はイギリスのレーケンフィールドを含むヨーロッパの少なくとも6カ所にB61-12核爆弾を再配備した。 もし、カリーニングラードが本当に攻撃された場合、ロシアは容赦せずに報復する可能性が高く、核兵器を使用する可能性があるとも主張している。リトアニア、ラトビア、エストニアは制圧されそうで、フィンランドとポーランドも非武装化と非ナチ化の対象となると見られている。 アメリカは2019年8月2日にINF(中距離核戦力)条約から脱退しているが、ロシアは今年8月4日に条約を遵守しないと発表。今後、ロシア領内だけでなく、ラテン・アメリカや東アジアの親ロシア国に中距離ミサイルを配備することもありえる。日本ではすでに2016年に与那国島でミサイル発射施設を建設、19年には奄美大島と宮古島、そして23年には石垣島でも施設を完成させているが、これはアメリカ国防総省の戦略に基づくもので、中国やロシアをターゲットにしているはずだ。**********************************************【Sakurai’s Substack】
2025.08.08

イギリスのRUSI(王立防衛安全保障研究所)で副所長を務めていたマルコム・チャーマースが8月からジョン・ヒーリー国防大臣の戦略顧問を務めている。この人物は2022年5月、ウクライナによるクリミア半島奪取をめぐるロシアとの「ステロイド入りキューバミサイル危機」こそがロシアを屈服させる最善の選択肢かもしれないと提言、今年3月にはエコノミスト誌のシャシャンク・ジョシに対し、イギリスが潜水艦からロシアを核攻撃することに何ら問題はないと述べたことで知られている。小型核兵器を1発撃ち込めばロシアは縮み上がり、屈服するというのだ。 正気とは思えない人物を国防大臣の戦略顧問に就任させる政府を持つ国が正気だとは思えないが、その国はかつて海賊行為で富を築き、イスラエルやサウジアラビアを作り上げて中東支配を目論み、軍事力で中国(清)をアヘン漬けにし、明治維新で日本の体制を転覆させ、明治体制に朝鮮半島から中国にかけての地域を侵略、略奪させている。イギリスと同じようにピューリタンの影響を強く受けているアメリカでは先住民が虐殺された。民族浄化だ。同じようなことをイスラエルが行っている。 イギリスは19世紀にロシアを侵略する戦略をたて、「グレート・ゲーム」を始めた。その戦略で中心的な役割を果たした政治家はホイッグ党(後の自由党)を率いていたヘンリー・ジョン・テンプル(別名パーマストン子爵)。ビクトリア女王にアヘン戦争を指示したのもこの人物である。つまりロシアと中国に戦争を仕掛けたわけだ。 現在、イギリスではグレート・ゲームを再び始めている。その事実をアンドリュー王子も隠していない。この問題で2008年にキルギスタン駐在のアメリカ大使だったタチアナ・グフォーラーから抗議された王子は再びグレートゲームの真っ只中にいると応じ、「今度こそ我々は勝利を目指す」と言ったという。ちなみに、アンドリュー王子は国際的な兵器取引に深く関係してきた人物で、ジェフリー・エプスタインの友人でもある。 1970年代にイスラエル軍の情報機関ERD(対外関係局)に所属、87年から89年にかけてイツァク・シャミール首相の特別情報顧問を務めたアリ・ベンメナシェによると、エプスタイン、ギレイン・マクスウェル、彼女の父親でミラー・グループを率いていたロバート・マクスウェルはいずれもイスラエル軍の情報機関、つまりアマンのために働いていた。ロバートは1960年代から、エプスタインとギレインは1980年代の後半からその情報機関に所属してたとベンメナシェは語っている。エプスタインとギレインが知り合ったのもその頃で、ロバートと同じように「イラン・コントラ事件」に関係していた可能性もある。(Zev Shalev, “Blackmailing America,” Narativ, Septemner 26, 2019) 証券業の世界にいたエプスタインをロバートに紹介したのはイギリスの「防衛請負業者」のダグラス・リースだと伝えられている。この人物は1980年代の半ば、エプスタインのスポンサーのひとりだった。エプスタインは未成年の男女を利用して世界の要人を罠にかけ、操る仕事をしていたが、それだけでなく武器取引や生体実験にも関係していた可能性が高い。 イスラエルの電子情報機関である8200部隊はアメリカのNSAやイギリスのGCHQと連携し、世界規模で通信を傍受し、記録している。この部隊は少なからぬ「民間企業」を創設し、そのネットワークを広げてきたが、これも世界を支配する仕組みの一部だ。 グレート・ゲームでの勝利を目指すイギリスの支配層やアメリカの仲間はアメリカやヨーロッパの国々がロシアと友好的な関係を結ぶことを容認できない。ジョージ・W・ブッシュにしろ、バラク・オバマにしろ、ヒラリー・クリントンにしろ、ジョー・バイデンにしろ、ロシアとの戦争へ突き進んでいたが、トランプはロシアとの関係修復を掲げて支持を拡大してきた。 大統領選挙を翌年に控えた2015年当時、次期大統領はヒラリー・クリントンで内定したと言われていたが、2016年2月にヘンリー・キッシンジャーがロシアを訪問、ウラジミル・プーチン露大統領と会談したところから風向きが変わった。その後、民主党ではバーニー・サンダースが支持者を集め、共和党ではドナルド・トランプが台頭してくる。 3月にWikiLeaksが公表したヒラリーの電子メールは、そうした流れを勢いづかせた。その中にはバーニー・サンダースが同党の大統領候補になることを妨害するよう民主党の幹部に求めるものがあり、サンダースの支持者を怒らせることになった。民主党幹部たちが2015年5月の時点でヒラリー・クリントンを候補者にすると決めていたことを示唆する電子メールもあった。 WikiLeaksのジュリアン・アサンジは6月12日、ヒラリー・クリントンのメールを保有しており、公開する予定であると発表。6月14日にクラウドストライクはDNC(民主党全国委員会)のサーバーへ「侵入」があったと発表、6月中旬にジョン・ブレナンCIA長官はイギリスの電子情報機関GCHQのロバート・ハニガン長官と会談した。 クラウドストライクはIISS(国際戦略研究所)のデータを分析に利用しているが、そのIISSはクラウドストライクによるデータの使い方が誤っていると主張、IISSとクラウドストライクの報告書との関係を否定し、クラウドストライクはIISSに接触していないともしている。 それに対し、IBMのプログラム・マネージャーだったスキップ・フォルデンは転送速度など技術的な分析からインターネットを通じたハッキングではないという結論に達している。DNCの内部でダウンロードされて外へ持ち出されたというわけだ。本当にハッキングされたのなら、その証拠をNSAは握っているとウィリアム・ビニーも指摘している。ビニーは情報機関で通信傍受システムの開発を主導し、NSA史上最高の数学者にひとりと言われている人物だ。 電子メールをWikiLeaksへ渡したのはDNCのコンピュータ担当スタッフだったセス・リッチだと推測する人は少なくない。その漏洩した電子メールをロシア政府がハッキングしたとする偽情報を流したのはブレナンCIA長官だと言われている。そのリッチは2万件近い電子メールが公表される12日前に射殺体として発見された。 リッチの両親が雇った元殺人課刑事の私立探偵リッチ・ウィーラーはセスがWikiLeaksと連絡を取り合っていたとしている。DNC幹部の間で2015年1月から16年5月までの期間に遣り取りされた4万4053通の電子メールと1万7761通の添付ファイルがセスからWikiLeaksへ渡されているという結論に達したという。 2001年から2012年までFBI長官を務めたロバート・ミューラーの部下で、サイバー犯罪捜査部門の責任者を務めていたショーン・ヘンリーは下院情報委員会でDNCに関するデータがDNCから流出したことを示す証拠はないと発言している。ヘンリーはFBIを2012年に退職し、クラウドストライクの上級職に就いていた。 そして現れるのが「スティール文書」。これは「元MI6」のクリストファー・スティールが作成したもので、スティールは2016年9月22日にワシントンDCで複数の記者と会談、トランプとロシアに関する文書を流布。この文書を根拠にしてアメリカのアダム・シッフ下院議員は2017年3月、下院情報委員会で前年の大統領選挙にロシアが介入したとする声明を出した。 同年5月にロバート・マラーが特別検察官に任命されるが、マラーは2019年に捜査を終結させ、疑惑は事実無根だったとする報告書をウィリアム・バー司法長官へ提出している。 スティールはソ連が消滅する直前の1990年から93年までMI6オフィサーとしてモスクワで活動していたが、彼は長期にわたるFBIの情報提供者だったとも言われている。そのスティールを雇ったのはフュージョンGPSなる会社。そのフュージョンを雇ったマーク・エリアスなる人物はヒラリー・クリントン陣営や民主党全国委員会の顧問弁護士だ。 フュージョンを創設したひとりであるグレン・シンプソンによると、同社は2016年秋にネリー・オーなる人物にドナルド・トランプの調査と分析を依頼している。その夫であるブルース・オーは司法省の幹部で、このオーとシンプソンは2016年11月に会っていた。その直後にブルースは司法省のポストを失い、フュージョンはスティールに調査を依頼することになる。そのスティールの調査結果は根拠薄弱で、信頼できる代物ではなかった。 そうした工作の甲斐なく、11月8日の選挙でトランプが勝利。結果として工作の痕跡を消す余裕がなくなり、証拠になる文書が残された。その文書を今回、トゥルシ・ギャバード国防情報長官が公表、民主党だけでなくCIAやFBI、そしてイギリスの情報機関が関係した大規模な違法工作が明るみに出てきた。トランプのスキャンダルを隠すためだとも言われているが、こうした権力犯罪が明るみに出るのは権力層の内部で抗争が勃発したときだ。 こうした中、イギリスの支配層はロシアを倒すために中央アジアを狙っている。その前段階としてアゼルバイジャンとアルメニアの対立を煽り、ロシアを追い出しにかかっている。アゼルバイジャンはトルコと連携を強め、アルメニアにはアメリカの傭兵会社が入り込もうとしている。ロシアだけでなく、中国やイランも何らかの対応をするだろう。**********************************************【Sakurai’s Substack】
2025.08.07
ロシアのスペツナズ(特殊部隊)がオデッサに近いオチャコフでイギリス陸軍のエドワード・ブレイク大佐とリチャード・キャロル中佐、そしてMI-6の工作員ひとりを拘束したと8月2日に報道された。この3名は軍事に関する秘密文書と外交パスポートを所持していたとロシア側は発表しているのだが、ロシアとイギリスは建前上、戦争していないので、捕虜ではなくテロリストということになる。8月2日にアメリカのスティーブ・ウィトコフ中東担当特使はモスクワを訪れる予定だったが、延期になった。 アメリカ海兵隊の元情報将校でUNSCOM(国連大量破壊兵器廃棄特別委員会)の主任査察官を務めたスコット・リッターのドキュメンタリーによると、ウクライナ大統領を名乗っているウォロディミル・ゼレンスキーはイギリスの対外情報機関であるMI6のエージェントであり、そのハンドラー(エージェントを管理する担当オフィサー)はリチャード・ムーアMI6長官だと推測されている。そのムーアが今年10月1日に退任し、ブレーズ・メトレベリへ引き継がれる。 スペツナズの部隊は複数の船舶を使って上陸し、ウクライナ軍の司令部を制圧したとされている。その場所でイギリスの軍人や情報機関員はロシアの軍人や民間人に対するイギリスのミサイルやドローンによる攻撃を調整していたと見られている。 当初、イギリス国防省はブレイク大佐とキャロル中佐はロンドンにいると主張していたが、ロシア当局が提出した写真と法医学的証拠によってふたりが軍服を着用し、ウクライナの戦闘地帯で活動していたことが明らかになってしまう。次に、拘束された3名を「旅行者」だと主張している。 イギリスとフランスが共同開発、ウクライナの戦場で使用されている長距離空中発射型巡航ミサイルのストーム・シャドウにしろ、ドローンにしろ、オペレーターが必要であるだけでなく、地上や衛星からの情報が必要。こうした兵器をNATO諸国がウクライナへ供給し始めた段階から事実上、ウクライナの戦闘はNATO対ロシアになっていたので、今回の出来事は驚きでない。 そもそも、2014年2月にネオ・ナチを主力とするクーデターでビクトル・ヤヌコビッチ政権を倒したアメリカのバラク・オバマ政権は、すぐにクーデター派を支援するためにCIAやFBIの専門家数十名を顧問として送り込み、傭兵会社の「アカデミ(旧社名:ブラックウォーター、Xe、2014年6月にトリプル・キャノピーと合併してコンステリス・グループ)」の戦闘員約400名をウクライナ東部での戦闘に参加させている。 8月3日にロシア軍はドローンでスリビアンスクのホテル・スリビアンスクを攻撃したのだが、このホテルではSBU(ウクライナ保安庁)の将校がイギリス、フランス、アメリカの軍事顧問団と会議をしていて、50人以上の将校が死亡したという。 このところNATOはロシアに対する挑発を激化させているが、それに対してロシア軍はNATOがウクライナへ送り込んできた軍人や情報機関員も攻撃するようになってきた。 また、ロシア外務省は中距離核戦力(INF)全廃条約に「もはや拘束されない」とする声明を出し、NATOがロシアを攻撃するなら受けて立つという姿勢を鮮明にしている。**********************************************【Sakurai’s Substack】
2025.08.06
アメリカ軍がウラン型原子爆弾「リトル・ボーイ」を広島へ、プルトニウム型原爆「ファット・マン」を長崎へ投下してから今年で80年になる。広島へは8月6日、長崎へは8月9日。広島では9万人から16万6000年が、長崎では6万人から8万人がそれぞれ殺されたとされているが、核分裂反応を利用するという性格上、人びとのDNAが傷つけられ、障害苦しんだ人も少なくない。 広島と長崎への原爆投下を許可したのは大統領に就任してまもないハリー・トルーマンである。アメリカ、イギリス、中国が「ポツダム宣言」を発表する2日前、7月24日のことだ。日本が「ポツダム宣言」にどう反応するかを見ずにトルーマンは原爆投下による市民虐殺を決めた。 原爆の開発プロジェクトは「マンハッタン計画」と名付けられていたが、主導した国はアメリカでなくイギリスだった。1940年2月にバーミンガム大学のオットー・フリッシュとルドルフ・パイエルスのアイデアに基づいてプロジェクトが始まり、MAUD委員会なるものが設立されている。 1943年には核兵器用のウランとプルトニウムを製造するため、テネシー州オーク・リッジに4施設が建設され、そのひとつはオーク・リッジ国立研究所へと発展した。ワシントン州に建設されたハンフォード・サイトではプルトニウムを製造するため、1944年9月にB原子炉が作られている。 この「マンハッタン計画」を統括していたアメリカ陸軍のレスニー・グルーブス少将(当時)は1944年、同計画に参加していたポーランドの物理学者ジョセフ・ロートブラットに対し、その計画は最初からソ連との対決が意図されていると語ったという。原爆を開発する目的がソ連である以上、「ポツダム宣言」に対して日本がどのように反応するかは意味がなかったわけだ。(Daniel Ellsberg, “The Doomsday Machine,” Bloomsbury, 2017) ナチスに支配されたドイツは1941年6月にウクライナとベラルーシへ軍事侵攻、ソ連との戦争を始めた。「バルバロッサ作戦」だ。1941年7月にドイツ軍はレニングラードを包囲し、9月にはモスクワまで80キロメートルの地点に到達した。 それを見てアドルフ・ヒトラーはソ連軍が敗北すると確信、再び立ち上がることはないと10月3日にベルリンで語っている。またウィンストン・チャーチル英首相の軍事首席補佐官だったヘイスティングス・イスメイは3週間以内にモスクワは陥落すると推測しながら傍観していた。(Susan Butler, “Roosevelt And Stalin,” Alfred A. Knopf, 2015) しかし、ソ連軍の抵抗でこうした予想通りにことは進まない。ドイツ軍は1942年8月にスターリングラード市内へ突入するが、ここでソ連軍に敗北、1943年1月に降伏した。この段階でドイツの敗北は決定的。それを見てイギリスは慌てた。 イギリスのウィンストン・チャーチル首相は1943年1月、アメリカのフランクリン・ルーズベルト大統領やフランスのシャルル・ド・ゴールとカサブランカで会談している。「無条件降伏」という話が出てくるのはこの会談だった。この条件はドイツの降伏を遅らせることが目的だったとも言われている。米英はソ連対策を講じるための時間的な余裕が必要だった。 1943年7月にアメリカ軍とイギリス軍は犯罪組織の協力を得てシチリア島へ上陸、その一方、ナチスの幹部はOSSの幹部だったアレン・ダレスと接触し始める。「サンライズ作戦」だ。 その後アメリカの軍や情報機関はナチスの幹部や協力者を逃走させ、保護、そして雇用する。「ラットライン」、「ブラッドストーン作戦」、「ペーパークリップ作戦」などだ。こうした工作でナチスの幹部や協力者はアメリカの保護下に入り、工作にも参加することになる。 1945年4月にルーズベルト大統領が急死、その翌月にドイツは降伏。その直後にチャーチル首相はソ連に対する奇襲攻撃を計画、アンシンカブル作戦が作成された。7月1日にアメリカ軍64師団、イギリス連邦軍35師団、ポーランド軍4師団、そしてドイツ軍10師団で「第3次世界大戦」を始めるというものだが、イギリスの参謀本部がこの計画を拒否したので実行されていない。 1945年7月26日に退陣したチャーチルは大戦後の46年3月にアメリカのフルトンで「鉄のカーテン演説」を行い、「冷戦」の幕開けを宣言。FBIの文書によると、チャーチルは1947年にアメリカのスタイルズ・ブリッジス上院議員に対し、ソ連を核攻撃するようハリー・トルーマン大統領を説得してほしいと求めている。(Daniel Bates, “Winston Churchill’s ‘bid to nuke Russia’ to win Cold War - uncovered in secret FBI files,” Daily Mail, 8 November 2014) 大戦中、ウクライナでナチスやイギリスの対外情報機関MI-6と連携していたOUN-B(ステパン・バンデラの信奉者たち)は1943年春にUPA(ウクライナ反乱軍)として活動し始め、その年の11月には「反ボルシェビキ戦線」を設立した。(Grzegorz Rossolinski-Liebe, “Stepan Bandera,” ibidem-Verlag, 2014) 第2次世界大戦後の1946年4月に反ボルシェビキ戦線はABN(反ボルシェビキ国家連合)へと発展し、66年にはAPACL(アジア人民反共連盟、後にアジア太平洋反共連盟に改名)と合流してWACL(世界反共連盟。91年にWLFD/世界自由民主主義連盟へ名称変更)の母体になる。(Scott Anderson & Jon Lee Anderson, “Inside the League”, Dodd, Mead & Company, 1986) 戦争が終わった直後、MI6は反ソ連組織の勢力拡大を図り、1947年7月にインテルマリウムとABNを連合させ、9月にはプロメテウス同盟も合流させた。翌年の後半、新装ABNはバンデラの側近だったヤロスラフ・ステツコを中心に活動を開始。ステツコと同じようにバンデラの側近だったミコラ・レベドはアメリカのアレン・ダレスの配下に入る。 ステツコの人脈は後にKUN(ウクライナ・ナショナリスト会議)を創設、1986年に彼が死亡すると妻のスラワ・ステツコが引き継ぎ、2003年に死ぬまで率いることになる。 KUNの指導者グループに所属していたひとりにワシル・イワニシンなるドロボビチ教育大学の教授がいたが、その教え子のひとりであるドミトロ・ヤロシュはイワニシンが2007年に死亡すると後継者になる。このタイミングでヤロシュはNATOの秘密部隊ネットワークに参加したと言われている。 1941年6月のバルバロッサ作戦から現在に至るまでナチズム信奉者の対ロシア戦争は続いているのだが、その背後にはイギリスやアメリカの支配層が存在している。 イギリスが対ロシア戦争を始めたのは19世紀のこと。同じ頃、イギリスは対中国戦争も行った。アヘン戦争と第2次アヘン戦争(アロー戦争)だが、内陸部を制圧することはできなかった。戦力が圧倒的に足りなかったからだ。その後、イギリスは日本で体制転覆に成功、日本は朝鮮半島から中国を侵略、略奪を始めている。 原爆投下や焼夷弾による絨毯爆撃を指揮したアメリカ軍のカーティス・ルメイは1948年からSAC(戦略空軍総司令部)の司令官に就任、1954年にはソ連を破壊するために600から750発の核爆弾を投下し、118都市に住む住民の80%、つまり約6000万人を殺すという計画を作成、57年に作成された「ドロップショット作戦」では300発の核爆弾をソ連の100都市に落とすることになっていた。(Oliver Stone & Peter Kuznick, “The Untold History of the United States,” Gallery Books, 2012) 沖縄では1950年代に「銃剣とブルドーザー」で土地が強制接収されて軍事基地化が推し進められた。1953年4月に公布/施行された布令109号「土地収用令」に基づき、武装米兵が動員された暴力的な土地接収で、55年の段階で沖縄本島の面積の約13%が軍用地になっているのだが、これはアメリカの核戦略と無関係ではないだろう。 その頃、アメリカではICBMの準備が進み、統合参謀本部議長だったライマン・レムニッツァーや空軍参謀長だったルメイたちは1963年後半までにソ連を先制核攻撃するという計画をたてた。まだソ連がICBMの準備ができていない時点で攻撃したかったのだ。その作戦の障害になっていたジョン・F・ケネディ大統領は1963年11月22日にテキサス州ダラスで暗殺されている。この暗殺の責任をソ連になすりつける動きもあったが、成功しなかった。**********************************************【Sakurai’s Substack】
2025.08.05

中谷元防衛大臣はイギリスのジョン・ヒーリー国防大臣やイタリアのグイド・クロゼット国防大臣とオンライン会議を開き、次世代戦闘機プロジェクトのGCAP(グローバル戦闘航空計画)において機体設計や開発を担当するエッジウィングの設立を歓迎すると表明。エッジウィングの設立は今年6月20日に発表された。石破茂首相も「日英伊の防衛協力の中核であるGCAPを力強く推進していく」と発言している。 GCAPはイギリス、イタリア、日本3カ国のプロジェクトで、本社はイギリスに置かれ、エッジウィングはイギリスのBAEシステムズ、イタリアのレオナルド、そして日本の日本航空機産業振興(JAIEC)のジョイントベンチャー。3カ国はそれぞれ国内に拠点と共同チームを設けるという。なお、JAIECは日本航空宇宙工業会と三菱重工業が共同出資で設立した会社で、昨年7月10日に事業を開始した。 プレジェクトで想定されている相手は中国だろうが、戦闘機を含む兵器の性能でアメリカをはじめとする西側諸国はロシアに水をあけられ、最近は中国にも遅れをとっている。インドとパキスタンの軍事衝突でパキスタンの中国製戦闘機がインドのフランス製ラファール戦闘機を少なくとも1機撃墜したとされているが、これもそうした実態を示していると言えるだろう。そのインドへ日本政府はGCAPへの参加を提案したと4月30日に報道されている。 このプロジェクトの目的は次世代戦闘の開発とされているが、一種の軍事同盟とも言える。そうした意味でアメリカの意向にも沿っている。 アメリカはアングロ・サクソン系国のオーストラリア(A)、イギリス(UK)、アメリカ(US)で構成されるAUKUSを創設、またオーストラリア、インド、日本とクワドなるグループを編成した。AUKUSは「アジア版NATO」ともみなされている。 日本とアメリカは「有事」の際にアメリカ軍が核兵器を使用するシナリオについて協議しているとする「両国関係筋」の話を共同通信は伝えた。アメリカは第2次世界大戦の直後から核兵器を使用するシナリオを考えてきたわけで、沖縄の軍事基地化はその計画と無縁ではない。このリークは中国やロシアに対する脅しのつもりだろう。 アメリカやイギリスは核兵器の開発が始まった段階からソ連への使用を考えていたことを本ブログでも繰り返し書いてきた。「マンハッタン計画」を統括していたアメリカ陸軍のレスニー・グルーブス少将は1944年、同計画に参加していたポーランドの物理学者ジョセフ・ロートブラットに対し、その計画は最初からソ連との対決が意図されていると語ったとダニエル・エルズバーグは書いている。(Daniel Ellsberg, “The Doomsday Machine,” Bloomsbury, 2017) 沖縄では1950年代に「銃剣とブルドーザー」で土地が強制接収されて軍事基地化が推し進められた。1953年4月に公布/施行された布令109号「土地収用令」に基づき、武装米兵が動員された暴力的な土地接収で、55年の段階で沖縄本島の面積の約13%が軍用地になっている。 1955年頃になるとアメリカが保有していた核兵器は2280発に膨らみ(Annie Jacobsen, “Area 51”, Little, Brown, 2011)、57年になるとアメリカ軍の内部でソ連に対する先制核攻撃を準備しはじめている。(James K. Galbraith, “Did the U.S. Military Plan a Nuclear First Strike for 1963?”, The American Prospect, September 21, 1994) そして1957年の初頭、アメリカ軍はソ連への核攻撃を想定したドロップショット作戦を作成した。それによると300発の核爆弾をソ連の100都市で使い、工業生産能力の85%を破壊する予定になっていたという。(Oliver Stone & Peter Kuznick, “The Untold History of the United States,” Gallery Books, 2012) そのころからアレゲーニー山脈の中、ウエストバージニア州のグリーンブライア・ホテルの地下に「地下司令部」が建設されている。いわゆるグリーンブライア・バンカーだ。1959年に国防総省が中心になって着工、62年に完成している。 テキサス大学のジェームズ・ガルブレイス教授によると、統合参謀本部のライマン・レムニッツァー議長やSACの司令官だったルメイなど好戦派は、1963年の後半にソ連を奇襲攻撃る予定だったという。その頃になればアメリカはICBMを配備でき、しかもソ連は配備が間に合わないと見ていた。ソ連が反撃するためにはアメリカの近くから中距離ミサイルを発射するしかない。そこでソ連はキューバへ中距離ミサイルを運び込み、キューバ危機になる。1962年10月のことだ。この危機を回避することに成功したジョン・F・ケネディ大統領は1963年11月22日に暗殺された。現在の世界情勢は当時より危険だと考えられている。 外交問題評議会(CFR)が発行している定期刊行物「フォーリン・アフェアーズ」の2006年3/4月号に掲載されたキール・リーバーとダリル・プレスの論文には、ロシアと中国の長距離核兵器をアメリカ軍の先制第1撃で破壊できるようになる日は近いと書かれている。これは執筆者だけの考えではなく、ネオコンのような西側の好戦派は全面核戦争で自分たちが完勝すると信じていたようだ。 ネオコンのようなアメリカの好戦派は一貫して先制核攻撃を計画しているのであり、「核の傘」という表現は欺瞞的だ。「アメリカの核の傘に依存する」ということは、アメリカの先制核攻撃計画に協力することを意味している。 アメリカ政府は核兵器を恫喝の手段としても利用したことがある。例えば、ドワイト・アイゼンハワーは大統領に就任してまもない時期にハリー・トルーマン政権が始めた朝鮮戦争を休戦させようと考えた。そこで、中国に対して休戦に応じなければ核兵器を使うと脅したとされている。休戦は同年7月に実現した。アイゼンハワー政権で副大統領を務めていたリチャード・ニクソンはベトナム戦争から抜け出すため、アイゼンハワーを真似している。カンボジアに対する秘密爆撃を実行しながら核兵器で北ベトナムを恫喝したのだ。(Daniel Ellsberg, “The Doomsday Machine,” Bloomsbury, 2017) 日本はすでに核ミサイルを発射できる態勢を準備しつつある。国防総省系のシンクタンク「RANDコーポレーション」が発表した報告書によると、GBIRM(地上配備中距離弾道ミサイル)で中国を包囲する計画を彼らは持っていて、自衛隊は2016年に与那国島でミサイル発射施設を建設、19年には奄美大島と宮古島、そして23年には石垣島でも施設を完成させた。アメリカはオーストラリア、インド、日本とクワドの復活を協議したのは、南西諸島にミサイル発射基地が建設されつつあった2017年11月のことだ。こうした計画は、おそらく、21世紀に入って間もない頃には出来上がっているのだろう。 2022年10月になると、「日本政府が、米国製の巡航ミサイル『トマホーク』の購入を米政府に打診している」とする報道があった。亜音速で飛行する巡航ミサイルを日本政府は購入する意向で、アメリカ政府も応じる姿勢を示しているというのだ。 旧式ではあるが、トマホークは核弾頭を搭載でる亜音速ミサイルで、地上を攻撃する場合の射程距離は1300キロメートルから2500キロメートルという。中国の内陸部にある軍事基地や生産拠点を先制攻撃できる。「専守防衛」の建前と憲法第9条の制約は無視されていると言えるだろう。 そして2023年2月、浜田靖一防衛大臣は亜音速巡航ミサイル「トマホーク」を一括購入する契約を締結する方針だと語ったが、10月になると木原稔防衛相(当時)はアメリカ国防総省でロイド・オースチン国防長官と会談した際、「トマホーク」の購入時期を1年前倒しすることを決めたという。当初、2026年度から最新型を400機を購入するという計画だったが、25年度から旧来型を最大200機に変更するとされている。**********************************************【Sakurai’s Substack】
2025.08.04

ガザの虐殺は続く イスラエルは軍事攻撃でガザの建造物を徹底的に破壊、住民を虐殺しつづけている。また兵糧攻めで飢餓状態。多くの住民が虐殺されつつある。そうした残虐行為を支援してきた欧米の「民主主義国」にも厳しい目が向けられている。 「ハーバード大学学長およびフェロー」のウェブサイト「データバース」に掲載されたヤコブ・ガルブの報告書によると、2023年10月7日にイスラエル軍とハマスの戦闘が始まる前、約222万7000人だったガザの人口が現在の推定人口は185万人。つまり37万7000人が行方不明だ。 SIPRI(ストックホルム国際平和研究所)によると、軍事物資の69%はアメリカから、30%はドイツから供給されている。そうした物資の空輸やパレスチナの武装勢力を偵察する飛行で中心的な役割を果たしてきたのはイギリスだ。イスラエルは「国」というより「空母」に近い。イスラエルへの物資の輸送や偵察の拠点としてキプロスの軍事基地は重要な役割を果たしてきた。 現在、国連加盟193カ国のうち147カ国がパレスチナを正式に承認しているが、勿論、アメリカは承認していない。EU加盟国ではキプロス(1988年)、チェコ(1988年)、スロバキア(1988年)、ハンガリー(1988年)、ルーマニア(1988年)、ブルガリア(1988年)、ポーランド(1988年)、スウェーデン(2014年)、アイルランド(2024年)、スペイン(2024年)、スロベニア(2024年)。ソ連消滅前に承認した旧ソ連圏の国が目立つ。パレスチナを支援している国民が多いと言われているアイルランドでも昨年だ。 フランスのエマニュエル・マクロン大統領は今年9月にパレスチナを承認すると発表、イギリスのキア・スターマー首相はイスラエルが「ガザ地区の悲惨な状況」を終わらせるために行動しない限り、イギリスはパレスチナ国家を承認すると述べた。 両国の政府はネオコンに踊らされ、ロシアとの無謀な戦争に突入して自国を崩壊させつつあるうえ、ガザでの大量虐殺を支援してきたことへの批判が高まっている。イメージを改善しようとしているのかもしれないが、パレスチナ人の主権を認めるわけではない。 欧米諸国はイスラエルへ武器を供給、軍事情報の収集に協力、兵糧攻めを黙認している。つまりパレスチナ人を大量虐殺する手助けをしているのであり、共犯。こうした残虐な行為を止めたいなら行えることはたくさんあるが、行わない。ネオ・ナチやアル・カイダ系武装集団がそうであるように、イスラエルは欧米帝国主義諸国に代わって「汚い仕事」を行なっているわけで、当然だろう。イスラエルによる虐殺を嘆くだけでは意味がない。それを「偽善」と呼ぶ人もいる。 イスラエルは軍事力を使い、先住民であるパレスチナの75万人を追放し、土地の78%の奪い取り、帰還権を剥奪した。その上でガザやヨルダン川西岸を奪おうとしている。侵略国家としての英国 パレスチナにイスラエルを作り上げたのはイギリスだが、この国はアイルランドや北アメリカで行ったようなことをパレスチナでも行った。 イギリス政府は1838年、エルサレムに領事館を建設。その翌年にはスコットランド教会がパレスチナにおけるユダヤ教徒の状況を調査し、イギリスの首相を務めていたベンジャミン・ディズレーリは1875年にスエズ運河運河を買収した。その際に資金を提供したのは友人のライオネル・ド・ロスチャイルドだ。(Laurent Guyenot, “From Yahweh To Zion,” Sifting and Winnowing, 2018) パレスチナに「ユダヤ人の国」を建設する第一歩と言われる書簡、いわゆる「バルフォア宣言」をアーサー・バルフォアがウォルター・ロスチャイルドへ出したのは1917年11月のこと。 イギリスは1920年から48年の間パレスチナを委任統治、ユダヤ人の入植を進めたが、1920年代に入るとパレスチナのアラブ系住民は入植の動きに対する反発を強めた。 そうした動きを抑え込むため、デイビッド・ロイド・ジョージ政権で植民地大臣に就任したウィンストン・チャーチルはパレスチナへ送り込む警官隊の創設するという案に賛成、アイルランドの独立戦争で投入された「ブラック・アンド・タンズ」のメンバーを採用した。 この組織はIRA(アイルランド共和国軍)を制圧するために設立されたのだが、殺人、放火、略奪など残虐さで有名だった。イングランドでは、ピューリタン革命を指揮したオリバー・クロムウェルの軍隊がアイルランドを軍事侵略、多くの人を虐殺した。17世紀の半ばのことだ。ピューリタン革命 クロムウェルが出現する前、イングランドのジェームズ6世(イングランド王ジェームズ1世)はアングロ・サクソンをユダヤ人の「失われた十支族」の後継者だと信じ、自分はイスラエルの王だと信じていたという。 ジェームズ6世の息子であるチャールズ1世はピューリタン革命で処刑されたが、クロムウェルの私設秘書だったジョン・サドラーも同じように考え、彼は1649年に作成されたパンフレット『王国の権利』の中でイギリス人はイスラエルの失われた部族のひとつであり、ユダヤ人と同族であると主張している。 クロムウェルも同じように考えていたようで、彼の聖書解釈によると世界に散ったユダヤ人はパレスチナに再集結し、ソロモン神殿を再建することになっていた。この「ユダヤ人」には「アングロ・サクソン」も含めているのだろう。この解釈に基づいて彼は政権を樹立し、1656年のユダヤ人のイングランド定住禁止令を解除、パレスチナにイスラエル国家を建国することを宣言した。海賊の国だったイングランドでビジネスを育てるためだったともいう。 これがシオニズムの始まりだが、ピューリタン体制が倒されるとシオニズムは放棄され、クロムウェルを支持する人びとの一部はアメリカへ亡命、ジョージ・ワシントン、トーマス・ジェファーソン、ベンジャミン・フランクリンらはその後継者だと主張したという。その北アメリカで先住民は「民族浄化」された。今、欧米の支配者は中東を新たなアメリカにしようとしているのではないだろうか。彼らはその先にロシアと中国を見ていたはずだ。パレスチナ侵略 ブラック・アンド・タンズはIRA(アイルランド共和国軍)を制圧するために設立されたのだが、殺人、放火、略奪など残虐さで有名だった。そして1936年から39年にかけてパレスチナ人は蜂起。アラブ大反乱だ。 1938年以降、イギリス政府は10万人以上の軍隊をパレスチナに派遣する一方、植民地のインドで警察組織を率いていたチャールズ・テガートをパレスチナへ派遣、収容所を建設する一方、残忍な取り調べ方法を訓練した。イギリス軍はパトロールの際、民間のパレスチナ人を強制的に同行させていたともいう。 反乱が終わるまでにアラブ系住民のうち成人男性の10パーセントがイギリス軍によって殺害、負傷、投獄、または追放された。植民地長官だったマルコム・マクドナルドは1939年5月、パレスチナには13の収容所があり、4816人が収容されていると議会で語っている。その結果、パレスチナ社会は荒廃していく。イスラエル建国 シオニストはパレスチナから先住民を追い出し、イスラエルなる国を建てるため、1948年4月4日に「ダーレット作戦」を発動、ハガナに協力する形でテロ組織のイルグンとスターン・ギャングは9日にデイル・ヤシン村を襲撃、その直後に村へ入った国際赤十字のジャック・ド・レイニエールによると、村民254名が殺され、そのうち145名が女性で、そのうち35名は妊婦だった。 イギリスの高等弁務官を務めていたアラン・カニンガムはパレスチナに駐留していたイギリス軍のゴードン・マクミラン司令官に殺戮を止めさせるように命じたが、拒否されてしまう。ハガナもイルグンとスターン・ギャングを武装解除しようとはしない。(Alan Hart, “Zionism Volume One”, World Focus Publishing, 2005) この虐殺を見て多くのアラブ系住民は恐怖のために逃げ出し、約140万人いたパレスチナ人のうち5月だけで42万3000人がガザ地区やトランスヨルダン(現在のヨルダン)に移住、その後、1年間で難民は71万から73万人に達したと見られている。イスラエルとされた地域にとどまったパレスチナ人は11万2000人にすぎなかった。1948年5月14日にイスラエルの建国が宣言されている。 国際連合は1948年12月11日に難民の帰還を認めた194号決議を採択したが、現在に至るまで実現されていない。**********************************************【Sakurai’s Substack】
2025.08.03
ドナルド・トランプ米大統領は自分の思い通りにならないロシアに対する怒りが高まり、挑発的な言動をエスカレートさせている。ホワイトハウスの外交や軍事を支配してきたネオコンは現在も健在のようで、そうした人びとのアドバイスに従うトランプ大統領は制裁を手始めに、斬首攻撃でロシアの体制を転覆させようと妄想しているのだろう。 CNNが公開した音声によると、トランプは2024年に実施した資金集めの会合で、彼がウラジミル・プーチン露大統領に対し、「もしウクライナに侵攻したら、モスクワをぶっ飛ばす』と脅したと語っている。また、中国の習近平国家主席にも台湾の問題にからめ、同じように脅したという。 5月20日にウクライナ軍はウラジミル・プーチン露大統領を乗せたヘリコプターがクルスク上空に差し掛かった際、46機のドローンを使って攻撃したと伝えられている。ロシアの重要な内部情報が西側に漏れている可能性があり、衛星からの情報も必要。この攻撃をウクライナ軍が単独で実行したとは考えにくい。 そして6月1日、約120機のドローンでロシアのオレニャ(ムルマンスク)、ベラヤ(イルクーツク)、イバノボ(イバノボ)、ディアギレフ(リャザン)、ウクラインカ(アムール)の戦略核基地を攻撃した。「スパイダーズ・ウェブ作戦」だ。 大半のドローンはロシア領内から発射したようだが、一部はアゼルバイジャンから飛び立った可能性がある。これもアメリカやイギリスの情報機関から支援されたのだろう。そもそもウクライナの治安機関SBUはCIAの配下にある。この攻撃に対し、ロシアが核兵器で報復しても不思議ではない。 攻撃された基地のうち、ムルマンスクとイルクーツクでは火災が発生し、破壊または損傷されたTu-95戦略爆撃機は最大で5機。さらにIl-20が1機。ちなみに、ロシア軍が動かしているTu-95は58機だ。同じ日にウクライナ軍はルガンスクのクラスノドン市にある工業地帯をイギリス製のストームシャドウで攻撃している。 ウクライナからの情報によると、このドローンを使った作戦は18カ月かけて準備、ドローンの遠隔操作にはロシアの携帯電話ネットワークが使用されたという。工作のためにロシアへ潜入した工作員だけでなく、その前から西側諸国の情報機関が構築していたネットワークが協力していた可能性が高い。この攻撃についてウクライナ側からドナルド・トランプ米大統領に対して事前に警告があったとする報道があったが、すぐに否定された。ともかく、この段階でアメリカを含むNATO諸国はロシアとの核戦争に足を踏み入れている。 それに対し、元ロシア大統領のドミトリー・メドベージェフ安全保障会議副議は7月31日、トランプやその周辺にいる好戦派に欧米諸国の政府に対し、ゾンビ映画を引き合いに出して警告した。 西側諸国は経済力でも軍事力でもロシアや中国に劣る。そこでロシアに対して斬首作戦を目論んだが、失敗。ロシアや中国を蔑視、楽に勝てると思い込んで両国との「超限戦」を西側のエリートたちは始めたが、自分たちが劣勢にあることに気づいて混乱している。 彼らは自分たちが世界の頂上に立ち、ロシアや中国を含む「劣等」な国々を支配するという幻影から抜け出せないでいる。幻影と現実の乖離が拡大、最終的には現実を破壊するため、核兵器に手を出すことが懸念されている。 外交問題評議会(CFR)が発行している定期刊行物「フォーリン・アフェアーズ」の2006年3/4月号に掲載されたキール・リーバーとダリル・プレスの論文には、ロシアと中国の長距離核兵器をアメリカ軍の先制第1撃で破壊できるようになる日は近いと書かれている。これは執筆者だけの考えではなく、ネオコンのような西側の好戦派は全面核戦争で自分たちが完勝すると信じていたようだ。 この雑誌の主張は間違っていることは明確になっているが、メドベージェフは今回、ゾンビ映画を持ち出し、「デッド・ハンド(ペリメーターシステム)」を思い出させようとしたと理解されている。 デッド・ハンドとは、先制攻撃によってモスクワの指導部が壊滅した場合、ロシアの特殊ミサイルが自動的に発射され、核ミサイルに全面的な核戦争開始命令を出すというものだ。指導部が死に絶えても核攻撃の命令は出される。 ビル・クリントン政権の第2期目以降、ジョージ・W・ブッシュ、バラク・オバマ、第1期目のトランプ、そしてジョー・バイデンと同じ道を歩いているとも言える。これらの政権がすすめた政策は1992年2月にアメリカの国防総省を支配するネオコンが同省のDPG(国防計画指針)草案として作成した世界制覇計画、いわゆる「ウォルフォウィッツ・ドクトリン」に基づく。 アメリカ軍は従属国の軍隊を率い、1990年8月から91年3月にかけての湾岸戦争を戦った。ジョージ・H・W・ブッシュ政権のトラップに引っかかったイラクを叩いたのだが、ネオコンはその際にソ連軍が出てこなかったことに注目した。冷戦時代、アメリカはソ連との軍事衝突を警戒して慎重に動いていたが、ネオコンはそうした配慮は必要ないと考えていた。湾岸戦争でその考えは正しいと確信したのだ。 ソ連消滅後、ロシアは欧米の従属国になり、経済力や軍事力はソ連時代より弱体化、「唯一の超大国」になったアメリカは好き勝手なことができると信じ、「ウォルフォウィッツ・ドクトリン」を作成したのだ。21世紀に入り、ロシアはウラジミル・プーチン体制になってから急速に国力を回復、再独立に成功したのだが、それを受け入れられないネオコンは力づくでロシアを再び属国にしようと足掻いた結果、西側は泥沼から抜け出せなくなっている。 トランプは「マイクパフォーマンス」でロシアや中国を屈服させられると考えていたようだが、勿論、そのようなことはできない。ウクライナでNATO軍がロシア軍に負けたことを理解できず、イスラエルの「斬首作戦」でイランの体制を転覆させようとして失敗、逆にイスラエルの重要機関の施設が破壊されてしまった。要するに、トランプ政権の思惑通りに物事は進んでいない。腹を立てても事態は変わらない。**********************************************【Sakurai’s Substack】
2025.08.02

台湾の顧立雄国防部長は6月にワシントンDCを訪問し、アメリカ国防総省のエルブリッジ・コルビー次官と会い、軍事問題について協議する予定だったが、直前にアメリカ側の事情で中止になったという。中国に対する過度の刺激を避けたかったのではないかとする人もいたが、上院軍事委員会に所属するロジャー・ウィッカー議員など共和党の議員団が8月に台湾を訪問する予定だ。中国との対立激化を避けようとする勢力と、激化させようとする勢力が綱引きしているようにも見える。 この議員団の台湾訪問は2022年8月にナンシー・ペロシ米下院議長らのケースよりインパクトは小さいが、アメリカの好戦派は一貫して台湾を中国を攻撃する航空母艦と考えている。リチャード・ニクソン大統領が1972年2月に中国を訪問した際に打ち出した「ひとつの中国」政策への挑戦を続けているとも言える。 1972年9月には総理大臣だった田中角栄が北京を訪問、日中共同声明に調印している。その際、尖閣諸島の領土問題は「棚上げ」にすることで合意した。日本の実効支配を認め、中国は実力で実効支配の変更を求めないというもので、日本に有利な内容だった。そして1978年8月に日中平和友好条約が結ばれ、漁業協定につながる。 この構図を壊したのは菅直人政権にほかならない。この政権は2010年6月の閣議決定で尖閣諸島周辺の中国漁船を海上保安庁が取り締まれることに決め、2000年6月に発効した「日中漁業協定」を否定。そして2010年9月、石垣海上保安部は中国の漁船を尖閣諸島の付近で取り締まり、日本と中国との関係は悪化する。 こうした行為は田中角栄と周恩来が決めた尖閣諸島の領土問題を棚上げにするという取り決めを壊すもの。2010年10月に前原誠司外務大臣は衆議院安全保障委員会で「棚上げ論について中国と合意したという事実はございません」と発言しているが、これは嘘だ。 2015年の6月、総理大臣だった故安倍晋三は赤坂の「赤坂飯店」で開かれた官邸記者クラブのキャップによる懇親会で、「安保法制は、南シナ海の中国が相手なの」と口にしたと報道されている。その安倍が直前に会談したという中国の習近平国家主席は軍部に対し、南シナ海と台湾の監視を強め、戦争の準備をするように命じたという。その後、日本政府はアメリカ国防総省の戦略に従い、中国と戦争する準備を着々と進めている。 国防総省系のシンクタンク「RANDコーポレーション」が発表した報告書によると、GBIRM(地上配備中距離弾道ミサイル)で中国を包囲する計画を彼らは持っている。自衛隊は2016年に与那国島でミサイル発射施設を建設、19年には奄美大島と宮古島、そして23年には石垣島でも施設を完成させた。 南西諸島にミサイル発射基地が建設されつつあった2017年11月、アメリカはオーストラリア、インド、日本とクワドの復活を協議、18年5月にはアメリカ太平洋軍をインド太平洋軍へ名称変更している。 専守防衛の建前と憲法第9条の制約がある日本の場合、ASCM(地上配備の対艦巡航ミサイル)の開発や配備で日本に協力することにし、ASCMを南西諸島に建設しつつある自衛隊の施設に配備する計画が作成されたとされていたが、すでにそうした配慮は放棄されている。 2022年10月になると、「日本政府が、米国製の巡航ミサイル『トマホーク』の購入を米政府に打診している」とする報道があった。亜音速で飛行する巡航ミサイルを日本政府は購入する意向で、アメリカ政府も応じる姿勢を示しているというのだ。 旧式ではあるが、トマホークは核弾頭を搭載でる亜音速ミサイルで、地上を攻撃する場合の射程距離は1300キロメートルから2500キロメートルという。中国の内陸部にある軍事基地や生産拠点を先制攻撃できる。「専守防衛」の建前と憲法第9条の制約は無視されていると言えるだろう。 そして2023年2月、浜田靖一防衛大臣は亜音速巡航ミサイル「トマホーク」を一括購入する契約を締結する方針だと語ったが、10月になると木原稔防衛相(当時)はアメリカ国防総省でロイド・オースチン国防長官と会談した際、「トマホーク」の購入時期を1年前倒しすることを決めたという。当初、2026年度から最新型を400機を購入するという計画だったが、25年度から旧来型を最大200機に変更するとされている。 日本とアメリカのこうした動きに中国やロシアも当然のことながら反応、最近では朝鮮の役割も大きくなっている。今年6月26日にロシア軍のバレリー・ゲラシモフ参謀総長はクルスクでの戦闘に朝鮮軍の部隊が参加したことを認め、「戦闘において高い専門性、堅忍不抜、勇気、英雄主義を発揮した」と称賛している。朝鮮軍は昨年12月に発効したモスクワと平壌間の包括的戦略パートナーシップ協定に基づき、派遣されたという。1万から1万3000人程度が派遣されたと見られ、帰国後にその経験を軍全体に伝えることになるだろう。また、アメリカのニューズウィーク誌は、ロシアが今年、中国軍の兵士数百人を訓練する計画だと報じている。逆に、日本やアメリカの政府が自衛官に実戦を経験させようと考えても不思議ではない。 ロシア軍の防空システムはNATO諸国のミサイルやドローンに対して有効だということが証明され、F-35、F-22、B-2のような「ステルス戦闘機」にも有効だと見られている。またロシア軍はウクライナでアメリカのM1A1エイブラムス、ドイツのレオパルト2A6、イギリスのチャレンジャー2といった戦車を破壊、F16戦闘機を撃墜している。 アメリカは軍事的に他国を圧倒しているというイメージは崩壊した。ドナルド・トランプ米大統領は現在、関税を使った恫喝で他国を屈服させようとしているが、ロシア、中国、イラン、インドをはじめ、少なからぬ国が屈していない。 ロシアは朝鮮と軍事的にも経済的にも関係を強化、6月4日から韓国の大統領を務めている李在明はロシアや朝鮮との関係改善を図りつつあるのだが、朝鮮の金与正は韓国について、アメリカとの同盟関係を「盲目的に信頼」していると批判しているという。台湾の頼清徳総統はアメリカの従属しているが、投票動向を見ると、一般の人びとは中国との関係が悪化することを望んでいないようだ。 アメリカの支配力が弱まっている東アジアの中、日本は「脱亜入欧」から抜け出せていない。かつてのように中国侵略の先兵になれば、日本は滅ぶだろう。**********************************************【Sakurai’s Substack】
2025.08.01
全33件 (33件中 1-33件目)
1


![]()