《櫻井ジャーナル》

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2011.05.20
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カテゴリ: カテゴリ未分類
 イスラエルとパレスチナとの国境は1967年、第三次中東戦争の前のラインを基本にするべきだとバラク・オバマ米大統領は演説したようだ。この程度のことは、国連で何度も決議されてきたこと。その決議にアメリカはイスラエルとともに反対し続けてきたのである。こうした行動がアメリカを世界で孤立させる大きな要因になっている。

 最近のパレスチナ問題に関係した決議の投票内容を見ると、この2カ国に同調した国は圧倒的に少ない。マーシャル諸島、ミクロネシア、ナウル、パラオ、そして2004年以降のオーストラリアくらいだ。

 本ブログでは何度か書いているが、1967年以前の境界線も公正なものではなかった。水源があって農耕が可能な地域は「ユダヤ人の国」に、砂漠地帯は「アラブ人の国」に割り当てられていたのだ。そして、1948年4月4日に始まった「ダーレット作戦」ではアラブ系住民を虐殺、恐怖の力で住民を追い出そうとしたのである。この作戦は成功したのだが、それでも当初の計画は達成できなかったようで、1967年の第3次中東戦争につながる。

 この戦争は5月にイスラエルがシリアに軍事侵攻する構えを見せるところから始まった。そうした動きを受け、エジプトのガマル・ナセル大統領は軍をシナイ半島へ移動させてティラン海峡を封鎖すると宣言するのだが、実行には移されなかった。アメリカの情報機関はエジプトがイスラエルを攻撃することはないと判断していたこともわかっている。

 そうしたなか、6月上旬にイスラエルは奇襲攻撃、6日間でエルサレム、ガザ地区、シナイ半島、ヨルダン川西岸、ゴラン高原などを占領してしまった。その際、アメリカの電子情報機関NSA(国家安全保障庁)のリバティ号がイスラエル軍の攻撃を受け、アメリカ兵34名が殺され、171名が負傷している。

 この戦争でイスラエル軍は捕虜にした約1000名のエジプト兵を処刑したと言われているのだが、この事実を隠したかったという説、あるいは予定していた占領が終わっていなかったので戦争の状況を外部に知られたくなかったという説などが流れているのだが、確かなことはイスラエル軍がアメリカの艦船を攻撃して沈没寸前の状態にして、多くの死傷者を出したということだ。

 1957年にイスラエル軍はドワイト・アイゼンハワー米大統領の圧力でガザ地区から撤退させられ、ジョン・F・ケネディ大統領もイスラエルに厳しい姿勢で臨んでいたのだが、リバティ号の件でアメリカ政府は事件の真相を隠そうとしてきた。1970年代半ば、ジェラルド・フォード政権でネオコン(親イスラエル派)が台頭してくるのだが、第3次中東戦争のとき、すでにアメリカとイスラエルの好戦派は手を組んでいたということなのかもしれない。

 この戦争で始まったアメリカとイスラエルの同盟関係を維持するため、イスラエルは核兵器を利用してきた。1973年の第4次中東戦争でイスラエル政府は核兵器の使用を閣議決定したという。2008年にはアメリカ政府に対し、イラン攻撃に同調しないと核兵器を使用すると脅したとも言われている。イスラエル・ロビーだけでなく、イスラエルの核兵器はオバマ政権にとっても頭の痛い問題であるに違いない。

 しかし、全世界で湧き起こっているアメリカの中東政策に対する批判を無視することはできない。パレスチナ問題に対する姿勢だけでなく、アフガニスタンやイラクへの先制攻撃も問題になっている。ウソ八百を並べて始めた一連の戦争では、100万人以上とも推定される市民を殺害、社会基盤になる施設を破壊、劣化ウラン弾で地域を放射能まみれにしている。



 リビアやシリアの反政府運動にアメリカ、イギリス、フランスなどの秘密工作が影響していることは事実だが、中東/北アフリカで民主化を求める声が高まっていることも間違いない。この地域の権力者がアメリカ流の新自由主義経済を導入しつつあることも庶民の怒りに火をつけることになった。独裁者たちと違い、アメリカに対して親近感を持つ庶民は多くない。リビアで米英仏がアルカイダと手を組んだ反動もありえるだろう。

 そうした民主化の波はバーレーンやアラブ首長国連邦など湾岸の産油国にも波及、独裁体制は揺らぎ始めている。サウジアラビアも安泰ではない。アメリカやイスラエルと同盟関係にあったエジプトに続き、こうした親米独裁産油国が倒れるような事態になれば、アメリカの支配システムは致命的な打撃を受けることになる。1967年以前の境界線云々程度のことは言わないと、アメリカがもたない。





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最終更新日  2011.05.20 23:18:20


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