《櫻井ジャーナル》

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2012.02.09
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カテゴリ: カテゴリ未分類
 かの有名なウォルター・リップマンは、ジャーナリズムを権力者から庶民への情報伝達手段だと考えていたそうで、第1次世界大戦の最中には戦意高揚に協力している。1917年にアメリカ政府が設置したCPI(広報委員会)に参加、戦争を始めるという権力者の意志を庶民に伝え、従わせたわけである。その当時、毎週、約2万に及ぶ新聞のコラムでCPIの提供した資料が使われていたという。

 日本では「大本営発表」の垂れ流しが有名だが、戦後も大差はない。福島第一原発が大事故を起こしてから「安全神話」を広めた責任が問われているが、原発はまだマシな方である。何しろ、基本は公開されている技術であり、情報を隠すといっても限界があり、実際、議論はされていた。むしろ、財政、外交、軍事などの方がタブーは多いだろう。そもそも、そうした問題に興味を持っている人も圧倒的に少ない。

 最近はインターネットの普及で外国の情報も日本のマスコミを介さずに入手できるようになり、嘘はすぐにばれるのだが、それでも権力者のプロパガンダを恥ずかし気もなく垂れ流している。ユーゴスラビア、アフガニスタン、イラク、リビア、シリア・・・こうした国々に対する攻撃も嘘のオンパレードだ。

 石油利権をめぐる対立からクウェートへイラクが軍事侵攻した後、1990年10月にアメリカ議会では人権に関する議員集会が開かれた。その集まりにひとりの クウェート人少女「ナイラ」 が登場、イラク軍の冷酷な行為を告発してサダム・フセインに対する憎悪をかき立て、イラクに対するアメリカの軍事侵攻につながる。

 イラク軍は病院から医療機器を盗み、その際に保育器から乳児が外へ出され、乳児は死んでいったと涙ながらにナイラは語っている。少なからぬ人がこの話に涙したようだが、この話は真っ赤の嘘だった。

 少女は駐米クウェート大使だったサウド・ビン・ナシル・アル・サバーの娘で、イラク軍がクウェートに軍事侵攻した状況を知る立場にはなかった。つまり、目撃していないクウェートでの出来事を迫真の演技で話したわけである。偽証の演出を担当したのは広告会社、ヒル・アンド・ノートン。クウェート政府が1190万ドルで雇ったという。この「証言」を今、再び見るのも悪くないだろう。

 親族へ危害が及ぶために本当の名前を公にはできないとしても、関係者は少女の素性や情報の信頼性をチェックするのが当然であり、「偽証」を世界に広めた責任が議員の側にもある。この嘘を垂れ流したメディア、この嘘を無批判に受け入れた「人権擁護団体」も責任を免れない。

 集会を開いたトム・ラントス下院議員とジョン・ポーター下院議員はともにヒル・アンド・ノートンと親しい関係にあると言われている。ちなみに、ナイラは「証言」の前に宣誓していない。つまり、少なくとも2下院議員も彼女の話を嘘だと承知していた可能性が高い。






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最終更新日  2012.02.09 21:48:30


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