《櫻井ジャーナル》

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2013.04.18
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カテゴリ: カテゴリ未分類
 安倍晋三首相がTPP交渉へ参加する意志を明確にした後、アメリカ資本の要求が少しずつ明らかにされ始めた。が、マスコミはまだ本質に触れようとしていない。本ブログでは何度も書いていることだが、TPPは「関税交渉」でも「通商交渉」でもなく、アメリカを拠点とする多国籍企業がカネ儲けしやすい仕組みを作ることが目的。ISDS条項によって参加国政府の手足は縛られ、主権国家はアメリカの巨大資本によって支配され、社会/共同体は破壊されることになる。

 マーガレット・サッチャー元英首相は生前、社会の存在を否定していた。勿論、社会は存在する。庶民が結びつき、助け合う共同体を破壊すべき対象と彼女は考えたわけだ。

 TPPもサッチャーが信じていた「教義」から出てきた決め事。「国」には支配システムという側面だけでなく、共同体としての側面もある。その共同体としての側面を壊そうとしているのがサッチャーの仲間だ。

 そうした人びとはフリードリッヒ・フォン・ハイエクやミルトン・フリードマンを信奉し、税金を庶民のために使うことを憎悪している。ところが、ハイエクと親しくしていたサッチャーの葬儀は「国葬に準じた扱い」で行われたという。葬儀にかかった費用は推計で1000万ポンド(約15億円)だという。自分たちのためなら国のカネを惜しげもなくつぎ込むということ。サッチャーを象徴するような幕切れである。

 ハイエクやフリードマンの教義の象徴として、チリのオーグスト・ピノチェト体制も忘れてはならない。1973年9月11日(最初の9/11)、アメリカ政府(ヘンリー・キッシンジャー)の支援を受けたピノチェトが軍事クーデターで民主的な手続きを踏んで成立したサルバドール・アジェンデ政権を倒し、その後、アメリカ資本のカネ儲けに邪魔な人びとを虐殺、反対の声がなくなったところでフリードマンの弟子たちが活躍したのである。

 サッチャーは1979年から90年にかけてイギリスの首相を務めた。この間、イギリス経済を建て直したと主張する人もいるようだが、正しくない。息子と一緒に武器を売り歩いた「死の行商人」という陰口をたたく人もいるが、最大の要因は石油。オイル・ショックのおかげで北海油田が利益を生むようになり、立ち直っただけの話だ。

 メディアの人間であろと、学者であろうと、こうした事実は百も承知のはず。にもかかわらず、この点を語りたがらない。彼らも強者総取りの新自由主義経済を信奉し、自分たちも利益を得ようと思っているからだということなのだろう。

 オイル・ショックは1973年10月の第4次中東戦争を切っ掛けにして引き起こされているのだが、その5カ月前に石油価格の大幅な引き上げは欧米の支配層によって決められていた。その決定に従ってOPECが動いたにすぎない。

 イギリスのオブザーバー紙によると、値上げを決めた会議はスウェーデンで開かれた。その会議で ヘンリー・キッシンジャーを中心とするアメリカとイギリスの代表は400%の原油値上げを要求

 この後、石油価格は上がり続け、北海油田が生み出す利益でイギリス経済は持ち直したように見えたわけだ。この上昇相場に乗って首相となったのがサッチャーだが、彼女の経済政策は金融を肥大化させただけである。

 オフショア市場のネットワークを整備、つまり資産を隠す仕組みを作り上げ、資金が投機市場へ流れるパイプを建設した結果、投機市場が肥大化して「カジノ経済」の時代に入る。その集大成が1986年の「ビッグバン」だろう。

 1981年にイギリスは石油の輸出国になり、サッチャー政権を支えたが、1980年代の半ばになると石油相場が天井を打ち、サッチャー政権は幕引きに向かう。そして、2005年からイギリスは再び石油輸入国になったようだ。トニー・ブレア政権がアメリカのジョージ・W・ブッシュ政権と手を組んで「押し込み強盗」を始めた背景がここにある。

 このブレアは親イスラエル派として知られている。1994年1月にブレアは妻と一緒にイスラエルを訪問したが、経費はイスラエル政府持ちだったようだ。その2カ月後、ロンドンのイスラエル大使館で紹介されたのが富豪のマイケル・レビーで、この後、ブレアのスポンサーになる。つまり、ブレアは労働組合のカネを必要としなくなった。そして5月に労働党の党首だったジョン・スミスが心臓発作で急死、ブレアが後任に選ばれる。

 元々、イギリスの労働党はイスラエルと友好的な関係にあったのだが、1982年に状況が変わる。イスラエル軍とレバノンのファランジスト党がレバノンのパレスチナ難民キャンプ(サブラとシャティーラ)を攻撃、数百人とも3000人以上とも言われる人が殺されたのだが、この虐殺事件が原因で労働党とイスラエルとの関係が悪化する。同時にアメリカとの関係も悪くなった。

 この状況を憂慮したアメリカのロナルド・レーガン政権はメディア界の「大物」、つまりルパート・マードックとジェームズ・ゴールドスミスを呼び、「後継世代」について語っている。そして組織されたのが「BAP(英米後継世代プロジェクト)」。

 BAPには若手のエリートが参加しているが、特徴はメディアとの結びつき。BBC、フィナンシャル・タイムズ、ウォール・ストリート・ジャーナルの記者など米英のメディア関係者が多数、メンバーになっている。BAPはブレアを支援、1997年の選挙でブレアを勝たせることに成功した。

 ジェイコブ・ロスチャイルド(ロスチャイルド卿)やエブリン・ロベルト・デ・ロスチャイルドがブレアと親しいというが、政界から退いた後のカネ儲けとしては、 ウォール街の巨大銀行「JPモルガン」やスイスの保険会社「チューリッヒ・インターナショナル」が重要。こうした会社から毎年300万ポンド (約4億5000万円)の報酬を得ているという。クウェートやカザフスタンの政府とも取り引きがあるようだ。

 これが「ニュー・レーバー(新労働党)」の実態。日本の政治家やマスコミがニュー・レーバーを持ち上げていた理由がわかる気がする。が、この裏では庶民が地獄へ突き落とされている。TPPの構図も同じだ。





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最終更新日  2013.04.19 10:10:02


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