アメリカのドナルド・トランプ大統領は朝鮮の金正恩労働党委員長と近いうちに再び会談する意向を示している。
両首脳は今年(2018年)6月12日にシンガポールで会談し、4月27日に韓国の文在寅大統領と金正恩委員長が合意した朝鮮半島の非核化を米朝首脳は再確認しているが、予想されたとおり、アメリカ大統領は朝鮮半島の非核化を朝鮮の一方的な核兵器放棄に替えてしまった。
中国は非核化を和平交渉と並行して進めるべきだと主張、ロシアは朝鮮に対する一方的な「制裁」を止めるように求めているが、アメリカは核兵器の保有や開発をまず放棄しろと要求している。また、 朝鮮側はアメリカに対し、非核化は和平の実現と組み合わせて進めるべきだとしている
似たような問題でアメリカ支配層は信頼できる行動をとっていない。
例えばリビアの場合、アメリカは2003年にムアンマル・アル・カダフィ政権に核兵器や化学兵器の廃棄を決めさせたが、約束に反して「制裁」を解除しない。2010年にバラク・オバマ大統領はムスリム同胞団を使った侵略計画(PSD11)を作成、「アラブの春」という形で実行に移され、リビアは侵略されてカダフィ体制は崩壊、カダフィ自身は惨殺された。破壊、殺戮、略奪で現在は暴力が支配する破綻国家だ。
ドイツの場合、アメリカ政府とソ連政府が東西ドイツの統一で合意した際、アメリカの国務長官だったジェームズ・ベイカーはソ連のエドゥアルド・シェワルナゼ外務大臣に対し、統一後もドイツはNATOにとどまるものの、東へNATOを拡大することはないと約束した。ドイツのシュピーゲル誌によると、ロシア駐在アメリカ大使だったジャック・マトロックはアメリカがそのようにロシアへ約束したと語っている。現在、NATO軍はロシアとの国境沿いにミサイルを配備、軍隊を駐留させて威嚇している。
ベトナム戦争でアメリカ軍は負けたが、1991年にソ連が消滅した3年後、アメリカはベトナムに対する「制裁」を解除する代償として新自由主義を受け入れさせた。しかもベトナム戦争中にアメリカ側が行った犯罪的な行為は不問に付され、ベトナムの庶民は低賃金労働者として西側巨大資本の金儲けに奉仕させられている。
アメリカは朝鮮に対し、リビアと同じことをしようと目論んでいるように見える。アメリカ支配層にとっての平和とはパックスアメリカーナ、つまりアメリカが支配者として君臨するもので、他の国にとっては奴隷の平和だ。それを朝鮮は拒否している。
朝鮮が強気でいられるのは背後に中国、ロシア、そして韓国が存在しているからだろう。本ブログでは繰り返し書いてきたが、この3カ国は連携し、その戦略に基づいて状況は動き始めている。例えば、韓国政府と朝鮮政府はアメリカ政府の反対を押し切って朝鮮南西部の開城に共同連絡事務所を9月14日に開設、文在寅韓国大統領と金正恩朝鮮労働党委員長は9月18日と19日に朝鮮の首都、平壌で会談し、年内に鉄道と道路を連結する工事の着工式を行うことで同意した。
中国では本土と香港を結ぶ高速鉄道が開通、9月23日に最初の列車が走っている。この路線が完成したことで北京から香港までの移動に要する時間が24時間から9時間に短縮されるという。鉄道は中国、ロシア、そして朝鮮半島を結ぶ重要なインフラであり、19世紀から中国支配を目論んできたアングロ・サクソン系のアメリカとイギリスにとっては脅威。
中国やロシアはアメリカのドル体制を揺るがす存在でもある。まだ世界の商取引はドルが支配しているが、その支配力が弱まっている。放置していると遅かれ早あれドルは基軸通貨の地位から陥落、ドル支配に基づいて世界を支配してきたアメリカ帝国は崩壊する。アメリカの支配層は必死だ。
ロシアと韓国は国境を越えたエネルギー・プロジェクトを推進し、FTA(自由貿易協定)に関する話し合いを始めようとしているが、日本はアメリカへの従属度を高めるため、事実上のFTA交渉を始めようとしている。崩れゆく帝国に従う日本のエリートは支配体制を維持するため、治安システムを強化しようとしている。