2026
2025
2024
2023
2022
2021
2020
全16件 (16件中 1-16件目)
1
![]()
横溝正史ミステリ大賞受賞作【内容】医学的に脳死と診断されながら、月明かりの夜に限り、特殊な装置を使って言葉を話すことのできる少女・葉月。生きることも死ぬこともできない、残酷すぎる運命に囚われた彼女が望んだのは、自らの臓器を、移植を必要としている人々に分け与えることだった―。透明感あふれる筆致で生と死の狭間を描いた、ファンタジックな寓話ミステリ。第二十二回横溝正史ミステリ大賞受賞作。 【感想】四つのオムニバス形式、短編集のようでもありました。全部で12の臓器を提供するうちの、四つの臓器にまつわる内容。冒頭で、昴(すばる)が、なぜ臓器を届ける仕事を請け負うことになるかが、まず明らかになってスタートしますが、そこもまだ伏せていた方が、それぞれの章で一瞬現われる昴が謎めいた存在になるんじゃないかなぁ、などと感じました。脳死と臓器提供については、最近も国会で裁決をとっていましたし、難しい問題ですね。手術すれば助かる命なら助けたい、反面、まだ脳死が人の死かどうかというのは、議論が足りないようですね。どっちも親として、我が子のこととひきつけて考えると、とても、簡単にはどうすればよいとは、決められません。きっと、立場ごとに違う答えを求めてしまうにちがいありません。法律の整備や現状ヘの理解、ドナー登録など、日本はまだまだ遅れていると考えさせられます。初野晴さんの『退出ゲーム』に注目してます。次回の初野さん本は、その青春ミステリと評判の本を読みたいです。
2009年08月20日
このミステリがすごい2010年版 国内編 第9位【このミステリーがすごい より】肉親との愛情に悩む二組のきょうだい_苦い青春ミステリー肉親と死に別れた二組の兄弟が絡み合う、クライムノベル風サスペンスである。中学生の妹・楓に劣情を向ける義父を殺そうともくろむ、十九歳の兄・蓮。だがその計画は失敗し、逆に妹から義父を殺したと知らされる。二人は義父の死体を山に捨てに行くが、殺人の証拠の品を妹と同じ学校に通う少年・達哉に拾われてしまう。一学年下の辰也はかえでに強く執着していた。そしてまた辰也と弟の圭介も実母の死にとらわれ、義母との確執を抱えていた。二組のきょうだいが抱えた家庭内の愛情問題が、息詰まるような筆致で描かれていく。だがそこは名だたる作者のこと。苦い味わいの青春物語の先に、周到に用意された仕掛けが爆発するのである。【感想】道尾さんの本は、開くといつも、不穏な雰囲気を感じながら読み始めます。どんな陰惨なことが起こるのだろうか、、という戦々恐々の期待とでもいうのでしょうか。ビクビクさせられて、主人公らにあんまり不幸が降り注がないで欲しい、傷つかないでとおもってしまうのです。 『ソロモンの犬』『カラスの親指』などではわりとホッとできる終結。『鬼の跫音』はとても完成度の高そう。本作の『龍神の雨』は、途中までドンデン返しなど、おもしろく読めました。ただ、ラストが、ちょっと肩透かしだったような。道尾秀介さんの本 感想
2009年08月18日
![]()
【内容】『シャドウ』で本格ミステリ大賞を受賞するなど、話題作をたてつづけに刊行。初夏を吹き抜ける一陣の涼風のような、ぶっちぎりの青春ミステリー小説になりました。 秋内たちクラスメイト4人は、大学で教わっている椎崎鏡子助教授のひとり息子・陽介君がトラックに撥ねられる瞬間に偶然、居あわせます。幼い友人は、なぜ死んだのか? 哀しみの中、議論を重ねる彼らに衝撃の結末が……。 誰もが誰かに恋していた、せつなく甘くほろ苦い学生時代。読んでいるうちにふと「青春」してみたくなる作品。(2007年)【感想】「この中に人殺しがいるかどうかを、話し合おう。」みな同じ大学の同級生。仲の良い仲間の中での犯人探しがはじまるのか?身構えさせる言葉がありましたが、読み終わってみれば、意外などんでん返しと終始穏やかな展開という印象でした。主人公らの日常やキャラや関係がだんだんと分かってきます。誰と誰が電話していたのか、誰と誰が会っているのか、などの仲間内でのちょっとした緊張感、自分の知らないところで何かが起こっているのだろうか?といった主人公の秋内が、あんまり小さなことに囚われまいとしながらも身もだえする、、なんて心の起伏にとても共感を覚えました。上の紹介文は、刊行の際の帯の宣伝文でしょうが、せつなく甘いというのはちょっと違いました。死体がゴロゴロ発生する犯罪ミステリ以下、でも、事故か自殺か曖昧な死をめぐる展開で、日常ミステリ以上。雰囲気は『カラスの親指』と同様なフランクさが読みやすかったでした。 犬はちゃんと重要な役割でした。雑種だけど、柴犬。題名に”犬”つながりで連想、米澤穂信さんの『犬はどこだ』は、題名とおりいつまでも犬が登場しないお話。道尾秀介さんの本 感想著者:道尾秀介「背の眼」 2004年 第5回ホラーサスペンス大賞特別賞を受賞デビュー「向日葵の咲かない夏」2006年 第6回本格ミステリ大賞候補。「流れ星のつくり方」 2006年 第59回日本推理作家協会賞短編部門候補「シャドウ」 2007年 第7回本格ミステリ大賞受賞「カラスの親指」 2009年 第140回直木賞候補、第30回吉川英治文学新人賞候補、第62回日本推理作家協会賞受賞「鬼の跫音」 第141回直木賞候補
2009年08月17日
![]()
このミステリーがすごい 1993年版 国内編 第2位山本周五郎賞受賞作【内容】休職中の刑事、本間俊介は遠縁の男性に頼まれて彼の婚約者、関根彰子の行方を捜すことになった。自らの意思で失踪、しかも徹底的に足取りを消して―なぜ彰子はそこまでして自分の存在を消さねばならなかったのか?いったい彼女は何者なのか?謎を解く鍵は、カード会社の犠牲ともいうべき自己破産者の凄惨な人生に隠されていた。【感想】宮部さんの本に出会って、著作を一気読みしていた頃にはまった本。だいぶ以前になりますが、最近、また無性に読み返したくなりました。宮部さんの現代ミステリ、『楽園』『名も無き毒』『誰か』と、最近たてつづけに読みまして、タッチは一緒ですね。面白いです。ルポライター形式なところが読みやすいですね。『模倣犯』『理由』もまた読み返したくなりました。『火車』は、バブル真っ盛りか、そろそろ下火になった時期の設定みたいです。一般の人がカードローンでいろいろな贅沢が出来るようになった故に陥りやすい借金地獄。ちょうど、自分も社会人になった頃そうしたカードを利用していたことを思い出しました。やはり一人暮らしのOLで、お給料のやりくりだけでは、なかなかおしゃれも大変でしたから、カードはありがたく利用していましたね。最近は、カードはめったに使いません。あとになって、以前の買い物の請求がくるのはとても嫌なものです。主人公の刑事の目線で、ひとりの女性の軌跡を追います。謎の女性ということで、東野圭吾さんの『白夜行』の雪乃を連想しちゃいます。問題の女性が、直接的には全然言葉を発しないし、内面もわからないということが、謎めいていて共通してます。人物像は、ほとんど彼女の周囲の人々や周辺の出来事からの印象から。女性のひととなりが、ぼんやりだったのがだんだんと見えて来る。いつ、何処で、何を、どうして、行ったか。ひとつひとつの事実の積み重ね。警察小説での、聞き込みや事件の解明と同等の内容なんでしょうが、そのタッチとも違う、宮部さん独特な語りなんですよね。自分の内面を一人称で語るのとはまた違って、独特で噂話的な人物の輪郭が見えてきます。そうした証言が、日常的な会話文だからか、すごく引き込まれます。宮部さん本 感想
2009年08月17日
終戦記念日ということで靖国神社へ。TVは「ほたるの墓」や、「硫黄島からの手紙」など戦争関係の映画が放映されましたね。「ハチ公ものがたり」の映画が、リチャード・ギア主演で上映されてます。ハチ公は秋田犬で、アメリカでリメイク製作の際にも、犬種はそのままに。秋田犬は誰にでも懐かない犬で、その犬の性質は日本人の誇り高いところを象徴している。映画はそこを尊重したのだそう。「硫黄島~」のクリント・イーストウッド監督は、敵だった日本兵のことも、冷静に慈愛の目線で映画せいさくしてくれたようです。こうした思いのひとつひとつが、戦争の本当の終結になっていくのではないでしょうか。かつて硫黄島で戦った米軍と日本軍の兵士だったおじいちゃんや家族が、映画完成の頃に、硫黄島で共に慰霊碑を訪れ、話をかわしていました。ホントにどんな気持ちがしたことでしょうか。、市が谷の地下鉄を下りて、靖国神社や武道館周辺は、警備が厳重だったようです。右翼や左翼が活動する日だからでしょうか。夕方のNWESでは、武道館には天皇ご夫妻が、靖国には政治家が誰か来てたんですね。戦争前後のいきさつ、どうして太平洋戦争が始まることになってしまったのか、日本はどうして戦争に踏み切って真珠湾攻撃しちゃったのか、アメリカによる原爆投下、広島のはなし、長崎のはなし、、政治家の「靖国神社」参拝問題 核 自衛隊 、あんまりちゃんととはわからないんですけど。「朝まで生テレビ」をよく見てみましょう。結構わかります。ながいなつやすみのほんのひととき、戦争のとき、つらい思いをした人たちがいっぱいいたんだという話を家族ではなす日となりました。渡辺謙さん演じる上官は、教養豊かな優秀な人物で、日本が負けると分かってるし、家族を大事に思っている。二宮君演じる平凡な兵卒は、のこしてきた妻と生まれたけど顔も見てない子供のことを思ってる。正直、戦争映画やドラマは苦手です。せつないし、泣けてくるのが分かってますから。「父親たちの星条旗」「硫黄島からの手紙」は、もう戦争を直接は知らない、生々しい心情を知らない、でも忘れちゃいけないねと思っている、世代に合ってる作品だと思います。まだ歴史になるには早すぎるし、風化してもいない、政治的な問題も色々抱えている、今の日本という国。 戦後100年の頃には、子供たちが幸せに暮していますように。
2009年08月16日
![]()
直木賞受賞作このミステリーがすごい 1999年版 国内編 第3位1998文春ベスト10 1位【内容】荒川の高層マンションで起きた一家四人殺し。しかしそこに住んでいるはずの家族はほかの場所で暮らしていた。殺されたのは誰か、殺人者は誰なのか。事件はなぜ起こったのか。家が、家族が、そして人が徐々に壊れていく。【感想】以前に、この小説を読んだ頃は、宮部さん本は、ずいぶん手堅い内容になったなあという印象でした。それまで、SFや時代ものだったからですね。『模倣犯』の劇場型ミステリに比べても、ルポライター形式のこのおはなしは、特別残忍とか猟奇的とも違い、またアッと驚くような仕掛けがあるわけでもなく、とても地味で緻密。けれど、今回また読みたくなって読み返してみると、事件を平凡非凡と表現するのは変ですが、こうした事件は実際ありそうで、派手さがない分、手堅く読ませてくれるのだというのが分かります。また、<事件>という中心地点からは、放射線状の線上に、それぞれ長短差のある距離で関係者がいるという、それが見事に見えてくるという、あとがきの表現がよくわかりました。はじめは第一発見者や隣人、といった事件現場に近いけれど、事件の直接の関係者である加害者や被害者についてはなにひとつ知らない。という、遠い人々たちの証言からはじまり、徐々に、彼らを知る人々、彼ら自身に近い存在の人たちの聞き取りへとちかづいていきます。しまいに、被害者一家の本当の名前や素性が明らかになる。実に多くの関係者たちがいるわけで、どうしてこの人たちが、どういうかたちでこの事件に関わることになったかというのが分かっていき、事件の真相も見えくるというもの。アガサ・クリスティ作品『ゼロの時間へ』が思い出されます。ゼロ時間、すなわち、事件の瞬間というその一点に、関係者が集結する。そこまでくるには、さまざまな理由やいきさつがある。それぞれの関係者たちのはなしを丹念に聞き取り、ライターがそれをまとめるという手法は、『火車』でとられはじめて、『名も無き毒』などでもそうですね。宮部さんの現代ミステリには、定着してるみたいですね。ここでも、『火車』とおなじく、離散家族というか、家族の縁に恵まれない人が事件に巻き込まれてる、というか起こしています。親のどちらかが欠けても大変、または子供の育成に関心のない親に育てられた子供は不幸です。でも、なにひとつ欠けてないような家族だって問題が無いわけではないですし、片親でも、立派に家庭を営んでいる所もある。家族は、社会のなかで最小単位のつながり、社会から身を守る砦だと思いました。家族は仲良く、あったかくありたいものです。宮部さん本 感想
2009年08月15日
![]()
「古典部シリーズ」第二弾【内容】「折木さん、わたしとても気になります」文化祭に出展するクラス製作の自主映画を観て千反田えるが呟いた。その映画のラストでは、廃屋の鍵のかかった密室で少年が腕を切り落とされ死んでいた。誰が彼を殺したのか?その方法は?だが、全てが明かされぬまま映画は尻切れとんぼで終わっていた。続きが気になる千反田は、仲間の折木奉太郎たちと共に結末探しに乗り出した!さわやかで、ちょっぴりほろ苦い青春ミステリの傑作。【感想】お盆に田舎帰省に持って行きました3冊。書店で、『氷菓』『愚者のエンドロール』『クドリャフカの順番』の三冊が文庫でサラ~ッと並んでおりました。¥500前後で、薄くて持ち運びも便利。『遠回りする雛』も文庫化するのはいつでしょ~。ぜったい揃えます。中学生の夏の読書感想文にも良いのでは。中三の受験生の息子くんにも読みやすかったようです。今年の夏にシリーズ第五作が刊行予定とのことですが、ほんとに出るとうれしいです。<古典部>シリーズ第一作『氷菓』 第二作『愚者のエンドロール』 第三作『クドリャフカの順番 』 第四作『遠まわりする雛』 【このミス履歴】 トップ20以内ランクイン作品『さよなら妖精』 2004年度 20位『犬はどこだ』 2005年度 8位『夏期限定トロピカルパフェ事件』 2006年度 10位『ボトルネック』 2006年度 15位『インシテミル』 2007年度 10位 他『儚い羊たちの祝宴』
2009年08月14日
![]()
「古典部シリーズ」 第1弾【内容】いつのまにか密室になった教室。毎週必ず借り出される本。あるはずの文集をないと言い張る少年。そして『氷菓』という題名の文集に秘められた三十三年前の真実―。何事にも積極的には関わろうとしない“省エネ”少年・折木奉太郎は、なりゆきで入部した古典部の仲間に依頼され、日常に潜む不思議な謎を次々と解き明かしていくことに。さわやかで、ちょっぴりほろ苦い青春ミステリ登場!第五回角川学園小説大賞奨励賞受賞。 【感想】デビュー作。古典部シリーズ幕開けは、折木の一人語りでした。紹介文ではエコ青年とありますが、折木はクールと無気力の紙一重と言えませんかね。不良野球高校生の教師の物語、熱血「ルーキーズ」なんかとはまあ、ホントに真逆。彼の個性も結構好きなんですけど。若いんだから、もうちょっといろいろ活気がある方がいいんじゃないかと、おばさんは思っちゃいますね~。思えば一番目に読んだ、『クドリャフカの順番』では、古典部四名の視点それぞれでした。たとえば、いつも折木に辛口で里志にラブな摩耶花。彼女は物事や意見をバッサリ切るキャラです。彼女の語りのパートでは、たとえばハッキリ意見を言える自分が煙たがれたりもするのを自覚してる。損でもあり、強みでもあり。優等生でおっとりした千反田は「気になります」の一言で、折木を引っ張りまわしちゃう、あのお嬢様気質が、内心では生真面目ゆえにちょっとオロオロしたり不器用そう。折木と里志の、たがいに認め合う仲でいて、でもちょぴり対抗心を燃やす、友情熱そう、という関係も良いかんじです。『氷菓』では、入学したばかりの高校で、折木が古典部に自分の居場所を見出したり、自分の意外な探偵気質に気づいていく。本作は、シリーズ第四弾の短編集『遠回りする雛』の一話目:入学直後の逸話後、三話目:夏休み合宿前ころのお話ですね。千反田の叔父の悲劇、古典部の発行雑誌”氷菓”と”カンヤ祭り”の命名の由来。殺人事件などはないにしても、ゆっくりと着実に過去の出来事を掘り起こしていく折木たちの作業には引き込まれました。テレビドラマなどの、学校の怪談とか少年探偵団が解決するというような、派手さやエンターテイメント的展開はない、学園青春ミステリ日常の謎解きです。<古典部>は部員4名。部長:千反田えるの 福部里志 伊原麻耶花 折木奉太郎。<古典部>シリーズ第一作『氷菓』 第二作『愚者のエンドロール』 第三作『クドリャフカの順番 』 第四作『遠まわりする雛』 【このミス履歴】 トップ20以内ランクイン作品『さよなら妖精』 2004年度 20位『犬はどこだ』 2005年度 8位『夏期限定トロピカルパフェ事件』 2006年度 10位『ボトルネック』 2006年度 15位『インシテミル』 2007年度 10位 他『儚い羊たちの祝宴』
2009年08月08日
![]()
「古典部シリーズ」第四弾【内容】神山高校で噂される怪談話、放課後の教室に流れてきた奇妙な校内放送、摩耶花が里志のために作ったチョコの消失事件―“省エネ少年”折木奉太郎たち古典部のメンバーが遭遇する数々の謎。入部直後から春休みまで、古典部を過ぎゆく一年間を描いた短編集、待望の刊行。「やるべきことなら手短に」入学直後。氷菓事件前。”神山高校七不思議ばなし”関連。神山高校には50以上もの部活があるが、その中には活動内容が明らかでない秘密の部があるという。”七不思議ばなしその一”として里志が披露。折木が、出会ったばかりの千反田を煙に巻く。折木の生活信条「やらなくてすむことはやらない。やらなくてはいけないことは手短に。」が前面に出るはなし。ちなみに”七不思議ばなしその一”は、音楽教室から聞こえる謎のピアノと女生徒の幽霊。「大罪を犯す」ある日の五時間目。折木の隣の教室から先生の怒る声に混じって千反田えるの怒り声が聞こえてきた。普段怒らない聖人のような千反田が怒るとは、何がおこったのか?「正体見たり」夏休み。氷菓事件解決後。古典部は温泉合宿へ。そこで起きた幽霊事件。はたして幽霊の正体とは?「心あたりのある者は」二学期。ある日の放課後。○月○日、駅前の○○文房具店で買い物をした心当たりのある者は、至急職員室の○○先生のところに来るように。緊急らしい校内放送を、折木と千反田は解き明かそうとする。数日後の三面記事に、小さな記事が載っていた。「あきましておめでとう」初詣。千反田が家の代理で、神社内に挨拶。折木は酒を持つなど、千反田の着物姿にそれとなく関心。級友の巫女を手伝うことになるが、納屋に閉じ込められた二人。助けを呼ぶにも、変な誤解を受けるのは困るという千反田。折木のとった方法は?「手作りチョコレート事件」バレンタインデー。摩耶花のチョコが行方不明に。「遠まわりする雛」春休み。”生き雛行列”で、雛に傘を差し掛ける係を折木さんにやっていただきたい。千反田のお願いに折木が行事に参加。お雛さま役は千反田。十二一重姿の千反田&桜の乱れ咲きは、滅多に見れない風景となる。折木は行事に参加したことを猛烈に後悔。生活信条に反するなにかが自分のなかに芽生えそう。一方、毎年行列の通る橋が工事で通行止めになり、世話人たちがすったもんだ。【感想】一番面白かったのは、「遠まわりする雛」です。最初は、なんのことやら題名の意味がわかりませんでした。世話人たちの、てんてこまいな様子に、思わずクスクス笑い。千反田の、高校での顔は一面、旧家の跡取りとしての顔のほうが彼女の本質をあらわしているようだと感じさせる巻でした。そして、いつもの生活信条を盾になんだかんだと逃げを打とうとする折木は、そんな千反田に結局のところ弱いみたいなのが面白いです。古典部の部員たちの、今後の展開が楽しみです。古典部員が高校を卒業するまで、シリーズが続き、2009年秋頃〈古典部〉シリーズの最新作刊行とのこと。 <古典部>シリーズ第一作『氷菓』 第二作『愚者のエンドロール』 第三作『クドリャフカの順番 』 第四作『遠まわりする雛』 【このミス履歴】 トップ20以内ランクイン作品『さよなら妖精』 2004年度 20位『犬はどこだ』 2005年度 8位『夏期限定トロピカルパフェ事件』 2006年度 10位『ボトルネック』 2006年度 15位『インシテミル』 2007年度 10位 他『儚い羊たちの祝宴』 著者:米澤 穂信1978年岐阜県生まれ。2001年、第5回角川学園小説大賞ヤングミステリー&ホラー部門奨励賞を『氷菓』で受賞。「心あたりのある者は」は第60回日本推理作家協会賞短編部門の候補作となった(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
2009年08月07日
![]()
「古典部シリーズ」第三弾【内容】待望の文化祭が始まった。何事にも積極的に関わらず“省エネ”をモットーとする折木奉太郎は呑気に参加する予定だったが、彼が所属する古典部で大問題が発生。さらに文化祭の真っ最中、学内では奇妙な連続盗難事件が起きていた。十文字と名乗る犯人が盗んだものは、碁石、タロットカード、水鉄砲―。この事件を解決して古典部の知名度を上げよう。発行雑誌”氷菓”の販売も達成したい。千載一遇のチャンスに盛り上がる仲間たちに後押しされて、奉太郎は「十文字」事件の謎に挑むはめに。米沢穂信が描く、さわやかでちょっぴりホロ苦い青春ミステリ。【感想】<古典部>シリーズに、ようやく出会えました。米澤さん作品は、図書館にて長い予約待ちでは無くても、常に貸し出し状態の人気本です。いつも在袈無しなんですよね。これは良いですね。 良質の学園ミステリでしょう。舞台となる神山高校は、文化系部活の活動が盛ん。主人公らが所属する古典部以外にも、漫画研究部、囲碁部、奇術部、園芸部、お料理研究部、クイズ研究部、アカペラ部、手芸部。。たとえ3~5人とか少ない部員数でもなんとか成り立っているのが微笑ましい。高校時代は自分と共通の趣味を持つ仲間と、楽しく、もしくはそれなりに、過ごせたら楽しいでしょう。文化祭が活気ついているのがまた良いです。印刷しすぎた雑誌の完売目指して、千反田は売り場拡張や、ポスター公示、校内放送、、と交渉に行動しまくるが、交渉ベタな自分に気づきます。里志は、クイズ大会や料理大会で勝利して古典部の知名度を上げようと奔走。麻耶花のもうひとつの所属部:漫画研究会でも悶着が。折木は、じっと店番をしながら盗難事件の首謀者を推察する。<古典部>は部員4名。部長:千反田えるの 福部里志 伊原麻耶花 折木奉太郎。古典部員それぞれの視点で物語が進みます。第一作『氷菓』では”カンヤ祭の謎”を、二作目『愚者のエンドロール』では未刊の映画がテーマ。そして三作目『クドリャフカの順番』では盗難事件と、どれも文化祭がらみです。<古典部>シリーズ第一作『氷菓』 第二作『愚者のエンドロール』 第三作『クドリャフカの順番 』 第四作『遠まわりする雛』 古典部員が高校を卒業するまで、シリーズが続く予定。2009年秋頃には〈古典部〉シリーズの最新作刊行か。【このミス履歴】 トップ20以内ランクイン作品『さよなら妖精』 2004年度 20位『犬はどこだ』 2005年度 8位『夏期限定トロピカルパフェ事件』 2006年度 10位『ボトルネック』 2006年度 15位『インシテミル』 2007年度 10位 他『儚い羊たちの祝宴』
2009年08月07日
![]()
このミステリがすごい2010年版 国内編 第15位【このミステリーがすごい より】山本賞と直木賞にノミネートされた、道尾秀介の初短編集である。息子の鈴虫の鳴き声で、十一年前に友人を殺して埋めた時の記憶が蘇る「鈴虫」。刑務所作業製品の椅子の足に刻まれた文字を見つけた若者が、受刑者が残したメッセージをたどるたびに出る「*(ケモノ)」一月八日の左義長の儀式で達磨を焼く女。彼女と恋人との生活を、日記形式で元旦まで日付を遡って描く「冬の鬼」など五編が収録されている。読者の恐怖感を煽り立てる凶器を内包した語り口と、驚愕のラストへと導く騙りの技法が冴え渡る。短い枚数の中で、ホラーとミステリー、両方の要素をたくみに融合させる手さばきには、老練という言葉さえ浮かぶ。(*は、ケモノヘンの字だが、入力できず)2008年、第8回「このミステリーがすごい!」大賞(宝島社)において、『カラスの親指』5位、『ラットマン』10位。「週刊文春ミステリーベストテン」(文藝春秋)では、『ラットマン』4位、『カラスの親指』10位など、2008年各種ミステリランキングで驚異の「二作同時ベストテン入り」を果たし、年末年始の読書界で最も注目を集める作家・道尾秀介。このベストなタイミングで、著者自らが「自信作」と語る新作が刊行されます。 本書『鬼の跫音』は、道尾秀介初の短編集。収録されている短編はどれも独立していながらも、全ての作品に登場する「S」という謎の人物によって奇妙に結びつけられています。【感想】とっても完成度が高いのは分かりますが、あんまり陰鬱すぎました。主人公らの内側の暗黒がどんどん緊張をはらんでくる感じがすごいです。おなじ調子でどの話も、つづくので、最後のほうでは集中力がもたなくなり、未読となりました。道尾さんの本で、苦手の方のモノでした。 あんまりキリキリくるので読んでてつかれてしまいますが、それだけ凄いのでしょう。『背の眼』 『向日葵の咲かない夏』 『骸の爪』 『片眼の猿』 『ソロモンの犬』 『シャドウ』 『ラットマン』 『カラスの親指』『鬼の跫音』『龍神の雨』
2009年08月07日
![]()
【内容】西之園家のキッチンでは、ディナの準備が着々と進んでいる。ゲストは犀川(さいかわ)、喜多(きた)、大御坊(だいごぼう)、木原(きはら)。晩餐の席で木原に続き、大御坊の不思議な体験が語られた。その謎を解いたのはーー(表題作)。ほかに「ぶるぶる人形にうってつけの夜」「誰もいなくなった」など、長編シリーズのキャラクタが活躍する8編を収録。 【感想】今まで出された短編集の中から、S&Nシリーズ短編をセレクトした短編集。残念ながら森さん作品初挑戦で、シリーズもなにも分かりません。ですから、ファンならではの楽しみの機微は味わえませんでした。それでも、登場人物はシリーズの常連の人たちということで、一貫してるので読みやすかったですし、シリーズをなんにも知らない者でも、短編ですから独立した話で楽しめました。それこそ、三話程、お食事会でのミステリィ談義があり、メンバーが解決を試みるシーンは、*アシモフ著の『黒後家蜘蛛の会』みたいでした。執事さんがヘンリーのようでした。元某大学総長の娘:西之園萌絵を囲んでのディナーパーティは実に和やかです。招かれる面々は、叔父の警察部長や、おばの知事夫人、捜査一課の若手刑事たち、大学の教授ら。過去の事件でのちょっとした謎を、食事をしながら楽しむ会というのは、ミステリ・ファンタジーとでも呼びたくなるほど、優雅で穏やか、楽しく軽やか華やかです。ちなまぐさい犯罪や捜査をリアルに描く社会派ミステリとは、全く異なります。人物の内面のドロドロなど一切なく、著者が大学教授というだけに、トリックや理論重視というのがわかります。重厚な小説とは真逆、そのかわり、柔軟な発想が必要で、トリックやひっかけなどが楽しめます。どこか人を喰ったようなキャラの犀川教授は、【ガリレオ】シリーズの誰かさんみたい。学術重視、学究の徒な人物は、描くとこんな風に飄々としてしまうものなのでしょうね。【S&N】とは、犀川(さいかわ)と西之園(にしのその)ということ。大学キャンパスや高校の文化祭を舞台に、"ミステリ研究会”サークル的、ワイワイした余興感で、自分も大学生に戻って参加して、無料ビールにありつきたいっと感じます。森さんが、代表作であると意識している作品は『スカイ・クロラ』シリーズだそう。あの押井監督の『スカイ・クロラ』の原作だったんですね。これから読むなら第一回メフィスト賞受賞の『すべてがFになる』とか『スカイ・クロラ』が良いのかな。*『黒後家蜘蛛の会』は、『アイ・ロボット』『鋼鉄都市』などSF作家として有名なアイザック・アシモフの本格ミステリです。題材は、盗まれた物は何かとか、遺産を得るための暗号の解読とか、忘れてしまった地名の推測などの、より日常的な問題です。解決にはレストランの給仕人ヘンリーの(つまりアシモフの)該博な知識が使われます。ヘンリーは代表的な安楽椅子探偵の一人です。【S&Mシリーズ】 『すべてがFになる』 The Perfect Insider 『冷たい密室と博士たち』 Doctors in Isolated Room 『笑わない数学者』 Mathematical Goodbye 『詩的私的ジャック』 Jack the Poetical Private 『封印再度』 Who Inside 『幻惑の死と使途』 Illusion Acts Like Magic 『夏のレプリカ』 Replaceable Summer 『今はもうない』 Switch Back 『数奇にして模型』 Numerical Models 『有限と微小のパン』 The Perfect Outsider 『どちらかが魔女 森博嗣シリーズ短編集』(短編集の中から「S&Mシリーズ」作品を抜粋) 【スカイ・クロラ シリーズ】『スカイ・クロラ』 The Sky Crawlers 『ナ・バ・テア』 None But Air 『ダウン・ツ・ヘヴン』 Down to Heaven 『フラッタ・リンツ・ライフ』 Flutter into Life 『クレィドゥ・ザ・スカイ』 Cradle the Sky 『スカイ・イクリプス』 Sky Eclipse
2009年08月04日
![]()
このミステリーがすごい 2009年版 海外編 第4位【内容】【このミステリーが凄い】より紹介文驚異の新人の多彩な側面を味わえる傑作編集 よく親の背中を見て子は育つというけど、ジョー・ヒルは父親スティーブン・キングのどんな背中を見ていたのだろうか。読者から色眼鏡で観られることを嫌って、周囲に飛び交う憶測などもものともせずに、本人はデヴューから十年もの間、父親キングとの血縁関係を一切ふせたままにしていたという。しかし、もうその必要は無いだろう。親の七光りなどではない、本物の才能がジョーにあることは、なによりもこの粒ぞろいの作品集が雄弁に物語っている。『20世紀の幽霊たち』の登場である。 全作品を通じて恐怖という主調音が流れていることは否定のしようが無い。しかし、一読し、あらためて収録作全作を俯瞰するとわかるように、本作の価値は単なるホラー小説のコレクションには留まらない。似たような小説の重複がないという意味で実にバラエティにとんだショーケースといえるし、一つ一つの作品が小説としての深みを備えているという点で、ジョー・ヒルという作家のそこはかとない文学性をうかがうこともできる。 全作品を紹介するスペースはないが、ノスタルジーとモダニズムが同居した秀逸なゴーストストーリーの「20世紀の幽霊」、素朴な叙情が余韻として残る「ポップ・アート」や「うちよりここのほうが」、さらには、ミステリーとして面白い「狭殺」などが個人的にはとりわけ印象深かった。むろん読み手が変わればひいき作も変わるだろう。意外な箇所に作品を潜ませたり、ゆえあって削除された部分を復元したりという構成上の遊び心も嬉しい。 ちなみに、本作はブラム・ストーカー賞、英国幻想文学賞、国際ホラー作家協会賞といった名だたる賞を軒並み受賞している。結果的には紹介の順序が逆になったが、本作品集の二年後に上梓された第一長編の『ハートシェイプト・ボックス』も素晴らしい出来栄えなので、くれぐれも読み逃しなきよう。スティーブン・キング作品 感想・「骨の袋」 ・「ローズ・マーダー」 ・「ザ・スタンド」 ・「回想のビュイック」 ・「ダーク・タワー」 ・「IT」 ・「ランゴリアーズ」 ・「ニードフル・シングス」 ・「呪われた町」 ・「ゴールデン・ボーイ」【ダーク・タワー】シリーズダークタワーI ガンスリンガー (The Gunslinger) ダークタワーII 運命の三人 (The Drawing of the Three)ダークタワーIII 荒地 (The Waste Lands) ダークタワーIV 魔道師と水晶球 (Wizard and Glass) ダークタワーV カーラの狼 (Wolves of the Calla) ダークタワーVI スザンナの歌 (Song of Susannah) ダークタワーVII 暗黒の塔 (The Dark Tower)
2009年08月04日
![]()
【内容】ミステリの醍醐味と言えば、終盤のどんでん返し。中でも、「最後の一撃」と呼ばれる、ラストで鮮やかに真相を引っ繰り返す技は、短編の華であり至芸でもある。本書は、更にその上をいく、「ラスト一行の衝撃」に徹底的にこだわった連作集。古今東西、短編集は数あれど、収録作すべてがラスト一行で落ちるミステリは本書だけ。 収録作品:『身内に不幸がありまして』『北の館の罪人』 『山荘秘聞』 『玉野五十鈴の誉れ』 『儚い羊たちの晩餐』 【感想】短編集でした。共通するキーワードは「バベルの会」という大学の読書サークル。登場人物は、主に上流階級のお嬢様や、使用人、家族。お嬢様好きな作家さんといって思い浮かぶのは、北村薫さん。作風は、もちろん全然違っています。「バベルの会」というのが、すこぶるつきの上流階級のお譲様たちの会。でも、サークル活動のシーンはなく、会員の女性たちの逸話?がテーマ。必ずしも主人公がお嬢様ということでもなく、彼女たちの身近の人物や使用人、だったり、。『山荘秘聞』の主人公などは、お嬢様は全然登場しない。お嬢様の家から遠く離れた別荘の管理人の女性が主人公。彼女は、雇われてから一年ものあいだ別荘の掃除ばかりの孤独な暮らしをし、「バベルの会」の皆様を別荘にお迎えしておおいに接待したいと、夢見ていたりする。ところがある日偶然、接待することなるのは、山で遭難した山岳会の人々。なにやら秘密めいた出来事の最後の種明かしが面白かった。一瞬、彼女は現代の山姥か??と思わせました。派手な殺人や事件がおこって探偵が登場するというより、使用人の目線で、お嬢様やその家についての事象が多く、ふと、アイザック・アシモフの『黒後家蜘蛛の会』に近い雰囲気を感じました。でも、『黒後家蜘蛛の会』での定番の、食事会に招いたゲストに、珍事件や怪事件を語らせ、解決を試み楽しむというシーンは全くありません。なんとなく内容が近い気がしただけでして。他作品では、献身的な使用人の話が、3話ほど。どれも印象的で、それぞれ違うラストで、驚きました。『インシテミル』でも、庶民とかけ離れた、浮世離れした上流階級人の感覚が、殺人ゲームという道楽をとおして描かれてました。表題の、”儚い羊たち”という表現は上流階級人を指してますね。 【このミス履歴】 トップ20以内ランクイン作品『さよなら妖精』 2004年度 20位『犬はどこだ』 2005年度 8位『夏期限定トロピカルパフェ事件』 2006年度 10位『ボトルネック』 2006年度 15位『インシテミル』 2007年度 10位 他『儚い羊たちの祝宴』 <古典部>シリーズ第一作『氷菓』 第二作『愚者のエンドロール』 第三作『クドリャフカの順番 』 第四作『遠まわりする雛』
2009年08月04日
![]()
このミステリーがすごい 2009年版 国内編 第6位【内容】【このミステリーが凄い】 より紹介文作者のテクニシャンぶりに圧倒されるコンゲーム タケとテツの二人はケチな中年詐欺師である。銀行員を装った籠脱け詐欺を成功させた二人が地元へ戻ると、アパートの自室から黒煙があがり、消防車が出動して大騒ぎになっている最中だった。訳ありの二人は部屋を捨て新たな土地に移り住む。タケは、自分の密告により壊滅させた闇金融業者からの報復を恐れていたのだ。そんなおり、二人は盛り場でスリを働こうとして失敗した少女を助ける。少女はタケが闇金の取り立てで死においやった女性の娘:まひろだった。まひろはタケたちの部屋に居候の身となるが、続いてまひろの姉:やひろと恋人の貫太郎も転がり込み、奇妙な同居生活が始まった。しかし闇金業者の手はここまで伸びていた。腹をくくったタケは彼らを手玉に取ろうと、計画を立て、実行に移すが・・・。 周到に張り巡らされた伏線と、小説全体に施された巧妙な仕掛けが道尾作品の特徴である。叙述トリックの巨匠・折原一ではないが、何か仕掛けがあるぞ、騙されないぞと心して読む読者が多い筈だ。しかし、これまでのところ、道尾作品は全ての作品でそんなすれっからしの読者にうっちゃりを食わせている。思えばこれは凄いことだ。 いうまでもなく本作は詐欺師を描いたコンゲーム小説である。元来この手の小説は巨悪に挑む小悪党という図式が一般的だ。ところが本作では零細企業主を相手にした、いかにも後味の悪い詐欺が冒頭に置かれたり、二人の過去が明らかになるにつれてストーリーが陰りを帯びてくるなど、違和感を感じさせるところが散見さられるのだ。それも闇金業者の悪辣さを際立たせる為だろうと気持ちを納得させて読み進めてしまう。そして期待通りにテツたちの反撃が始まる。ところが・・・。その先に、世界が一瞬にして反転してィしまうような、本当の驚きが待っているのだ。ああこのテクニシャンぶりには脱帽の一手だ。【感想】 詐欺師が活躍する作品でまず思い浮かぶのは、ポール・ニューマンとロバート・レッドフォード共演の『スティング』。これはアカデミー賞を受賞してる。いわゆる、詐欺師が仕掛けをしかけて相手からいかに大金をふんだくり喝采をあげて、溜飲の下がる思いを味わえるかが醍醐味ですね。他にジェフリー・アーチャーの小説『百万ドルを取り返せ』。●仕掛の準備 ●ターゲットがいかに悪どいか(騙されて当然と思いたいから)●仕掛けのタネ明かし だいたい、↑こんな風でめでたしめでたし、と終わるのが常套ストーリーですが、『カラスの親指』は、最初、詐欺師コンビもまひろも、最初のトーンは暗め重めで、これは陰鬱な作風で行くのかな~っと覚悟しかけると、やがて同居人が増えてぬくもりが出てきて、ホッとしました。トップテン入り二作品のうち、本作のほうが上位です。やっぱりそうだなと思う内容でしたね。 題名の”親指”は、おとうさん指を現し、それぞれの指を家族に見立てた会話シーンがある。『背の眼』 『向日葵の咲かない夏』 『骸の爪』 『片眼の猿』 『ソロモンの犬』 『シャドウ』 『ラットマン』 『カラスの親指』『鬼の跫音』『龍神の雨』
2009年08月03日
![]()
このミステリーがすごい 2007年版 国内編 第7位【内容】【このミステリーが凄い】 より紹介文惨殺された二人の女性___犯人を追う刑事、夫、そして犯人の心の闇 構想執筆六年という難産のもと誕生した香納諒一の十二年ぶりの新作は、二段組み六百ページ近い超大作となった。 <犯罪被害者家族の集い>に出席した帰り道に、木島喜久子と目取真南美という二人の女性が殺された。南美は住宅地にある教会の庭で、後頭部をぐしゃぐしゃに割られた姿で発見された。さらに礼拝堂の中には心臓を一突きされ、両手を切り取られたハープ奏者の喜久子の死体まであったのだ。警視庁捜査一課の大河内茂雄は妻の遺体を確認しにやってきた南美の夫、渉に注目する。帰り際、エレベーターのボタンを押す時指にハンカチを巻き指紋を残さないようにしていたのを垣間見たのだ。後日、目取真宅はもぬけの殻になっており、しかもいっさいの指紋も残されていなかった。そして渉の勤務先東洋貿易の実質的なオーナーが、西日本に本部を置く日本最大の暴力団共和会だったことが明らかになる。 また、二人が出席していた集いにパネラーとして招かれた弁護士の名前が中条謙一であることに刑事の一人が反応する。中条こそ十九年前、同級生の首を切り取り、自分が通う中学校の校門に乗せた、猟奇事件の犯人だったのだ。 大河内は、二人の有力容疑者を追うが、中条には、弁護士仲間の証言による鉄壁名アリバイがあった。そしてあくまで被害者の夫であるという建前を盾に、公安部から目取真渉に対する捜査に待ったがかかる。 一方、姿をくらませていた目取真渉は妻を殺した犯人への復讐を誓っていた。目取真は殺しを金で請け負う凄腕スナイパーだったのだ。そして彼が完遂した依頼の一つが、警察の暗部と繋がっていた・・・。 猟奇的殺人者、殺しのプロフェッショナル、そして組織から逸脱した刑事の三者の追跡と闘いを、真正面からたっぷりと描いたクライムノベルである。これだけで一つの作品になりそうな、目取真の数奇な生い立ち。子供の死によって壊れた家族への思いを引きずり、刑事であり続ける意味を、自らに問いかけながら事件を追っていく大河内。そして他人の心を操る謎の殺人者。少年による残虐事件や警察の腐敗など、さまざまな現実社会の問題をプロットに巧みに組み込みながら、三者三様の心の暗闇を照射するのである。『幻の女』と並ぶ畢生の傑作だ。【感想】 たしかに、傑作と言える一冊だと思いました。『幻の女』というのは当然ウィリアム・アイリッシュ著の本かと思いましたが、香納諒一さん著の『幻の女』というのもあるんですね。そちらは日本推理作家協会賞受賞作、人生に疲れたおとうさん族向きのようです。被害者の二人の女性が冒頭登場する、最初の1ページ目からすっかり取り込まれていきました。たいてい、最初の数ページは、面白くなるまで我慢することもあったりする読書ですが、この本は、どこからどこまでも、とても読みやすかったです。刑事や、夫の動向が、切り替わるシーンなども、スムーズ。事件が起こり、遺体が発見、まずは刑事の視線で、被害者夫に不信の目を向ける。読んでいても、この夫が犯人だとしたら、結婚は全くの偽装だったのか、それとも二重生活と妻を大事にしていた男なのか?と興味を湧かせながら読ませるのです。やがて、スナイパーの夫の視線から、暴力団と警察の繋がりが見え出す。さらに、鉄壁のアリバイを持つ、かつての14歳の猟奇殺人者が関係者の中に登場。 なんといっても、あの〈神戸連続児童殺傷事件〉別名『酒鬼薔薇事件』の少年Aが、モデルなのが明白の人物に注目しました。社会的復帰を果たした立派な弁護士、でも、聞き込みに行った刑事の勘が働きます。「こいつは自分の過去をなんとも思っていないのか。殺した記憶を消し去ってしまったのか。」冷静にこやかに応対する弁護士へ、疑いの気持ちが消えない。アリバイ証明後も容疑者としてマークしつづける。少年法に守られ入手しにくい過去の事件の情報資料を得ようと行動します。少年だったからとは言え、「人を殺して、こんな風に簡単に出てきて人生をやり直せちゃうのか。」「母親への憎しみが強い。でも、体罰を与えられた人間が、100人中99人は殺人なんて起こさない。いや。1000人中999人は違うだろう。」こうした刑事の心のつぶやきは、ほんとにそうだよな、と思いました。こうした犯罪者の心の闇は、どうしても共感出来ないし、想像もつかない、理解もしがたいとしか思えず、どうしてこういう人間に育っちゃうのだろうか、、という疑問と不安がずっと消えませんでした。初、香納さん作品は、たっぷり堪能できました。重厚な警察小説なのに、スナイパーというハードボイル風のかっこいいコンビもいて、さらに猟奇殺人の味付けまで。香納さんは、しかし、ハードボイルドジャンルの方なんですね。最近は作品の幅を広げようということです。もちろん『このミス』でもベテランさん。今後、わたしがたのしめる本が見つかるかな?断然男性ファンが多い作家さんでは?でも、本書は女性も十二分に楽しめました。まともな女性人物はほとんどいませんでしたけど。ハードボイルド、男の美学、、的なあんまりカッコつけプンプンな本は、どうもなあ。。でも、クライブ・カッスラーのダーク・ピットに惚れ込んじゃうこともありました。意外といけるか。この年の『このミス』は、ベテラン勢強しの年だったようです。『制服捜査』佐々木譲さん著 『名も無き毒』宮部みゆきさん著 『赤い指』東野圭吾さん著などなど、良かったし好きな作家さんたち。法月綸太郎さん、有栖川有栖さん、はあんまりしっくりこなかった。一冊づつくらいしか読んでません。 大沢存昌さん作品もいつか挑戦できるかな。それこそハードボイルド中のハードボイルドというイメージです。著者の本 感想『影の彼方』 1990年 第7回織田作之助賞佳作入選『ハミングで二番まで』 1991年 第13回小説推理新人賞『時よ夜の海に瞑れ』 1992年 『幻の女』 1999年 第52回日本推理作家協会賞『贄の夜会』 2007年 『このミステリーがすごい!』ランキングの7位
2009年08月02日
全16件 (16件中 1-16件目)
1