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晴天。夏の如く日差しが強く、風が熱を帯びているのを感じる。空は白く、何故か僕に白髪のアルビノ少女を思わせる。その中で、残酷でやさしい風だけが颯爽と吹きながら、私を浚っては消えてゆく。 不鮮明な輪郭は雲の数程多くはなく、けれど一つの夢を観た時に感じる苦痛よりも多くの苦痛を僕に催す。慣れていない。僕は、相変わらずこの身体に慣れることが出来ていない。私の記憶がこの手から零れ、昔の母や父が夢に現れる度に、僕は自分の身体に相変わらず離人感を感じてしまう様だった。 この身体は元々僕のものだった筈なのに。可笑しいなぁ。いつから始まったかさえも判らないぼくの名称だけのブランク、という一つの形。一つの幕。(けれど僕は僕の歩んできたもの、僕の過程というものを、誰かが侵せる程度の過去なんていらない、とも想う) * 「僕は僕のからだに慣れることが出来ないんです、先生。まるで自分の身体じゃあないみたい、だなんてそんな安っぽいことを言う訳じゃあないけれど」 あの頃。まだ僕の大好きな季節が終わりことなくあり、肌に寒気が触れていた頃。僕を擦りへすあの季節、僕の先生はあのくりくりした大きな瞳で僕を不可解そうに見つめながら、本の一文をなぞるように僕へ疑問をぶつけてきた。 「慣れることが出来ない、って。どういう意味なんや」 その言葉はとても些細で、無邪気で、良心に満ちていた。先生は僕の伏せた顔を遠慮げに見つめながら、出来うる限りの善良さを顔に刻ませているようだった。それは無意識か意識してかまでは僕にも判らなかった。けれど僕はその時そういった人の善良さ加減に飽き飽きしてしまっていて、僕は先生の目をちらと盗み観るように覗き誤魔化すように笑ってみせることで、その話の本質を置き去ろうとした。姿形や意思を捕らわれべきは本来僕の筈だった。僕は鼠で、先生は僕や僕らの世界を狩るべき鋭い爪を持った猫、若しくは「この世界の人間」であるべきだった。けれどやはり僕は僕で、僕は私ではないのだ。 (僕の代わりは幾等でもいて、けれど私の代わりは依然として何者にも成れない。僕は私を理想に描きながら、それでも年を取れば取る程笑える位順々と不鮮明になってゆく。手が、耳が、鼻が、平衡感覚が、夢が。そして僕の不純な営みすらも。そして徐々に嫌悪が募る。それが愛故だというところも、変わらずに。) 煙草の煙が自然と服に臭いを染み付けてしまうように、僕らは本来なら生きてきた分だけの何かを身体に馴染ませるべきだったのに。経験や振る舞いを自然と身に付けて、そうして自らを生き難くしたり生き易くしたり、脚色するべきだったのに。少なくとも僕は、尊ぶべき「私」のためにもそうするべきであったのに。 「こんにちは。僕は今も此処で毎日を変わることなくいきております。元気でやっていますか。僕は、ぼくは、貴方を、」 たった一つのことが僕を壊すだなんてこと、そんなこと在る筈がないのに。誰が壊して誰が再生するかだなんて、これだって昔から変わらないのか。なにも、変わらない。 耳が膜を張ったように人の声を遮り、僕の奥深くを揺らしてる。今日も僕は、夢をみれない。 碧。 ああもう、ほんと文章能力ねーのな(笑)呆れてしまう。
May 18, 2007
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ごめんなさい。夢のようであればと、いつも願っておりました。貴方の愛撫に身をよろめかせる度に、貴方で在れればと始終尽くしておりました。疎ましかったのです。自分自身が。つめたいのは皮膚だけではありません。貴方を騙したこの身全てが、いつも獣の如く貴方の御命を狙っておりました。息衝く貴方の首筋から胸元まで、胸元から下腹部まで。いつも脳内で弄っておりました。けれど、それも夢のまた夢。僕は元来そのような人間ではなかったのです。気付いた今としてはそれもまた愉快極まりないことでしょう。表現に乏しき苦痛を並べ、黒々とした厄介な想いだけを残してゆきます。別れを仰げば其れも欠しき慈悲となりましょう。けれど僕はどこまでも浅ましきオンナでありますから、今忽然と姿を消しては夜雨に打たれて参ります。けれど嗚呼、貴方のように夢を仰げたら、この身悦楽を持って灰に還ることでしょう、と。碧。嘘は吐きません。ただの戯言です。けれど後にこの場を去る僕にとって、全ては関係のないこと同然でもありましょう。ごめんなさい。然様なら。また明日、僕じゃあない僕をあいして。
May 5, 2007
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