森田理論学習のすすめ

森田理論学習のすすめ

2017.02.04
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カテゴリ: 行動のポイント
引き続き、米長邦雄さんの話である。

将棋の対局はほとんどの棋士が羽織袴である。通常の手合は背広にネクタイ姿で対局している。
これは誰かが見ているとか見ていないとか言う問題ではなく、自分が職業としている将棋というものへの敬意である。
ところがある時ジャンバー姿で対局している若者がいた。
たとえ嫌われても、うっとうしがられても、こういう時に注意をしてやるのが先輩というものである。
対局後、私は彼を別室に呼んで話をした。

「競輪場へ行くような格好で対局してはいかん。みんな背広とネクタイできている」
努めて高圧的にならないように言ったつもりだったが、たちまち反論されてしまった。
とにかく、こう言えばああ言う、ああ言えばこう言うのである。

自分の頭では判断不能なことがあり、判断できたことでも誤っている場合があるということは、プロとして将棋を指していればすぐにわかるはずだ。
であるなら、先輩に注意されたら、 「もしかしたら自分が間違っているのかもしれない」という気持ちで聞くほうがよい。

もし、 20代でタイトル戦に出場し、 5番勝負、 7番勝負を戦っているような棋士に、私が同じような注意をしたら、このようなやりとりにはならない。想定しうる反応は次のようになる。
「心得違いをしておりました。申し訳ありません。ご忠告ありがとうございました」と言って、以後、必ずネクタイを着用してくる。これは、 99%の確率でそういう答えになると思う。

米長さんは、熾烈な勝負を繰り広げている棋士にとって、素直に忠告を聞かない人には、勝利の女神は、決して微笑まないと言われている。つまりどうしても自分の考え方を押し通そうとしているのである。
将棋の世界は、自分のやりたい放題のことを仕掛けて勝てるというような甘い世界ではない。
攻撃にかける時間以上に、客観的な立場から戦況について検討を加えていくということが必須なのである。よく将棋の対局で長考しているのはその作業を繰り返しているのである。
(運を育てる 米長邦雄 クレスト 96頁より引用)

このことは、森田理論学習で言うと次のようなことであると思う。
新版森田理論学習の要点の中に行動の原則がある。
その9番目に、 「外相ととのえば内相自ずから熟す」とある。

「やる気」になるのを待つのではなく、外側(行動や態度)をひとまずととのえれば、不快な感情も、その外側につられて後退してゆくものです。
月曜日の朝、いくら出勤することが苦痛であろうとも、起き出して歯を磨いたり顔を洗い、スーツを着て出勤の準備を始める。そして足を引きずるように、最寄りの駅に向かう。
会社に到着しても気分は重いかもしれない。
気分は重いまま、目の前の仕事に少しずつ手をつけていく。
このように、気分はいかに苦痛であろうとも、最低限の外装を整えていけば、そのうち内相は変化していく。次第に苦痛だった気分が小さくなって、最終的には消えていく。


この棋士のように服装は個人の自由であって、人から指図を受けなくても良いという考えだと、真剣勝負に挑むという気持ちはいつまでたっても湧いてこなくなるのではないか。
すると、 四段に昇段して、プロ棋士として成功するという夢はいつまでたっても達成できなくなるのではないか。
三段と四段の差は紙一重だといわれる。でも、待遇面では雲泥の差がついているのである。
その違いがこんな些細なところにあるのだとするとみすみすチャンスを捨てていることになる。
実力はあるのにその壁を乗り越えられないひとはもったいない事をしているのである。
米長さんは、外相を重視するということは、プロの将棋の棋士にとっては、勝利の女神をたぐり寄せることになるのだと言われているのだと思います。
そう言えば、意識してみていることはなかったが、名人戦等ではみんな羽織袴ですね。





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