森田理論学習のすすめ

森田理論学習のすすめ

2020.01.17
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カテゴリ: 生の欲望の発揮
私立大学付属小学校の6年生が夏休みに入る時のことである。

そこで担任が「小学校最後の夏休みです。宿題を出しませんから、みんな精一杯楽しんでください」と言った。「やったぁー」と喜んだ子供たちの感性は、廊下を通して他の教室まで伝わったという。
ところがその後、教室の中は潮か引くように静かになった。

そうか、宿題なしでは気がかりなのかと思った教師は、「もしやりたい人は、自分で宿題を決めて先生のところに持ってきなさい。そしたらそれをその人の宿題にします」と、ポロリと漏らした。
そうしたら、何と、いつもの夏休みよりも宿題の量が多くなってしまった。
夏休みが終わって、子どもたちは登校してきた。宿題はどうなっていたか。
やってこない子供たちがほとんどだったのである。

この話から分かることがある。

生産的、創造的、建設的、意欲的な生き方を熱望しているのである。
たしかにその方向で邁進している人もいる。
そういう人は幸せな人生を送ることができる。

ところがほとんどの人は、ついついその反対の方法へ流されていく。
楽したい、休みたい、手を抜きたい、現状維持でよい、しんどいことは避けたい、他人に頼りたい、エネルギーを浪費したくないなどという気持ちに流されていく。
逃避的、消費的、依存的、閉塞的、無気力、無関心、怠惰、刹那的な生活に陥っていく。

一瞬、一時的には精神的にも身体的にもほっとできる。
しかしそうした生き方は人間に宿命づけられた生き方ではない。
永続的ではない。自分の考える力や身体能力を発揮する場面がどんどん削られていく。
それらが廃用性萎縮現象を起こして、考える力が低下し、身体能力もどんどん低下してくる。
そしてついに再生不能に陥っていく。これはまずいと思ったときはすでに手遅れとなる。


デンマークの哲学者ゾレン・キェルケゴールは、毎年秋大きな集団をつくって南方に飛び去る野鴨を観察したジーランド海岸に住む人の話を書いている。
この人は慈悲深い人で、近くの沼に野鴨のためにエサを与えにいった。
しばらくすると、鴨のうちの幾羽かは南方に飛び去ろうとはしなくなった。
この人の与えるエサをたよりにして、デンマークで越冬するようになったのである。
だんだんこの鴨たちは飛ぶことが少なくなった。


鳥は1日の65%を餌捕りに費やすそうだ。
そんな生活を淡々と日々繰り返すことで、野鴨として存在することができたのだ。
一旦楽な方に流されると、体型も精神構造も変化して、元に戻ることはできない。
人間たちが与えてくれるエサに依存して、アヒルとして生きるしか生存方法はなくなる。
見世物としてかろうじて命の延命が許されている。
(人間力をフリーズさせているものの正体 藤田英夫 シンポジオン 参照)

私たちはこの相反する欲望を持っていることを理解する必要がある。
そしてそれらがいつも綱引きをしている。
そして逃避的、消費的、依存的、閉塞的、怠惰、刹那的な欲望の方に軍配が上がっている。
人間はいつも易きに流されてしまう生き物なのである。
人間は一方で燃えるような情熱的な人生を送りたいと思っているにもかかわらずである。

私はこの流れに流されっぱなしの人生は送りたくないと思う。
そのためには、目の前のことをよく観察して、感じを高めていく。
ものそのものになりきって実践や行動をする。
特に日常茶飯事に手を抜かない。規則正しい生活を心がける。

さらに、自分一人孤立するのではなく、多くの人と刺激しあうことで、逃避的、消費的な欲望に歯止めをかけたいと思う。切磋琢磨し合える人間関係の中で乗り越えて行きたい。
なかなか自分一人で立ち向かえる相手ではないと思っている。
人のふり見て、我が身を直すではないが、他人から刺激をもらって、前に進みたい。
また自分も人に少しでも刺激を与えられるような人間として生きてゆきたい。
自助組織の集談会ではそんな刺激を与えあえる人間関係を模索している。





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Last updated  2020.01.17 06:20:06
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森田生涯 @ Re[3]:強情と盲従の弊害について(02/27) ststさんへ 今の生活は日中のほとんどが…
stst@ Re[2]:強情と盲従の弊害について(02/27) 森田生涯様、返信アドバイスをしていただ…
森田生涯 @ Re[1]:強情と盲従の弊害について(02/27) ststさんへ コメントありがとうございま…
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